予選Dブロック 審査フォームはこちら

031 バトルロワイR 032 KOYOMI 033 インパク×インパク 034 池田佐藤 035 お味噌ズ
036 ENDGREEN 037 茨木からの刺客 038 俺の塩 039 ハーベストムーン 040 月影連盟


No.031 バトルロワイR
V/I
R:はいどーも! バトルロワイRです! よろしくお願いしまーす!

?:MM-1ということで頑張っていこうと思います。

R:さっそくだけど俺さ、もっと目立つようなキャラというか個性が欲しいんだよね。アレといったらアイツだなみたいなの。

?:あー、確かにキャラって結構大事かもな。

R:だから、いくつかキャラクター案を考えてきたからさ。今から一つずつやっていくから、無理せずキャラクターを通せそうか見極めてくれると助かる。

?:なるほど。じゃあ、お前が無理なく貫き通せそうなキャラクターか見極めてやろう。

R:助かるよ。まぁ、全部念入りに練ってきたから穴のないキャラクター設定になってるけどな。

?:自信ありか。じゃあ、どんどん見せてもらおうじゃないか。

R:まず最初のキャラはズバリ「痩せキャラ」だ。デブキャラの対極に位置しているもののライバルも少ない。ここを攻めたキャラだ。

?:ほぉ、痩せキャラね。じゃあ、やってみてよ。



R :はいどーも! バトルロワイRの痩せてるほうでーす!

?:うん、痩せてる感ある。

R :体重は65kg! 身長は2m40cmでーす!この通り痩せてまーす!

?:痩せてることより長身が気になってしまうわ。

R :昔から痩せてたので、小学校の時のあだ名はモヤシ!中学校の時のあだ名はストロー!高校の時のあだ名はジャイアントノッポでした!

?:これ高校で成長期来ただろ。高校で痩せキャラから長身キャラになってるじゃん。

R :痩せてるから身軽だと思われるのか、よく高校の時 球技ではジャンプボール任されました。

?:長身あるあるだよなそれ。

R :給食もいつも残してしまっていたので、牛乳は一回も飲みませんでしたね。

?:それでよく長身になれたもんだ。

R :こんな痩せてる身ですが、サイズの合う服がなかなかなくて困っています。

?:そりゃ長身だもの。

R :だから大窓用のカーテンを体に巻いてるんですよ。

?:奇怪な服装のキャラが追加されたよ! もうやめとけよ! 痩せキャラ無理だよ!
  痩せてはいるものの長身のインパクトが大きいもん!それでいて奇怪な服装では「痩せ」が目立たないよ!

R:う〜ん、ダメかぁ。痩せキャラはボツと。じゃあ、次のにいくよ。
  次のキャラはズバリ「小さいキャラ」だ。小さくてかわいいとなるときっと人気も出ると思うからな。

?:ほぉ、小さいキャラか。じゃあ、やってみて。



r:はいどーも! バトルロワイRの小さいほうでーす!

?:うん、小さい感ある。

r:身長は1m40cmです!でも、髪の毛のぶん合わせると3m越えてます!

?:それはどんな立体的な髪型をしてるんだ一体。

r:小さいから かくれんぼとかは得意で、よく「そんなとこに隠れてたのかー 普通に松の木かと思ってたわー」って言われます。

?:松の木になりすませるってどんな髪型なんだよ。

r:小学校からずっと身長順に並ぶ時は一番先頭でした。

?:後ろの人には迷惑極まりないよなそれ。

r:小さいせいで身長制限のあるジェットコースターもいつも断られます。グスン。

?:髪型のため上限を越えてるんだと思う。

r:これでも身長を伸ばす努力はしてきたんですよ。牛乳飲んだり、プロテイン飲んだり、ワカメ食べたり、昆布食べたり、ひじき食べたり。

?:後半に髪を増やす努力が多々見えるんだけど。

r:あとは早い時間に就寝したりですね。寝る子は育つって言いますから。

?:ただの憶測だけど、翌日早く起きて髪型のセットに時間かけるためじゃないかな。

r:でも、身長が伸びなかった原因の一つとして推測されるのは、幼稚園のころから体をガッチガチに鍛えちゃったからだと思います。
  骨格がしっかりする前に筋肉で固めちゃうと成長に支障が出ますからね。
  めっちゃムキムキになりたかったら、本気で鍛え出すのは第二次成長期がきてからにしたほうが良いですよ。

?:はい、筋肉キャラが追加されましたよ! これにて小さいキャラは打ち止め!
  小さいキャラ無理だな。まず髪型が特徴的すぎる点が目立つもん。そこでさらに筋肉って、詰め込み過ぎだよ。

R:う〜ん、小さいキャラも無理があるかぁ。
  じゃあ、次はとっておきの「背中で語る屈強な漢キャラ」でいくよ。

?:おお、言わずもがなカッコいいな。じゃあ、やってみて。



Я:(「どうも。バトルロワイRの背中で語るほうだ」と背中で語っている)

?:うん、背を向けてる感ある。

Я:(「身長は175cmで体重は65kgだ。」と背中で語っている)

?:俺には何を背中で語っているのかはわからないけど、どうせ要らない情報を公開してるんだろうな。

Я:(「寿司が食べたい」と背中で語っている)

?:何を背中で語っているのかわからないけど屈強でカッコいい。

Я:(「マヨコーンの寿司だけ食べつくしたあとにゼリーを食べて帰りたい」と背中で語っている)

?:あと、後ろを向いてるからわからないと思いますが眼光がとても鋭い。

Я:(「帰ったら、ウサちゃんのぬいぐるみを抱いてぐっすりと眠りたい」と背中で語っている)

?:たぶん背中には歴戦の傷跡とかびっしりなんでしょうね。

Я:(「でもトイレに行きたくて目が覚めたら絶望するな」と背中で語っている。)

?:そろそろやめてほしいんだけどな! 背中で何か語ってるみたいだけど漫才に支障出るから!
  きっと男気に溢れた内容を背中で語ってるんだろうけど、俺わかんないから!

R:うーむ。そうだよなぁ。じゃあ、背中で語る屈強な漢キャラもダメか。

?:屈強路線はけっこう良いと思うけども、意思疎通に差支えあると困るわ。

R:じゃあ、次は「現実に抗い続ける反抗キャラ」だな。
  どんなことにも抵抗しちゃうとこが良いって感じのキャラ。

?:抗い続けるキャラも新しいかもな。じゃあ、やってみて。



R[Ω]:どうも、バトルロワイRの抗うほうだ。

?:うん、抵抗してる感ある。

R[Ω]:俺はこんな世の中大っ嫌いだぜ!

?:あぁ、世の中に反抗してる。

R[Ω]:ったく、何が痩せキャラだよ!コノヤロー!

?:反抗の矛先が先ほどの自分に向かってるのだろうか。

R[Ω]:「不服従」とか、何にでも反抗する俺とちょっとキャラがカブってんじゃねえかよ!

?:いや、矛先は違ったようだ。

R[Ω]:なぁ? ガンジーさんよぉ!

?:まさかの「非暴力・不服従」を唱えたお方に向いてた! 痩せキャラ言うなよ!

R[Ω]:まぁ、そいつはいいや。
ハァ。 ったく、何が小さいキャラだよ!コノヤロー!

?:今度こそ先ほどの自分に反抗の矛先が向いてるはず。

R[Ω]:1441年に嘉吉の乱なんか起こしちゃって、俺と反抗キャラがカブってんじゃねえかよ!

?:たぶんコレは補足説明がいるから戦闘用意。

R[Ω]:なぁ? 赤松満祐さんよぉ!

?:先述の嘉吉の乱を起こした室町時代の人物です。身長が120cmほどだったと言われており、低身長症だったのではないかと言われてます。
  コンプレックスだったって説あるんだから、小さいキャラ言うなよ!

R[Ω]:そして、あと一つ気に入らねえのがいるんだ。
    ったく、何が「背中で語る屈強な漢キャラ」だよ!

?:ググったら、一番に出てきたのはバットマンに登場する悪役の「ベイン」のウィキペディアです。

R[Ω]:悪役とか、正義に反抗するところが俺と丸被りじゃねえか!

?:自分を過大評価するキャラだなお前。

R[Ω]:なぁ? ベインさんよぉ!

?:さっき俺、もう名前出したのにわざわざ言いおった!反抗的!
  っていうか、もうただの言いがかりつけるキャラになってるから!
  「現実に抗い続ける反抗キャラ」も無理だよ!

R:あー、ダメかぁ。やっぱり俺には何か個性的なキャラをつけるのは無理なのかなぁ。

?:まぁ、迷走っぷりは見事ではあったけどな。

R:なるほど。 じゃあ、それでいこう!

?:迷走キャラか?

R:いや、何を話しかけられても静かに目を閉じて一人ものを思っている瞑想キャラで!

?:ダジャレじゃねえかそして意思疎通に支障が出るのはダメだって言っただろ! もうこれ結構!

2人:どうもありがとうございました。

予選総合第23位(準決勝敗退) バトルロワイR
審査員
点数
36 100 76 32 67 平均62.20
【審査員コメント】
・文章の書き方と設定の段階で危うさを感じましたが、中身のボケが予想以上に面白くてどうにか漫才が成り立っていたのが凄かったです。
 特に背中で語る男の所が凄く好きです。「たぶん背中には歴戦の傷跡とかびっしりなんでしょうね」でメッチャ笑いました。ただカッコ内の「と背中で語る」は省略した方が良いと思います。
 後はもう少し伏線を張って、物語性を引き立ててれば、さらにインパクトを感じさせる作品になると思います。
 ガンジーも面白いですが、やっぱりわざわざ三つもキャラ立てしたのですから、その三つが合わさったオチを持ってこないと物足りないです。もう少し先の展開まで考えを巡らせてみてください。
  
・ちょっとコレは発想とんでもないわ。
 抵抗のくだりは今大会の全てのボケの中で一番好き。
 誰もやんないケド誰もが理解できるコトをやれるのはやっぱり純粋に強いですね。
 ほとんど出オチになりそうな設定ごり押しのハズなのに、説明の簡潔さと読み心地の良さのおかげで、
 そのくだりの最初に一撃入れただけの高威力を持続的に利用できていて、面白さの寿命が異常なほど延ばせてる。
 どうしても型がハマるまで突拍子が無くてついて行きづらいのが序盤に存在するけれど、
 それを差し引いても余りある面白さが怒涛に押し寄せて来る中盤以降は本当に秀逸。
 奇抜な発想を理解の楽なテンプレートにのせているから勢いが全然尽きるコトなく読み手まで届く。
 個人的に今回のMVPに認定したいネタの1つでした。
  
・第7回の頃と比較して比べものにならないくらい面白くなってる。
 前回のネタと併せて、誰とも違う設定を考えてやるって気概が感じられる。
 構成や文章力はしっかりしてる割にベタな設定でしか漫才できないベテランよりよっぽど好感が持てる。
 Ωが突然出てきたときは大笑いした。
 こういうのがあるからMM-1の審査員はやめられない。
  
・「R」が痩せてるキャラの時は「R」になって、小さいキャラでは「r」になって背中向けてる時は「Я」になって
 抗うときは「R[Ω]」になってるというアイデアは個人的に凄く好きです。
 ただそのアイデアに引っ張られて多少ボケに無理が出てきてしまってる所がある様に思います。
 単純なボケの威力不足というべきでしょうか、これでボケ単体で見た時のレベルが高ければ凄いネタになっていたと思います。
  
・「ならでは」のネタって感じでしたね。発想はとても良かったです。
 個人的に笑いとしてハマったボケが無かったものの、目新しい設定なのは評価したいです。
 ?さんが「キャラ打ち止め」を宣言するタイミングが全体的に唐突だったのは気になりました。



No.032 KOYOMI
牛丼
睦月「めくれ笑いのカレンダー、」

如月「KOYOMIです。よろしくお願いします。」

睦月「というワケで、私は牛丼チェーンの価格戦争が許せません!」

如月「ネタ振りが乱暴ね。いきなりどうしたの?」

睦月「だって、牛丼屋の価格戦争ってさ、やれアッチが10円安くしたぞ、ならコッチは20円安くするぞ!とかさ。見苦しいじゃん。」

如月「アンタにとってはたかだか10円かもしれないけど、牛丼チェーン各社にとってはギリギリまで計算してやってるんだから。」

睦月「そうなんだろうけどさー。私、牛丼屋って行ったコトないからなんでソコまでするかイマイチピンとこないんだよね。」

如月「まぁ、確かに女性にとっては行きづらい場所ではあるかもね。」

睦月「でしょー?ソレに、牛丼食べに行って、『あ!肉食系女子がいるぞ!』って思われてもヤじゃん。」

如月「いやいや、そんなコト誰も思わないから。牛丼食べてるだけで肉食系なら人類皆肉食系だよ。」

睦月「ソレでお店に居る草食系男子が逃げるワケでしょ。葉っぱとかでカモフラージュしてさ。草食系装飾系男子。」

如月「百歩譲って逃げるとしても、葉っぱ付けたところでまったくイミ無いけどね。なんたって森じゃなくて街中なんだから。」

睦月「最終的には『女性恐い!』ってなって出家して、草食系装飾系僧職系男子。」

如月「もうソレは完全にアンタが『そうしょく』『そうしょく』言いたいだけでしょ。出家とか無理やりすぎるから。」

睦月「So Shock!」

如月「・・・ソレに関してはもう触れたくもないけど。」

睦月「ところで如月はさ、行ったコトあるの?牛丼屋。」

如月「行ったコトはあるよ。てか今どき行ったコトない人の方が珍しいと思うけど。」

睦月「そうなんだー。ならさ、色々教えてくんない?」

如月「色々教えられるほどは行ってないけど・・・。答えられる範囲でならいいよ。」

睦月「ありがとー!じゃあ早速注文の仕方なんだけどさ、ネットで注文して、自宅で食べて、丼をポストへ返却でいいんだっけ?」

如月「そんなレンタルビデオみたいな牛丼屋を私は知らない。
   仮にあったとしても客に丼をポストに突っ込むことを強要する神経が分からないよ。ちゃんとお店に行って食べなさい。」

睦月「お店にはどうやっていけばいいの?やっぱりベタに匍匐前進?キックボード?」

如月「どうしたらそれがベタになるのよ。公共交通機関なり徒歩なりで行きなさいよ。」

睦月「はーい。
   さて、徒歩でお店に着きました。どうやって注文したらいいの?」

如月「お店の形態もよるけど、直接店員さんに注文する場合と券売機なんかで買う場合があるかな。」

睦月「えっと・・・。つまり券売機で店員さんを買って直接注文するんだね?」

如月「なんで混ぜちゃったのかな。おかげで人身売買が行われちゃったじゃん。ちゃんと聞いてた?」

睦月「ごめんごめん。券売機で買うか、直接言うのね。分かった分かった。で、後は?」

如月「後は・・・、席に座って、運ばれてきたのを食べるくらいじゃない?」

睦月「えー、もう終わりー?なんか全然スタイリッシュじゃ無いー。
   もう、こんなんだから女性人気が出ないんだよ。もっと女性のハートをキャッチするようなシステムにしないと。」

如月「人身売買しようとする女性に女性人気って言われても説得力ないけども。
   でも、確かに女性をターゲットにする戦略は間違ってないかもね。で、具体的にはどうするのよ?」

