予選Fブロック 審査フォームはこちら

051 言霊連盟 052 前髪 053 灯風 054 カザン・ドレ・シンク 055 モノクローム
056 サンザンヒーローズ 057 乙女の方程式


No.051 言霊連盟
同窓会
槍沢:はいどうも言霊連盟です。

栃城:よろしくお願いします。久しぶりのMM-1頑張って行きましょう。

槍沢:実は、最近ちょっとした悩みがありまして。

栃城:なんですか?

槍沢:今度、僕が幹事になって中学校の時の同窓会を開くんですよ。
   で、こういうことやるのが初めてなんで上手くいくか不安なんですよ。
   だから今日は栃城さんに同級生役をやってもらって同窓会の練習がしたいなと。

栃城:なるほど。



槍沢:「すみません、同窓会の参加者で……。奥の座敷ですね。中学卒業して以来か。みんな元気にしてるかなあ」(ガラガラ)

栃城:「おめえ、ふざけんじゃねえぞ! あ、なんだその目は? ……上等じゃねえか! 表出ろやオイ!」

槍沢:ちょっといいかな栃城さん! ……なんで一触即発状態ですか!?

栃城:本番ではなにが起こるか分からないでしょ? だったらいろんなケースを想定した方がいいって。

槍沢:だからって、想定事例がハードすぎますよ。
   やるなら和やかにお願いしますよ。なんか、「お前変わってないなー」みたいなのが飛び交う感じでお願いしますよ。
   じゃあ、やり直しますね!
   「……奥の座敷ですね。中学卒業して以来か。みんな元気にしてるかなあ」(ガラガラ)

栃城:おめえ、ふざけんじゃねえぞ! あ、なんだその目は? ……上等じゃねえか! 表出ろやオイ!

槍沢:一字一句違ってない! 当事者の意見取り入れてくださいよ!

栃城:「ちょっと二人ともぉ! せっかくの同窓会でそういう乱暴なことするの……いけないと思います!(メガネの縁を上げるマイム)」
   …………。
   「うわあ、出たよ委員長の怒る時の癖! メガネクイッってやるやつ」
   「卒業して大分経つのに、お前変わってないなあ!」
   「『……いけないと思います!』の溜めも全く一緒!」
   「アッハッハッハ アッハッハッハ」

槍沢:…………結果、和やかなったけど! 一旦、不穏な空気を経由しないでくださいよ。
   というか、そもそも幹事より先に集まってなにやってるんですか。じゃあ、もう、それでもいいんで始めましょう。
   まずは乾杯からスタートですよ。
   「では皆様、お手元のグラスをお持ちください」

栃城:そうしたらみんなマックシェイクを手に持って。

槍沢:……マックシェイクってなんですか!? え? 会場、マクドナルドって設定でやってました!?

栃城:もちろん。

槍沢:そんなわけないでしょ! てか、だとしたらマクドナルドの「奥の座敷」ってなんですか!?
   そのセリフが出た時点でおかしいって気づいてくださいよ。普通に居酒屋で団体用の座敷席借り切ってやるんですから。
   ていうか、そもそもなんでマクドナルドでシミュレーションしたんですか。

栃城:だって中学時代、放課後よく集まった思い出の場所でしょ。
   いまは居酒屋でやるつもりでも、突然、思い出を大切にしたくなるかもしれないじゃない。

槍沢:もういいですよ最悪の想定は! じゃあ、一回仕切りなおすから栃城さんの考えうる限り最高のケースでお願い!
   「いやあ中学卒業して以来か! みんな元気にしてるかなあ!」(ガラガラ)

栃城:「世界のみなさま。たった今、アメリカはすべての核兵器を放棄しました! これで世界は一つになりました!
    もう、戦争も紛争もなくなりました! これからは人類一丸となって発展と調和のために力を合わせていくのです!
    ♪We Are The World ♪We Are The Children」

槍沢:…………ちょっといいかな!! ……小芝居の不協和音がおぞましいレベルなんですけど! 

栃城:だってあなたが最高のケースでっていうから「全世界から無益な争いがなくなった」っていうケースを想定したんですよ。

槍沢:スケールでか過ぎでしょ! 居酒屋のふすま明けたらホワイトハウスって、なにこのちょっとしたどこでもドア!

栃城:それだけじゃないよ。戦争に使っていた分の予算と技術を使って世界から貧困もなくした結果、
   環境破壊が爆発的に進んでこのままでは地球に住めないとなったとき、火星への移住計画が成功し人類は宇宙(そら)へと飛び出した……。

槍沢:どこまで広がるんですか! 地球規模でも手に負えないのに宇宙って。
   じゃあ、その宇宙規模の話が一中学の同窓会に与える影響ってなんですか!?

栃城:最初にやってた喧嘩が無くなる。

槍沢:ショボい! 争いや貧困がなくなって宇宙へ飛び出したっていうのに最末端大差ない!
   ……ちなみに訊きますけど、栃城さんが考えうる限りで最悪のケースってなに?

栃城:お通しがポテトサラダだった。

槍沢:振れ幅! 最高と最悪の振れ幅! なのに結果に大差がない!
   単に、栃城さんがポテトサラダ好きじゃないだけでしょ!
   ていうか、マクドナルドで同窓会するよりお通しがポテトサラダの方が嫌なんですか?

栃城:だって、マクドナルドならフライドポテトがお通しになることはあってもポテトサラダは出ない。

槍沢:まず、マクドナルドにお通しって言う概念がないですから。
   とにかく、居酒屋で同窓会ですから! 大丈夫ですね? ……じゃあ、いろいろ挨拶とかがあって、
   「カンパーイ! いやあ、懐かしいなあ。」

栃城:「おーい! 槍沢!」

槍沢:「えーと……。栃城?」

栃城:「そうだよ。いやあ、久しぶりだな!」

槍沢:「いやあ、懐かしいな! お前、いま仕事とかなにやってるの?」

栃城:「俺は、ほら。見て通りだよ」

槍沢:「……いや、わかんないよ!
    パッと見ただけで職業わかるって、そんなコールド・リーディングの名手じゃないから!」

栃城:「あれ、わかんないかなあ……? 見ての通りこの居酒屋のバイトだよ」

槍沢:「……え?」

栃城:「いや、俺もびっくりしたよ。『言霊中学3年A組OB』って名前で予約入ってるから、
    俺と同じだなあ……とは思ってたけれど、まさか通ってたクラスの予約だったとはね」

槍沢:「え!? お前、今日の同窓会呼ばれてないの!?」

栃城:「みたいだね。ではこちらシーザーサラダでございます」

槍沢:「いやいやいや……。平然とコースを進めるなよ! なんで呼ばれてないんだよ? 今日3年A組全員集合のはずじゃん!」

栃城:「中学時代に友達がいなかったからうっかり忘れちゃったんじゃない?」

槍沢:「…………ゴメン!」

栃城:「謝ることないよ。ていうか、俺こそごめんね。気まずい思いさせて。ではこちらシーザーサラダで……」

槍沢:「シーザーサラダどうでもいいよ! ……怒らないの!? せっかくの同窓会、無視されたんだぞ!」

栃城:「でも、こうやって会えただけで俺は満足だよ。ではこちらシーザー……」

槍沢:「床にでも置いておけ! 座敷席だからみんな気にせず適当にテーブルに乗せるわ! それよりも言うことがあるだろ!?」

栃城:「飲み物ご注文のお客様ー?」

槍沢:「そうじゃない! 飲み放題のドリンクの注文とか受けなくていいから!
    よし、お前バイト上がれ! それで飲もう! な!」

栃城:「……バカ言うなよ! そんな簡単に抜けられるわけないだろ。
    ただでさえ週末なのに、3年A組OB全員の31人ま……30人前の予約が入ってるんだぞ!」

槍沢:「……そこは気にしないでおこう!」

栃城:「それでめちゃくちゃ忙しいのに一人だけ早上がりして、それでそのまま飲んでけってバイト先でも孤立するじゃないか!
    もし、ここで孤立してみろ。……半年に一度のボウリング大会に呼ばれなくなるだろ!」

槍沢:「…………それ、そんなに大事なこと?」

栃城:「当たり前だろ! 俺が唯一バイト先から必要とされるのがボウリング大会なんだよ!」

槍沢:「ゴメンて! そうとは知らなかったとはいえゴメンて!」

栃城:「俺はいい、ボウリングに謝れ!」

槍沢:「ごめんなさい! ボウリングさん!」
   …………ってなにこれ!? なんで同窓会に行ってレジャースポーツに詫びなきゃいけないの!?
   ちゃんと全員に連絡するから! 普通の設定でお願いします!

栃城:じゃあ、当時好きだった女の子と再会して……とか?

槍沢:いいじゃないですか! そういうのお願いしますよ。
   「おお、元気にしてた! あ、久しぶり!」

栃城:「槍沢君! ……久しぶり。覚えてる? 栃子」

槍沢:「覚えてるに決まってるだろ。なんていうか、うん。……昔と変わってないな」

栃城:「ええ!? ショック。これでも女を磨いてきたつもりなんですけど!
    ……実はさ。昔、槍沢君のこと好きだったんだよ。気づいてなかったでしょ?
    そしていまでもずっと…………な〜んてね。でもさあ、槍沢君てさ。いま、彼女とかっていたりするの?」

槍沢:「いや、いないけれど……。そういう栃子はどうなんだよ?」

栃城:「私は……いまは仕事が恋人かな」

槍沢:「へえ、なんの仕事してるの?」

栃城:「見ての通りよ」

槍沢:…………あれ? なんか嫌な聴き覚えが。
   「え? まさか……この居酒屋のバイト?」

栃城:「フフッ違うわよ! ん〜でも当たらずしも遠からずかな。見ての通り女体盛りの土台よ!」

槍沢:ストップー!

栃城:なんだよせっかくいい雰囲気だったのに!

槍沢:そのいい雰囲気をあなたがぶち壊したんでしょ! なに!? 女体盛りの土台って!

栃城:ほら、よくある話でしょ。学生時代好きだった子と同窓会で会ったら、すっかりスレちゃってショックだったっていうの。

槍沢:限度があるでしょ! でもって、なんで居酒屋で女体盛りが振る舞われてるんですか!?

