TAGシアターカンパニー&
ジェームス・ブライニング





   

TAGシアターカンパニーと「Making the Nation」プロジェクト

 TAGシアターカンパニー(以下、TAG)は、1967年設立されたスコットランドの児童青少年演劇のナショナルカンパニーです。その設立以来、スコットランド中の小中学校、コミュニティセンター、劇場などをツアーし、質の高い、古典作品のみならず、革新的な新作を提供するカンパニーとして高い評価を得てきました。青少年を辛らつな観客としてと、同時に、アクティブな参加者として関わらせ、コミュニケートしていくために、長期・短期の学校やコミュニティセンターなどでのレジデンス、教育学部の学生や演劇学生へのトレーニングプログラム、教師のためのワークショップ等などさまざまな活動を展開しています。
そのTAGが、1999年度から着手したのが、壮大な3ヵ年にわたるプロジェクト「Making the Nation」です。スコットランドは、いま、デボリューション政策のもと、新たな国づくりを模索しています。青少年もまたスコットランドという国の重要な資源であり、将来に対して大きな役割を担っています。自分たちにとってのコミュニティとデモクラシーの意識をいかに培っていくのか―TAGは、演劇こそがまさにそれに貢献しうると考えたのです。
 Making the Nationの初年度のプロジェクトは、「センス・オブ・コミュニティ」と題されました。6月に始まり12月に終了したプロジェクトには、スコットランド中の25校の小学校、600名の児童が参加しました。ユニークなのは、単に演劇を使って子どもたちを指導するというだけではなく、IT(とりわけインターネット)を駆使してのプロジェクトであったことです。さらに、そのプランは複雑でありながら、子どもたちにとっても、また、教師にとっても、非常に周到に計画されたものでした。まず教師に、ドラマとインターネットのトレーニングを提供し、その教師たちが教室に戻って子どもたちに指導する。インターネットは各学校間の情報交換のメディアとなると同時に、TAGからのサポートのメディアともなります。TAGから毎月課題が与えられ、教師はその課題をさまざまなドラマの手法を使いながら、その課題を子どもたちとともに調べ、議論し、まとめていきました。
 圧巻は、12月、エディンバラのスコットランド国会議場での子ども議会です。各学校からの代議員たちが自分たちのコミュニティとしてのスコットランドの抱える問題を議論するとともに、突発する仮想の、でも黒白では判断できない難しい事件の民主主義的解決に挑みました。
 子どもたちにいい芝居を見せる、子どもたちの教育に演劇的手法を活用する、インターネットを導入する、子ども議会を開く・・・個々のプロジェクトひとつひとつはめずらしいものではないかもしれません。しかしながら、これらを相互にリンクさせ、インテグレ―トさせたことにこのMaking the Nationthe Sense of Communityプロジェクトの本質的な意義が見出せるのではないでしょうか。
(詳細については、『ぼくらの国をつくる』を参照ください)




ジェームス・ブライニング
TAGシアターカンパニー芸術監督)
1968年、リーズ生まれ。ケンブリッジ大学ギルトンカレッジで英語を専攻。プロテウスシアターカンパニー芸術監督などを経て、956月から975月までの2年間、ロンドン郊外リッチモンドの名門劇場オレンジツリーシアターのエデュケーション・ディレクターを務め、TIEプログラムや青少年カンパニーの指導・運営にあたるとともに本公演などでも演出を担当。976月よりTAGシアターカンパニー芸術監督。また、サウスバンクセンター、BACでのオペラ公演の演出、2つの大規模な屋外コミュニティプレイを演出した経験も持つ。TAGでは、スコットランドを代表する劇作家ジョン・マックグラースの『ワークソング』世界初演をはじめ、『ペトラ』、『オテロ』、『ジュリアス・シーザー』『ファウスタス博士』『魔法使いの弟子』などを演出している。