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Loreena McKennitt
ロリーナ・マッケニット

*エレメンタル *ザ・ヴィジット *ウィンター・ガーデン *ザ・ブック・オブ・シークレッツ

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ELEMENTAL
エレメンタル

オススメ☆☆☆

<収録曲>1.Blacksmith 2.She Moved Through The Fair 3.Stolen Child 4.The Lark In The Clear Air 5.Carrighfergus 6.Kellswater 7.Banks Of Claudy 8.Come By The Hills 9.Lullaby

1985年に発売された、ロリーナ・マッケニットのデビューアルバム、「ELEMENTAL(エレメンタル)」。
私が所有しているのは輸入盤ですが、ブックレットには歌詞が掲載されています。
日本盤については所有していないので詳しいことはわかりませんが、こちらのサイト様で購入できます。

さて、このアルバム「エレメンタル」ですけれども、メジャーなレコード会社からではなく、ロリーナ自らが設立したクインラン・ロード(Quinlan Road)から発売された、いわゆるインディーズ・アルバムなのですが、そうでありながら、2万枚以上のセールスを記録したとのことです(「ザ・ヴィジット」日本盤ブックレット参照)

収録されているのはトラッドソングが中心でして、アレンジは素朴でシンプル。しかし聴きやすく、心地のいいアルバムです。
ロリーナがワーナーと契約し、メジャーデビューした「ザ・ヴィジット」以降の音楽は、近代的な打ち込みの技術や、ケルト文化以外の文化の要素も大いに取り入れ、単純にジャンルを「ケルト系」と断じてしまえない独特の世界があるのですけれど、このアルバムには、そういった要素は少なく、ごく素直にジャンルとしては「ケルト系」に分類できると思います。もっとも、オリジナル曲もありますし、歌詞は全部英語ですから、ごく伝統的な伝統音楽、といったものを求めている方には、方向性が違うかもしれません。

1.Blacksmith(ブラックスミス)
「ブラックスミス」とは鍛冶屋さん、蹄鉄工さんのこと。辞書によりますと、「昔は時には病人も治した」とも書かれています。(ジーニアス英和辞典)
実は私、最初は何も知らなかったものですから、スミスさんという名前の黒人の方のことなのだろうと思いました。
しかし、それにしては、歌詞のなかに「Wrote me a letter / With his hammer in his hand」という一節があって、手紙を書くのにどうしてハンマーなんか握っているのかしらと不思議に思い、辞書をひいたというわけです。
なお、スミスに関しての詳しい記述は、「闇の戦いファンサイト」さんの書蔵庫、ウェイランド・スミスの項に詳しいので、興味のある方は、ぜひそちらを参照してみてください。

2.She Moved Through The Fair(シー・ムーヴド・スルー・ザ・フェア)
結婚の約束はしたもののそれが叶わぬまま死んだ恋人が、夜にあらわれて愛をささやく歌。おそらくは身分違いの恋人同士で、その悲恋を歌った曲。
アイルランドのトラッドで、有名なものの一つ。
当サイトで紹介しているアルバムのなかでも、何人かが歌唱しています。→(メイヴのファーストアルバム「メイヴ」、オムニバスアルバム「ケルティックウーマン2」にはフォールン・エンジェルス歌唱のものが収録。)

3.Stolen Child
「盗まれた子供」とでも訳すのでしょうか。アイルランドの有名な詩人、ノーベル賞受賞者でもあるウィリアム・バトラー・イェイツ(William Butler Yeats[1865-1939])の詩に、ロリーナが独自に曲をつけたもの。
W.B.イェイツは、詩に興味のない方でも、妖精物語に興味のある方なら、たいてい御存知の名前かと思います。
ケルトの妖精物語では、妖精が人間の子供を盗んで、かわりに自分の子供(醜い)を置いてゆく、ということがよくあります。いわゆるチェンジリング(取り替え子)、というやつですね。この詩の「Stolen Child」も、おそらく妖精にさらわれた子供のことだと思います。

4.The Lark In The Clear Air(ザ・ラーク・イン・ザ・クリア・エアー)
アイルランドのトラッド。ここに収録されているのはインストゥルメンタルですが、歌唱されることも多いです。
当サイトで紹介しているアルバムのなかでも、イギリスのボーイソプラノ、リーアム・オケーン歌唱のものがハード・ロマンティック「ソプラーニ」に収録、同じくイギリスのボーイソプラノ、ボーイズ・エアー・クワイアの「エアー」というアルバムに、こちらはパトリック・バロウズのソロで収録されています。