栃城:コースメニューよコースメニュー。シーザーサラダ、枝豆、女体盛り、フライドボテトとえびせんの盛り合わせっていう順番で……。

槍沢:結構序盤で投入してきますね! ていうか、置いてないから女体盛りなんて! あなた居酒屋をなんだと思ってるんですか!
   もう同級生との会話はいいですよ。最後、サプライズゲストで担任の先生がきて挨拶してくれるんで、そこだけ練習させてください。

栃城:先生ね。それはどんな感じの人なの?

槍沢:絵にかいたような熱血教師で、ものすごく元気で行動力がある人だよ。
   去年あたり定年だったけれど、老けこまずに忙しくしてるみたい。まあ、とにかくお願いします。
   「えー……みなさん! 宴もたけなわではありますが、実はここでゲストに来ていただいてます。
   我らが3年A組の担任を務めていただいた栃城光策先生です!」

栃城:「みんな。久しぶり! みんなと会うのは中学を卒業以来だけれど元気そうでなによりです。今日は元気をもらえました。
   私の持論ですが、学校とは一人ひとりに船の作り方を教える場所です。
   生徒は学校生活を通して一隻の船をつくり、そして社会という大きな海へと航海していくものです。
   先生は船を操縦をしたり修理したりすることはできませんが、みなさんの羅針盤としていつも船の中にいます」

槍沢:「はい……」

栃城:「では最後に。いま、みなさんに伝えたい言葉を送ります。
   世界のみなさま。たった今、アメリカはすべての核兵器を放棄しました! これで世界は一つになりました!
   もう、戦争も紛争もなくなりました! これからは人類一丸となって発展と調和のために力を合わせていくのです!
   ♪We Are The World  ♪We Are The Children」

槍沢:なんで先生がアメリカの大統領になってるんだよ!

栃城:行動力があるっていうから、最高に行動力があったら初の外国人大統領ぐらいになってるかなと。

槍沢:なんでもかんでも最高のケースを想定しないでください! でもって、よく全世界から争いなくせましたね!

栃城:優秀な外務大臣である委員長が「こういう無益な争いとかするの……いけないと思います!(メガネの縁を上げるマイム)」って紛争地域を巡ったから。

槍沢:委員長の影響力すごいな! ジョン・レノンやマイケルがあれだけ歌っても争いなくなってないのに!

栃城:それから、学生時代友達のいなかった居酒屋バイトが孤独の辛さを説くことで友情や絆がいかに大事かを教えたからね。

槍沢:なんかすごいことなってるな! 孤独を極めた結果カリスマになってるじゃないですか!

栃城:そして女体盛りを振る舞って飢餓の解消に努めたからね。

槍沢:もっと振る舞うもの考えましょう! 多分、ニューヨークタイムズとか黙ってないと思うから!

栃城:こうして、3年A組のOB30人一丸となって取り組んだ結果、無益な争いと貧困がなくなったんですよ。

槍沢:僕以外全員関わってるじゃないですか! だとしたら同窓会を開くまでもなく日ごろから顔を合わせてるでしょ。

栃城:あなたに会いたいがために開いてくれるんですよ。

槍沢:荷が重いわ! なに一国の大統領とその側近待たせてるんだって話ですから!
   ……もういいですよ練習は。これだけ最悪の状況を想定していろいろやらさせられたから、本番でなにが起こっても大丈夫そうだし。

栃城:待てよ! まだお通しがポテトサラダだったときの練習をやってない。

槍沢:それ、あなたが嫌いなだけでしょ! いい加減にしてください!

二人:ありがとうございました。


No.052 前髪
恋愛事情
五月雨:どうもー、前髪ですよろしくお願いします!

 樹木:お願いします!ちょっとね、聞いて欲しい話があるんですよ。

五月雨:ほお、何と何と何?

 樹木:そんなにはねえよ。別に、1つだよ1つ。…僕もうずっと独り身なんでね、そろそろ、彼女が欲しいなんて思うんですよ。

五月雨:なるほどね。ちなみに、どんなタイプが好みとかある?

 樹木:あーそうだねえ、髪型はショートカットで、あとは僕の話とか悩みとかをちゃんと聞いてくれる子がいいね。

五月雨:お、それだったら俺いい子知ってるから紹介してやるよ。

 樹木:えマジで?誰誰?

五月雨:瀬戸内寂聴。

 樹木:…それはねえよ!婆さんじゃねえかよ。

五月雨:いやでも、悩みとかちゃんと聞いてくれるし。

 樹木:そりゃそういう仕事だからな!

五月雨:それに、ショートカットだし。

 樹木:ショートカットっつーかねえんだよ!!…なんだよふざけてんのかよ。

五月雨:えーせっかく女の子紹介してやろうって言ってるのに。

 樹木:そんなこと言ってるけど、そういうお前はどうなんだよ?

五月雨:あ、俺?…いやーそれがね、最近彼女が出来たんですよ。

 樹木:えーマジで!?

五月雨:しかもね、今日ここに連れてきてる。

 樹木:なんだよ聞いてねえよー。え、相手誰なんだよ?

五月雨:ああ、実は………………この、「左手」です!!

 樹木:…………はぁ!?

五月雨:ね、可愛いでしょ、左手ちゃん。

 樹木:いや可愛いとかもわかんねえし。え、なに、自分の左手と付き合ってんの!?

五月雨:そうなんだよー。もうかれこれ20年の付き合いになるんだけどね。

 樹木:そりゃ産まれたときから一緒だからな!そうだろうけど!

五月雨:いわゆる“幼馴染”ってやつだね。

 樹木:手を“幼馴染”とは言わないだろ。

五月雨:しかもね…一緒に同棲してるんだよ。

 樹木:うん別居できるならしてみろよな。

五月雨:それにちょっと自慢なんだけどね、俺によく、手料理を作ってくれるんだよ。

 樹木:ただの自炊だろ!!自分で料理作ってるだけじゃねえか!!

五月雨:でも左手ちゃん、不器用だから料理するの危なっかしくてね……

 樹木:右手を使え右手を!!利き手じゃない方で料理するんじゃねえよ!!…もう全然わかんねえよ。まず、左手と付き合ってるってどういうことだよ!?

五月雨:まあまあ、彼女がいないお前が妬くのもわかるけどさ。

 樹木:妬いてねえよ!なんなら左手と付き合ってるとかいう奴よりは勝ってるよたぶんね。

五月雨:あ、じゃあさ、俺の右手ちゃん紹介しようか?

 樹木:いやいらねえよ!お前と一緒にするなよ。

五月雨:あー、まあちょっとね、お前が好きなショートカットではないけどね。

 樹木:…これはどこをどうもってショートカットとか言ってんの。

五月雨:爪の長さがね。

 樹木:知らねえよ爪の長さとか!

五月雨:それに自分で言うのもなんだけど、俺の右手ちゃんめっちゃいい子だぞ。

 樹木:うんホントに自分で言うことじゃねえな。

五月雨:左手ちゃんと違ってしっかり者で大人びてるぞ。

 樹木:そりゃ利き手の方がしっかりしてるかもしれないけど!

五月雨:ちょっと抜けてるお前にピッタリだ。

 樹木:…どう反応すればいいんだよそれは。……てか、右手ぐらい自分でも持ってるから!わざわざお前の右手はいらねえよ。

五月雨:…………なんだよーちゃんと彼女いるじゃねえかよー!

 樹木:彼女じゃねえよ!これだけで彼女いることになったらみんな幸せだわ。

五月雨:でも確かに、お前の右手ちゃん美人だもんな。

 樹木:…それは褒められてるの?

五月雨:あれ?……よく見たらお前の左手ちゃん、めっちゃ可愛いな……

 樹木:やめろやめろ!そんな目で左手を見るな!!

五月雨:ああイカンイカン、俺には俺の左手ちゃんが……でもお前の左手ちゃんも捨てがたいなー……

 樹木:なんなんだよもう!てかなに、お前は“左手”が好きなの!?

五月雨:いやまあそれは…………俺、年下好きだからさ。

 樹木:……なんにも解決してねえよ!?年下好きだから何なの!?

五月雨:ほら、左手はおっちょこちょいで頼りない感じだから、年下。で、右手はしっかり者で大人びてるから、年上だろ。

 樹木:…なんで手に年上年下とかあんだよ!?それじゃあ自分の体の中で年齢違うじゃねえか!!

五月雨:そうだよ。俺の場合ハタチだから、右手ちゃんは21で、左手ちゃんは19だね。

 樹木:…おかしいだろー!左手だけ未成年じゃねえかよ!

五月雨:そう、だから左手で酒飲んだら違法なんだよ。

 樹木:聞いたことねえよ!なんだよ、右手だけ一足早く成人すんのかよ!!

五月雨:うん、だから去年は右手だけ成人式に出席させてきたし。

 樹木:どういうことだよ!?手だけ!?

五月雨:え、見たことない?成人式の会場に、右手用の席と、左手用の席とあるだろ?

 樹木:見たことねえよ!!それ、次の年成人する人の右手と、前の年成人した人の左手がいるわけだろ?
    …会場の2/3が手で埋まってるじゃねえかよ!!怖ぇよ手だけ一角に集まってるの!!

五月雨:まあそういうことだからさ、試しに今度俺の右手とデート行ってこいよ。

 樹木:嫌だよ!!なんだよ手とデートって!!

五月雨:いいだろー。あ、ついでに俺もお前の左手とデートさせてくれよ。

 樹木:なんでだよ!自分の左手どうしたんだよ!

五月雨:いいじゃんたまには。2組でデート行こうぜ、手ぇ繋いでさ。

 樹木:めんどくさいことになるよそれは!ぐっちゃぐっちゃに絡まりあうよたぶん!

五月雨:あれか、クロスデートってやつだな。

 樹木:物理的にはクロスしてんだけどな!!そういうことではないからな!!

五月雨:お願いだよー、こういうの憧れだったんだって。

 樹木:嫌だよ!!外から見たら男二人が変な手のつなぎ方して歩いてるだけじゃねえかよ!!気持ち悪ぃよ!!