睦月「まずはゆっくり出来るような環境づくりだよねー。席と席との間をゆったり取って、個人のスペースを確保してー、」

如月「回転率が命の牛丼屋には致命傷だね。」

睦月「んで、やっぱりテラス席とかも欲しいよねー。」

如月「通行人に牛丼臭を撒き散らしながら外で食べるのね。私にはとても出来ないわ。」

睦月「あとはやっぱり落ち着くBGMと飲み物だよね、コーヒーとか。コーヒーのサイズはもちろんショートとトールとグランデでね。」

如月「よし分かった。大人しくスタバ行こう。ね?」

睦月「そっかぁ・・・これじゃあ単なる牛丼を出すスタバだもんね。」

如月「まぁそうだよね。ただ、私は牛丼が出てくるスタバを『単なる』と言う言葉で括るのには抵抗あるけども。」

睦月「じゃあ、ならもっと個性を出さなきゃいけないのかな?」

如月「個性より先に見直してもらいたいコトがあるんだけど・・・。
   いい?『牛丼屋』なんだから。コーヒーとかよりソコを基盤に考えていかないと。」

睦月「牛丼・・・牛丼・・・・・・。そうか!牛だ!
   牛をテーマにしたテーマパークみたいにすればいいんじゃないかな!」

如月「わお、見事に小学生の発想だ。」

睦月「『ようこそ!東京ギュウニーランドへ!』」

如月「あぁ、よりによって一番怒られる場所選んじゃったかぁ。」

睦月「ギュウニーランドのキャストさんは全員牛の被り物を被ってて、語尾には『もぉ〜』って付けてるんだ。」

如月「なんというか。びっくりするほど安直ね。」

睦月「『さぁ、みんなこの魔法の牛さんのどんぶりを頼むんだもぉ〜!』」

如月「うわぁ、なんだか得体の知れないものを食べさせられようとしているんだけど。」

睦月「で、テーマパークって言ってるくらいだからイベントも作っていかないとね!やっぱりパレードとかかなー。」

如月「パレードって。コレまた発想が貧困すぎて可哀想になってくるよ。」

睦月「もちろんっ!なんとっ!・・・パレードの主役は牛でーす!」

如月「さもお待ちかねのように言ったけど、誰一人ワクワクしてなかったからね。だって読めたもの、アンタ単純だから。
   てかパレードって。牛丼屋の店内のどこにそんなスペースがあるのよ。」

睦月「スペースが無いかぁ・・・。じゃあ、別のイベントを考えないとだめかなー。」

如月「そもそも牛丼屋でイベントをやる必然性が皆無なんだってコトに気付いてくれるとありがたいんだけどなぁ。」

睦月「あ、そうだ!お寿司屋さんとかでやってるマグロの解体ショーみたいなのにしよう!同じ食べ物屋さんだし出来るでしょ。」

如月「解体ショーって・・・。イヤな予感しかしないよ。」

睦月「『今から牛の解体ショーはっじまるもぉ〜!』」

如月「悲しいくらい案の定だよ。そんな軽いノリで食事中にグロいモノを見せられたらどうしたらいいんだろうね。」

睦月「どう?この『東京ギュウニーランド』?」

如月「あのさ、牛丼屋って日本に何箇所あると思ってるの?コレだと人件費やら設備費やらかさんじゃうじゃん。」

睦月「じゃあどうしたらいいのさー。」

如月「牛丼屋ってさ、低価格を売りにしてるのよ。こんな案なんて実行出来るワケないじゃない。」

睦月「・・・そうか!逆転の発想だ!」

如月「逆転の発想っていうかもはやアンタのアタマのネジが一周してるけどね。で、どんなコト思いついたの?」

睦月「低価格を売りにしてる時点でその考えが古いんだよ。いっそのこと高級感を出して行った方がいいんだって。」

如月「コレまた安直だね・・・。お願いだから思い付きだけじゃなくてもうちょっと考えてから発言してちょうだいよ。」

睦月「いや、ちゃんと考えてるよー!
   まず、お店に入ると牛柄の燕尾服を着たお兄さんがお出迎え。」

如月「もう牛なのかツバメなのかワケわかんないけどね。そもそも牛柄の燕尾服って相当滑稽だし。」

睦月「内装は落ち着いたモダンな造りで。あ、いや、もぉ〜ダンな作りで。」

如月「何で言いなおしたのかな?腹立たしいんだけど。」

睦月「注文方法も券売機のボタンを押して選ぶんじゃなくて、
   券売機の代わりにずらっと人並ばせて、それぞれのメニューを対応した人から買うの。」

如月「ずらっと並ばせてって。人件費をドブに捨てるような暴挙だね。で、対応した人から買うってどういうコトよ?」

睦月「ソコはちゃんとさっきのお兄さんが説明してくれるよ。
   『並盛は私の弟である次男から、大盛は三男から、特盛は四男から券を買って下さいー!」

如月「さっきの『お兄さん』ってそういうコトだったの?一人で事足りるじゃない、何やってんのよ。家族自慢したいの?」

睦月「まぁ、今は分かりやすく並盛とかって言ったけど、この店ではそれぞれショート、トール、グランデって呼ぶんだけどね。」

如月「全然スタイリッシュじゃないよ。スタイリッシュの定義が揺らぐくらいスタイリッシュじゃないよ。」

睦月「で、席に案内されるんだけど、それぞれの席に1人ずつが担当さんが付いてくれるの。」

如月「私の想像では、もう店内が牛ツバメ兄弟が密集してて相当狭いんだけど、大丈夫?」

睦月「で、その担当さんに食券を渡して、しばらくしたらフットマンである長男が回収しに来て厨房に渡しに行くの。」

如月「二度手間どころの騒ぎじゃないよ。時間が勿体無さすぎるじゃない。」

睦月「いや、その待ち時間が楽しいんだって。担当の人と談笑して待つんだよ。牛トークに華を咲かせてさ。」

如月「何よ牛トークって。まったく興味湧かないんだけど。」

睦月「えー、楽しいよ?『牛ってのんびりしてて羨ましいですよねー』とか『いっぱい草食べますよねー」とか色々あるし。」

如月「コレまで中身が伴ってない『色々』って表現も珍しいよ。」

睦月「『あ、黒毛和牛の解体ショーが始まるみたいですよ!』とか。」

如月「あ、そのイベントの採用は確定事項なんだ。私があんなに止めたのに。」

睦月「で、しばらくしたら牛丼が運ばれて来るからサッと食べてサッと帰ると。」

如月「ソコだけは従来のスタイル貫くんだ。もうコンセプトが不安定すぎて訳がわかんないよ。」

睦月「まぁ、コレでカンペキでしょ!」

如月「だそうです。少しでも興味を持った経営者の方がいらっしゃったら睦月に連絡してやって下さい。
   連絡頂いた場合は私がただちに考えを改めるよう説得しに行きますんで。」

睦月「あー食べ物の話したらお腹すいてきちゃった。なんか食べに行かない?
   牛丼屋何ヶ所かの割引券あるけどどこがいーい?」

如月「待って待って待って。がっつり牛丼屋行ってるんじゃない、なんでウソついてたのよ。」

睦月「えー、だって・・・。さっき言った通り肉食系って思われるのがイヤだったんだもん・・・。」

如月「誰も思わないから安心して。」

睦月「So Shock!」

如月「それはもういいよ。いい加減にしなさい。」

睦月「以上、アナタを笑わす1年間。」

如月「KOYOMIでした。ありがとうございました。」


No.033 インパク×インパク
山奥の章
藤田「どうもインパク×インパクですよろしくお願いします」

中田「よろしくお願いします」

阿部「あたしアルプスの少女ハイジって大好きなんだよねー」

藤田「あー、名作だよね」

阿部「ハイジと言えば有名なシーンがあるじゃん?」

中田「あぁ、あのアルプスの食糧難で、ヤギのユキちゃんを
   泣きながらオーブンにぶち込むシーンね」

藤田「ちょっと待って俺それ知らない!」

阿部「それもまぁそうなんだけど…」

藤田「お前見たことあんのかよ!
   俺全部は見たことないけどそんなシーンないと思うよ!?」

阿部「ど、どうして友達のユキちゃんを
   食べなきゃいけないのよぉ?!教えてよぉ!
   教えてよぉおじいさぁん!」

中田「仕方ないんじゃよハイジ…
   これが……我々人間じゃ…人間の定めなのじゃ…」

阿部「これが生きるということなの?!
   それならあたし、もう生きていたくなんかない!
   友達を食べるのが本当に生きるということなの?!
   教えて!アルムのもみの木よ!」

中田「アルムのもみの木ならもう薪になっているよ」

阿部「降りしきる雨、鳴り響く雷鳴」

藤田「なんだこの流れ!!何この熱演っぷり!」

中田「パーパー♪パパパーパー♪…
   よーろよーろやっひっひーよー
   やっひっひーよやっひっひー♪」

2人「よーろよーろやっひっひーよー
   やっひっひーよやー♪」

阿部「断末魔はなぜー、遠くまで聞こえっるっの♪」

中田「ユキちゃんをなぜー、生きたままぶち込んだの♪」

藤田「怖すぎるわ!なんだこのえげつない歌詞は!」

阿部「『生きる』を考える。実に深い内容だよねー」

藤田「別の形で考えさせろよ!
   友達のヤギ生きたままオーブンにぶち込んで学ぶ
   人生観なんかイヤだよ!何が学べるんだよ!
   そうまでしてしか学べない人生観ってなんなんだよ!」

中田「なんだ文句ばっかり言いやがって。お前何かあんのかよ」

藤田「一番の名シーンと言えば
   クララが立ったシーンでしょうが!」

中田「あぁ、あったあったそんなシーン」

藤田「何そのリアクション!これ1番でしょうよ!」

中田「クララが立った力学的エネルギーによって
   アルプスの山が5cm南に動いたあの象徴的なシーンな」

藤田「俺の知ってるやつと違う!そもそも何の象徴だコラ!」

阿部「それで、犬ぞりレースがなんだって?」

藤田「お前に至っては何一つ話聞いてないのな!
   なかなか立たないクララに
   しびれを切らしたハイジが怒り出しちゃうわけよ!」

阿部「クララのバカ!面汚し!」

藤田「そんなこと言わねえよ!クララ何したんだよ!」

中田「そうだそうだ!面汚し!アルプスの面汚し!!」

藤田「ペーターまでなんなんだよ!」

中田「いや私おじいさんですから」

藤田「余計なんなんだよ!保護者がすることじゃねぇだろ!
   なんでアルプス代表みたいに怒られなきゃいけないんだ!
   もっと言葉選べよ!」

阿部「クララのバカ!沼貧乏!」

藤田「聞いたことねぇぞなんだその単語!
   どう思われてるのか全くわからん!」

中田「そうだそうだ!平成の沼貧乏!」

藤田「だからわかんねぇんだって!どういう罵倒なんだよ!
   クララが平成の沼貧乏なら昭和の沼貧乏は誰よ!」

中田「ワシじゃよ」

阿部「 お  じ  い  さ  ん  …  !  !」

藤田「なんだお前ら!
   その流れじゃちょっと誇れる立場じゃねぇか!
   もっとちゃんとやれよ!名シーンだぞ?!
   クララ立つシーンだぞ?!」

阿部「クララのバカ!どうして立てないのよ!この意気地なし!」

藤田「そうそう!そうやって怒るわけよ」

阿部「あなたがあまりにも立たないから、
   今日はある方をお呼びしたわ」

中田「ヒェッヒェッヒェッ……」

藤田「なんだこいつ」

中田「オイラは車椅子を食べる妖怪!」

藤田「なんか予想より変なヤツだった!」

阿部「この車椅子さえなくなれば、あなた立つしかないでしょ?」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!もぐもぐ…」

藤田「やり口が汚いよ!
   わざわざ妖怪の力借りてまで友達追い詰めるなよ!
   お前だよ面汚しは!」

中田「背もたれうめぇ!背もたれが一番うめぇ!
   もぐもぐ!もぐもぐ!」

藤田「世界観がすぎるよ!いつまで妖怪でいるつもりだよ!
   クララが立ったのはハイジに嫌われるのが嫌だったからだろ?!
   そんな妙な実力行使で立っても感動出来ねぇよ!」

阿部「クララのバカ!どうして立てないのよ!
   この意気地なし!もうクララなんか嫌い!
   (たったったったったっ…)」

藤田「そうそうそれでクララはハイジを追いかけようとしてさ!」

阿部「(ピタッ)うっ…!体が…動かない……ッッ!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!オイラの仕業だよ!」

藤田「またお前かよ!なんなんだよお前!」

中田「逃げずに黙って見てるんだな!」

阿部「なっ…クララが立った!!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!オイラは病気の原因を食べる妖怪!」

藤田「なんか違ういいヤツだった!
   でも感動出来るかこんなもん!
   人知を超えた力で立たせるなよ!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!
   さっきおじいさんの脳の腫瘍もこっそり食べてやったぜぇ!」

藤田「めちゃくちゃいいヤツじゃねぇかよ!」

中田「あと床もただただ舐めてやったぜぇ!ヒェッヒェッヒェッ!」

藤田「それはもうただの変態ですやんか!
   もういいやどんな形であれ立てば!
   その後クララが立ったクララが立ったって行って喜ぶんだよな!畜生!」

阿部「クララが立った♪クララが立った♪
   クララが立っ(メ゛ェエエエエエエエーー……ッッ!!)」

中田「おーい、そろそろユキちゃん焼けるぞー」

藤田「最初の続きだった?!断末魔聞こえちゃったよ!」

中田「ヒェッヒェッヒェッ!」

藤田「お前まだいんのかよ!」

中田「違うよ!オイラはバーベキューを食べる妖怪!」

藤田「それもうただのアウトドア野郎じゃねぇかよ!」

中田「タンパク質の焼けるいい匂いだぜヒヒヒ!」

藤田「仰々しいけど要はただの焼き肉好きじゃねぇか!」

中田「今日は友達の、
   焼きたての白いパンを人間の顔に押し付ける妖怪も一緒だぜ」

藤田「ここにきてややアルプス感ただよう妖怪でてきた!
   何が目的なんだその妖怪は!」

阿部「そしてオイラは
   その押し付けられたパンを食べる妖怪!(鳴り響く雷鳴)」

藤田「もう一匹出てきた!轟く雷鳴とともにしょうもない妖怪が!」

中田「そしてワシは妖怪
   沼  貧  乏  (  昭  和  ) ! ! ! 」

藤田「黙れジジイ!もうやめだやめだ!なんだこれ!
   ヨーロッパの話なのに変な妖怪たくさんでてきちゃった!
   アルプスってそんな変な妖怪の巣窟じゃねぇから!恐山か!
   お前ら本当にハイジ好きなの?!」

中田「好きだよハイジ」

阿部「仕事とかやめて山奥でひっそりと暮らしたい」

中田「でも牧場とかは誰かがやってくれて」

阿部「家事とかもやらずにダラダラ過ごしたい」

2人「ねー」

藤田「もうハイジどころか廃人じゃねぇかいい加減にしろ!」

3人「ありがとうございました」


No.034 池田佐藤
ゲーム
佐藤:どうも池田佐藤です。よろしくお願いします。

池田:ときめきメゴリラル。

佐藤:え?