9.Lullaby
英国の詩人、ウィリアム・ブレイク(William Blake [1757-1827])の詩にロリーナが独自の曲をつけたもの。
このアルバムに収録されているロリーナのオリジナル曲は、この曲と、3「Stolen Child」のみ。他はトラッドです。

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(2003年8月)

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ザ・ヴィジット
THE VISIT

輸入盤

<収録曲>1.All Souls Night 2.Bonny Portmore 3.Between The Shadows 4.The Lady Of Shalott 5.Greensleeves 6.Tango To Evora 7.Courtyard Lullaby 8.The Old Ways 9.Cymbeline

ロリーナ・マッケニットの4作目のアルバム、「THE VISIT(ザ・ヴィジット)」。日本盤は1992年1月に発売されました。私が所有しているのも日本盤で、ブックレットには解説と、歌詞の対訳が掲載されています。ただ、日本盤は現在では入手困難かもしれません。輸入盤のほうが入手しやすいと思います。

ロリーナ・マッケニットはカナダの人ですが、ケルト音楽に対する敬愛が深く、その紡ぎだす音楽には、一般に「ケルト的」と呼ばれる要素がふんだんに含まれています。
もっとも、このアルバムには打ち込みの音も使われていますし、曲もオリジナル曲の占める割合の方が多く、伝統的な「ケルト」の音楽とは違います。土臭さですとか、躍動感にあふれたエネルギーといったものを求めている方には、おそらくは傾向の違うアルバムかと思います。音楽的には、とても作りこまれていて、現代風です。しかし、ポップやロック、ともまた違います。
作りこまれているといっても、打ち込みオンリーではなく生楽器も充分に使われていますし、機械の音が耳につきすぎるだとか、うるさい、といったことはなく、やわらかいです。やわらかいというか、霧や霞がかかっているような感じです。天気でいうならば、曇天といったところ。静寂に満ちていて、落ち着いていて、人によっては地味に聴こえるかもしれません。けれども、聴けば聴くほど、その世界にひきずりこまれるアルバムです。
歌声もまた素晴らしくて、ソプラノヴォイスですけれども、たんに綺麗なだけではなくて、深みがあります。比較的多くの方に、受け入れられやすい声だと思います。

1.All Souls Night(オール・ソウルズ・ナイト)
ブックレットに書かれているロリーナ本人のコメントによると、日本の灯篭流しと、"All Souls Night"と呼ばれるケルトの年明けの儀式が頭にあって書かれた曲とのこと。
どこかアラビア風というか、東方の雰囲気もあります。それは、
『ケルト人(ゲール人)というのは、遥かインドやペルシャを発祥の地とした民族かもしれないというのが、彼女の想像』なのだそうで、『ケルト人が摂取した最も初期の東洋からの影響を表現したかった』、そういう思いがあってのようです。(『』内ブックレットより抜粋)
このアルバムのなかで、かなり好きな曲。幻想的で美しい曲です。

4.The Lady Of Shalott(シャロットの女)
イギリスのヴィクトリア朝時代の代表的詩人、アルフレッド・テニスン(Alfred Tennyson)の有名な詩に、ロリーナが独自の曲をつけたもの。(※アルフレッド・ロード・テニスン(Alfred, Lord Tennyson)とも表記されるのは、1883年に男爵の位階をもらい、その翌年には貴族院議員になっているからです)
この詩は、アーサー王物語に材をとったもの。日本語訳としては、「シャロットの姫」と訳されるのも一般的です。
このアルバムでは全編歌っているわけではなく、少し省略しています。それでも11分近くある長い曲なので、詩の内容がわからないと、やや退屈に感じてしまうかもしれません。とはいえ、このアルバムのブックレットの対訳には、たとえば「Tis the fairy Lady Of Shalott」といった一文が、「これがかのシャロットの女」とのみ訳されていて、「fairy(フェアリー、妖精)」という単語がなぜか無視されている、といったようなことがあり、個人的にはちょっと、わかりにくい、不明な部分のある訳だと感じます。
この詩は、岩波文庫の「対訳テニスン詩集」西前美巳編 にも収録されていて、私はそれを参照しながらこの曲を聴くことが多いです。そちらの訳のほうが、どちらかというと分かりやすいと思います。(「対訳テニスン詩集」の通販ページはこちら