五月雨:じゃあせめて!お前の左手ちゃんとはデートされてくれ!!

 樹木:結局お前がデートしたいだけじゃねえか。…なんなんだよお前、俺の左手に対してはすっごいグイグイ来るけど。

五月雨:そりゃあ……可愛い子を見ると、“手”が出ちゃうんだよ。

 樹木:…いいかげんにしろ。

お二人:どうもありがとうございました。

予選総合第15位(準決勝敗退) 前髪
審査員
点数
51 57 84 78 71 平均68.20
【審査員コメント】
・生まれ持った部位が恋人という斬新な設定は大好きです。
 左手は不器用だから可愛いとかどうやったらそんな発想が出てくるんですか。自分の左手もなんだか可愛く見えてきちゃったじゃないですか。どうしてくれるんですか。
 ただこの世界観を説明してはいけないと思います。なんか途中で「五月雨:そうだよ。俺の場合ハタチだから、右手ちゃんは21で、左手ちゃんは19だね」とか急に説明口調になってしまったので、逆になんだか嘘くさい感じがしました。
 「世界的にも常識だ」みたいな設定はこの作品では邪魔なだけだと思います。五月雨さんがただ純粋に左手さんのことを愛しているということだけで、十分に纏まった世界観が作成されてると思います。
  
・左手が恋人と言うシチュエーションに入り込めなかったらほとんどのボケが威力半減になる形式ですよねまず。
 状況としてはそこそこ飛んだコトを言っているけれどイメージ映像は大したコトないからすごく「我に帰りやすい」んですよ。
 だから惹き込み性が特に必要になる題材だと思うんですこのネタは。
 なのに恋人と呼んでいる存在の個性にあまり触れていなかったり、
 何故左手に執着するのかについて語る熱がイマイチ伝わってこなかったりするのが、
 入り込めない要素になっていて非常にもったいない。
 情報絞り込んであるぶん内容の理解しやすさは抜群でしたし、
 「別居出来るならしてみろよな」みたいなツッコミの表現力でちょっとは巻き返せてましたが、
 この題材と読み手の間の距離が埋まらないと言う痛手を覆せるほどではなく、最後までひびいてしまったかなと。
  
・アタフタ君さんのネタで「恋してます」って大傑作がありまして。
 自分で自分に恋しちゃった男の話なんだけど、それを正統派にした感じ。
 設定だけじゃなくて「左手で飲酒すると違法」とか「会場の2/3が手」とか、
 巧い。ただただ感心しました。
  
・面白い!テンポの良い掛け合いで、次々と暴走が繰り出されていくのは良いですね。
 最初の寂聴のくだりが必要だったのか、と少々気になったりもしましたが
 成人式辺りからは爆笑しっぱなしでした。
 手が一角に集まってるや、手がぐちゃぐちゃになるなど想像させるボケも頭の中に浮かべて非常に面白かったです。
  
・上手いですね。まずはそんな感想でした。
 設定の割になかなか良いボケを出すなぁ、と思ったところも多いのですが、全体としては少し弱く見えたのが惜しいです。
 気になったのは、「左手は19歳・右手が21歳」の部分。
 序盤に「かれこれ20年の付き合い」とあり、またそもそも全身一緒に生まれてくるはずなので、そのあたりがちょっと矛盾しているようで引っかかりました。
 左手19歳・右手21歳を前提にしたボケは非常に良かっただけに、本当に惜しいところですね。



No.053 灯風
holy bite
ナオ:どうもー、灯風ですよろしくお願いします。

ゴウ:あの、最近なにかを噛んでいないと落ち着かないんですよ。

ナオ:ストレスかな。そういう人いますけど。

ゴウ:それで、よく爪を噛んでしまうんですよ。

ナオ:ああ見苦しい。

ゴウ:ただ、爪噛んだら神様が出てきてしまうじゃないですか。それが嫌で。

ナオ:ん、待って全然わかんない。……え、神様出てくんの?

ゴウ:うん。爪から。

ナオ:爪から!?

ゴウ:爪の中には細ーい空洞があってさ、そこに神様眠ってるじゃん。

ナオ:聞いたことねえよ。俺の体には両手両足20体も神様眠ってたのかよ。

ゴウ:狭くて苦しそうにしてるけど。

ナオ:住むとこ考えろよ神様。そら爪の厚みぐらいじゃ狭かろうに。…でなに、爪の神様とかが眠ってんの?

ゴウ:いや、爪の神様とかいるわけないだろ。

ナオ:マジか。じゃあ何なんだよ。

ゴウ:ケラチンの神様だよ。

ナオ:主成分かよ。爪の。なんで主成分の神様は存在してるんだよ。

ゴウ:名前の通り、ラチラチラチって笑うよ。

ナオ:ケラケラじゃねえのかよ。

ゴウ:まあそれで、爪を噛んでその空洞まで噛んじゃったらケラチンの神様出てくるんだよ。にゅるっと。

ナオ:トコロテンみたいに出るのな、神様。…それで、爪噛んだの怒られたりするんだ?

ゴウ:いや、怒られねえよ。神様とあろう者が怒ったりするわけないだろ!樹木医じゃあるまいし。

ナオ:知らねえし、樹木医は怒ってるイメージ全然ねえよ。…じゃあなに言われんの?

ゴウ:「みっともないぞ!!!!!」って。

ナオ:やっぱ怒ってるじゃねえか。ビックリマーク5個付いてて怒ってないわけねえないから怒ってるよ。

ゴウ:それに、窒息させようとしてくる。

ナオ:相当の怒りじゃねえか!爪噛んで窒息死の危険が迫るとか!恐ろしいな。

ゴウ:ただなー、そのときいっつも神様食べちゃうんだよな。

ナオ:神様食うの!?まず食えんの!?

ゴウ:だって、ケラチンの神様、ジュレ状じゃん。

ナオ:ジュレ状なんだ。ジュレ状の神様が、爪からにゅるっと出てくるんだ。

ゴウ:しかも、かすかにオレンジの味がする。

ナオ:もはや爽やかなゼリーじゃねえか。ケラチンの神様なのに。

ゴウ:だからジュレ状の神様が窒息させようと口を覆ってくるわけじゃん。オレンジの香りが鼻腔をくすぐるじゃん。食べるじゃん。

ナオ:まあ食べるな。

ゴウ:でも、すっごい合成甘味料の味する。

ナオ:神様安っぽいな。…でもそれだったら怒ってきたら食えばいいだけだし、別に問題ないだろ。

ゴウ:まあ爪はそれでいいんだよ。でも、俺最近鉛筆もよく噛むんだよね。

ナオ:ああ、小学生だ。

ゴウ:ただ鉛筆噛んでたらさ、神様出てくるじゃないですか。それが嫌で。

ナオ:やっぱり出てくるんだ神様。

ゴウ:鉛筆の中心のところに、細長ーい空洞があって、そこに神様が眠っている。真っ黒になって。

ナオ:あれ、神様黒鉛じゃね?

ゴウ:いやいや、黒鉛の神様とか存在するわけねえだろ!

ナオ:…じゃあ何の神様なんだよ?

ゴウ:ダイヤモンドの神様だよ。

ナオ:同素体なのかよ。炭素の。なんで主成分の同素体の神様は存在するんだよ。

ゴウ:まあそれで、鉛筆噛んだらダイヤモンドの神様が出てくるわけよ。ボワッと。

ナオ:インチキおじさんみたいに出てくるのな、ダイヤモンドの神様。…で、鉛筆噛んだの怒られるんだ。

ゴウ:怒られねえよ!神様とあろう者が怒ったりするわけないだろ!坂上田村麻呂じゃあるまいし。

ナオ:坂上田村麻呂は怒ってるイメージ全然ねえよ。例え下手すぎるよ。…じゃあ何て言われるんだよ?

ゴウ:「みっともないぞ!!!!!」って。

ナオ:神様って語彙力ないのかな。

ゴウ:でまあ、窒息させようとしてくるのでジュレ状のダイヤモンドの神様を食べて。

ナオ:さらっと言ったけど内容えげつないよ。

ゴウ:しかもね、ダイヤモンドの神様を食べたら30分ぐらい、出すうんこが全部ダイヤモンドになるんだよ。

ナオ:チャンスタイムじゃん!めっちゃ硬いから出すとき痛そうだけど。

ゴウ:しかもさっき言ってなかったが、ケラチンの神様食べた後はうんこ漏れそうになるんだ。

ナオ:ケラチン→ダイヤモンドのコンボ最強じゃねえかよ!やべえな!

ゴウ:まあ鉛筆もいいんだよ。でも俺、最近フタコブラクダ噛んじゃうんだよね。

ナオ:一気に次元上がったな。いや、エジプト人でもフタコブラクダ噛まねえだろ。

ゴウ:今も口の中に入れて噛んでるんだけど。

ナオ:口に収まりきるものなのか!?

ゴウ:いやいや、最近フタコブラクダを口の中に入れるの、女子高生の間で流行ってるぞ?

ナオ:こんなに信憑性のない話初めてだ。

ゴウ:口の中に入れてると、フタコブのおかげで頬がぷくっとなって可愛いんだよ。

ナオ:それ以前の話が多すぎるだろ。

ゴウ:ただフタコブラクダ噛んでたらさ、体液出てくるじゃないですか。

ナオ:正解だよ。相当なアゴの力だとも思うけど。正解だよ。

ゴウ:それがすっごく気持ち良くて!

ナオ:そこは嫌に思えよ。

ゴウ:ただ、その体液煮詰めたら神様でてくるじゃん。

ナオ:溶解してたのかな神様。

ゴウ:それもすっごく気持ち良くて!