池田:ときめきメモリアルは女の子を攻略するゲームですが、ときめきメゴリラルはゴリラを攻略するゲームです。

佐藤:糞ゲーじゃねえか。

池田:まさに男の夢が詰まった一品ですね。

佐藤:スカスカだよ。

池田:憧れのゴリラと、あ〜んなことやこ〜んな子供が出来ちゃいます。

佐藤:一大事だよ。

池田:またゲーム中の選択肢によって、ゴリラの性格や容姿も変わっていきます。つまり、あなただけのゴリラになります。

佐藤:別にみんなのゴリラでいいけど。

池田:というわけで僕が考案した、ときめきメゴリラルのあふれる魅力をお教えします。

佐藤:あふれてるのは獣臭だろ。

池田:OP曲はパフュームです。

佐藤:やめとけよ。

池田:曲名は、ゴリリズム。

佐藤:いや繰り返したくねえよ。その衝動はまるで恋じゃねえよ。

池田:次に主人公ですけど、彼はどこにでもいそうな平凡な高校生で、ゴリラと人間のハーフです。

佐藤:とんでも野郎じゃねえか。どこにもいねえよ。オンリーワンだよ。

池田:名前は自分で決められます。自分の分身なので、本名がオススメです。

佐藤:何で自分の分身にゴリラの血が入ってんだよ。

池田:そして舞台はゴッゴリ県です。

佐藤:え?鳥取県?

池田:いえ、ゴッゴリ県です。

佐藤:お前ゴリラにとらわれ過ぎだろ。

池田:ゴッゴリ県ゴッゴリ市の高校で、主人公と五匹のヒロインによる甘く切ないゴリライフが繰り広げられるわけです。

佐藤:ゴリライフってなんだ。

池田:まず一匹目のヒロインは、幼馴染のゴリラです。

佐藤:ゴリラが馴染んでたまるか。

池田:いわゆる腐れ縁ですね。

佐藤:臭い縁だろ。獣臭がすごい。

池田:主人公の為に、いつもお弁当を作ってきてくれるんですよ。

佐藤:家庭的なゴリラだこと。

池田:ちょっぴり甘めの卵焼き。カラッと揚がったサクサクの唐揚げ。ツナ入りのほくほくポテトサラダ。ゴリラさんウィンナー。

佐藤:どう切り込み入れたらゴリラになるんだ。

池田:あ、名前の紹介がまだでしたね。彼女の名前はグレゴリオです。

佐藤:ゴリ子でいいだろ。

池田:二匹目のヒロインは、おとなしいゴリラです。

佐藤:ゴリラなら騒げよ。ウホウホしろよ。

池田:勉強が得意ですがスポーツは苦手な、引っ込み思案なゴリラです。名前はゴリレオ。

佐藤:理系だ。多分このゴリラ、理系だ。

池田:彼女は本を読むのが大好きで、図書委員です。

佐藤:知るか。バナナでも食ってろ。

池田:バイブルはノルウェイのゴリです。

佐藤:カタカナがいっぱいで何言ってるかわかんねえよ。

池田:ちなみに彼女は眼鏡ッゴリラですが

佐藤:眼鏡ッゴリラってなんだ。

池田:選択肢によってはコンタクトレンズにしてくれます。

佐藤:健気なゴリラだこと。

池田:三匹目のヒロインは、癖のあるゴリラです。

佐藤:癖ってかくせーんだよ。獣臭がすごい。

池田:彼女は自分が神だと信じています。

佐藤:思い上がりも甚だしいよ。

池田:彼女の名前はゴリスト。イエス・ゴリスト。

佐藤:全体的にノーだてめえは。

池田:ゴリストちゃんはゲーマーなんですけど、彼女を攻略するときだけミニゲームが出来るんですよ。

佐藤:へぇ。

池田:マリオゴリフっていう。

佐藤:ギリギリ聞いたことねえよ。

池田:ウホールインワンできたら風がいたずらしてるCGが手に入ります。

佐藤:ゴリラのパンチラいらねえよ。

池田:四匹目のヒロインは、帰国子女のゴリラです。

佐藤:いやここまで全員、名前的に外人だったよ。

池田:名前は、モハメド・ゴリ。

佐藤:蝶のように舞い、蜂のように刺すんか。

池田:彼女は日常会話でも、たまに英語が混ざってしまいます。謝るときも「アイムゴーリー」って。

佐藤:自己紹介じゃねえか。私はゴリだよって自己紹介じゃねえか。

池田:あと彼女は文房具にとり憑かれてます。

佐藤:何があったんだよ。

池田:まぁそれぐらい好きなんですけど、中でも一番好きな文房具が、スティックごり。

佐藤:もう、うんざりだ。ネクストバッターズサークルにずっとゴリラがいる。

池田:五匹目のヒロインは、ロリキャラです。

佐藤:ゴリキャラじゃねえのかよ。お前ここ絶好のゴリラポイントだっただろ。

池田:ふふっ、この幼児体型といちゃつくなんて……ちょっぴり犯罪の香りがしてきますね。

佐藤:してくるのは獣の香りだよ。獣臭がすごい。

池田:彼女の名前は、神田うほ。

佐藤:名前がロリくねえよ。何度も結婚式を挙げてそうだよ。

池田:ちなみに彼女は相撲が大好きなんですよ。

佐藤:ふぅん。

池田:好きな決まり手は、ごり切り。

佐藤:そりゃすげえや。

池田:というわけで、主人公と五匹のゴリラによる恋愛ゲームなわけです。もし発売されたら、佐藤さんもぜひ買って下さいね。機種はゴリキャスです。

佐藤:どうもありがとうございましたー。

池田:うほうほ。


No.035 お味噌ズ
歯磨き
ツ:こないだ実家に帰った時に5歳になる甥っ子のけんたくんにあったんだけど、あれ位の歳の子が苦手とする事ってわかります?

ボ:えーなんだろ。確定申告?

ツ:苦手だろうけども。そんなこと言い出したら大概のこと苦手だわ。
  そうじゃなくて、俺らが日頃当たり前にやってる事をすごい嫌がったりするわけ。

ボ:・・・・・・・わかった!親の金でパチスロ!!!

ツ:少々悩んだ挙句の答えにしてはあまりにもお粗末だわ。けんたくん朝からパチンコ屋並ばんわ。
  つーかお前は何を日頃当たり前にやってるんだよ。クズオブクズかよ。

ボ:よせやい///

ツ:褒めてねぇわ。何を頬を赤らめることがあるか。
  正解は歯磨き。すげえ泣くのな。

ボ:いや、俺は歯磨きとか日頃当たり前にやらないから、その答えはクイズとしてちょっとどうかなって思ったけどね。

ツ:俺はお前のことをいい歳こいた大人としてちょっとどうかなって思ったけどね。
  道理でなんか隣が鮒臭ぇなぁって思ってたんだけど長年の謎が解けたね。

ボ:歯磨きってこう、口の中に異物を入れられる感じがちょっと受け付けないんですよね・・・。

ツ:まぁ子供にしたらそういう感覚が苦手っていうのも分からんでもないですけどね。子供ならね。

ボ:思い出すんだよね・・・、あの日の夜のことを・・・。あの高1の夏の合宿の夜をね・・・。

ツ:あぁ、なんかトラウマをお持ちのようですけどね。
  なんか危険な香りがするんであんまり踏み込みたくないんでここらでお暇させてもらいたいんですけどね。

ボ:寝技の特訓だって聞いてたのに・・・。男同士なのにこんなのっておかしいッスよ先輩!!

ツ:何かしらの薔薇族的な行為が行われてた!?何ネタ中にフラッシュバックしてんだよ!

ボ:はっ!あぁ、すまんすまん。てなわけで俺も歯磨きが苦手なんだよ。

ツ:そんなことがあったら苦手にもなるわな・・・。
  まぁそれで今日はけんたくんに歯磨き嫌いを克服して欲しいから、お前けんたくんやってよ。

ボ:けんたくんやれってどういうことだよ。

ツ:俺が歯磨きが好きになるようなプレゼンするから、けんたくんの気持ちになって対応してくれよ。
  同じ歯磨き嫌いとして感情移入しやすいだろ?

ボ:いや5歳児と同じ感情にはなれんと思うけど・・・。一応出来るだけやってみるわ。

ツ:おう、じゃあ早速いくな。
  けんたくん、歯磨きの時間だぞー。

ボ:えー、やだー!ぼく歯磨きしたくなーい!!

ツ:そんなことわがまま言うと口の中虫歯だらけで痛いんだぞー!

ボ:平気だい!虫歯で痛い方が歯磨きするよりマシだい!
  あの口の中に異物を入れられる感を想像しただけで・・・。先輩・・・。

ツ:おい、早速けんたくんじゃなくなっとる。あの夏の夜の合宿の思い出が忍び寄っとる。

ボ:せっ、先輩っ!帯を全部入れるとか無理っスよ!

ツ:おい!帯を良からぬところに詰められたあの日を思い出すんじゃない!
  先輩は何を思って帯を入れてみようと思ったんだよ!どんだけ曲がった性癖だよ!

ボ:意外と3分の1くらいはすんなり入ったんだけどね。

ツ:何を冷静に振り返ってるんだよ!ちゃんとけんたくんやってくれよ!
  入りはものすごく良かったよ。5歳児の気持ちになりきれてたのに。

ボ:まぁな。受け入れ態勢ばっちりだからな。体も心もガバガバだからな。

ツ:聞きたかないわ!いいからちゃんとけんたくんやれよ。

ボ:わかったよ。

ツ:いいかい、けんたくん。歯磨きしないと虫歯になるぞ!

ボ:いやだ!歯磨きなんてしたくないやい!

ツ:そうか。じゃあけんたくんのところにはハミガキマンはこなくてもいいんだ。

ボ:は?

ツ:いやけんたくんのところにはハミガキマンこなくていいんだね?

ボ:何・・・?ハミガキマン・・・?何ですかそれ・・・?

ツ:悪い虫歯菌を懲らしめる正義の味方、ハミガキマンだよ!
  歯磨きする良い子のところには来てくれるんだけどなー。

ボ:いやそんな素性の知れない人に急にこられても困りますわ・・・。
  僕、「知らない人についていくな」って親にきつく言われてますし・・・。

ツ:いやいや、ハミガキマンはそんな怪しい人じゃないから!けんたくんの味方だよ!

ボ:そんな頭ごなしに味方だ!なんて言われても・・・。それではい、そうですかとはいかないですよ流石に・・・。
  大体そのハミガキマンさん?ですか?その方が僕を守ってくれるとおっしゃいましたよね?
  なんのメリットも無いのに僕を助けてくれるとかおかしいじゃないですか・・・。

ツ:うん、いや、けんたくんね、ハミガキマンはヒーローだからそんなメリットとかは考えないんだよ?

ボ:おじさん、人は損得勘定なしでは動きませんよ?ヒーローといっても所詮は人でしょ?

ツ:ドライすぎるわ!発想が5歳児のそれじゃねえわ!けんたくんそんな子じゃないんだけどなぁ・・・。

ボ:いや最近の子は割かしドライだぜ?ちゃんと納得のいく話をしないと!

ツ:そうかなぁ・・・。まぁいいわ。
  あのね、けんたくん。ハミガキマンもね、多少のお給料はもらって仕事としてやってると思う。

ボ:そうでしょうね。当然のことだと思います。そりゃワンカップ大関も飲みたいだろうし、週間実話だって読みたいでしょうしね。

ツ:ハミガキマンそんな現場作業員のおっさんみたいな金の使い方せんよ!
  ごめんね、別に嘘ついてたわけじゃないからね!

ボ:気にして無いのでいいですよ。大人はそういう生き物だと認識してますので。

ツ:心の闇の深い子やわぁこの子は・・・。どんだけ大人に懐疑心もってる設定なんだよ。

ボ:まぁ仕事として割り切ってやってる方なら多少は信用できるかな!
  お金をもらってる以上、多少の責任感は持ち合わせてるだろうしね!

ツ:うん、まぁ信用してくれるなら別にいいけどさ。

ボ:それで何?ハミガキマンさんはどこの大学を出てるわけ?

ツ:は?

ボ:いや、仮にも虫歯菌の脅威から子供たちの安全を委ねられてる訳でしょ?
  それなりの責任にも問われるだろうし、そりゃあそれなりの学歴は問われる立場でしょ。

ツ:知らねぇわ!別にヒーローに学歴はいらんだろ!

ボ:いやぁ、せめてMARCHくらいは出てもらわないと!話にならない!

ツ:逆に嫌だわ!なんか気ぃ使うわ!頭良いのにこんなことさせてごめんなさいって気になるわ!

ボ:高卒や底辺大卒が許されるのは地方ハミガキマンまでだよね。やっぱ国家ハミガキマンはそれなりの人に任せたいよ。

ツ:そんな公務員じゃねえんだから!

ボ:こないだ友達から「ハミガキマンとコンパあるからおいでー」って誘われたからワクワクしていったら、地方ハミガキマンでまぢ引いたわー。

ツ:うるせえよ!どこの馬鹿婚活OLだよお前は!ていうかけんたくんやれや!途中から誰になってんだよ!訳わかんねえよ!イーッてなるわ!イーッッッ!!!!

ボ:おじさん、なにを興奮してるの?

ツ:はっ、けんたくんやん・・・。俺の甥っ子のけんたくんやん・・・。

ボ:ぼくけんただよー!

ツ:かわいいけんたくんやん・・・。ごめんね、おじさん錯乱してしまって。
  ほいでね、さっきの続きなんだけどね、歯磨きはやっぱり嫌かい?

ボ:うん、嫌だー!歯磨きするぐらいならぎりっぎり人体に影響のある濃度の塩酸水を常飲するわー!

ツ:そんなに嫌なのか・・・。じわじわ苦しいやん・・・。
  でもね、けんたくんが歯磨きをしないと、ハミガキマンのハミガキパワーが減少して虫歯菌にやられちゃうんだよ?

ボ:は・・・?どういうこと・・・?

ツ:だからけんたくんが歯磨きすることで、ハミガキパワーが溜まってくるんだよ。それを原動力にハミガキマンは戦うんだよ!

ボ:もう全然わからん・・・。えぇ・・・?どういうシステム・・・?腑に落ちんわぁ・・・。

ツ:5歳児は腑に落ちんでいいわ!その辺フワッとさせとけよ!

ボ:あれか?歯磨きによる摩擦熱をエネルギーに変換させてるのか・・・?でもそれをどうやってハミガキマンまで伝えてるんだ・・・?
  いかん、文系やから全然その辺分からんわ・・・。

ツ:5歳児に文系も理系もねぇわ!いいってその辺気にしないでくれよ!そういうものとして受け入れろよ!

ボ:まさか・・・、クラウドか!?iCloud的な発想か?ジョブズ怒ってくるわ!

ツ:何を一人で言ってんの?クラウド関係ねえしジョブズもっと関係ねぇわ!

ボ:ていうかさ、お前さっきからハミガキマンやたらと押してるけど、全然心に響かないわ。ハミガキマン自体に魅力が感じられないわ。

ツ:嘘やん・・・。

ボ:うん。もし仮に俺に子供がいて、その子供の友達の親御さんがハミガキマンやってるっつったら、俺、子供にその子とはあんまり遊ぶなって言うわ。

ツ:めちゃくちゃ嫌ってるじゃねぇか!魅力を感じないとかの次元じゃ無いじゃん!
  ハミガキとヒーロー物を掛け合わるという革命的なアイディアだと思ったんだけど・・・。

ボ:わりとありがちだと思うけどな。そんなんよりも俺が考えた案のほうがいいと思うから、お前けんたくんやってよ。

ツ:えぇ?ハミガキマンに勝るアイディアがお前から出るとは思えんけど・・・。まぁ聞くだけ聞いてやるわ。
  わーい!ぼくけんただよー!歯磨きしたくないよー!