5.Greensleeves(グリーンスリーヴス)
イングランドの古謡。シンプルながら、あるいはシンプルゆえに、声に力のある一曲。独特の雰囲気で、毅然と歌われています。
(同曲他曲→メイヴ「銀色の海」、オムニバス「エンジェルズ・アイ」、Vita Nova「SHIAWASE」、メラニー・ロス「ヴォイス・フロム・ザ・ハート」)

9.Cymbeline(シンベリン)
シェイクスピアの「シンベリン」に材を得た曲。
ロリーナはオンタリオ州ストラトフォードのシェイクスピア・フェスティバルに、役者、作曲家、歌手として参加の経歴があり、「ヴェローナの二紳士」や「あらし」などの舞台を経験しているとのことです。

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(2003年6月)

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ウィンター・ガーデン〜クリスマス・ソングス
A Winter Garden five songs for the season

オススメ☆☆☆

<収録曲>1.Coventry Carol 2.God Rest Ye Merry, Gentlemen 3.Good King Wenceslas 4.Snow 5.Seeds Of Love

ロリーナ・マッケニットの、クリスマス・ミニアルバム。日本盤は1995年11月に発売されていまして、私が所有しているのも日本盤ですが、現在では入手困難かもしれません。輸入盤のほうが手に入れやすいかと思います。なお、日本盤には歌詞の対訳が別紙にて付属していました。

さて、このアルバム、「ウィンター・ガーデン〜クリスマス・ソングス(A Winter Garden five songs for the season)」ですけれども、全部で5曲、総時間数は22分ていどとなっています。有名なクリスマスキャロルのほか、ロリーナのオリジナル曲も2曲収録されています。
ロリーナのアルバムには、同じくクリスマスアルバムとして、これよりも前に、「ドライヴ・ザ・コールド・ウインター・アウェイ(TO DRIVE THE COLD WINTER AWAY)」 というアルバムが発表されているのですが、そちらは、やや通向け。こちらの「ウィンター・ガーデン」のほうが、親しみやすいというか、聴きやすいと思います。とはいえ、パーティの雰囲気を盛り上げたり、恋人同士がロマンチックな気分にひたったり、といったことに使用するにはおそらく不向きなアルバムですので、あまり一般の方にもオススメとはいえないのですが。(私にとっては大好きなアルバムですので、できれば多くの人に聴いていただきたいのですけれど)

1.Coventry Carol(コンヴェントリー・キャロル)
「今度ベツレヘムに生まれた赤児はユダヤ人の王になるだろう」という預言をきいたヘロデ大王の命令によって、イエス・キリストの生まれた日、幼い子供達がつぎつぎと殺された。その悲しみを歌った曲。

2.God Rest Ye Merry, Gentlemen(神が喜びを下さるように)(賛美歌第2編128番 世の人忘るな)
「Ye」というのは古い英語で、「汝ら」、とかいう意味のようです。「Ye」ではなくて「You」、「God Rest You Merry, Gentlemen」という表記をされることも多い曲です。日本では、「賛美歌第2編128番 世の人忘るな」とよばれる曲。
古楽の世俗曲が好きだという方なら、おそらく気に入っていただける可能性が高いのでは、という気がします。素朴なのですがリズミカルで、ついつい口ずさみたくなる曲。アレンジもすごく良くて、大好きな一曲です。
(聴き比べ→バッハ合唱団「carols(オムニバス)」、ボーイズ・エアー・クワイア「メリー クリスマス」

3.Good King Wenceslas(ウェンツェル王様は)
この曲も、素朴な雰囲気をのこしつつ、アレンジがやはり見事です。歌唱については、この曲だけでなく、すべての曲において素晴らしいです。

4.Snow(スノー)
ロリーナのオリジナル曲でして、アルバム「ドライヴ・ザ・コールド・ウインター・アウェイ」にも収録されていますが、再録ではなく、新たに録音されたもののようです。

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(2003年6月)

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ザ・ブック・オブ・シークレッツ
the book of secrets

オススメ☆☆☆

<収録曲>1.Prologue 2.The Mummers' Dance 3.Skellig 4.Marco Polo 5.The Highwayman 6.La Serenissima 7.Night Ride Across The Caucasus 8.Dante's Prayer

ロリーナ・マッケニットの「the book of secrets(ザ・ブック・オブ・シークレッツ)」。日本盤は1997年10月に発売されましたが、現在では入手困難かもしれません。日本盤には、ブックレットに掲載されているロリーナ本人による曲解説の日本語訳と、歌詞の日本語訳が別冊でついていました。