ナオ:フタコブラクダに嫌がる要素0かよ。

ゴウ:もう気持ち良くて気持ち良くて自分で自分を窒息させたね。

ナオ:その気持ち良さの表現なんなんだよ。自分からいっちゃうのかよ。

ゴウ:でまあ、死んだんですけど。

ナオ:死んだの!?ここにいるお前は何者。

ゴウ:いやいったん死んだんだけど、そこは神様の力で生き返りました。

ナオ:ここにきて神様らしい力が!すごいなフタコブラクダの体液の神様。

ゴウ:違ぇよ。なんだよフタコブラクダの体液の神様って。存在するわけないだろ。

ナオ:そういえば今回は聞いてなかった。じゃあ何の神様なんだよ。

ゴウ:生き返るの神様だよ。

ナオ:生き返るピンポイントかよ!よかったな生き返るの神様出てきて。

ゴウ:ただね、生き返るの神様の爪をつい噛んじゃってさ。

ナオ:なんで人様の爪をつい噛んじゃうんだよ。人様というか神様だけど。てか生き返るの神様はジュレ状じゃないのな。

ゴウ:そしたらケラチンの神様がにゅるんだよ。

ナオ:神様からも神様出るんだ。マトリョーシカ的だ。

ゴウ:で、ケラチンの神様食べてうんこ漏れそうになるじゃん。漏らすじゃん。

ナオ:お前にトイレの神様は微笑まなかったか。

ゴウ:口にフタコブラクダ入れた女子高生に囲まれながら漏らすじゃん。

ナオ:いつの間に囲まれてるんだよ。

ゴウ:合計80コブにね。

ナオ:コブ換算するなよ。そんな奇怪な女子高生40人もいるのか。

ゴウ:そんなところを蔑んだ目で見られたらもう、興奮して興奮してストレスとかどうでもよくなったよ。

ナオ:…「みっともないぞ!!!!!」

ゴウ:いやー、フタコブラクダの目力は至高だね。

ナオ:フタコブラクダの方に興奮してたのかよ。もう結構。

二人:どうもありがとうございました。

予選総合第19位(準決勝敗退) 灯風
審査員
点数
70 63 55 79 67 平均66.80
【審査員コメント】
・ゴウ:名前の通り、ラチラチラチって笑うよ。
 
 ナオ:ケラケラじゃねえのかよ。
 これを思いついた時の作者のドヤ顔が安易に想像出来てしまったので、悔しさを感じながらも笑ってしまいました。
 語彙力の足りない神様とか現実離れした設定の割には面白いボケが多くて、綺麗に纏まっている印象を受けました。
 ただ死んでからの展開がちょっとごちゃごちゃしていて分かりにくかったので、最後まで気を抜かずに書いて欲しかったです。
  
・神様の設定と言う題材は自由度が高くて割と何をやっても許容されやすく、つまりボケがちょっと目立ちにくいんですよね。
 本筋から言葉や展開を飛ばしたときの相対的な距離がそんなに大きく見えなくて、せっかくの言葉・内容選びが埋もれてしまう。
 それでも絶対値的な威力の高い単語を不意打ちで放り込んでいけているのは、
 設定の自由度を利用して色んな角度に回り込むような立ち回りの有効活用で良かったと思います。
 ただそれらも、ストーリーの軸足がしっかりしていないので積み立てのきかない即時的な面白さで終わってしまっていたように思います。
  
・悪い意味で灯風らしくないネタでした。
 散漫してると云うか、淡白と云うか。
 新境地を狙っているのなら申し訳ないですが、
 どうにも作りが雑なようにしか見えませんでした。
 終盤のラッシュは巧いとは思うんですが、イマイチはまらず。
 「マトリョーシカ的な」はすごい好きなんですけど。
  
・全体を大きく分けたら3回に分かれると思うんですけども
 1回目の時は確かに笑いこそしましたが、これからの展開に少し不安を覚える感覚がしました。
 しかし、2回目で1回目の流れを利用して新たなボケを重ねてきた所でとにかく笑いました。
 ウンコのチャンスタイムは面白過ぎますわ。
 で、それでも十分面白かったのに3回目を更に重ねてくるあたりが貪欲で素晴らしかったと思います。
  
・全体感があって面白かったのですが、うーん、よく考えたら大きなボケが無かったなぁ、と。
 「好きなボケ・フレーズ」にあたるものは多いのですが、そこばかりが一番印象に残ってしまうほどには大きいボケが無かったです。
 構成とか設定とかは好きなんですけどねぇ…



No.054 カザン・ドレ・シンク
オープンドア
溝脇=どうも、カザン・ドレ・シンクです!
   よろしくお願いします。  

白石=よろしくお願いします!

赤崎=どうも!世界を股にかける男、赤崎です!

溝脇=・・・えーと一人、この目的をはき違えていますが張り切っていきましょう!

赤崎=帰国子女赤崎!皆さんに言いたいことがあります!

溝脇=別に国際派アピールはどうでもいいですが、何ですか?

赤崎=最近の人たちはもっと外へ出た方がいい!もっと見聞を広げるべきだ!

溝脇=これお前の講演会じゃないんだわ。

白石=赤崎さん!僕はどこへ行ったらいいですか?

溝脇=話広げるなよ白石。この漫才の方向性が迷子になる。

赤崎=そうだなぁバミューダトライアングルなんてどうだ!

溝脇=船や飛行機が遭難するので有名なところじゃねぇか!本格的に迷子になるわ!
   まぁ外に出るってのは大事なことだな。
   そういうこととちょっとにてるんだけど、俺、気になることがあって。

赤崎=ん?なんだ?

溝脇=親せきに引きこもりの子がいるんだ。なかなか、困っててさ。
   そこで、ちょっとシミュレーションをしたいわけよ。

赤崎=あぁ、そういうことか。そういうのならお任せあれ!

溝脇=じゃあ、ちょっと俺が説得する役がしたいので、

赤崎=合点承知!




溝脇=・・・ん?白石?おい?

白石=はっ!?バミューダトライアングルから脱出できたぞ!

溝脇=勝手に行った時のシミュレーションしてんじゃないぞ。
   こっちのシミュレーションするから妄想迷子から帰ってこい。




赤崎=ある男はこう語る。
   「私はある男を説得させる自信がある・・・」
   しかしある男はこう語る・・・

溝脇=え?

白石=僕はどんなことを言われようとも絶対に家から出ません。

赤崎=・・・


   こ こ に 1 つ の 矛 盾 が 生 じ た
  


溝脇=待て待て!おれはごくごく普通に説得したいの。
   わざわざハードル上げるようなことするな!
   ちょっと赤崎は後ろで行く末を見守ってろ!

赤崎=ちょっと待てよ前代未聞だぞ!直立不動って!

溝脇=大丈夫お前は直立不動なだけで、おいしくなれる!


赤崎=!!


   そうか、おいしくなれるのか・・・(赤崎スタンバイ)




溝脇=・・・よーし、じゃあ白石、引きこもりの役やってもらえるか。

白石=う、うんいいよ。


溝脇=(コンコンコン)
   おーい、白石君こんにちはー。

白石=・・・

赤崎=(スタンバイ)

溝脇=なぁ君が引きこもってから3か月たつなぁ・・・
   どうだい楽しいかいその生活。

赤崎=(すたん・・・)

溝脇=・・・なぁ久々におじさんと、一緒にどこか出かけないか?
   君が好きだった野球場。また行こうじゃないか。

赤崎=(スタ・・・スタスタスタスタ 溝脇と白石の間に入る)

溝脇=いや、お前なんで間割ってきてんだよ!
   どいてくれ!お前がそこでなくても輝ける場所があるって!

赤崎=ふふふ、今もおいしいがもっとおいしい方法を見つけたぞ!
   今2人の間には壁がある!物理的にも心理的にも!!つまり壁の役をやればいい!
   しかも直立不動でできる!!お前の望んだとおりだ!

溝脇=あーまたこんがらがりそうな。
   とにかく白石君引きこもってないで出ておいで!

白石=・・・

赤崎=ふふふ、無駄だよぉー。
   彼の体育座りが描く三角形は絶望のバミューダトライアングルなんだ!

溝脇=オリンピックの名言をそれは見事に残念にしてくれたなぁ。

赤崎=それに俺と白石の絆は固い。
   いつも俺と一緒にキャッチボールしてるんだぞ!

溝脇=それは一方的な壁当てだわ。
   お前動けねぇのに投げてるつもりかよ。

赤崎=とにかく白石とキャッチボールをしたこともないお前なんかに
   白石の事なんてわかるかよ!!

溝脇=・・・・・・

赤崎=ふっ!ぐうの音もでないようだな!
   白石今日もキャッチボールしようぜー。

白石=・・・ぃ

赤崎=ん?

白石=外に出てみたい。  このままいてもつまらないし。

赤崎=な、何言ってんだ!よく思い出してみろ!俺との思い出を!
   俺とキャッチボール!そして俺とキャッチボール!
   さらに・・・キャッチボール!

溝脇=そらそうだわ。だってお前動けねぇもん。バリエーションあるわけないわ。

赤崎=でも、外の世界は怖いぞぉ!
   街にはたくさんの障害や壁がある。そう「ウォール街」なんだ!

溝脇=世界の金融の中心がだまってねぇぞこら。

白石=でも・・・俺は生まれ変わるんだ・・・新しい自分に!
   そう、新しい自分を製作するんだ。ニューディール政策だ!

赤崎=そんなことしなくていいんだ!
   俺はもっとお前と楽しみたいんだ!

白石=いいよ、じゃあ遊ぼう。・・・でも最後のキャッチボールだ。
   
   (ギュオーン!!メコオッ!!)

溝脇=おいおい!この至近距離で全力投球するかよ!
   人間では表現してはいけない音出たぞ・・・

赤崎=うぎゃあああああ・・・
   いい顔してるな・・・これは間違いなく大物になる・・・
   世界が、恐慌する・・・(壁崩壊)


溝脇=おいおいちょっと待った!

白石=あ、あなたは、ルーズベルト大統領!

溝脇=誰がルーズベルト大統領だ!
   俺は、引きこもりの説得したいの!
   なんで中学生の社会の丸暗記用のマンガみたいな展開になってんだよ!
   ちゃんとやれっての!

赤崎=実は・・・俺らお前との間に壁感じてるんだわ・・・

白石=うん。

溝脇=俺が引きこもりたくなるわ!もういいよ!

