1.宇宙の構成  宇宙は当初四つの階層より成立していた。しかし、いわゆるフライア神の侵入と よばれる出来事によって、最下層である第五層が発生した。よって宇宙は五層構造 を持つといったほうがいい。  宇宙の第一層は絶対者クラッグスによって統べられる。クラッグスは始まりであ るとともに、終わりであり、全てであるとともに、細部でもある。クラッグスは宇 宙の始まりと終わり、そして、そのサイクルが螺旋状に展開してゆく時間であると ころの、超時間の始まりと終わりまで全て把握している。  クラッグスは宇宙そのものであり、本来その外部というものは、存在しないと考 えられた。たとえ外部というものが存在したとしても、クラッグスの内部に投影さ れた影としてしか把握されないものとして考えられた。しかし、フライア神の侵入 はクラッグスの把握の外のできごととして語られるため、外部というものは実在す ると思われている。  ただ、クラッグスの外の世界を把握できるものはおらず、フライア神は外部の啓 示として知られているが、外部そのものを見たものはいない。おそらくはクラッグ ス自身のみがフライア神侵入の際に外部を目の当たりにし、その時の記憶がウロボ ロスの輪として宇宙の中に残っているといわれる。  宇宙の第二層は宇宙神マクスルによって統べられる。マクスルは、クラッグスの 投影とも呼ばれ、クラッグスの意志が宇宙の中で形態をとった姿がマクスルといわ れる。マクスルは、クラッグスという広大な宮殿の中の住人として喩えられる。マ クスルの意識は宇宙の生成/消滅を螺旋の一サイクルとする超時間にそって展開さ れてゆく。マクスルは宇宙の生成/消滅を風景を眺めるように見渡すことができる が、その螺旋のゆきつく先までは把握していないという。  宇宙の第三層はマクスルの妻といわれるアーシュラによって統べられる。アーシ ュラは別名をマクスルの音楽とも呼ばれ、宇宙の生成/消滅のサイクルによって形 成される螺旋の中を無限に上昇していく音楽であり、サイクルを超えて流れてゆく 絶対時間ともいわれる。  宇宙の第四層はサトス神によって統べられる。サトス神はマクスルの息子といわ れ、宇宙の生成/消滅のサイクルの中に存在する。ただし、神であるがゆえに、超 時間も把握することができる。サトス神の配下にはユビュ族とよばれる知性体が存 在し、ユビュ族はアーシュラの奏でる音楽に合わせ楽器を演奏し、時間をコントロ ールできる種族である。  フライア神の侵入はこの第四層においてなされたといわれる。フライア神と最初 に対面した神がサトス神であり、サトス神はフライア神を殺したがゆえに、死の神 として知られるようになる。  宇宙の第五層はヌース神によって統べられる。ヌース神はサトス神の息子であり、 サトス神がフライア神の死体と交わった結果生まれた子供である。  フライア神の死体はこの第五層のウロボロスの輪の中に安置されており、その監 視はヌース神と双子の神であるグーヌ神にまかされている。  第五層の神は超時間を感じることはできるが、螺旋軸にそったごく近い過去や未 来を僅かながら感じ取ることができるにすぎない。第五層は宇宙の汚れた部分とさ れているため、神々の認識力も通常より衰えるものと考えられている。  ユビュ族の中で堕落したものたちが、第五層に墜ちてくる時がある。彼らは龍や 魔神へと姿を変える。そうした堕落した存在には、超時間を認識することはできな い。 2.フライア神の侵入  女神フライアは、宇宙の中には存在せず、宇宙の外部から訪れた神として知られ る。宇宙の外部から何を目的にしてフライア神が訪れたかは、何も判っていない。 なぜなら、フライア神が何かを語ろうとした瞬間にサトス神がフライア神を殺した ためである。色々な憶測はなされており、クラッグスが超宇宙の中で盲目の狂った 存在と化してしまったがゆえに、宇宙が閉ざされてしまい、再び超宇宙の中にクラ ッグスを招き入れるための使者としてフライア神が訪れたというのが、最も有力な 説である。  フライア神が侵入したことにより空間の乱れが発生し、それはウロボロスの輪と して宇宙に残った。そして、第四層の混乱した部分が第五層となり独立する。第五 層と第四層はアイオーン界というものを間にはさんで繋がっている。  サトス神はフライア神を殺したのちに、その死体と交わる。そして生まれたのが ヌース神とグーヌ神であった。