ボ:おい、けんたくん。歯磨きしないと新沼さん来ないぞ。

ツ:・・・え?なんて?

ボ:新沼さんだよ。ちゃんと歯磨きをする良い子のとこには新沼さんが虫歯菌をやっつけてくれるんだぞ。

ツ:いやどこのおっさんだよ!誰だよそいつ!別に会いたくないよ!

ボ:会いたくない?正気かい?国家一級歯研磨技師の新沼一男さんだぞ?

ツ:国家一級歯研磨技師!?なんか良く分からないが凄みを感じるよ!

ボ:一橋大学卒の新沼一男さんだぞ?

ツ:頭良っ!

ボ:嫁はドイツ人の新沼一男さんだぞ?

ツ:すげえ!ドイツ人の嫁を落とすとは、なんたるバイタリティの持ち主!!

ボ:娘は春香クリスティーンだぞ?

ツ:お、おぉ・・・。

ボ:そんな新沼さんがプロデュースする歯ブラシ「一男スティック2013」を1本29800円のところ、今回は特別に27800円にて提供するよ!
  しかも、この「一男スティック2013」をけんたくんがお友達に紹介して、もしけんたくんのお友達が買ってくれたら紹介料として10000円をけんたくんにキャッシュバック!
  さらにそのお友達が紹介してくれたお友達が「一男スティック2013」を購入するとさらに10000円をけんたくんにキャッシュバック!
  どうだいけんたくん!君も「一男スティック2013」で一緒に歯磨きしないかい!?

ツ:うおおお!買った!!ってなるかいアホー!!!
  誰だよ新沼一男って!なに妙なリアリティ持たせようとしてるんだよ!
  娘春香クリスティーンとか言われてもいまいちアレだわ!
  つーか最後どさくさにまぎれてねずみ講的なことしてんじゃねえわ!!

ボ:やれやれ、騙されなかったか。俺が磨くべきなのは歯じゃなくて、話術のほうだったかな。

ツ:うるせえわ!歯ぁ全部抜ければいいのに!もういいよ!

予選総合第41位(2回戦敗退) お味噌ズ
審査員
点数
19  5 55 60 72 平均42.20
【審査員コメント】
・「はっ、けんたくんやん・・・。俺の甥っ子のけんたくんやん・・・。」の切り返し方がメッチャ面白かったです。
 甥っ子の歯磨き嫌いを直したいという斬新な設定でしたが、ボさんの大人びた子供っぷりが定番所から抜け出せていないのが残念でした。
 大人の発言に疑問を投げかけることは良いのですが、ヒーローに対する給料とか学歴とかは、何だかもう散々やり尽くされてしまっている気がします。
 なのでけんたくんを、「大人びた発言をする」だけのキャラではなく、「大人びてる上に毒舌が凄い」みたいなキャラを足していかないと、この形式で笑いを取るのは難しいと思います。
 ハミガキマンももっとハミガキ要素を取り入れてくれないと、インパクト不足でこっちまで「えっ、お前何言ってるの」みたいな気分にされてしまいます。作品の基盤となるボケなんですから、もっと練ってみるべきです。
 それとボさん本人が歯磨きが嫌いだという要素がネタ中にあまり活かされてなかったので、もっと隙あればトラウマを思い出すくらいの頻度で入れてほしいです。そうすれば、この作品がより色濃いものになると思います。
  
・流石にのっけから読み手を置いてけぼりにし過ぎじゃないですかね。
 惹き込まれないどころじゃなく、ネタに対してものすごい距離を置きたいと言う気持ちにさせるのは、
 序盤においてとてつもない痛手です。
 後半はちゃんと理解しやすいキャラとテンプレート持ってこれているのに、
 最初の印象の悪さが払拭されていないからほとんど面白さがちゃんと発動できていない。
 すごく勿体なかったです。
  
・ホモじゃねぇかいい加減にしろ
  
・同性愛(主に男性)ボケを入れると比較的内容がゲスくなったり、その傾向だけで来てヒいてしまうようなネタが結構あったりするんですが
 このネタに関して言えばそういったくだりが一つの笑いどころとしてキチンと扱われていて良かったです。
 けんたくんになったりけんたくんじゃなくなったりというその境界の曖昧さにツッコミが混乱していくのが見ていて面白かったです。
 ハミガキマンに対するけんたくんのドライな対応は少しハマらなかった部分がありますが、最後の新沼さんで巻き返していて凄かったと思います。
  
・ハミガキマンに関する部分は、個人的にはかなりハマりました。もっとハミガキマンを深めても良いんじゃないかと思うくらいです。
 だからというワケじゃないんですが、本題のハミガキマンに入るまでに行数を割き過ぎていたのが惜しいです。
 どこを面白さとして前面に押し出すか、というのを意識すれば、さらに上に行けるかもしれません。



No.036 ENDGREEN
動物園
武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。はじめてのMM-1なんでね。頑張って……

三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、自分のお店をやりたいから出資してほしいんだ!

武田:碧ちゃん。開始早々、MM-1への意気込みを遮ってまで生臭いビジネスの話をされるとは思わなかったよ。

三浦:うわ! 完君鋭い! 私がやりたいのはまさに生臭いビジネスなの!

武田:ゲスいとこ強調しなくていいよ。

三浦:動物園を経営したいんだけどさ……。

武田:ちょっと待とうか。
   まず枝葉からツッコんでいくけれど、動物園はお店って言わないよ。で、生臭いって動物の匂いのこと?

三浦:もちろん!

武田:動物園園長になろうって人がもっちゃいけないマインドだよ。
   で、幹にツッコむけど、動物園の経営なんて絶対無理だよ。

三浦:でもどうしてもやりたいの! それに売りがあるからお客さんだってたいっぱい来てくれる自信があるの!

武田:売りってなんなの?

三浦:ラブコメみたいな動物園にするの!

武田:ラブコメ……? 具体的にはどうするの?

三浦:まず、一人で来たお客さん同士が出会えるために、入口すぐのところでふれあいコーナーをおくの!
   ラブコメっていったら男女が同じものを取ろうとして手が触れ合うところから始まるのが鉄則だもんね。

武田:たしかによくあるよね。

三浦:いろんな趣味の男女が出会えるように、本棚やCDラック、食材や調味料なんかをたくさん並べておくの!

武田:じゃあ、動物園の必要性ないよね。せめて同じ動物に偶然触ろうとして……って演出にしようよ。

三浦:ふれあいコーナーで出会った二人はFriendに。そしていつしか愛へ……。

武田:頑張ってダブルミーニング考えたんだね。

三浦:ふれあいコーナー以外にもおひとり様用の出会いのプランがあって、初対面の人と恋人のフリをさせられちゃうの!

武田:碧ちゃん。たしかに、恋人のフリをするところから始まるラブストーリーもあるけどさ。
   なんで動物園にやってきて見ず知らずの人と恋人のフリをしないといけないのかな?

三浦:それはなかなか進展しないパンダを焚きつけるためよ!
   ピュアなラブを教えればパンダのカップルもきっと恋に燃え上がるはずよ!

武田:碧ちゃん。パンダが睦みあわないのは別に奥手だからじゃないよ。
   でもって、上手く焚きつけたところでパンダの意識はピュアなラブとはもっとも遠い位置にあるから。だって燃え上がるのは本能と発情だもの。

三浦:他にも空から女の子が降ってくる運命的な出会いを演出をするの!

武田:碧ちゃん、運命的もいいけれど現実的に考えようか。
   安全対策はあとでじっくり聴くとして、まず、どうやって女の子を降らせるのさ。

三浦:女の子をつかんだオオワシが空を飛んでいて、一人でいる男の子の近くに落としてくれるの!
   オオワシには隙あらば園内にいる女の子をさらうように調教するの!

武田:碧ちゃんは動物の調教よりも社会通念を学ぼうね。
   で、本題に入るけれど、空から落とされるんでしょ? 死者多数で園内が阿鼻叫喚だよ。

三浦:落ちても大丈夫なように、一メートルぐらいの高さで旋回させるよ!

武田:なら、落ちてきても空からではないね。それに、一メートルの高さで飛ばれていたらオオワシや女の子とぶつかってしょうがないよ。

三浦:曲がり角でね!

武田:ラブコメの出会い方におけるもうひとつの定番パターンを挟まなくていいよ。
   あと、曲がり角でぶつかるかはオオワシの飛行ルートによるよ。

三浦:それに、怪我をしなくてすむよう地面という地面にモルモットをびっしりと放し飼いにして衝撃を吸収させるから安全だよ。

武田:配慮はありがたいけれど、結果的に阿鼻叫喚だよ。いくらモルモットがふわふわしてても成人女性の体重は支えられないって。
   それに、降ってくるかどうかに関わらず、地面がモルモットにまみれていたら踏んじゃうからさ。
   四字熟語で表すなら阿鼻叫喚以外のなにものでもないよ。

三浦:完君、四字熟語でいうなら動物虐待でしょ。

武田:碧ちゃん。自覚があるならやめようか。

三浦:そうだよね。虐待していたら動物愛護団体の人にちょっと怒られちゃうもんね。

武田:碧ちゃん。仮にも動物園園長になりたい人が愛護団体の抗議をちょっと怒られる程度にとらえないでよ。
   それに僕は動物虐待は前提とした上で阿鼻叫喚になるって言いたいんだよ。

三浦:完君、恋に刺激的な出会いはつきものなんだよ!

武田:この場合の刺激は英訳してバイオレンスやグロテスクにならない物を指すんだよ。こんな動物園誰も来てくれないって。

三浦:そんなことないよ。いっぱい来てくれる自信があるもの!

武田:自信というかもはや過信だよ。
   とにかく、おひとり様のプランは惨事しか生まなそうだからやめようか。恋人同士で来園するお客さんへのアイディアはないの?

三浦:あるよ! まず、動物の説明が聴ける音声ガイドは二人で聴けるようにヘッドフォンじゃなくてイヤホンタイプにするの!

武田:そんな同じラブソングを二人で聴いてるみたいなことやってもさ、
   「へえ、サイって森の消防士って呼ばれてるんだね」ってなるだけでロマンティックにはならないよ。

三浦:でも、いきものがかりがバラードで歌ってくれるのよ!

武田:碧ちゃん、無駄遣いがすぎる。そもそも、いきものがかりさんも絶対オファー受けてくれないって。

三浦:でも、バンド名の由来は小学生の頃の生き物係なんだよ。つまり動物が好き。だから私の動物園にも協力してくれるわ!

武田:碧ちゃん、学生時代数学苦手だったでしょ? じゃなきゃこうも都合のいい三段論法は作れないよ。
   それにバンドの由来が生き物係だからって、三つ子の魂よりもアーティストのプライドの方が勝るよ。ガイド以外でラブコメっぽさをアピールしようよ。

三浦:そうね。だったら、彼女が手作りのお弁当を作って来るんだけれど、お砂糖と塩を間違えちゃうとか。

武田:管轄外だよ。どうやって園側が関わるのさ。

三浦:じゃあ、園内のレストランで砂糖と塩を間違えて作るとか?

武田:ただの不祥事だよ。バイトが料理長に怒られるだけだよ。

三浦:キッチンのバイト君が怒られて落ち込んでいたら、年上の先輩バイトさんが来て励ましてくれるの。

武田:どこでラブコメが生まれてるんだい? バイト二人がラブコメしてたら店まわらなくなるよ。

三浦:じゃあ、ポニーに食べさせる大きな角砂糖を間違えて岩塩にするとか!

武田:ただの動物虐待だよ。

三浦:そっか。動物愛護団体の人から「コラッ!」って叱られちゃうもんね。

武田:碧ちゃん。さっきから動物愛護団体を見くびりすぎてるよ。

三浦:そして、愛護団体に怒られて落ち込んでいる新人の飼育員君を年上の先輩バイトさんが励ましてくれるの!
   これぞまさにハーレクインロマンス……ううん、飼育員ロマンスよ!

武田:職場恋愛は結構だけれど仕事に集中しようよ。ポニーのエサに岩塩とか絶対ダメだから。

三浦:じゃあ、どこで砂糖と塩を間違えればいいのよ!

武田:塩の誤発注でもしたのかな? なんでそんなに塩にこだわるの?

三浦:甘いものに塩を足したら甘みが引き立っておいしくなるでしょ? 甘い恋にだって塩を足したらより甘くなるの!

武田:理屈はわかったけれど、実際に塩を使う必要はないからね。

三浦:じゃあ、塩の代わりに恋人たちにピンチや試練を与えればいいのね!

武田:さっきから過干渉が過ぎるよ。どこの恋人がデートにきてわざわざ試練を迎えたがるんだい?

三浦:檻から逃げたライオンが一人でいた彼女を襲うっていうのはどうかな?

武田:碧ちゃん。試練が乗り越えられない。

三浦:でも、神様は乗り越えられない試練は与えないっていうよ。

武田:碧ちゃん。碧ちゃんは人間。試練を与える自分が神様だなんて、思いあがったらいけないよ。

三浦:そうじゃなくて、私の行動だってすべて神の意志で定められていて、それがカップルに試練を与えるということは……

武田:碧ちゃん、哲学的な話、やめよう。ていうか、ラブコメっぽいピンチなら一人でいた彼女が男にナンパされるとかでよくないかな?

三浦:もう、完君たら! 自分が最初になんて言ったか覚えてる? それじゃ「動物園の必要性がない」でしょ!

武田:こういう形でしか必要性を作れないんだったら、やっぱり動物園にする必要がないよ。
   
三浦:彼女に近づいていくオスライオン! その後ろで
   「私がいるのに他の女にちょっかいかけるなんて……ま、別に彼女じゃないからいいんだけどね!」と不満顔のメスライオン!

武田:碧ちゃん、ライオンの間のラブコメは知ったこっちゃないよ。

三浦:さらに背後に控えるはメグ・ライアン!

武田:お忍びで来日中かな? SPの人がついているのなら今すぐライアンさんを避難させていただきたいね。

三浦:彼女は音声ガイドから流れる
   「メグ・ライアンはラブコメの女王と呼ばれている」といういきものがかりのメロディを聴いていてライオンに気付かない。
   そして今、無防備な彼女にオスライオンが襲いかかる!

武田:碧ちゃん、なんで動物園でライアンさんの情報を流してるんだい?
   で、本題だけれど、ライオンが襲ってきたとして彼氏はどうすればいいの?

三浦:勇気を持って「俺の女に手を出すな!」ってライオンの前に飛び出すの!

武田:碧ちゃん。その戦法は通用しない。それで撃退できるのはナンパ男だけだから。

三浦:そうしたらライオンは「なんだよ男がいるのかよ。オイ、こんなかわいい彼女一人にしてるんじゃねえよ!」ってすごすごと下がっていくの!

武田:もしかしてだけれど、この動物園って落語の「動物園」と同じシステムなのかな?

三浦:その背後でポカンとした顔でたたずむメグ・ライアンとそのSP。

武田:ライアンさんたちには日本語が通じなかったみたいだね。

三浦:危機を乗り越えた二人は月明かりの下、
   いきものがかりのバラード「モルモットはドイツ語で海の小さな豚と呼ばれている」が流れる中でロマンティックに踊るの。

武田:ロマンティックと感じるには一連の流れに疑問点が多すぎるよ。

三浦:上手に踊れない人もいるだろってこと?