予選総合第50位(1回戦敗退) カザン・ドレ・シンク
審査員
点数
 1 35 40 33 38 平均29.40
【審査員コメント】
・自分で読みにくいと思わなかったんですか。
  
・序盤にキャラクターを確立・説明できているのはすごく惹き込まれるポイントで良かったんですが、
 互いの関係や応答スタンスのハッキリしていないのでそのぶん突き放されて効果が相殺してしまった印象です。
 その上で奔放なボケの出され方をしても、
 ストーリーも全容が見えず固まりきっていないから完全に置いてけぼり感の方が勝ってしまいます。
 ストーリーを破壊すると言う形式ならまず盤石な話のすじがないとただの自然崩壊と大差なくなってしまいますから。
 まず壊す前の形をしっかり見せておかないとです。
 最初っから壊れかけの会話を観ても、
 読み手は距離を開けてしまうだけに終わる可能性を高めますから。
  
・ボケはベタでしょぼいんだけど、ツッコミは面白いっていうなかなか無いパターン。
 トリオとしての3人目の使い方が目新しかったものの、それを生かし切れていない。
 非常に惜しい。
 序盤の溝脇のツッコミなんか結構好きなんですけどね。
 
  
・赤崎さんの言われるがままにスタンバイしたり、壁役に立候補したりするキャラクターがいいですね。
 設定としてはこれ以上更に面白くできそうな雰囲気を感じました。
 ですが現段階では、あまり満足度の高いネタではありませんでした。
 更に言うのであれば3人の会話がもう少しスムーズだと読みやすく笑いやすかったと思います。
  
・壁としてスタンバイしたりだとか、面白そうなところもいろいろあったのですが、
 白石がバミューダトライアングルから脱出したあたりからの展開の描写が、言葉足らずで分かりにくいのが引っかかりました。
 その後も話題の流れに関する描写が多い分、面白いボケが少なく(あるとしても上手いボケ)物足りなかったです。



No.055 モノクローム
作者は尻に火がつかないと筆の進まない人らしいですよ?
二人:はいどーもー。

白川:最近はいわゆる「ライトノベル」というジャンルが隆盛だね。毎クールのように何作もアニメ化するし、
   ゲーム化や映画化までしちゃう作品も出てるし。

黒田:粗製乱造の結果だな。

白川:しょっぱなから言い方が粗いわ! 何か気に食わないことでもあった!?

黒田:例えばよぉ、ついこの間『僕は友達が少ない』が実写映画化すると判明してネット上を騒がせたじゃん。
   ああいうリアリティのない作品を三次元に持ち出すなっつの。

白川:そりゃ言わんとすることはわかるけど、作者も作者なりに思い悩んだ末にOK出したんだから僕らがとやかく言うべきなないよ。

黒田:しっかしあのタイトルも人を食った名称だよ。確かに友達は少ないかも知れねえけど、
   それ以上の関係な美少女に囲まれて両手両足に花じゃねえか。

白川:“抱えきれないくらい”という意味なのはわかるけど足で花を持つのは単なる曲芸だよ。

黒田:でもって略称がひらがなの部分だけ取って『はがない』って。まだ漢字読めない子どもか!
   「ひらがな読めるようになったねー、えらいえらい」か!

白川:どういう方向に怒りを上げてるんだよ!?

黒田:それで最近だとその系統で『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』を略して『おにあい』とか
   『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』だったら『はまち』や『俺ガイル』とか、
   『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』を『オタリア』とか、
   なんか略称で上手いこと言う流れが出来てるみたいじゃねえか! 大喜利か! 笑点のピンクか!

白川:別に怒らなくてもいいじゃない。僕はユーモアに富んで面白いと思うけどな。
   しかしそれより、どれもタイトルが凄まじいね。

黒田:最近のラノベのタイトルは遊びすぎだろ。長たらしいのもそうだけど、文章みたいになってんのが多すぎんだよ。

白川:今アニメの2期やってる『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』あたりからかな? こういうタイトルが目立ち始めたの。
   あれも知られ始めた当時はセンセーショナルだったね。

黒田:『こんなに可愛いわけがない』って、嫌悪してるようでホントは若干自慢してるだろ!
   妹いないやつらが「チクショー! 俺も妹欲しぃ〜〜!!」って指くわえて悔しがる姿を見てニヤニヤしたいんだろ!
   それに『はがない』も中身を知れば「コノヤロー!」なタイトルだということが明白だしな!

白川:なんという被害妄想! というか単に君がうらやんでるだけじゃ…。

黒田:去年アニメ化された『だから僕は、Hができない。』なんてのもこの手の典型だよ!
   否定形で語りつつうらやましがらせるような優越感を醸し出すっつう。実際、内容を端的に表せば
   「女の子たちにモテモテで困るわー。好意寄せられても性欲は全部死神に持ってかれるから持て余して困るわー。」
   って感じだしな!

白川:間違ってはないだろうけど偏った見方だな! ていうかなんで地獄のミサワ調なんだよ!?

黒田:それから『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』も、否定形でこそないけど“コノヤロータイトル”だよ!
   お前完全に勝ち組じゃねえか!

白川:コノヤロータイトルて! ていうかやっぱり単なるひがみだよね!?

黒田:でもって略称が『俺修羅』て、お前修羅かよ! お前が戦場くぐり抜けてきたのかよ! 尻にリモコン挿すのかよ!!

白川:最後のは動画サイトで有名な「修羅パンツ」のことだろ! 知らない人には意味不明だから!

黒田:この手のパターンといえば『パパのいうことを聞きなさい!』を略した『パパ聞き!』も
   「パパが聞く」あるいは「パパに聞く」みたいな意味に聞こえちまうじゃねえか!
   『キスだけじゃイヤッ!』略して『キスイヤ』か!

白川:ちょっと解釈が恣意的すぎない!? そしてキスイヤ懐かしいな!

黒田:でもってこれらのタイトル「俺」とか「僕」とか果ては「パパ」とか、主人公が主張してるものばっかり。
   他にも『声優のたまごが、俺の彼女だったようです。』とかやっぱコノヤローだし、
   『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』なんてお前2ちゃんねらーか! VIPPERか!
   そんなんチラシの裏にでも書いてろ! ピザでも食ってろデブ!

白川:君の発言にも2ちゃんねるの影響を禁じ得ないし、最後はもはやライトノベルと何の関係もなくなってるよ!

黒田:それからここまでに挙げた中にもいくつかあったように、句点(。)がつく作品も目立つんだよな。
   『しにがみのバラッド。』『我が家のお稲荷さま。』『変態王子と笑わない猫。』とか、体言止めの題にまでつけなくていいだろ!
   キンタロー。リスペクトかなんかか!

白川:最後に関しては明らかにキンタロー。さんの方が後発だよ! モーニング娘。あたりを引き合いに出すならまだしも!

黒田:そしてそれ以上に感嘆符(!)をつけた作品の多さたるや。まあこれに関しては短いタイトルにもよく使われてるし、
   『いぬかみっ!』『とらドラ!』『デュラララ!!』『えむえむっ!』とか、むしろ威勢のいい感じで許せるけどさ、
   主張が入ってくるとうるさいんだよ。

   『あそびにいくヨ!』

   来なくていいよ!

   『中二病でも恋がしたい!』

   勝手にしてろよ!

白川:とうとう会話始めた!

黒田:まったく、「!」はお前らの遊ぶためのオモチャじゃないんだぞ!!!

白川:僕はそういう君自身がここまでにどれだけその記号を使ったか問いたいところだよ。

黒田:そしてそれ以上に厄介なのが疑問符(?)だよ。

   『これはゾンビですか?』

   こっちが聞きたいわ!

   『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』

   ちゃんと確定した情報を持ってこいよ!

白川:ここに一人問題児がいるようで。

黒田:あと“報告系”のタイトルもどうしてほしいのか気になるわ。

   『人類は衰退しました』
   『この部室は帰宅しない部が占拠しました。』
   『恋人にしようと生徒会長そっくりの女の子を錬成してみたら、オレが下僕になっていました』

   ――何が聞きたい!? んなこと言われても「ああ、そうですか」としか言えんわ!

白川:別に返事を求めてるわけじゃないでしょ! 今の君は会話のキャッチボールをしようとして言葉のドッジボールをしてるよ!
   ていうか最後のタイトル何!?

黒田:先日「ダ・ヴィンチ 電子ナビ」が発表した「タイトルがあまりにも長すぎるライトノベルランキング」1位の作品だ。

白川:そんなランキングあるの!?

黒田:ちなみに2位のタイトルは『名門校の女子生徒会長がアブドゥル=アルハザードのネクロノミコンを読んだら』だ。

白川:そっちも生徒会長!? ていうかどこぞで聞いたことあるような言い回し!

黒田:まあ「ネクロノミコン」および「アブドゥル=アルハザード」といえばクトゥルフ神話に登場する魔道書とその著者として
   その系譜の作品によく登場する名前だからな。クトゥルフ神話は創始者・ラヴクラフトの弟子のダーレスが体系化し
   普及に務めたことで、のちに多くの作家にその世界観や設定が受け継がれ、ことに日本では神をも恐れぬ萌え化で
   サブカルチャー界にも広まった結果、ラノベでも『這い寄れ!ニャル子さん』のような怪作が…

白川:タンマ、タンマ! そこじゃないから! そっちの話についてはまた別の機会にお願いします!

黒田:ちなみに生徒会長つながりといえば、他に『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』というのもあったが…

白川:あった? 過去形?

黒田:これが『バカとテストと召喚獣』の話をとても参考にし、多くの部分をそっくり似せて書きつつも
   あえてそのことは明言せずに出してみたところ、元ネタを突き止めた正解者が現れたので
   問題篇を配るのをやめて、本屋に残った分も回収してしまった伝説的な作品なんだよ。

白川:要するにパクったってことね! で、慌てて回収・絶版にしたと。

黒田:運よくこの本を手に入れた方、今ならプレミアついてますぜ。グヘヘ…

白川:これ以上汚い話を展開しなくていいよ!

