SHORT ESSEY
簡単な読み物です、楽しんで言ってください
目次
アートについてチョッと開眼
人を長生きさせる方法
美しい人
(つづく)
アートについてチョッと開眼
最近開眼したんです いや人生開眼の連続です
人はこの世に無一物で生まれて無一物で消えてゆきます
持ってゆくどころか 持ってゆく主人が消えてしまうわけです
そういう人間が ひと時でも 何か 人でもモノでもいとおしく感じたとしたら
それはそれはすばらしいこころのはたらきです
お金はいとおしくても それ自体がいとしいわけではないのでダメです
道端の石ころでも 蝶々の羽でも 一筆で描いた線でも
またとない絵の具のにじみでも 誰かの首筋の腺でも 瞳の輝きでも
ちょっとしたメロディー 思わず頭に浮かんだ意味のない言葉
そういうものがいとしく感じられたら それをずっととっておきたいと思ったら
それがアートなんです
もちろん同じモノを見ても人によって感じ方は違います
それでもそれがもし二人以上の人間のいとしいものであったら
それだけそのアートは深いのです
百人の人のためのアート 千人の人のためのアート
十万人の人のアートになったらそれはもうすごいことです
十万人の人間の心がその深いところで繋がったということですから
アートは時代を超えて多くの人の心を繋げてみせます
そして少しでも深いいとしさを掘り起こしてゆく技術がアートでもあります
そういう技術を生み出す人をアーティストというのです
というわけで 私の作品をいとおしく思ってくれる人があまりいない以上
わたしの深さはたいしたことないということです
寂しいです
人を長生きさせる方法
臓器移植や人工臓器が盛んです
しかし 脳死からの臓器移植は 現段階では仕方ないとして
基本的にはドナーの死を前提にしている限り
医療の目的である
『人々を幸福にすること』として プラスマイナスして50点医療かも知れません
医学の理論からして 一番いいと思われるのは
その人の体細胞からクローンを作っておいて ドナーにすること
プラスしておいての引き算ですから 幸福の総量も変わりません
しかしクローンだって別の人格を持つわけですから
それを無視すれば 今度はクローンがかわいそうになります
それに人口は現状の倍以上に増えることになって
地球環境に負担がかかりすぎます
それではどうするか
人の存在を脳細胞の機能である と割り切って
あとはバーチャルな感覚で補ってもらう
それなら脳みそだけを 生かして置けば よいことになります
省エネ 省資源な 方法になります
あちこちの墓地はつぶして
巨大な脳管理センターを作ることになります
顔というものも 個人のアイデンティティーにとって 結構大事なので
数十万人分の首から上の部分のみを 酸素と栄養の集中管理で維持します
首から下の体は 浪費家のうえ無用の長物なので 切って捨てます
もちろんそれらの脳はインターネットで世界中と交信可能です
その交信は脳に現実世界の感覚をまざまざと伝えます
視覚も 聴覚も 味覚 触覚 臭覚さえも
情報は直接にそれゆえに 生き生きと脳に伝わります
脳たちの生活は首から下を持っていた時以上に
活動的で充実し 電子の自由さで 世界を歩きます
どうですか そんな世界
不老不死の世界 国境もない自由な世界
素晴らしいでしょう 行ってみたいでしょう
ええ
もちろん この話は悪い冗談ですよ
美しい人
美しく生まれるということは
今の世の中では非常に有利なことのようだ
美しいだけで勤まると思われている
職業は沢山あり結婚相手も選び放題だろう
とまあ考えるのが普通だが
やっぱり頭のほうのできもよくないと
どんな仕事でもうまくはいかないし
結婚生活も早晩破綻することだろう
美しく生まれた人は
自分が周囲の人より美しいとは思っていても
上には上があるし
普通は自分の弱点は自分が一番よく分かるので
直せるものなら直したいところも必ずあるはずだ
勿論自分が世界で一番美しいと
思える人はきっといないのだろう
しかし世界で一番美しいと
思っているかのように振る舞い
周囲を惹きつけ翻弄しあるいは
魅了して人々を支配する
そういう人はいるのだろう
彼女もしくは彼はおそらく
美しいだけでなくそれ以上に利発なのだ
クレオパトラは
おそらく自らを最大限に魅力的に
見せる術に長けていたのであろうが
案外それほどは美しくなかったかもしれない