武田:碧ちゃん。着眼点が違う。「モルモットはドイツ語で海の小さな豚と呼ばれている」なんて曲では上手く踊れないだろうけれど、そこではない。

三浦:大丈夫だよ! 足元のモルモットを踏まないようにしていれば自然と踊れているよ!

武田:それ西部劇で悪役に踊らされるタイプの踊りでしょ。足元をピストルで撃たれることによって結果的にステップ踏んでるのと同じ理屈でしょ。

三浦:しっとりとしたバラード。ハニカミながら踊る二人。オオワシにさらわれるメグ・ライアン。

武田:ロマンティックの裏でSPの人大失態しちゃったね。

三浦:失敗して落ち込む新人SP君。それを励ます年上の先輩さん。

武田:SPまでラブコメしなくていいよ。そんな暇あるならライアンさん助け出そうよ。
   あのさあ、碧ちゃん。さっきから聴いてるけど、動物園の経営なんて絶対無理だよ。
   ラブコメの演出もどうかと思うけれど、なにより動物への愛情やお客さんへの配慮が決定的に欠けているよ。

三浦:でも、ラブコメみたいな動物園にしたら絶対成功するの! お客さんもたくさん来てくれる自信もあるの!

武田:自信というかもはや迷信だよ。いったいその根拠はどこにあるの?

三浦:だって動物園に来るんだよ。じゃあ、思うことはひとつじゃない! 好きな人とZOOっと一緒にいたいって。

武田:いい加減にしようか。

二人:ありがとうございました。

予選総合第10位(準決勝敗退) ENDGREEN
審査員
点数
92 51 63 77 86 平均73.80
【審査員コメント】
・最後の伏線回収が凄まじかったです。
 それじゃ「動物園の必要性がない」でしょ!でなんかメチャクチャ爆笑しました。
 オオワシとかモルモットとか、よくこんなこってりしたボケを出し続けて漫才の形が崩れないなと、構成力の高さに感動しました。、
 もっとたくさん動物が出てきても良かったんじゃないかなと思ったこと以外は特に言うことは無いです。面白かったです。
  
・やっぱり理解して記憶しておかなきゃいけない情報が多すぎるのはネタ読む上でとんでもなく疲れるので、
 それが対策無しで放り込んであるのはどうしても大きなマイナスにせざるを得ないです。
 持って来てる単語のいわゆる「ワードセンス」ってモノには2パターンあると私は思っていまして、
 字面で楽しませるタイプと内容で楽しませるタイプに分かれているんじゃないかと考えるんですよ。
 で今回は後者が多くて、コレは読み手に理解のエネルギーを要求するから、
 ある程度読み進めが「ノって」いるコトが面白さの発動条件であるハズなんです。
 その発動条件を作るための工夫が欲しいと言うのが全体通して一番の感想です。
 早い段階で「動物園の必要性ない」と言ってしまったから話の軸が安定しなくなったり、
 ダブルミーニングと呼ぶには厳しいモノをダブルミーニングと呼んでいたりと突っかかる要素が多くて、
 情報処理と情報管理のタスクを多く要するこの形式でこう言った突っかかりがあるのはかなりの痛手になってしまいます。
 たとえば字面で楽しませるタイプの言葉である程度惹き込んでから、
 内容を読み込ませるタイプを配置した方がスラスラと面白さが吸収できて、評価は桁違いになるハズなんです。
 そんな風に読み心地やらしっくり感やらでネタを観ている相手の「観たい意識」を常に高く保つ仕組みを、
 ばらまいて(特に前半に)おけたら倍近い評価になっていたかも知れません。
  
・「サイって森の消防士って呼ばれてるんだね」が凄く良いんだけども、
 それ以降の同じくだりがどうにも不発。ツッコミは巧いけど、少しボケを掻き消してる感がある。
 終盤のラッシュは、常套手段なんですけどやっぱ評価しちゃいますね。
 メグライアンは安直すぎたかな……
  
・ものすっごく丁寧に作られてますよねこれ。
 脱線的なボケと本筋のボケの部分を一個一個丁寧に処理していたので、ボケが少々突飛なのに分かり易くてよかったです。
 そして、ボケ単体で見ても非常にレベルが高く、オオワシにさらわれるメグ・ライアンはとにかく笑いました。
 レベルの高い漫才を見たな、という印象です。
  
・そこそこのインパクトのボケが数行ごとに来るのが良いですね。読みやすさにも繋がっていました。
 目立って良いものがあったというほどではないのですが、欠点が少ないネタでした。
 個人的には、動物愛護団体の人に「ちょっと」怒られる、というのがツボでした。オチなんかも上手いですね。



No.037 茨木からの刺客
ヒーローをやりたい
土屋:茨木からの刺客です。

土方:火星人じゃないやつと土星人じゃないやつで漫才やってます。

土屋:土方さん、俺ヒーローに憧れてるんだけど、今ここでやってもいいかな。

土方:それはつまり漫才からコントに入ろうってことだな?

土屋:まあそういうことなのかな。

土方:コントなあ・・・やっぱり漫才の大会なら漫才らしい漫才で勝負すべきだと思う訳よ。
   だからこういうのはどうだ?(土屋に耳打ち)

土屋:なるほど!それなら漫才でありながら・・・土方さん天才だ!

土方:じゃあ出てくるとこからやろう。

(2人とも舞台裏へ引っ込む)



土屋:どうもー!漬物戦隊、塩分過剰摂取ジャー、梅干しレッドです!

土方:漬物怪人、梅干しレッド怪人です。

土屋:という訳でヒーローと怪人で漫才やってます!

土方:梅干しレッド、私はちょっと街を壊す練習がしたいんだが。

土屋:じゃあ俺が街役をやってやるよ。

土方:よーし、この街を壊すぞ。変な噂を流して人口を廃れさせてやる。

土屋:いや壊し方が陰湿!どういうテンションで街演じてればいいんだよ!?もういい加減にしろ!
   必殺、長時間居座るだけでご飯を赤くしてしまう梅干しの浸透力パンチ!

土方:ぐはっ!やっぱ梅干しには敵わねえや!

2人:どうもありがとうございました。



土屋:これだよこれ!まさにヒーロー!

土方:漫才の形も崩すことなくな。

土屋:いやー、気持ちいいな。もう1回やらない?

土方:じゃあちょっと変えてこういうのでいこう。(土屋に耳打ち)

(2人とも舞台裏へ引っ込む)



土屋:どうもー!漬物戦隊、塩分過剰摂取ジャー、キムチレッドです!

土方:漬物怪人、キムチホワイト怪人です。よろしく。

土屋:漬けがまだまだ甘いな!

土方:今日はお客さん、綺麗な人ばっかりですね。左から馬面、馬面、1つゴリラ飛ばして馬づ

土屋:隙あり!必殺、元々酸っぱいし多少腐っててもよく分かんないぜパンチ!

土方:ぐはっ!あんな赤いキムチにやられるなんて・・・ぐふっ・・・

土屋:どうもありがとうございました。



土屋:いやー、ヒーローやってる感を凄い感じるなぁ。

土方:これぞ漫才とヒーローの両立。俺ら今すごいことを成し遂げてるぞ。

土屋:せっかくだし、ヒーローがピンチになるとかやりたいんだけど。

土方:じゃあこういうのでいこう。(土屋に耳打ち)

(2人とも舞台裏へ引っ込む)



土屋:漬物戦隊、塩分過剰摂取ジャー、柴漬けマゼンタだ!

土方:私は漬物怪人、柴漬けピンク怪人だ。

土屋:色の違いが立場の違いだな。お前、ピンクなんてマイナーな色の名前しやがって。

土方:世間的にはマゼンタの方がメジャーでも・・・私はピンクの方が好きだ!

土屋:つ、強い信念・・・!?これはピンチだ!大人気色で絶対的優位なはずのマゼンタが、ピンクに食われる、ピンチだ!!

土方:でも柴漬けの色的にはどっちかっていうとマゼンタなのかな・・・

土屋:・・・!そ、そうだ!柴漬けの色的にはどっちかっていうとマゼンタだろ!いい加減にしろ!
   必殺、柴漬けの色的にはどっちかっていうとマゼンタなのかなパンチ!

土方:ぐはっ!そ、そんな奥の手を持っていたとは・・・ぐふっ・・・

土屋:どうもありがとうございました。



土屋:いやー、見事にピンチを脱出したね。ヒーローの底力見せたね。

土方:完全に漫才だしな。

土屋:他には怪人が実はいいやつだったみたいなのやりたいな。

土方:よし、じゃあ・・・(土屋に耳打ち)

(2人とも舞台裏へ引っ込む)



土屋:漬物戦隊、塩分過剰摂取ジャー、お茶漬けグリーン参上!

土方:私は漬物怪人、お茶漬けミルクティーブラウン怪人だ。よろしく。

土屋:こ、こいつ、お茶漬けにミルクティーを入れてやがる!!邪道だ!!

土方:ま、待ってくれ!俺は・・・いいやつだ!

土屋:そうなのか・・・お前、いいやつだったのか・・・

土方:隙を見せたな、お茶漬けグリーン!必殺、甘ったるいしハーブの風味するし何より色がまずそうパンチ!

土屋:ぐはっ!・・・こ、こいつ、いいやつじゃなかった・・・ぐふっ・・・

土方:こうして地球の平和は守られたのであった。



土屋:これこれ!土方さん、これだよ!やっぱ敵がいいやつだったって話は感動するよな。

土方:涙とよだれが止まらないな。

土屋:次は、味方が1人やられたみたいなやつやりたいな。

土方:よし。(土屋に耳打ち)

(2人とも舞台裏へ引っ込む)



土屋:とうっ!漬物戦隊、塩分過剰摂取ジャー、さん付け丁寧です!

土方:俺様は漬物怪人、様付け丁寧怪人だ。

土屋:様付け丁寧怪人さん、僕さん子供の頃プロ野球選手さんに憧れてたんですよ。活躍してヒーローさんインタビューとか受けたかったんですよ。
   ここでやらせてもらっていいですか?

土方:ふっふっふっ、お前様もこいつ様みたいになりたいのか?

土屋:そ、その人さんは・・・我が塩分過剰摂取ジャーのリーダーさん、片付け大掃除さん!?酷い怪我だ・・・

土方:こいつ様はヒーロー様インタビューにうまく受け答え出来ずにこうなった。お前様もやるんだな!?もう断れはしないぞ!

土屋:くっ・・・う、受けて立ってやる!

土方:放送席放送席!今日のヒーロー様は初回にいきなり9者様連続ホームランを浴びた、さん付け丁寧選手様です!
   あの9連打で試合が決まった訳ですが、9人様お立ち台に上げるのはなんだからということで、
   立役者様である負けチームのあなた様が選出された訳ですが、今のお気持ちはいかがですか?

土屋:こ、心が折れそうだ・・・

土方:相手チームがママ様バレーのチームだったにも関わらず、9連続ホームランを浴びたことについて、どう思いますか?死にたいですか?

土屋:くっ・・・死にたいまでは・・・

土方:死にたいですよね?死にたくならない訳ないですよね?

土屋:し、死にたくない!!

土方:!!・・・死にたくない、だと!?

土屋:隙を見せたな!様付け丁寧怪人!
   これは普段絶対に「さん」付けで人さんを呼ぶ僕さんに、「さん」を付けられないというショックさんを与える必殺さんのやつさんだ!

土方:ぐはっ!さ、さん付け丁寧様にさん付けされないなんてショック様だ・・・死にたい様ぜ・・・ぐふっ・・・様・・・

土屋:こうして地球さんの平和さんは守られたさんなのであったさん。



土屋:いやー、いいね。強敵をやっつけたね。

土方:今時こんな漫才漫才した漫才もないってぐらいの漫才らしさだったな。

土屋:ここまで来たら合体シーンとかやりたいな。ちょうど戦隊も6人出てきたし。

土方:じゃあ手分けして6人を演じるか。

(2人とも舞台裏へ引っ込む)



土屋:ぐっ、なんて強い相手なんだ!皆、合体だ!
   梅干しレッド!

土方:キムチレッド!

土屋:柴漬けマゼンタ!

土方:お茶漬けミルクティー怪人!

土屋:待て!敵さんが混じってるさん!

土方:俺いいやつだから!敵だけど俺、いいやつだから!!

土屋:なんだ、いいやつなのか。

土方:隙を見せたな!必殺、そもそもご飯にミルクティーをかけようと思ったチャレンジャー精神パンチ!

土屋:ぎゃあああ!!いいやつだけどちょっとずるかったあああ!!



土屋:これだよな。この合体のシーンのこのかっこよさな。

土方:これはもうどこからどう見ても完全に漫才だしな。
   あまりの完璧さを妬んで、「漫才じゃない」って言っちゃうやつはいるかもだが。

土屋:いやぁ、役柄とはいえヒーローできて楽しかったよ、土方さん。

土方:何言ってんだよ。俺達だって立派なヒーローじゃねえか。

土屋:え?

土方:漫才が多様化してる現在に正統派漫才で挑み続ける、漫才界のヒーローだ。

土屋:おお!それは胸を張ってヒーローと言えるな!

土方:では正統な漫才らしく、最後はショートコントで終わります。
   ショートコント、「お前を蝋人形にしてやろうか」。

土屋:お前を蝋人形にしてやろうか!?お前を蝋人形にしてやろうかぁぁぁ!!?

土方:人を蝋人形にすることは法律で禁止されてます。

2人:ノーモア蝋人形。
   どうもありがとうございました。

予選総合第17位(準決勝敗退) 茨木からの刺客
審査員
点数
70 47 40 90 90 平均67.40
【審査員コメント】
・お茶漬けミルクティーブラウン怪人が実はいいやつじゃなかったって所が一番面白かったです。
 やっぱり自分ツッコミがいない漫才って凄く好きなんですよ。それをこのコンビは難なくやってくれますから、安心して読めました。
 ただやたらと作中で「漫才らしさ」を主張していたので、それならコントの部分はもっとハチャメチャに崩した方が、より対象的になって面白かったんじゃないかと思います。最近の漫才はハチャメチャになりすぎて、この程度の壊れ具合なら普通に許容できる範囲に入っていると思います。
 それと漬物戦隊の中に漬物以外が混じっているという展開は凄く好きなんですが、さん付け丁寧さんでは読むの急に面倒臭くなって、疲れてしまったので、ここは別の人に変えてほしいです。
  
・コレは字面の組み合わせと瞬間的な応答が面白いハズなんだケド、
 それを楽しむためには正統派漫才やろうって序盤の導入の仕方は結構邪魔じゃないですかね。
 本来は表面的なやり取りだけを楽しめばいいってのがすごく分かりやすい構図を提示できていて、
 怒涛の情報量を律儀に理解・記憶する必要がないと構造上に暗に示せているからこそ、
 読み手が大量のワードを受け入れて面白さを享受できるのがこのユニットの強みだと思うんですが、
 今回は「彼らがいかに漫才らしい漫才と言う題材を使ってくるか?」と言う意識を最初に作ってしまったので、
 読み手はそれを気にして情報を理解・記憶しようとしてしまう。
 この意識誘導が出来上がってしまったのが物凄く痛手だったのではないかと。
 言葉選び自体は面白かったですが、それに集中しづらいカンジになっていたのが残念でした。
  
・前回の試みは非常に面白かったんですけど、今回ははまらなかったですね。
 少し単語に頼りすぎてる感がありました。
 オチは好きですけど。
  
・すげぇ…!
 茨木さんの世界観が浸透してきていて、慣れにも変わりつつあったのですが
 今までの世界観を踏まえたうえで新しい形の漫才を開拓するそのチャレンジ精神が凄いと思います。
 ボケ倒してる割においてけぼり感を感じず、あくまでこれを「漫才の中の漫才」と言い張る二人の様子も面白かったです。
 オチは賛否両論あるかもしれませんが、僕は大好物です。
 ここまで攻撃的に笑わせようとされて、内容が面白ければもちろん面白いですよね。
  
・今回、一番「ブラボー!」って思ったネタはこれでした。シュールにしてエレガント。
 ズレたボケ、ズレたツッコミ。最高でした。オチも好きです。
 正統派漫才であることを押していますが、よく考えたらどう見ても漫才なんですよねぇ…



No.038 俺の塩
ヒーロー
俺:俺です

塩:塩です

俺:俺の塩です

塩:よろしくお願いします

俺:実は隠してたことがあるんだ

塩:何だ

俺:実は俺地球人じゃないんだ

塩:へー

俺:M788星雲から来た宇宙人、俺トラマンなんだ

塩:ふーん

俺:そして外反母趾なんだ

塩:マジで!?