黒田:それから「どこかで聞いたようなタイトル」とか「元ネタあり」といえば
   『この中に1人、妹がいる!』『彼女がフラグをおられたら』なんてのもある。

白川:確かにね、でもどっちも結構元ネタが古いなあ。ライトノベル読む世代には知らない人多そう。

黒田:でもああいうの好んで読むオタクどもなら元ネタ特定簡単だろ。

白川:はい出た色メガネ! 今は読者層広がってるのにそういう偏見を言わないの!

黒田:でもやっぱりメインの読者層は中高生だろうし、主人公も高校生の設定が非常に多い。
   特に現代日本を舞台にした作品なんてほとんどがそうじゃねえの?

白川:さすがにほとんどかどうかはわからないけど、相当多いだろうね。読者の共感を得やすいだろうし。

黒田:そればかりか、学園生活もので主要な人物たちを一か所に集めるハブとして「生徒会」と「部活」がやたら出てくんの。
   ワイルドカードか!

白川:ワイルドカードて。でもまあ、それでさっき生徒会長がやたら出てきたりしたわけね。
   部活についても『涼宮ハルヒの憂鬱』の「SOS団」とか有名だしね。

黒田:他に今まで挙げた作品では『はがない』の「隣人部」とか『やはり俺の青春ラブコメは〜』の「奉仕部」とか、
   それ以外でも『撲殺天使ドクロちゃん』の「木工ボンド部」とか『ベン・トー』の「ハーフプライサー同好会」なんてのもある。

白川:なんか変わったのばかり! てか最後のは何!?

黒田:売れ残りの「半額弁当」を狩る者たちの集まりだとよ。

白川:なんだその青春!?

黒田:それに部活そのものをタイトルにした作品もある。『ロウきゅーぶ!』とかな。

白川:ろう…きゅー…?

黒田:「籠球部」…つまりバスケットボール部のことで、それに「休部」も意味も掛けてある。
   さらに公式に言及はされてないが、ヒロインたちが小学生という事で、年齢が低い「ロー」の意味もあるんだロー。

白川:なんか怪しい! そして最後のダジャレは寒い!

黒田:ダジャレといえば『GJ部』と書いて「グッジョぶ」というのもある。

白川:いや、どんな部活よ!?

黒田:活動内容不明の部活だ!

白川:なんかもう投げっぱなしというか、やったもん勝ちだな!

黒田:さらにはそのものズバリ『ラノベ部』という作品まで。

白川:トートロジーの域!?

黒田:そして最後に、部活の話ではないがラノベをテーマとしたものとして『ライトノベルの楽しい書き方』という作品もある。

白川:もはや指南書!?

黒田:というわけで俺もラノベ読んで作家デビュー目指してくるわ。

白川:君が一番ブームの流れに乗っかろうとしてるじゃん! そう簡単には行かないって! もういいよ!

二人:どうも、ありがとうございましたー。

予選総合第54位(1回戦敗退) モノクローム
審査員
点数
10 13 50  0 50 平均24.60
【審査員コメント】
・なんか面白くはなかったんですけど感動はしました。ここまで読む人を厳選する漫才には初めて出会ったんで。
 ただタイトルだけでなく、鬼頭真也さんみたいにもっとライトノベルの中身を面白おかしく巧みな言葉遣いで語ってくれたら、この漫才を受け入れてもらえる範囲が広がったんじゃないかと思います。
 ベン・トーは面白いですよね。あの全力で馬鹿なことをしている世界観が大好きです。
  
・コレは非常に楽しみづらいです。
 クレーム気質のネタは読み手を共感させて「共犯者」にまで巻き込んでしまうのがセオリーでそれ自体は結構出来ているんですが、
 問題はそのクレーム部分の内容が罪悪感を誘発するラインのモノばかりになってしまっていると言う状況なんです。
 ある程度の理解・納得が半ば強制的に入り込んできてしまうからこそ、
 自分があまりするべきではないと思っているケチの付け方をオートでやってしまうような思考回路を形成されて、
 そのままスムーズに罪悪感までたどり着いてしまう。
 そもそもMM-1と言う文章書きが集まる大会で、
 曲がりなりにもプロの文章であるライトノベルのあり方にケチを付けていくと言うのは特に印象が悪くなるワケですし。
 なのでツッコミが入るくらいじゃ印象は回復しきらないレベルですし、もっと追加のフォローになる発言を載せないとキツイ。
 登場するボケの作り方自体もその多くが一般的なラノベあるあるの範疇におさまっていて、
 この漫才でやる上での個性がのっかってこない印象が強いのでさらに前述の悪影響が目立つ。
 こーゆーテイストのネタは好き嫌い分かれやすいですし、このテイストが好きだったとしても、
 それこそ私は本来好きな方ですが「好きだからこそ厳しい目で見る」コトにすべきものだと思わせる形式なので本当に難しいです。
 今回はちょっと題材と取り扱いの悪さの相乗効果が目立ち過ぎていたと思います。
  
・いいね。感心した。面白いかって聞かれると疑問だけども、頗る感心した。
 特に疑問符や報告系のくだりは、ボケの暴走が心地良かった。
 丁度真ん中の点数って感じです。
 ところで、ライトノベルと東野圭吾と村上春樹しか読まないような人が日本の文学を語り出す風潮、何とかならないですかね。
  
・ここまで53組の漫才を読んで来たのですが、正直あまり笑えなかった漫才もいくつかありました。
 しかし、それらの漫才も「笑わせようとしてる」という跡は見えるので、なるべく良い部分を探すように心掛けていたのです。
 で、この漫才に関してなんですけど「笑わせよう」という気が無いようにすら感じました。
 内容が皮肉じゃなくてただの文句で、悪口で、とにかく不快感の方が強くなってしまってます。
 作者さんがライトノベルに対して本当はどのような意見を持っているのかは分かりませんが
 もし嫌いならわざわざ文句垂れ流しで書く必要は感じませんし、それでも書くならもっと笑わせるための皮肉として書くべきだと思います。
 好きならなおさら、良い部分であり魅力的な部分を伝える努力をするべきだと思います。
 このままではそのどちらでもないただの悪態です。
 会話を作る上手さは凄くあると思うだけにもったいないです。
 もっと笑わせるために特化したプラス思考なネタ作りをしてほしいです。
  
・この漫才の何が入り込みにくいかというと、白川の方もそれなりにライトノベルに詳しい、ということです。
 「たしかに○○だけど!」というツッコミの中の○○の元ネタを知らないと、面白い以前に読みにくさを感じてしまうと思います。
 それなりに知っている身としては、漫才というよりは何かのアニメの一部分を見ているような感じでした。
 
 黒田の主張自体はともかくとしても、ボケそのもののクオリティはそれなりに高いと思いました。
 どんな層に向けてネタを書いているのか、というのをもう少し意識してみてください。



No.056 サンザンヒーローズ
合コン
A:合コンでモテてえ

B:開始早々淫獣が放たれました

A:これまで何回もやってきたんだけど全く戦果があがらない
  やっぱあれか、最初居酒屋で取り皿配るときに自然と魔方陣の配置の仕方にしちゃって
  魔王クルプゥネギダレを召還してしまうのがいけないのかな

B:そりゃのっけからヒかれるわな!取り皿置いただけで豚トロのお供みたいなの呼び出したら!

A:ネギダレは豚トロのお供・・・略して、ネ・ギ・ト・ロ!!

B:はいどうもサンザンヒーローズですよろしくお願いします

A:でもそいつものっすご良い奴で召還しちゃっても「あれ、およびでない」つってドロンと消えるんだから

B:魔王レトロ臭パねえよ
  ちょっと他にも気になる点が出てくるかもしれないからお前の普段の合コンのパターンを教えて

A:いや普通とそんな変わらんぞ?まざ集合前の10分前には野郎共とスタンバイ。すでにHPは2/100だ

B:合コン前に何と戦ってたんだよ!

A:そして女の子が到着したらさっそく野郎共をかきわけて座ってもらう

B:ねえ何対何の合コンなの!?居酒屋の中で群雄割拠しないでもらえるかしら!

A:そして乾杯したあとにひととおり喋り合う

B:ここは普通だな

A:そしてほとぼりも冷めてきた頃で自己紹介

B:今!?よく相手のことも知らずにトークできたな!

A:そしてあとは恒例の「王様はダリだ」をする

B:誰だダリって!?

A:「王様だーれだ?」「私でふダリでふ」「ちぇーまたお前かよー」
  「じゃあ1番と5番は涙ながらに半月状たくあんを佐渡ヶ島の形に切り取るでふ」

B:その世界、不透明さが支配しとる!

A:で、ダリが全員お持ち帰りしてお開きさ

B:だからダリって誰だよ!!そんな奴がいるから上手いこといかな・・・いやそれだけが原因じゃないけども!

A:ダリの悪口言うなよ!俺に「王様はダリだ」を教えてくれたんだぞ?

B:お前そのゲームのどこに惹かれたんだよ!

A:だってwwwww何回やってもwwwwwwダリにwwwwなっちゃうんだぜwwwwww

B:お前のツボは丁度俺の対角線上にあるんだな

A:やべえwwww腹痛い腹痛いwwwwww

B:どんだけ尾を引いてるんだよ!

A:片腹痛いwwww

B:意味変わってくるだろ!
  もういい、ひとまずお前の合コンパターンの改善点を教えてやる

A:それは助かるわ。お礼に取り皿で魔王クルプゥネギダレを召還する方法を

B:ハナクソよりいらねえ

A:(マジ泣き)

B:まず合コン前に体力を100分の2しか残してないのはおかしい。もう少しマシな状態で来い

A:違うんだよ俺の家って周囲数キロに渡って毒沼が広がってるんだよ

B:はーいトラマナトラマナ
  それで合コンは男女それぞれ同じ人数が基本だ。そうしないと余りが出るのが丸わかりで冷めるだろ?

A:マジで!?でもこれ以上呼んだら店からあふれでちゃう

B:野郎の人数減らせや!!お前の同姓のネットワークの広さは十分わかったから!数人でいいから!

A:それでそれで?

