サイト開設6か月経過記念企画。
まずは5/6の日記の注意書きをご覧下さい。 その上で納得出来た方と既にご承知の方は反転でどうぞ。 (全3回予定)
昼間から遮光のカーテンを引いた薄暗い部屋でベッドを背もたれにして二人は肩を並べて座っていた。 緊張に顔を強張らせている貞治はTV画面を凝視していて、集中しているのだろう、薄く唇が開いたままになっている。 その貞治にシャツの裾を掴まれて身動きのとれない祐大は、といえば、流れているビデオはそっちのけで貞治の様子を『可愛いなあ』などと思いながら窺っていた。
貞治が真剣に観ているその映画は去年それなりに話題になった作品ではあったが、祐大も貞治も興味がなかったので観には行かなかった。 今週の土曜、貞治はクラスの友達何人かとこの映画の続編を観に行く約束をしたらしい。 それで予習をするために、祐大の部活のない今日、レンタル店でビデオを借りてきての鑑賞会となっているのだった。 「……っ」 時折、貞治がビクッと体を竦ませて祐大のシャツの裾を引く。 貞治のあからさまな怖がりようは幼い頃からまったく変わらなくて、祐大は貞治に気付かれないように、ふふ、と笑った。 今観ているのは、昨今流行の和風ホラーだ。 所謂スプラッタものよりは幾分ましな気はするが、どうにも祐大の興味を引く内容ではない。 そしてこの怖がりようからして、おそらく貞治も観たくて観ているのではない。 貞治がはっきりそう言ったわけではないが、クラスメイトと観に行くことになったのは、内容をよく知らないまま了承して、約束した手前引っ込みがつかなくなった、というのが妥当なところだろう。 ビデオを一緒に観て、と頼んできた時の貞治の様子は、内容を楽しみにしているどころか罰ゲームに耐えているようだった。 貞治はちいさな時からとても怖がりで、暗いところというだけで嫌がったし、お化け屋敷にでも連れて行こうものなら大泣きしていた。 そのおかげというかなんというか、祐大は怖がるより先に貞治を宥めることを覚え、大抵のことでは動じなくなった。 映画のように明らかに作り物とわかっているものは尚更で、仮想世界でスリルを感じることもない。 しかし貞治はそうではないようで、見事に制作者の意図通りのところで恐怖を感じているようだった。 それがまた、祐大の目には可愛く映るのだけれど。
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