俺:(靴を脱いで)ほら

塩:うわっ!マジだ!外反母趾だ外反母趾!すげえすげえ!

俺:母さんが買ってくる靴がサイズおかしくてさあ、そのまま履いてたらこうなった

塩:本物の外反母趾だ!サイン下さい!(色紙とペンを差し出す)

俺:あいよ(足でペンを持ち色紙に「チャーリー浜」と書く)

塩:すげえ!外反母趾のサインだ!

俺:みんなに自慢するといい

塩:ありがとう、俺トラマン!

俺:あっ、そうだ俺トラマンの話をしようと思ってたんだった

塩:すっかり忘れてたな

俺:実はこの地球を悪の宇宙人が狙ってるんだけどさ

塩:うん

俺:それを守れって上官に言われてさあ

塩:へー

俺:まあその上官ってのが岩崎宏美なんだけどさあ

塩:嘘だろ!?あのシンデレラハネムーンの!?

俺:ほら、これがその証拠(写真を取り出す)

塩:すげー!岩崎宏美のものまねしてるコロッケだ!
  えっ、ちょっ、岩崎宏美のサインってもらえない!?

俺:あるよ(入院してる山中君に宛てられた寄せ書きを取り出す)

塩:ありがとう俺トラマン!

俺:そうそう俺トラマン

塩:こりゃうっかりだ

俺:俺トラマンには必殺技があるんだ

塩:へー(スマホを取り出す)

俺:俺シウム光線っていうんだけど

塩:聞いてる聞いてる(なめこを育てるスマホのアプリやってる)

俺:その光線を受けるとおにぎりになっちゃうんだ

塩:マジで!?(スマホを落とす)

俺:鮭おにぎりになるんだぞ

塩:うーん・・・鮭か・・・

俺:・・・昆布?

塩:昆布ねえ・・・

俺:・・・ツナマヨ?

塩:オーイエス!ツナマヨイズパーフェクツ!

俺:イエスイエス!

塩:ツナマヨイズギャラクシー!ツナマヨイズファンタジー!ツナマヨ!イズ!俺トラマン!

俺:そうだそうだ俺トラマン俺トラマン

塩:すっかり話が脇道にそれちゃったな、何がツナマヨだよふざけんなよ

俺:ちなみに俺トラマンの一番の幸せは子供たちの笑顔とかではなく、怪獣を倒した後に家で食べるティラミスだ!

塩:OLみたいな幸福感だな

俺:自分へのご褒美、大事

塩:ちょっと興味わいてきたな、俺トラマンはどんな敵と戦うんだ?

俺:山中君

塩:いやそれさっきの寄せ書きの子じゃねえか

俺:山中君は五島列島を三島列島にしたり

塩:二島壊滅されてんじゃねえか

俺:四国を三国にしたり

塩:徳島か、徳島だったら特に影響なさそうだから徳島だったらいいのにな

俺:九州を八州にした悪名高い怪人だ

塩:いや、一見するとどっかの県が一個壊滅された印象を受けるけど、
  実際九州は七つの県しかないからただ名前変わっただけのやつじゃねえか

俺:ちなみに俺トラマンとして活動するとホルモンバランスが崩れるから肌荒れが酷いのが悩み

塩:急に中高生女性みたいなこと言いだしやがって

俺:あーやばい、更年期障害で体調が悪くなってきた

塩:思い出したかのようにホルモンバランス崩れやがって

俺:こういう時はツナマヨおにぎり食べてホルモンバランスを整えよう(懐からおにぎりを取り出す)

塩:ひょっとしてだけどそれ俺シウム光線当てた山中君だろ

俺:いや、ローソンで買った

塩:どっひゃー

俺:まあこんな感じで地球を救ってるんだけど、実は怪獣になって地球を壊滅してみたいんだよねえ

塩:使命と欲求がここまで真逆な奴初めて見たわ

俺:ちょっと怪獣やるからお前地球を守るヒーローやってくんねえ?

塩:やんねえよ、自然な形でコント入ろうとするんじゃねえよ

俺:ここが地球か、ちょっと壊滅してみようかな
  カランコロンカラン

塩:どういう思考回路したら地球壊滅させる怪獣の設定でその入りで良いと思えるんだよ

俺:ガオー、怪獣だぞー
  今からこの地球の国立大学だけ壊滅してやるぞー

塩:怪獣のくせに器用すぎるだろ

俺:国立大学をすべて破壊し世界中の知力を下げて馬鹿ばかりにさせてなんやかんやあって滅んでいくのを眺めてやる

塩:大分回りくどいやりかただな、もうそこまでするんだったら自分で壊滅させた方が絶対いいだろ

俺:太平洋に浸かりながら眺めてやる

塩:多分それお前がふやちゃうのが先だからな
  もうやめ、お前はヒーローなんだからおとなしく地球救ってろ

俺:そうだな・・・心を入れ替えてヒーローとしてこのヒーローい地球を救うよ

塩:いやしょうもなっ!いい加減にしろ!

二人:どうも、すみませんでした]

予選総合第29位(3回戦敗退) 俺の塩
審査員
点数
36 68 24 70 65 平均52.60
【審査員コメント】
・なんで途中でテンション下がっちゃったんですか。後半凄く普通の漫才になってましたよ。
 いや、前半の外反母趾とかに食いつく流れは凄く良かったんですよ。そこでせっかく世界観を作ったのに、後半は全てないがしろにしています。
 どうして塩さんは急に真面目モードに入っちゃったんですか。「急に中高生女性みたいなこと言いだしやがって」とか普通のツッコミすぎて逆に腰が抜けました。
 せっかく俺の塩なんですから、俺の塩の世界観でしかできない漫才をしてくださいよ。俺の塩以外の誰かがやってもおかしくない漫才を俺の塩がやったとしても、面白くないです。
 新しい感触から従来の漫才のスタイルに戻るなんて、退化という他ありません。最後まで前半の世界観を貫き通してください。
 ただこのヒーローい地球は不覚にも吹き出してしまいました。
  
・徳島をないがしろにするって妙な部分で私とかぶりましたね!
 まぁそれは兎も角、序盤に字面の面白さがメインの単語と読み心地のイイ言い回しによる応答が配置出来てるのが好印象。
 中盤は徐々に応答の比重をちゃんと上げられるところでが上げてあって、バリエーション的にも充足させられてます。
 でも終盤は応答と話の展開内容の比重を上げ過ぎて理解に必要な労力が跳ね上がり、
 字面の満足感が減って理解のための労力が相対的に目立ち読み進めづらくなったカンジがあります。
 最初の惹き込みが良かっただけに最後が字面的にこじんまりしてしまったのが残念でした。
  
・今回はちょっと狙い過ぎかな……
 「(なめこを育てるスマホのアプリやってる)」とかちょっとくどいですね
 日本列島のくだりも、「ボケています」って感じが前面に押し出され過ぎてて、悪い意味で俺の塩らしからぬネタでした。
  
・相変わらずの面白さですな。
 淡々とした中に衝撃を強く与えるくだりが無かったのは少々残念に感じましたが
 話が俺トラマンに戻って来た時の冷静な二人であったり、思い出したようにホルモンバランスがくずれたりなど凄く笑いました。
  
・面白要素はたくさんあったのですが、イマイチまとまりきっていなかったのが惜しいです。
 前半は、前回までとは違う形式ながらも「THE・俺の塩」って感じで楽しみやすかったのですが、
 後半、塩さんが妙に現実的なツッコミをしだしたのがやはり違和感でした。
 
 ただ終盤、
 「ローソンで買った→どっひゃー」
 「ここが地球か、ちょっと壊滅してみようかな カランコロンカラン→どういう思考回路したら…」
 あたりのボケ・ツッコミは面白かったです。
 
 ちなみに「九州」は、旧国名基準で「豊前・豊後・筑前・筑後・肥前・肥後・日向・大隈・薩摩」の9つの国がありました。



No.039 ハーベストムーン
ひとりじゃない
アイ:はいどうも!ハーベストムーンです!今日も朗らかに頑張って漫才をやりたいと思います!

ユウ:早速で恐縮だけどさ、「孤独のグルメ」って漫画ご存知?

アイ:うん、知ってる。中年男性がモノローグを交えてご飯を食べるお話でしょ?

   フレーズのチョイスとか言い回しとか凝ってたり独特の設定や空気感が面白いから好きだよ。

ユウ:アタシも結構好きなんだけど、自分に置き換えたら一人で淡々と食べるのって結構寂しいと思わない?

   だから孤独のグルメに対抗した作品をちょっとここで披露しようかなと。名付けて『孤独なスメル』って言うんだけど。  

アイ:タイトルのセンスッ!!エロパロ同人誌じゃあるまいし!!この段階で既に嫌な予感しかしないよ!!

   …………まあ中身が気になるからお聞かせ願おうじゃないの。

ユウ:では不肖ながら読ませて戴きます。
 
   「私の名前は『藤堂かりん』。花も恥じらう女子大生。」

アイ:主人公、若い女の人なんだね。花も恥じらうって表現はダサいのはさて置き。

ユウ:「大学に入って早2年、サークルやゼミに入らなかった所為で友達もおらず、いつも一人で昼食を取っている。」

アイ:うわあ、本家に負けない位の寂しさがプンプンと漂うよ……。

ユウ:「でも誰にも干渉されず静かに過ごすのは好きだから、別に構わないの。さて今日は何を食べようかしら。」

アイ:意外とポジティブなんだね。でも年頃の女の子がそう考えるのはやっぱり寂しいよ。

ユウ:「学食で目に付いたキーマカレーを頼んで、今日は何かデザートも食べたい気分だからチョコムースとレモネードを頼んだ。

    そして私はいつものお気に入りの場所で食事をするの。学食は騒がしいしいつも混んでるから落ち着いて食べられないからね。」

アイ:案外と贅沢に行動してるね。

ユウ:「――――――よし、誰もいないわね。誰かに付けられる訳でも無く、私は周りを気にしていつもの個室へと入った。

    そう、3号棟キャンパス、4階の一番奥のトイレに。」

アイ:便所飯!?

   えーっ!?スメルってそう云う事だったの!?こっから先の話聴く気失せたよ……。

ユウ:「この場所に辿り着くには色々と紆余曲折があった。

    入学初日から色々リサーチし、実際に試してみたが一番しっくりくる所を見付けるのに一年位掛かった。」

アイ:スタートダッシュの早さ!!そんで何その無駄に涙ぐましい努力!?

ユウ:「個室は一つしかなく若干手狭ではあるが、洗面所の窓から見える街の風景と木々の爽やかなコントラストはこの大学で一番の絶景だ。」

アイ:それ個室に入っちゃえば関係無いと思うんだよね!?そんでトイレから見える景色が大学一って!!

ユウ:「さてお腹もペコペコだし美味しくご飯を食べよう。しかし何故だろう、トイレの個室に入った瞬間途轍もない不快感に襲われた。」

アイ:メニューのチョイスと場所によるマッチングだよ!!だって連想しちゃうんだもん!!

ユウ:「おかしい。トイレの匂いは高校二年で慣れたハズなのに。」

アイ:大学入学前からやってたの!?まああの熱の入ったリサーチだとそうだろうとは思ったけど。そんで、かりんは想像力足りなさ過ぎ。

ユウ:「(ドンドンドン!!ドンドンドン!!)

    折角の食事時に全く無粋なノック。一人でのびのびと食べてるのだから邪魔をしないで欲しい。」

アイ:邪魔してるのは自分でしょうが!!正しい用途で使おうとしている人の!!そんで結局そんなメニューで美味しく頂いたんだ……。

ユウ:「毎日トイレの個室で食べている所為か、付いたあだ名は『かりんとう』」

アイ:本名の有効活用なのに、連想しちゃうから悪意にしか感じられないっ!!そんでやはり周囲はかりんの便所飯について知っていた模様。

ユウ:「キャンパスメイトからは食事の後、『今日のかりんとう、どう!?かりんとう、どうだった!?』といつも言われる。」

アイ:からかい方!!小学校低学年じゃあるまいし!!まあ周囲がそんな感じだから便所飯になったのかな……。

ユウ:「そんな単調なのに刺激的な私の日常だったが、ある日転機が訪れた。」

アイ:一見矛盾しているようだけどあながち間違ってない所が。そんで転機って?

ユウ:「この日のメニューはフォワグラのソテーのトリュフソース・キャビア添えとツバメの巣のスープ、デザートはレアチーズケーキ。」

アイ:やたらと豪華だけど食べる場所が場所だからなあ……。

ユウ:「いつものように3号棟の4階一番奥のトイレに行くと、既に個室は閉まったままだった。

    ―――――全く、人のささやかな幸せを邪魔しないで欲しいものだ。このクソったれが。」

アイ:正しい使い方をしている人に対して何たる言い草!!そんで女子に相応しくない表現やめいっ!!

ユウ:「今更他のトイレには行く気が起きない。『経済学部の静かな虎』と呼ばれた私がトイレで食事してるなんて知ったらどんなことになるだろうか。」

アイ:絶対そんな通り名じゃなかったよね!?自分の名前有効活用されてイジられてたくせに!最早時既に遅しだよ。

ユウ:「―――――仕方がない、こういう時はいつもの追い出し作戦しかない。

    私は入口付近にある用具入れからホースを取り出すと、蛇口に接続し、個室に入っているであろう人物に向け、蛇口を捻って水を掛けた。」

アイ:今更だけどとんでもなく性格が悪いっ!!便所飯も自業自得な気がするよ。

ユウ:「『ギャアアアアァァァァァァーーーー!!!ちょっと、何コレ!?』

    個室に入っていた人物は突然の出来事に驚き、そして慌てて個室から飛び出した。計画通り。」

アイ:折角落ち着いてしてた所だったのに可哀想に……。

ユウ:「『折角学内中の女子トイレに仕掛けたカメラを回収している最中に誰!?』

     飛び出してきた人物はそう叫びながら私に詰め寄ってきました。

アイ:

ユウ:「――――――ヤバい、どうしよう。カメラの弁償はどうしたらいいのかなんて考えてたら突然、

    『あれ、アンタ…?ひょっとして、経済学部の静かな虎、かりんとうじゃないの?いつも見てるよ。』と笑顔で話し掛けてきた。」

アイ:やっぱり学内じゃ有名なんだね!そんで盗撮魔いつもって事は常習犯だったんだね!?後弁償しなくて良いから。

ユウ:「ビデオカメラを仕舞う彼女の名前は『斉藤さつき』。通称『文学部の歩く監視カメラ』」

アイ:盗撮魔女の子!?一見ごくごく普通の名前なのに盗撮が含まれてる!!そんでそちらも有名人なんだね!!