B:あと自己紹介は先にしたほうがいい。初っ端から自分のことをある程度知らせておけばその後の会話も円滑になるから

A:そうか・・・通りでトーク中も「あっはっは、その話と服装おもしろーい。ところであなた誰?」としきりに言われるわけだ

B:とっとと気付けや!ファッションセンスと共に!

A:俺のファッションのテーマは「モンスター」だ

B:ぱみゅったことヌかしてんじゃねーよ!
  それで王様ゲームをするのは良いとして、ダリは二度と呼ぶな!!

A:お前そんなのご飯の無い茶碗じゃねえかよ

B:もっとマシな例え方なかったのか!?どんだけダリに枯渇してんだよ!

A:ちなみにダリの好きなアーティストは太陽とシスコムーンだ

B:どうでもいいわ!てかどいつもこいつもレトロ臭漂うな!

A:王様はダリじゃないとしたら、王様はだーれになるの?

B:誰を伸ばしてる時点で確信犯だろ!だからそれを抽選ゲームで決めるんだよ!
  ダリが王様のまんま他の人が言うこと聞くだけって梅宮辰夫の船上パーティーじゃねえんだよ!

A:え・・・てことは、俺も梅宮辰夫になれるの!?

B:王様にはなれるんじゃないかな!

A:梅宮哲夫には?

B:誰だよそいつ!!永遠にどうぶつの森でもやってろ!!

A:でもありがとう、これで大分合コンについてわかった気がするよ

B:手ごたえゼロだよこっちは・・・
  まぁでも力に慣れたなら幸いだよ。これで女ったらしのゲスおとこダリに勝ってやれ!

A:ダリって女だよ

B:レズかよ

予選総合第22位(準決勝敗退) サンザンヒーローズ
審査員
点数
68 56 46 80 65 平均63.00
【審査員コメント】
・なんか悔しいですけど終始堂々としていたのが凄く好きだったです。こやつ王者の風格を持っていやがる。
 店からあふれるくらいの野郎の絵面が面白すぎて笑いすぎて腹が痛かったです。急に人が多くなるのに弱いんですよ。
 「ぱみゅったことヌかしてんじゃねーよ!」とか日常で使いたくなる言い回しが多かったのも良かったです。
 ただダリの所だけ急に別の世界観に入ってしまった印象を受けたんで、雰囲気に合った別のボケを挿入した方がスッキリと読むことができたと思います。
  
・「開始早々淫獣が放たれました」と言う応答・言い回しと、
 「魔方陣の配置」の想像しやすさでグッと惹き込まれたんですが、
 それらを展開するワケではなくすぐにイメージの追い付いていない魔王を掘り下げていて置いてけぼりだったのが残念。
 合コンを主軸にしている割にその描写がそこまで丁寧ではないのでイメージを抱きづらい。
 飛ばした設定を持ってきていてそもそもの情報量も多いワケなので、
 イメージしづらさが情報処理の手間を増やすのは痛手として大きめなものになってしまう。
 字面と瞬間的な言い回しの面白さは惹き込みなくてもそこそこ発動してましたが、
 それでも惹き込みをちゃんと継続できていたらさらに楽しめたと思いますし、
 展開を積み立てていく部分は情報認識の労力要求とイメージしづらさが合わさって半減程度の威力になっていました。
 導入の意識誘導がもう少し丁寧だったらハネていたかもしれないと、
 読んでいてもったいないと思う気持ちが強かったですね。
  
・優勝してからというもの、彼らは燃え尽き症候群起こしてるんですかね
 決して面白くないことはないんですけど、全体的に投げやり感が凄いというか
 そういう方向性に定めたとしても、それを前面に押し出し過ぎて何だかなあって感じです
  
・「ぱみゅったことヌかしてんじゃねーよ!」というフレーズは今大会で一番面白かったです。完全に心打ち抜かれました。
 本編はとにかく流れが綺麗でテンポ良く読み進める事が出来ました。
 「哲夫」からの「どうぶつの森やってろ!」は分からない人にはなんのこっちゃになってしまうんでしょうし、内輪ボケということもあるんですけど
 笑ってしまったからには加点対象にするしかないですよね。
  
・短い中にも面白さがしっかり凝縮されていますね。面白いです。さすがにちょっと凝縮されすぎだった気もしますけどね。
 長さも重要ではありますが、もう1歩2歩良いボケがあれば何気に決勝行く可能性あったんじゃないですかね。



No.057 乙女の方程式
正義のヒーロー
Y美:はいどうもー、姉妹漫才師「乙女の方程式」です。よろしくお願いします!

X子:いやー第6回以来のMM−1の舞台ですからね、頑張っていきましょうよ。

Y美:さっそくなんだけど、あたし正義のヒーローとかって憧れるんだよねぇ。
   ピンチの時に駆けつけてくれる、良いよねぇ。カッコイイよねぇ。

X子:!! Y美はそんなものに憧れているのね。
   じゃあ私、正義のヒーローになってみようかしら…

Y美:いやいや、別にお姉ちゃんになって欲しいとは言ってないからね?
   それにヒーローて…

X子:そうね…名前は「お姉ちゃんマン」なんてどうかしら?

Y美:勝手に話続けないでよ!…ってかよりにもよって「お姉ちゃんマン」て!!
   いったいどんなセンスを持ってればそんな名前になるのよ…

X子:なんで? 正義のヒーローって大体「マン」が付いてるじゃない。
   「アンパンマン」とか「カレーパンマン」とか「食パンマン」とか。

Y美:ヒーローのチョイス偏り過ぎでしょ…まぁ言いたいことは分かるんだけどでも…

X子:そんでもって私はY美の姉だから「お姉ちゃん」+「マン」で「お姉ちゃんマン」ってワケ。
   はい論破。

Y美:いや論破て。
   …お姉ちゃん、「マン」ってその…どういう意味か分かってる?

X子:人!

Y美:即答!?…まぁ別にそれも間違ってるワケじゃないんだけどさ。
   ただ…基本、男の人に付ける言葉だから。

X子:えー…じゃぁ「キャリアウーマン」の「マン」は何なのよ?

Y美:それは「ウーマン」で女性を表してるのよ。もう大人なんだからそのくらい知ってなさいよ…
   あとついでに、「ヒーロー」は男性を指す言葉で、女性なら「ヒロイン」になるからね。

X子:そうなの?
   …でも「ヒロイン」ってあんまり敵とか倒しそうなイメージ無いじゃない。どちらかというと攻略対象、っていうか。

Y美:それは…分からないでもないけどさぁ……

X子:…と、とにかく!!私は「お姉ちゃんマン」やるの!!
   正義のヒーローである…えっと…ヒロイン…うーん…

Y美:わ、わかった、わかったから!無理に上手いこと言おうとしなくても良いし。

X子:正義のヒーロ…ヒロイ……ヒロ………あーーーーーもう、「姉は正義」!!

Y美:意味変わって来るでしょそれ!!
   まぁ、やってみたいっていうんなら付き合うよ。 名前に難はあるけど…

X子:ホント?
   じゃあ、私はお姉ちゃんマンやるから、Y美は道端で小学生の男子どもに襲われる女子高生の役ね。

Y美:いや相手小学生て!?

X子:で、ピンチになったら私のの名前を大声で叫んでね!すぐ駆けつけるから。

Y美:えっ、その名前大声で叫ばなきゃいけないの!?
   何かすごく嫌だなぁ…








Y美:あたしY美!高校生!
   下校途中にを寄り道をしていたら、路地裏で小学生のいじめっ子男子共に囲まれちゃったわ!!
   1人1人は可愛らしいけど、集団で襲ってくるとなると話は別ね!
   …よーし、こんな時は大声でお姉ちゃんマンを呼ぼう。せーの、
   おねえーーちゃーーんマーーーーーン!!

X子:………

Y美:…えっ、あれっ、こ、来ないなぁ?
   こ、こんな時はもう一度お姉ちゃんマンを呼んでみようね。せーの、
   おねえーーちゃーーんマーーーーーン!?

X子:(いじめっ子)
   「プププ…おい、聞いたかよ、『お姉ちゃんマン』だってよ?」
   「お姉ちゃん……マンwwwwてwww女なのにマンてwww」

Y美:ほら笑われたし!!だから嫌だったのよ!!
   ってかさっきまで知らなかったことをよくボケに反映してきたね!?

X子:(いじめっ子)
   「ってか、女でマン、とか……」
   「マンて、まん、て…おま……トんだエロスじゃねぇかよww」
   「ハハハ!本当だ本当!エロスだエロス!」
   「エロスゥ!エロスゥ!」

Y美:さらに一番心配してた展開が来ちゃったよ!!
   こっそりモヤモヤしてた要素をいとも簡単に再現してくれちゃって!!

X子:(いじめっ子)
   「はいエーロース! エーロース!」
   「エーロース! エーロース!」
   「エーロース! エーロース!」
   「エーロース! エーロース!」

Y美:ってかお姉ちゃんマンも早く出てきなさいよ!!「すぐ」駆けつけるって言ってたでしょ!?
   あたしが恥をしのんで大声で呼んであげたんだからさぁ…

X子:(どこからともなく飛んできて塀の上にシュタッ)
   ででーん、お姉ちゃんマン、参っ上!

Y美:うわぁ、カッコイイけど何かがダサい!でも来てくれてありがとう!

X子:(いじめっ子)
   「うわぁ、こいつ塀の上に立ってるからスカートの中見えてやがるぜ。」
   「えっ!?マジでエロスじゃねぇか!」
   「マジマジ!?パンツ何色!?」

Y美:おい男子共!!どこ注目してんのよ!

X子:(いじめっ子)
   「うわぁ、すげぇ…この女、パンツに『パンツ』って書いてあるぜ…」

Y美:お姉ちゃんマンもどんな下着履いてるのよ!!パンツにパンツって書くバカがどこにいるのよ…
   ってか、そろそろあたしのこと助けなさいよ!

X子:呼んでくれてありがとう、Y美ちゃん。
   さぁ、男子共が私のパンツに見惚れている隙に逃げるのよ!

Y美:そんな助け方アリ!?もっとカッコイイ助け方を期待してたのに!