さて、このアルバムですけれども、かなり好きなアルバムです。特に8曲目の「ダンテの祈り」は、相当に好きでたまらない曲です。
収録曲数は全部で8曲と、やや少なめですが、一曲一曲がけっこう長めにつくられていて、5.「ハイウェイマン」などは、10分を越えます。
全体的に、完成度が非常に高く、また、ロリーナのアルバムのなかでも、とっつきやすいアルバムだと思うのですが、それでもメリハリのきいたアップテンポな曲しか聴けない、という方には、やや不向きかもしれません。目をとじて静かに耳をかたむけて音楽を聴くのが好き、といった方にオススメのアルバムです。また、ファンタジックな音楽が好きな方にも。
もっとも、ブックレットの本人曲解説からは、スーフィー教(イスラム教の神秘主義)への関心が示されていたり、4.「マルコ・ポーロ」にはスーフィーのメロディを織り込んだり、中近東のエッセンスもかなりとりいれられていますので、しばしばロリーナの形容として使われる「彷徨えるケルト人」というイメージから、ロリーナの音楽に西洋的なもの、ケルト的なもののみを求めてしまうと、やや困惑されるかもしれません。ケルトというジャンルに分けられないこともないけれど、もっと無国籍な音楽です。文明と文明はぶつかりあうのではなく、まざりあうのだと、ロリーナの音楽をきいていると、そんなことを思います。

5.The Highwayman(ハイウェイマン)
詩人のアルフレッド・ノイズ(Alfred Noyes[1880-1958])の有名な詩「The Highwayman」に、ロリーナが独自の曲をつけたもの。「ハイウェイマン」とは、英語の辞書をひくと「追いはぎ」と訳されているのですが、この詩のなかでは、たんなる犯罪者というよりも、ロビン・フッドのような、一種の義賊といった描かれ方をされているように思います。反政府、反権力の英雄、といった感じでしょうか。というのも、権力側である兵士のほうが、ひどく悪辣にえがかれていて、悪者にしか思えないのです。
詩といっても物語になっていて、内容は、ハイウェイマンをつかまえようとして兵士たちが、ハイウェイマンの恋人である宿屋の娘のもとに押し入り、銃口を娘の胸の下にあてて縛りつけ、ハイウェイマンが逢引にやってくるのを待ち伏せするのですが、娘は自ら、自らにむけられた銃口をひき、その音で恋人に危険を知らせます。銃声をきいたハイウェイマンは立ち去りますが、翌日、娘の死のこと、娘がどのように死んだのかということを知り、復讐鬼となって馬をはしらせ、剣をふりまわしますが、最後には打ち倒されてしまう、という物語です。そうして死したハイウェイマンの霊が、いまでも古びた宿屋の戸口へやってくるという…。

8.Dante's Prayer(ダンテの祈り)
冒頭でも述べましたが、ロリーナの曲のなかでも、かなり好きな一曲。男声合唱(グレゴリオ聖歌を彷彿とさせますが、単声ではありません)ではじまり、ロリーナの歌声のあと、また最後も男声合唱が遠くから響いてきて、消え入るように終ります。始終深遠な雰囲気に満ちていて、どこか哲学的でもあります。哲学的というか、神学的というほうがピッタリかもしれませんが、いずれにせよ、生きることの寂しさや救いについて、叫ぶでもなく説教するでもなく、高尚な態度でもって、さながら自己の内面に語りかけるかのように歌っています。
(同曲異曲→この曲はアイルランドの歌手、メイヴがアルバム「メイヴ」にてカヴァーしています)

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(2003年7月)

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■関連■

The Highwayman
ハイウェイマン

Alfred Noyes(アルフレッド・ノイズ)の詩「The Highwayman」に、Charles Keeping(チャールズ・キーピング)が絵をつけた、絵本。ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。ケイト・グリーナウェイ賞とは、毎年、イギリスで出版された絵本のなかから、もっともすぐれた作品の画家に贈られる賞です。
一応、子供向けの絵本だと思うのですが、しかし絵柄は、少しクセというかアクがあって、芸術的。やや官能的でもあり、怪奇趣味風味もあり、どちらかというと大人の方が楽しめる感じがします。私はすごく好きですが、残酷な場面もある話ですし、誰にでもオススメできるとは思っていません。
大きさは、A4くらいの、やや大きめの本。ページ数は30ページくらいで、薄いです。
ロリーナ・マッケニットの「ハイウェイマン」(アルバム「ブック・オブ・シークレッツ」収録)を聴きながら、この絵本を眺めるのは、なかなか味わい深いものがあります。怪奇幻想好きの大人の方には一読の価値があるかと。

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(2003年9月)

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