サトス神は双子の神に自分とともに来るように命じ たが、従ったのはヌース神だけであり、グーヌ神はフライア神の死体とともにいる ことを望んだ。  サトス神は第五層の最も深く汚れた地、すなわち金星をウロボロスの輪により封 印し、その地にフライア神の死体を安置した。そしてその番人としての役割をグー ヌ神に与えた。  ヌース神はサトス神とともにゆき、第五層を統べる役割を与えられる。 3.星船の脱出と、巨人  グーヌ神は、フライア神の死体から血と肉を取り出し、最初の巨人フレヤを造り 上げる。そして、全部で百体の巨人を造り上げたといわれる。  また、フライア神の死体より心臓を抜き取り、それから黄金の林檎を造り上げる。 その黄金の林檎を動力源とした船、星船をグーヌ神は造りあげた。  星船は、次元界を超えて航海することが可能であるが故に、ウロボロスの輪に囲 われた金星から抜け出すことも可能である。そして、グーヌ神は星船に巨人たちを 乗せ、金星から抜けだし、地球へときた。星船は、ウロボロスの輪を抜け出す時に ひどく傷ついたため、地球から先へと航海することができなくなっていた。  地球に降り立ったグーヌは、黄金の林檎を使ってその地を生命に満ち溢れた地と する。様々な生命体を作りだし、その全てを支配するものとして魔族を生み出す。  地球へは宇宙の上位層から墜ちてきた存在であるところの魔神や龍たちもやって くる。原初の地球は魔法的な生き物たちが多数存在する地であった。 4.人間の誕生と神々の約定  ヌース神は、グーヌ神の所業を糾弾する。ヌース神はグーヌ神に自らの場所であ る金星へ戻るように警告する。しかし、グーヌ神は警告を無視して地球に居座り続 ける。  その結果、ヌース神とグーヌ神の戦いが行われる。ヌース神は天使たちを引き連 れて地球上に棲むものたちを掃討しようとし、グーヌ神は巨人たちを率いて戦った。 天使たちの力は強大だったが、魔神や龍たちもグーヌ神に荷担したためその勢力は 拮抗した。神々は自らも戦い、神の流した血が大地を濡らした。  神々の戦いは数億年に渡って行われた。その間に神の流した血の染み込んだ泥の 中から新しい生き物が誕生する。それが人間である。  人間は不安定な次元界に存在する生き物であった。その人間たちが生まれたのと ほぼ同時期に、ヌース神とグーヌ神は休戦することになる。  ヌース神とグーヌ神は自分たちの戦いが決着のつかないものであることを知り、 戦うかわりに賭けを持って決着をつけることとする。つまり、不安定な次元界に存 在するがゆえに、神々ですらその未来を決定できない存在であるところの人間を使 って、賭けをしようというのだ。  ヌース神とグーヌ神は互いに直接的に介入せず、黄金の林檎をどうするのかは人 間の意志へ委ねることとした。人間がもし金星へ黄金の林檎を持ち帰れば、グーヌ 神も金星へ戻り、人間が黄金の林檎を持ち帰ることに失敗すれば二度とヌース神は 地上を侵略しないということを取り決める。  この約定がとりかわされた後、ヌース神は天上に帰り、グーヌ神は地下へと潜っ た。どちらの神も二度と地上に現れないと、約束がなされた。 5.王国の誕生  神々の約定がなされても地上は魔族が支配する地であった。巨人たちはグーヌ神 とともに地下へと入った。ただ一人地上に残ったのが最初の巨人フレヤである。フ レヤは最後まで地上に残ったがゆえに、最後の巨人とも呼ばれる。  人間たちは魔族の家畜として扱われた。魔族は戯れに人間と交わり、子を為した。 人間と魔族が交わって生まれたものが妖精族である。妖精族は魔族の奴隷となった。  人間は魔族により幾度も虐殺された。幾度か文明が築かれたが、魔族によって滅 ぼされた。魔族に対抗するために神聖ヌース教団が設立されたが、決して充分な力 は無かった。  ヌース神は機械で造った模造人間であるロキを地上に使わした。ロキは魔族の力 に対抗しうる能力を持った人間、エリウスを見いだす。エリウスは巨人フレヤの助 力を得て地下に棲むグーヌと会う。  グーヌはエリウスの頼みを聞き入れ神々の約定へ追加が行われる。魔族、妖精族 といった全ての魔法的存在は中原から立ち去り、人間の為すことに魔族たちは介入 しないというものだ。  この約定に基づいて王国が建国される。王国は黄金の林檎を金星へ返すためだけ に存続するものであり、王国へは魔族は介入できない。