X子:だって、たかが小学生のガキんちょ共に暴力を揮っちゃうのも可哀想じゃない…

Y美:そ、それはそうだけど…だったら暴力揮って問題ないヤツを敵にしなさいよ。何らかの怪人とかモンスターとかさ。

X子:それいいわね!じゃぁ、Y美は下校途中に怪人に襲われる女子高生やってね。

Y美:その女子高生設定いるのかなぁ…まぁ別にいいけど。








Y美:あたしY美!高校生!
   下校途中にを街を歩いていたら、怪人が街を荒らしていたわ!!
   あっ…ヤバイ、怪人が何かこっちに向かってくる!?
   …よーし、こんな時は大声でお姉ちゃんマンを呼ぼう。せーの、
   おねえーーちゃーーんマーーーーーン!!

X子:(どこからともなく飛んできて怪人の頭の上にシュタッ)
   ばばーん、お姉ちゃんマン参じょ…あぁ〜〜〜れ〜〜!!(怪人に振り落とされる)ばたっ!ずで〜ん!

Y美:どこに登場してるの!?そして効果音がなんか愉快!!
   …と、とにかく来てくれてありがとう!

X子:(怪人)
   「お、おのれお姉ちゃんマンめ…ワタシの頭を踏んづけるとは…
    あーもう、なんと嘆かわしい!めっちゃイライラする!ぷんぷん!激おこぷんぷん丸!!」

Y美:怪人めっちゃ怒ってる!?しかも何か微妙にカワイイ怒り方だし!

X子:なにをー!こちらこそ街壊されたり人襲われたりで激おこぷんぷん丸なんですけど!
   ムカ着火ファイアー!カム着火インフェルノォォォォオオウ!げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム!!

Y美:何の応酬よ!!…てかそれ言いたいから言ってない!?

X子:じゃあ…こんな状況でいつ怪人と戦うっていうの!?……今でしょ!!

Y美:あっ、……あのさちょっといいかな!?
   お姉ちゃん…マンさ、何か突然今年の流行語を使いまくってる気がするんだけど…

X子:お姉ちゃんマンは年頃の女性なのよ。だから流行に敏感なの!…うふふ、ワイルドでしょ?
   
Y美:どういう意味よ!?あんまり納得できないんだけど!!
   ワイルドの使い方に関してはもはやツッコむ気も起きない!

X子:(怪人)
   「さーて帰ってパズドラとなめこ栽培で遊びながらLINEでiPS細胞を…」

Y美:怪人も怪人でその最近の若者気取りな感じは何なのよ!?
   LINEでiPS細胞をどうするのかは全くよく分からなくて怖いけど!

X子:おのれ…!怪人め、今戦うって言ったのに変えるとは何事だ!
   よーし…こうなったらもう、私なりのアベノミクスをお見舞いしてやるわ!

Y美:だから何なのよその今年の言葉推しは!!
   だいたい「私なりのアベノミクス」の意味が分からないわよ!

X子:喰らえ「恋の金融緩和」!トォッ!!

Y美:…名前だけなのかな!?技の名前をアベノミクスの内容っぽくしただけなのかな!?
   どう見てもただのパンチだよね!?

X子:チッチッ、甘いわねY美。
   「恋の金融緩和」は普通の「お姉ちゃんパンチ」と比べてね、
   なんと…威力が3%もアップするのよ!!

Y美:たった3%!?見かけ倒しにも程があるじゃないのよ!!

X子:(怪人)
   「な、なに…3%だと……!?
    アベノミクスでインフレ目標としている2%という値を上回ってるだなんて…」

Y美:どんな解釈よ!!そんな都合の良い解釈してくれる怪人よくいたわね!?
   だいたい、パンチの威力が1%上がるのとインフレ率が1%上がるの、絶対後者の方が大変だしすごいコトだからね!?

X子:(怪人)
   「ぐふっ…ここままではやられてしまう…
    こうなったらチクショウ、えいっ!(スカートをめくる動作)」

Y美:まさかの反撃方法!?女性に対して何てことを!!許せん!

X子:…フフッ。

Y美:効いていない!?

X子:…Y美。
   私ね、スカートめくられても大して感情湧かないのよね。

Y美:いやそこは気にして!?年頃の女性何でしょ!?お願い、逆に気にして!!

X子:(怪人)
   「うわぁ、すげぇ…この女、パンツに『パンツ』って書いてあるぜ…」

Y美:またかよ!!まだそのパンツ履いてたのかよ!!

X子:(怪人)
   「いや、違うぞ!?…よ、よく見たら『パンツマン』って書いてある!!」

Y美:何故「マン」を付けたの!?ねぇ、お姉ちゃんマンさんよ!!
   …ってか、怪人さん堂々とスカートめくり過ぎじゃないですか!?

X子:…隙あり! 必殺「お姉ちゃんドロップ」!!

Y美:おおっ!?怪人がパンツに注目している隙に攻撃する作戦だった!?
   そういうコトだったらまだ許せなくもないかもしれない!

X子:(もぐもぐ)あー…やっぱこの飴おいしいなぁ。

Y美:ドロップってそっちの意味!? ドロップキック的な何かだと思っていたら飴舐めて休んじゃった!?
   ってか、何が「必殺」だったのかしら!?

X子:(もぐもぐ)んー…でもちょっと辛すぎるのがアレよねぇ…

Y美:辛い飴!?必殺って、味覚細胞弱らせる的な意味なのかな…

   …ってかそんなノンビリしてちゃダメだよね!?今怪人に何されてもおかしくない状況だよね!?

X子:(怪人)
   「隙あり!」

Y美:ほら、ヤバい、ヤバいって!

X子:(怪人)
   「グヘヘ、頭に『お』を付けて『おパンツマン』にしてやったぜ!」

Y美:こっちはこっちでしょーもなかった!
   またその作業中におきましては完全にセクハラの域に達していたと思いますけど!?

X子:キャッ!? 何勝手に書き加えてんのよ!まじおこなんですけど!

Y美:…何か怒りのゲージがさっきより下がってるのは気のせい!?
   ってか、街が壊されてるのよ!!あたし襲われそうだったのよ!!もっとちゃんと攻撃してよ、おねえちゃんマン!

X子:よーし、こうなったら……えいっ、デコピン!

Y美:「お姉ちゃんデコピン」ですら無い!?

X子:(怪人)
   「うわ〜、やられたんこぶ〜(バタッ)」

Y美:怪人やられちゃったよ!!弱いなんてレベルじゃなかった!!

X子:ふぅ…こうして街の平和は守られたわ…

Y美:あんまりそんな感じがしないんだけど!?
   強いて言えば、あんまりお子様によろしくない事象がいくつか起こってたけど!?

X子:…何よ、「お姉ちゃんマン」に何か文句あるの?

Y美:ありまくりだよ!!いろいろ指摘してきた通りだよ!
   名前も行動もおかしいところありすぎだし、あとついでに怪人もおかしかった!

X子:そっかー…じゃあ、私は「お姉ちゃんマン」を引退するから、
   今度はY美が「いもうとマン」になってね!

Y美:やらないわよ! いい加減にして。

XY:どうも、ありがとうございました!

予選総合第26位(3回戦敗退) 乙女の方程式
審査員
点数
61 64 53 54 平均58.00
【審査員コメント】
・今大会のNGワードをためらいなく利用する作者の心意気に惚れ込みました。
 終始ブレないお姉ちゃんマンのキャラが面白かったです。パンツにイタズラ書きされても微動だにしないお姉ちゃんは今大会で一番エロかったと思います。
 ただ最後の方があっさりしすぎてしまっていたので、小学生と戦った時くらいのテンションを最後まで貫き通してほしかったです。
  
・「お姉ちゃんマン」と言うのは字面だけでその言葉の性質が分かりやすいモノだから、
 序盤にあそこまで丁寧に掘り下げなくて良かったんじゃないかと。
 むしろあれだけ行数をかけて取り扱ってしまうと、
 派生ボケを無意識に予測させてしまう時間を長く取るコトになってしまうため、
 デメリットの方が目立ってきてしまう。少なくとも私は「エロス」的な発想は予測できてしまい威力半減でした。
 この予測の発現自体は「期待」ではなく「予定調和」になりやすい、
 ありふれたラインの発想を利用しているので効果としてはマイナスですしね。
 まぁでも前述の通り分かりやすいキャラクター作りと、
 まぁちょっと過多寄りですが飲み込みやすい紹介部分でネタ全体の流れは飲み込みやすく楽しみやすかったです。
 特に後半のくだらなさが情報量ちょっと多めなのにすんなり入って来れるようになっていて面白かったです。
  
・ヒーローネタの上がりに上がってる及第ラインを越えていない。
 全体的にまだまだベタ。
 けど、時事ネタを取り上げたあたりからは読めるレベルにはなった。
 ともあれ、ボケの応酬になりそうでならない惜しいネタではありました。
 一つ飛び抜けるボケがあれば良かったんですが。
  
・序盤の「お姉ちゃんマン」のネーミングについての議論は導入として凄く良くて、綺麗にコントに入れていたと思います。
 コント自体も中々にレベルが高く、一つ一つのくだりをしっかり決めていたと思います。
 流行語のくだりは、なにやらNGワードを連発してしまっているような感覚がしたのですが
 怪人の「さーて帰ってパズドラとなめこ栽培で遊びながらLINEでiPS細胞を…」でしっかり笑いに換算していたので結果としてプラスに作用していたと思います。
  
・我ながら何と言う安定感…
 調べてみたら、今回の中で審査員得点の最大と最小の得点差が2番目に小さいようです。(1位がどの組かはお楽しみに。)
 
 というわけで、初めて自分のところで開くMM-1で非覆面のネタを出してみました。
 このネタを書きながら、正直なところ自分でも物足りなさを解消しきれていなくて、そこはやはり課題だなぁと思いました。
 ただ久々に正統派系なネタを書いてみて、やっとネタ書きの感覚が戻ってきたような気がします。
 次回はいよいよ、サイハンさんよろしく管理人優勝の放送事故を狙っちゃおうかな!?
 
 
 …あ、そこ。「今回も別の意味で放送事故だったじゃねーか」とか言わない!!