ユウ:「『いつもここで美味しそうにご飯食べてる姿見てると私、惚れ惚れとしちゃうわぁ〜。好きよ。』

    さつきは熱く私にアプローチをしてきた。」

アイ:世界で1、2を争うほど嬉しくない恋の落ち方ッ!!どんだけ特殊な性癖をお持ちなんだか!!

ユウ:「私はそんなさつきの事が好きになってしまった。」

アイ:ウソォ!?お願い考え直して!!相手は色々と問題ありだよ!!

ユウ:そうかな?サブカルチャーが一定の地位を獲得した今、百合なんて珍しくも何ともないじゃん。

   それに女子トイレに侵入する男なんて最低じゃん。

アイ:アタシが言及してるのは百合じゃないんだよね!!男女問わず盗撮するのに問題があるんだよね!!

ユウ:「どうやら私と同じ同性愛者に出会えるとは思わなかった。中二の時に周囲にバレてから心を閉ざし、いつもトイレでご飯を食べていた私は救われた気がした。」

アイ:原因それだったの!?期間も地味に長いし!!かりんの場合もっと他にも問題あったけども……。

ユウ:「そんなこんなで何度かさつきにトイレで遭遇する内に、意気投合した私達は付き合うことになった。」

アイ:世にもビックリな変態バカップルが生まれたよ………。そんでさつきはいい加減足を洗いなよ。

ユウ:「晴れて恋人になった私達はディズニーランドのトイレに出掛けた。」

アイ:デートの意味全くない!!とどのつまりはトイレかい!!

ユウ:「本当はアトラクションに乗ろうと思ったけど、ゴールデンウィークだったからどこも長い行列が出来てた。

    仕方ないのでトイレに籠ってたけど、トイレに入場するまで二時間待たされたのも良い思い出だ。」

アイ:確かにあそこは結構待たされるけどさ!!何が楽しいんだか!?

ユウ:「でも私は美味しいご飯が一杯食べられたし、さつきはそんな私をビデオに撮ったり、『大学と違う獲物が録れて楽しい』とご満悦だ。」

アイ:どこ行っても目的はそれかい!!そんでさつきは彼女いるのに悪い癖が直ってない!!

ユウ:「また夏休みには魚や甲殻類の自然のトイレ、爬虫類やサルやクマ等の自然のトイレにも行った。」

アイ:……ひょっとして海や山の事かな!?その捉え方は斬新だよ!!

ユウ:「人が結構いたけど、最近のトイレは中国の田舎のトイレ並みに開放的なんだなと納得したから平気だった。」

アイ:そもそも動物たちにとってはトイレって概念は無いからね!!確かにあちらの国のトイレは仕切り無いけども!!

ユウ:「はしゃぐ私を尻目にさつきは水着の女性や野生生物の隠し撮りに夢中だった。」

アイ:折角外に出られたんだからもっと楽しもうよ!!野生生物に興味が移ったって事は良い傾向なんだろうか……?

ユウ:「そんなこんなで色々な意味で臭い仲になった二人。

    季節は流れ、私達は大学を卒業し、付き合いだしてから五年が経過したある日、私はさつきに高層ビルの最上階にある高級レストランに呼び出された。」

アイ:臭い仲とかやかましいことこの上なし!!良くこんな二人が五年も持ったもんだよ!そんでコレはプロポーズの定番の流れかな?

ユウ:「『さつき:急に呼び出してゴメン、待ってたわよ。ささ座って座って。』

    彼女に促されるまま多目的トイレの便器の前に座る私。」

アイ:ここでもまたトイレ!?窓ないから折角の夜景とか雰囲気とか台無しだよ!!

ユウ:「『かりん:お待たせお待たせ。あれ?どうしたの全身ビショビショだけど?』

    『さつき:雰囲気を出そうと思ってロウソクを点けたんだけど、スプリンクラーが作動しちゃってさ。お陰で仕掛けたカメラも壊れちゃったわ。』」

アイ:トイレで火なんか点けるからだよ!!そんでこんな時にまでさつきはもう!!

ユウ:「そんな事はさて置き、私達は店員に睨まれつつも運ばれてくる料理に舌鼓を打った。」

アイ:良く追い出されなかったモンだね!!ここまで神経が図太い百合カップルも世界広しとは云え、きっとこの二人だけだろうね。

ユウ:「便器にアツアツのチーズを流し込んだチーズフォンデュ、ウォシュレットの水を有効活用した鯉の洗い、便座の熱を利用した焼肉……、

    どれも美味しくて私達は箸が止まらなかった。」

アイ:聞かされてるこっちはただただ食欲が失せるばかりだよ!!何有効活用してるさ!?どうでも良いけどメニューのジャンルに節操が無いって。

ユウ:「メインディッシュを平らげ、タンクの中から節水の為に入ってたワインを飲みながら、彼女は真剣な面持ちで私を見つめた。」

アイ:そんな所にしまってたワイン飲まないで!!でもいよいよプロポーズだね?

ユウ:「さつきはパチンと指を鳴らすと、店員が舌打ちをしながらケーキを運んできた。」

アイ:おおっ、サプライズだね。そんでもって店員さんはやっぱり納得していない模様。

ユウ:「『さつき:お誕生日おめでとう。』

    彼女は『ニカッ』っと私に微笑んだ。しかしケーキに刺さったロウソクのせいでスプリンクラーが作動し、それどころでは無かった。」

アイ:学習能力ゼロ!!まあこの二人の辞書には「懲りる」って文字は絶対載ってなさそうだけど。

ユウ:「『さつき:日本では同性結婚は認められてないけど、私と結婚しよう。』

    大量の水が降ってきてパニックになる私を尻目にさつきは私に指輪を差し出した。」

アイ:タイミング考えて!?台無しだから!まあ変態カップルとは云えこれでめでたしめでたしなのかな?

ユウ:「しかし慌てふためく私はそれどころではなく、彼女の差し出した指輪を受け取り損ねてしまい便器に流してしまった。」

アイ:凄く勿体無い!!

ユウ:「仕方ないので余った細いイカリングを私の薬指に填めるさつき。私はそれに応えた。」

アイ:発想が小学生!!やっぱり考え直した方が良いんじゃないかな!?

ユウ:「それから私達は幸せに暮らした。しかしそんな幸せは長くは続かなかった。

    ある日近所のスーパーでカメラを回収している所を通報され、さつきは逮捕された。

    指輪は水に流したけれど、過去の過ちは水に流せなかった。」

アイ:上手くないよ!?良く今までバレなかったモンだよ。

ユウ:「彼女は警察に連行され、現在は拘置所で便所飯をしながら裁かれる時を待っている。」

アイ:まあ拘置所って本で読んだことあるけど、部屋とトイレ一体型になってるけどさ……。

ユウ:「私は彼女の帰りを一人寂しく家のトイレでご飯を食べながら呟いた。

    『コレが本当の孤独の“住める”か……。』」

アイ:うっさいうっさい!!タイトルがダブルミーニングになってたとかどうでも良いんだよ!!

   もう全然良くないよこの話!!孤独のグルメ全然関係ないしさ!

ユウ:そう?でもまあコレの続編も考えてあるんだよ。

   さつきが刑務所から出所するまでかりんが彼女の帰りを待ちつつ、一人で食事作って食べる話なんだけどさ、

   名付けて、『お花摘みのズボラ飯』って言うんだけど……。

アイ:いやさっきと殆ど一緒っ!!もういい加減にして!!

二人:どうもすいませんでした!!

予選総合第38位(2回戦敗退) ハーベストムーン
審査員
点数
30 38 33 62 61 平均44.80
【審査員コメント】
・料理を持ってきて舌打ちをする店員がすげえ面白かったです。
 わりと漫才の形は綺麗に整っているのになんでこんな設定選んじゃったんですか(笑)悪臭が漂ってくるようなドロドロとした空気に息が詰まりそうになりました。
 ただストーリーの中で疑問に思った所も何箇所か湧きました。まずどうも二人が付き合う理由がどうも理解ができないのです。
 かりんさんはただの同性愛者だから良いとして、本来さつきさんは学校中の便器に隠しカメラを設置するくらい女の子の排泄シーンに興奮を覚える人間だったハズです。
 だから、便器に股がっても排泄物を垂れ流さずに黙々と弁当を食べるかりんさんという存在は、本来彼女にとっては邪魔で仕方がない存在であると自分は思います。
 それに女の子の排泄物を見て興奮する人間が、トイレで飯を食べる女の子に同じ感覚で惚れ込むというのは微妙に結びつかないと思います。入れると出すでは、かなり印象が違いますし。
 どうもさつきさんという人間を考えると、あっさりかりんさんみたいな人間と恋仲になるというのは随分納得しづらいです。
 なので「便所であえて食事を取る人間は初めて見ました!カッコいい!」みたいな、かりんさんに惚れたことについてもっと詳しく説明してほしかったです。
 それと何で付き合った後も便所にいるんですか。二人の利害が丸っきり一致していないと思います。
 かりんさんが便所飯をする理由は「一緒に弁当を食べる友達がいないから」であって、「何があっても私は便所飯をする」というポリシーがあってのことじゃ無かったじゃないですか。
 ならどうしてさつきさんという一緒に弁当を食べる相手が見つかった瞬間に、便所から出ないんですか。そこまで便所に執着する意味が分からなかったです。さつきさんに至っては一言も「便所で飯が食べたい」とは言ってないですし。
 なんだか百合展開に持っていこうと先走りすぎて、色々重要なシーンをすっ飛ばしてるような気がします。
 もっと構成を見直してください。ただでさえぶっ飛んだお話なんですから、話の芯までぶっ飛ばしては、ただの支離滅裂な話になってしまいます。どうか勢いだけで書かないでください。
 
 それと便器に料理盛りまでいったんですから、もっと汚いことをどんどんネタに組み込んで欲しかったですね。
 お互いの排泄物が飛び交うような、それでいて確かな愛を感じるような、そんなとことんアブノーマルなラヴシーンを作成してみてください。
  
・まぁ流石に汚いネタですからそれ自体はそもそも結構なマイナス要因で、
 だからそれをちゃんと払拭するための対策は欲しかったです。 
 かりんのキャラ設定も、本人の性質より立場の方ばかり目立ってしまってあまり惹き込まれないので、
 印象はほとんどマイナスにマイナスを積み立てていくような形になってしまってました。
 具体的に中身を見ても例えば「一人で食べるのが寂しいから対抗作品を作る」って言ってるのに、
 タイトルに思いっきり「孤独の」が残るのとかすごく違和感。
 たとえ後々に回収する形で説明を施すのだとしても序盤で発生させた違和感はそれまで、
 読む上での壁となって惹き込みの邪魔になってしまいます。
 話の主軸もイマイチしっかりしていないからボケが話の自由度の中に埋もれてちゃんと威力を発揮できていないと思いますし。
 「どこに進むべき話なのか」がキチンと観えてこないと、「話が変な方向に進む要素」と言うボケはそもそも発動しませんから。
 ボケが本来の力を出せる下地作りをもうちょい詰めてもらえるとイイネタになるんじゃないかなぁという感じでした。
  
・なんだろうなぁ。ボケがボケじゃないんですよね。ボケが弱い、の方が正しいのか。
 構成うんぬんの話は云うことないんですけど、肝心のボケが。
 ストーリー物は特にボケがぶっ壊れてないとお話にならないんですが、
 これはその辺の全く売れてないラブコメのレベルでした。
 唯一の救いは、スプリンクラーが2回作動したところです。
 
  
・女性二人で便所飯の話ってなんか不思議な気持ちになりますね。
 まぁ、それはさておき。流れとボケが綺麗に作られていて(内容は汚いですけども)
 分かり易いネタだったとおもいます。
 2回目のスプリンクラー作動など構成的に上手い部分もあって比較的レベルの高いネタだと思います。
  
・MM-1に届いた届いたネタは、基本的にはまず自室などで落ち着いてPCまたはスマホで確認するんですよ。初見の段階ですね。
 ですが、ですが。このネタに限っては偶然にも!ホントに偶然にも!
 
 
 会社のトイレの個室で見ました。
 
 
 この偶然をどう処理してくれるんですか!!…いや、すみません取り乱しました。
 ネタの方ですが、「一夜の幻影」の方に比べれば全体的にインパクトがあるフレーズが多く、題材のアレさの割には楽しみやすかったです。
 ただ設定が作り込まれている割に、押しが弱く感じる部分がありました。もっと気軽に面白い感じのボケが出てくるとより良くなりそうなのですが…



No.040 月影連盟
或いは抗争の渦中
海堂:突然ですが私海堂清志、この度指定暴力団二代目道川組の正式な組員となりました。よろしくお願いします

咲野:…………!?

海堂:先代の道川親分とは懇意にさせてもらっていたんですが、彼が病に倒れ、
   息子である道川文雄さんが二代目を襲名したことで、正式な盃をいただきました

咲野:うぉい!! 何をこんな場でそんなカミングアウトしてくれてんの!? 俺聞いてないよそれ!?

海堂:われなんじゃゴラァ!!

咲野:突然ステレオタイプのヤクザになるなよ!! とにかく詳しく話してくれよ!!

海堂:いやいや、ことの経緯は今言った通りだよ。
   道川親分とは昔サウナで仲良くなってさ、気の良いおっちゃんだと思ってたら組を抱える親分さんだったってだけの話
   で、色々と話が合ったから深く付き合うようになっていったんだよ

咲野:なるほどな……しかし何で俺にもっと早く言ってくれなかったんだよ

海堂:いや、咲野には悪いと思ってるよ。ただ俺の中で、親分と知り合いになった時から演じたかった一つのビジョンがあったんだな
   道川親分が敵対する組の刺客に暗殺されて、俺は制止する幹部を退けて無謀にもたった一人で先方に乗り込んでいく
   するとそこには道川組の古参幹部が。なぜあんたが!? 裏切り者を前にして、俺は親分の敵も取れずに拷問部屋に連れて行かれる……
   嗚呼咲野、お前には結局俺の正体を伝えることができなかった、嗚呼咲野、嗚呼咲野ぉぉ…………

咲野:うぅぅ、海堂、お前ってやつはぁ、とはならねぇよ!!
   お前が映画みたいな経緯で殺られたことよりも闇落ちしてた事実のほうが衝撃だわ!!

海堂:その後で、きっちりお前には説明しようと思ってたんだよ

咲野:お前死んじゃってるじゃん!! 深夜枕元に現れて「実はな」とかやめてくれよ!?

海堂:まぁそんなわけで、ヤクザにはなったが、漫才は続けるつもりじゃけぇ、御一統さん共々よろしゅう頼んます

咲野:不安しか湧いてこねぇよ!! いきなり広島ヤクザになった相方をどう捌けばいいの!?

海堂:心配ないよ、道川組っていうのはインテリ系の組だからさ
   幹部の皆さんも穏やかな人たちだし、地元の警察からも良く思われてるらしいよ

咲野:……まぁ、それなら多少は安心か。
   ところで、何でこの場で俺に告白する気になったんだ?

海堂:実は今回、3丁目の夏山会、5丁目の草本組と戦争することになったんだ

咲野:お前ちょっとは自分の発言に責任持てよ!! インテリ系の穏やかな組じゃなかったの!?

海堂:それで何と俺が参謀に大抜擢されてさ、組の陣頭指揮を取ることになったの

咲野:異例とか言うレベルじゃねぇぞそれ!! ルーキーが先発するのとはわけが違うんだぞ!?

海堂:それでお前にも意見を聞きたいなぁと思ってさ。どうすれば、あの大きな2つの組を潰せるか

咲野:夢を大きく持ちすぎだよ!! 新入りの若衆とその相方の堅気に潰される組織、なんだそれ!!

海堂:ヤクザになる前から、俺は色んな組の情報を持ってたからな。そこを買われたんだ

咲野:……あぁ、確かにやたらとヤクザやマフィアについて博識だったもんな……
   ならまず、何でそんな戦争になったのかだけでも教えてくれよ

海堂:いいよ。まず、発端は3丁目の夏山会会長、キリヤ・マガパール・ニョッキンポが大嵐の中マジックの練習をしていたところから始まる
   ここまでは良いな?

咲野:さっぱりよろしくねぇな!! 今の一文でツッコミポイント3つくらいあったぞ!?

海堂:夏山会は代々、マジックが人一倍大好きな外国人が会長になるっていう伝統を持ってるんだよ

咲野:ならもう母国帰ってマジックやってろよ!!

海堂:続けるぞ? するとそこへ、うちの2代目道川組長が現れる
   「へいへいヨーロピアンヤクザ、嵐の中手品遊びとは、夏山会もいよいよ頭がファッキンだな」
   「オーマイゴー! 伝統を理解できないサウナ野郎はブチコロスシカナイネー!!」
   因みに、うちの組長は代々サウナを8時間我慢するっていう伝統を持ってるんだ

咲野:お前んとこも変な伝統持ってんの!? っていうかそれ、ヤクザの親分同士の言い争いに見えねぇわ……

海堂:8時間なんて、さすが組長はレベルが違うよな。若頭とか舎弟クラスでも、7時間46分が限界なんだぜ?

咲野:知らねぇよ道川組サウナあるあるは!! しかもそこまでいったならあと14分頑張れよ!!

海堂:で、嵐の中、お互いの伝統を批判しあっててさ、遂にキリヤがぶち切れて宣戦布告
   うちの道川組長もそれを受けて、お互い相手の出方を見て緊迫している時に、5丁目の草本組がこの事を知って、
   これを機に対立してた2つの組を一気に潰してしまおうと介入してきたと、こういうわけさ。言わば三すくみの戦いだな

咲野:ほー、なるほどな……
   3つの組の勢力はどんな感じなの? 傘下とか同盟とか、色々あるんでしょ?

海堂:その通り。まずは夏山会だけど、これは凄いぞ?
   会長のキリヤを始め、ありとあらゆる国の天才マジシャンが集まってるんだ

咲野:ならそれもはや世界マジシャン協会じゃないの!? 本当にヤクザなの!?

海堂:れっきとしたヤクザだよ。みんな一芸を持ってる個性派なんだ。
   相談役のミャルコビッチはパンチパーマから鳩を出すし、舎弟頭のポンチャロフスキーは切り落とした小指を生やすし……

咲野:やっぱそれマジシャンだよ!! ヤクザな風貌のマジシャンが集まってるだけだよそれ!!

海堂:若頭のポチョムキンなんてサングラスにハンカチをかぶせるとホーミングミサイルになって出てくるんだぜ!?

咲野:だから知らねぇよ夏山会におけるマジックあるあるは!! 何ちょっと興奮してんだよ!

海堂:因みに会長のキリヤは、口から万国旗を出すことができるぞ!

咲野:会長しょっぼいな!! それ東急ハンズで2000円くらいで買えるやつじゃねぇか!!

海堂:これが3丁目の夏山会の実力だ。戦いただろ?

咲野:戦かねぇよ!! 恐れる要素皆無じゃねぇか!! 強いて挙げるならポチョムキンのホーミングミサイルが怖いくらいだよ!!

海堂:次に、介入してきた草本組なんだけど、これもなかなか曲者が揃ってるぞ?

咲野:お前が恐れ戦いた夏山会がこのざまなんだから、全然期待できないな……

海堂:まず組長の座には、戦後最大の勢力を誇った川里組の舎弟頭、大門豪士が就いている。
   以下、連続ヤクザ殺しの野村狂司郎、マル暴本部長上がりの衣笠敏郎、元右翼連合総隊長の島木清十郎……

咲野:!?

海堂:相談役には、1970年代全共闘の筆頭だった長松道三、
   他にも国会議員狙撃事件の国司剛太郎、知事暗殺未遂事件の桑原兆児などなど……

咲野:強そうなの揃い踏みじゃねぇか!! なんでそんなのがこんな小っこい町に拠点置いてるの!?

海堂:最近ではシチリア、ロシア、アルバニア、メキシコ、コロンビアのマフィアとも同盟を結んだらしいけど、外国人に頼るなんて高が知れてるよな〜

咲野:世界恐ろしいマフィアランキングトップ5じゃねぇか!! 「曲者が揃ってる」のレベルじゃねぇぞ!?
   おい海堂、悪いこと言わないから草本組とか言うのと関わるのはやめたほうがいいぞ!
   前にドキュメンタリーで見たんだけど、ロシアとかメキシコのマフィアって残忍度のレベルが違うぞ!!
   若い女性を平気で拷問したり、首斬り落として学校前に埋めたりするやつらだからな、何してくるか分かんねぇぞ!!
   
海堂:うん

咲野:何でそんな飄々としてられんの!? お前の中の危機感とか恐怖心って歪みまくってるの!?

海堂:いいか咲野? 冷静になってよく考えろよ、
   いくら過去の経歴が凄かったところで、草本組の連中はサウナに8時間も入れないし、マジックもできない

咲野:そこに基準を置いちゃうからだろうが!! 客観的に見ると天と地の差だぞ!?

海堂:サウナ対決に持ち込めば俺たちに勝機があるだろうが!

咲野:サウナごとふっ飛ばされて終いだろうが!! そもそもサウナ対決に持ち込む意味が分からんわ!!

海堂:とにかく! 俺たち道川組の勢力を聞けば、草本組なんか屁でもないことがよく分かるから

咲野:どうせ大したことないんだろ、お前が参謀に抜擢されちゃうくらいなんだから……

海堂:まずは道川組長。年齢は50を超えてるが、サウナ耐久8時間12分の記録保持者だ
   次に若頭の斎藤。彼は7時間46分。舎弟の堂本は7時間35分が限界だ

咲野:耐久時間をステータスみたいに紹介すんのやめろ!! 大して凄さが伝わらんわ!!

海堂:幹部連中は凄いぞ? 西本は猟銃免許持ってる、塚原はナイフの達人、浦上は拷問のスペシャリスト……

咲野:……まぁ、やっと戦闘要員が出てきた感じだな

海堂:本田は筋肉が凄い、熊田は靴が尖がってる、名取は関節がめちゃくちゃ曲がる……

咲野:……

海堂:神原はでかいバイクに乗ってる、能見はウォッカを水みたいに飲む、森下はボーリングのスコア245……

咲野:ちょっと……

海堂:古賀は連絡網回すのが早い、畑山はトイレットペーパーが無くなったらすぐ補充する、ムバラクは雨が降るまで雨乞いを踊り続ける……

咲野:ちょいちょいちょい!!

海堂:田中はお父さんが公認会計士……

咲野:それもう本人関係ねぇじゃん!! いやちょっと待って、色々とおかしくない!? 何その大学の友達みたいな面々!!

海堂:その通り、大学の友達だよ! 我らが「サウナ愛好会」の面々をまとめて組に入れたんだ!

咲野:過剰な自信の理由はそれかー!! ってかそんな渋い愛好会入ってたのかよ!!

海堂:道川組も人手不足でさ、たまたま俺がサウナ愛好会の部長やってたって聞くと親分も目の色変えちゃって、当時の部員を全員大抜擢!

咲野:お前部長だったの!? 猫の手も借りたいとはこの事かよ!! 

海堂:因みにお前が一番掘り下げたいであろうムバラクの情報だけど、彼は「よっ、大統領!」って言われると人一倍ぶち切れるよ

咲野:全然要らんわその情報!! それよりもそんな大所帯が入って幹部連中は何も言わなかったのかよ……

海堂:最初の会合は勿論サウナでさ、お互いに初々しくて楽しかったな。
   「えっと、どちらから……」「あっ、僕サウナ愛好会の」「あぁ、なるほど、聞いてますよ」
   「そちらは?」「私は古参幹部の西本で……」「あぁ、今日はどうもよろしくお願いします」みたいな

咲野:就活生のグループディスカッションかよ!! そんなヤクザの会合聞いたことないわ!!

海堂:会合の争点は勿論いかなる方法で戦争を申し込むかで、8時間に及ぶ熱い議論の結果、サウナ対決と言うことに落ち着いたよ

咲野:そらそうなるわな!! サウナしか取り柄がないんだもの!! むしろ8時間も費やす意味が分からんわ、組長以外瀕死だろそれ!!

海堂:でも問題は、夏山会と草本組がサウナ対決に合意してくれるかってとこなんだよなぁ……

咲野:してくれるわけねぇだろ!! もはや近隣ヤクザ同士の娯楽会じゃねぇか!!

海堂:(プルルルルル) はいもしもし? うん、大丈夫。え? マジで? うん、うん
   それで? はぁ〜、ってことは、うん? なるほど、了解、うん、じゃぁまた!(ピッ)
   咲野、朗報が入った!

咲野:何だよ、まさか夏山会と草本組がサウナ対決に合意したんじゃないだろうな

海堂:そのまさかだよ! 実は県警のマル暴に我らがサウナ愛好会のOBがいてさ、
   今回の抗争に介入するつもりだったらしいんだけど、もしもサウナ対決にするなら大目に見るって許可をもらったの!

咲野:県警ぐるみで馬鹿なの!? 何なの!? サウナ愛好会の関係者を皆殺しにすれば済む話なの!?

海堂:それで道川組長が夏山会と草本組に連絡取って交渉した結果、
   夏山会は「ジャパニーズサウナニ興味アルネ〜」、
   草本組は「たまにはサウナってのも悪くねぇなぁ」って理由で合意を貰ったんだって!

咲野:完全に社員旅行のノリじゃねぇか!! 夏山会に到ってはただの文化交流だし!!

海堂:ついでに県警にもサウナ好きがたくさんいるらしくて、俺たちと一緒に一汗かきに来るらしい

咲野:大団円の宴会かよ!! ははぁ、警察が道川組に好印象だった理由はそれか……

海堂:ふふふ、これで相手が油断しているところを道川組総出で襲いかかって、臓器を海外に流してガッポガッポ……

咲野:お前結構えげつないこと考えてんな!? てっきりサウナ対決に浮かれてると思ってたわ!

海堂:(プルルルルル) はいもしもし? うん、うん、えっ、おいおいマジかよ……
   はぁ…… うん、いや、俺から伝えとくよ、はい、了解……(ピッ)
   咲野、悲報だ……

咲野:どうしたんだよ。今回の対決が取りやめになったとか?

海堂:いいや、うちのムバラクが実はマジックの大ファンだったことが判明したらしく、夏山会にヘッドハンティングされたらしい……

咲野:大して影響ねぇだろうが!! 一人くらいくれちまえよこの際!!

海堂:バカ野郎!! ムバラクは新入りにしてサウナ耐久時間7時間29分の大型ルーキーで次期組長候補なんだぞ!?

咲野:まずはその襲名システムを何とかしろよ!! もうええわ!!

予選総合第14位(準決勝敗退) 月影連盟
審査員
点数
81  8 98 88 平均68.75
【審査員コメント】
・会長のキリヤが口から万国旗を出す姿がメッチャ面白かったです。
 重厚で完成された物語に魅了されました。ただちょっとサウナサウナ言いすぎて飽きてしまったので、ボケのバランスを少し整えてみると良いと思います。
  
・この漫才の中における2人のパーソナリティも浸透していないうちから暴力団に入った所で、
 状況の落差が認識できないから面白さは発生しないです。
 唐突な入りと言うのはそもそも、外見的な意味ではインパクトを出せてその方向には惹き込めますが、
 内容的な意味では置いてけぼり感を作り惹き込みを遠ざける両刃の剣。
 前述の理由で印象・字面に落差が発生せず、内容的にもまだ跳ねる段階ではなく置いてけぼりになるだけだったので、
 今回に関してはデメリットの方が目立っていたように思います。
 だからあんな唐突な導入をわざわざ採用しても置いてけぼりにする可能性が高くなるだけで、
 雰囲気的なデメリットが全体に響き続けていましたのでどちらかと言うとマイナスだったんじゃないかと。
 また「暴力団」という設定自体そもそも若干のえげつなさを持っている題材なので、
 あらかじめ素のキャラクターを好印象持たれるように出したりして早めの緩和処理を行ってもらわないと、
 後から印象を撤回しても取り返しのつかないレベルで気持ちが離れていってしまう危険性があります。
 そんな状況だったので、取り敢えず提示される情報は受け取っておくも、
 どう楽しんだらいいか分からないから頭の中に保存用のフォルダを作れなくて情報処理にものすごく疲れてしまう。
 その上でさらに内容理解に大きめの労力を要求する情報量の展開を持ってくるから相乗的な痛手になる。
 ネタを観ている間いつでもずっと思いだせるように記憶を保持しておくコトも凄く疲れますからね。
 一つのくだりの出て来るファクターが多すぎてどれに着眼したらイイのかも探索しなければなりませんし。
 楽しむだけの体力が全然残らない。
 ちゃんと楽しむべきものがどれか分かりやすく提示してあるネタもいっぱいありますし、
 それに対して考えるとどうしても大幅な減点をせざるを得ないですコレは。
 字面だけで笑わせられる単語やを仕込んであるのとか、
 それまでの内容関係なくコミカルに演出できているは瞬間的な内容の部分はある程度楽しめますが、
 それももっと早い段階に持ってきてあったりもっと読み心地のイイ言い回しにしてあったりすれば、
 読み手のテンションを底上げして理解や記憶がぐんとラクになって桁違いに楽しみやすくなったハズなのになぁという印象です。
 多分私以外の読み手はココまで大幅に気にするポイントじゃないモノばかり取り上げているとは思いますが、
 全て多くの人の無意識の底で引っ掛かり印象に影響するコトは大いにあり得る項目であるとも思いますので、
 言及的にも点数的にも(まぁ点数的に触れているのはどのユニットに対しても同じくらいにですが)、
 ガッツリ触れさせていただきました。
  
・完成した時は、これが優勝しねぇなら長文オワコンとか思ってましたけど、
 ふたを開けてみたら完全に5位でしたね
  
・今回のMM-1、比較的あっさりとしたネタが多かったのが少し気になっていたのですが、
 こちらは対極的に圧倒的ボリュームでした。
 それだけボリュームがあるにも関わらず一つ一つを絶対に外してこないのが恐ろしいです。
 たった一言の「うん」にこれだけ笑わされるとは思いもしませんでしたし、とにかくレベルが段違いだったと思います。
 いやぁー…凄いなー…。
  
・ヤクザテーマながらも、しっかりと滑稽なネタになっていて良かったですね。オリジナリティ高いです。
 どこが、というのは特にないのですが、全体的に面白かったです。