……… 僕は円谷光彦,16歳。 帝丹高校一年生です。 僕はいま,ある決心をしています。 その決心とは………それは。 話をすると,長くなってしまうのですけれども。 僕達は,小学校一年生の時,少年探偵団をしていました。 幼馴染の歩美ちゃんと元太君と一緒に。 そして,その中には,もう一人の仲間がいました。 それが,江戸川コナン君でした。 彼は,僕達の中でも,いつでも冷静で大人びていて,いろいろな事を知っている,かっこいい子供でした。 少年探偵団も,今思えば,彼がいたからこそ活躍できて,新聞に載ったりもしたんです。 その彼が,ある日突然,僕達にこう言いました。 「わるいな。急に転校する事になったんだ。」 だから,もう遊べない,と。 住所や,電話番号も,教えてもまたすぐに引っ越して変わってしまうから,教えられないと言われました。 歩美ちゃんは,泣きました。 元太君は、涙を堪えていました。 そして,僕も,泣きました。 コナン君は,そんな僕達を見かねて,こう言ったんです。 「近々,工藤新一が戻ってくるんだぜ,知ってるか?…あのな,工藤新一って,遠い俺の親戚なんだ。だから,なにかあったら,新一兄ちゃんに言ってくれ。俺,新一兄ちゃんとは,必ず連絡をとるから。な?」 そうして,江戸川コナン君は,僕達の前から去っていきました。 それから、僕と歩美ちゃんと元太君は,コナン君と連絡をとりたいときは,必ず新一さんのところに行きました。 新一さんは,そのたびに僕達の話を聞いてくれて, 今コナン君がどこにいるかとか。 何をしているのかとか。 そういう事を教えてくれました。 そして,ごくたまにでしたけど,新一さんから話を聞いたコナン君が,電話をくれたりした事も,ありました。 そんなふうにしているうちに,僕達は,コナン君に用事がなくても,新一さんの家に遊びに行くようになりました。 新一さんも,忙しい時は少しだけ面倒くさそうな顔をしながら,それでも僕達の相手をして遊んでくれたりしました。 たぶん僕達は,そんな新一さんに,コナン君の姿を見ていたのでしょう。 新一さんは,ほんとにコナン君にそっくりでした。 時々見せる考え事をするしぐさとか。 僕達と話す時のはなしかたとか。 いろいろな事を知っているところとか。 だから僕達も,コナン君がいない寂しさを,忘れる事ができました。 そして……。 僕は,中学生の頃から、そんな新一さんが時々見せてくれる笑顔に,ドキドキするようになってしまいました。 最初は,どうしてそんなふうに胸が高鳴るのか,わからなかったんですけど。 そのうち,やっと気がつきました。 どうやら僕は,新一さんの事を、スキ、らしいのです。 自分でも,信じられませんでしたけど。 だって,僕は,歩美ちゃんが好きだったんです。 結婚だって,歩美ちゃんとするんだと,ずっと心に決めていたんです。 なのに,いつのまにか僕のココロは,新一さん一色になっていました。 たぶん,子供心に抱いていたコナン君への憧れが,いつのまにか、コナン君そっくりな新一さんへの、恋心に変わったんだと思います。 最初は,ものすごくショックでした。 だけど,悩むうちに,ふと,気がつきました。 人を好きになることって,すごく素敵な事なんだということを。 誰を好きになるか、が大切なのではありません!! そして,中学校3年の受験の時に,ついに決心したのです。 新一さんの卒業した高校に入学できたら。 そうしたら…新一さんに,告白するんだって。 ですが,いざ,高校に入学してみると。 なかなか告白する勇気がありませんでした。 でも,これではいけない。 そう思って,一週間前に,ついに決心しました! そう,それが今日なのです!! 場所は,米花公園のベンチ。 時間は,…そろそろです。 新一さんに「どうしても二人だけで話したい,大切な話があるんです」と昨日のうちに話して、待合わせをしてあります。 後は…新一さんが来るのを,待つばかりです…。 「…わりぃわりぃ,光彦。待ったか?」 新一さんは,そう言いながら,僕の座っているベンチの方に歩いてきました。 ―――来たっ!来ましたっ!! 僕は,その新一さんを見ながら,心臓のドキドキを止められませんでした。 工藤新一さん。 高校生の時から,迷宮ナシの名探偵として,名を馳せている探偵さんです。 今でも,それは変わりません。 そう,日本警察の救世主と言われたつづけたまま,まったく変わっていません。 ―――どうしてこの人は,こんなにカッコいいんでしょうか…。 僕が新一さんに見とれていると,新一さんは不思議そうに僕を覗きこんで来ました。 「…どうした,光彦?具合でも,悪いのか?」 そう聞かれた僕はといえば,いきなり迫ってきた新一さんの顔に驚いて,思わず叫んでしまいました。 「ええ,悪いんですっ!!!」 ―――そんなに間近に迫ってこられたら,具合だって悪くなるに決まっているじゃないですかぁっ!! だけど,新一さんは,そんな僕を知ってか知らずか(たぶん知らないと思いますが)僕のおでこに触れて、熱がないかを確認して,こう言いました。 「熱は…ないみたいだな…。だけど,顔が赤いな。今日はとりあえず,帰って寝た方がいいんじゃないのか?」 僕は,新一さんのその言葉に,思いっきり首を横に振ってこう言いました。 「いいいいい、いえあのっ!!すっ…すぐに治りますしっ!!…そ,それにっ…ど,どうしてもきょうっ…,は,話しておきたい,事があるんでで,ですっ!!」 「そうなのか?…それじゃあ,早めに終わらせて,ゆっくり休もうぜ。な?」 それで,光彦の話したい事って,なんなんだ? 新一さんはそう言って,僕をじっと見つめてきました。 チャンスは,今しかありませんっ! 僕は,大きく息を吸い込んで,手をぎゅっと握り締めて,言いました。 「ああああああ,あのっ!!…僕っ…ま,前からっ…!!前から…その…し,新一さんの…事が…。」 緊張のあまり,喉がからからです。でも,僕は,勇気を振り絞って言いました。 「………スキですっ!!!前からっ!!」 ―――言っちゃいました… 変に思われたでしょうか…? …いや,普通だったら,変に思いますよね…。 僕は,嫌われたんじゃないかと思って,緊張して新一さんの言葉を待ちました。 とても,新一さんの顔を見る勇気はありません。 だけど,あまりにも反応がないので,恐る恐る新一さんを見上げながら,声をかけてみました。 「……しんいち、さん……?」 すると,新一さんは,少しだけ顔を赤らめて,こう言いました。 「何,今更…。……恥ずかしい事,言ってんじゃねーよ,光彦…。」 そして,僕に向かって,微笑んでくれました。 ―――え?それって,それって,その反応って,もしかして……。 ―――ひょっとして…新一さんも…僕の事……? そんな都合のいい事があるわけがないと思いつつ,それでも,どうしても期待してしまう僕は,思い切って聞いてみました。 「新一さん…それって,ひょっとして…。……新一さんも,僕の,事…スキ,って…事ですか…?」 その僕の言葉に,新一さんはさらに顔を赤くして言いました。 「……ばぁっか…。…そんなはずかしーセリフ,言ってんじゃねーよ…。ガキのくせに…。」 「じゃあ…じゃあ…僕の事,スキ,でいてくれるんですねっ?!」 「んなコト聞いてんじゃねーよ…。…嫌いなわけ,ねーだろ…。」 ―――信じられませ〜〜〜〜〜〜んっ!! 新一さんも,新一さんも,僕の事を好きでいてくれたなんてっ!!! こんないいコトが,あっていいんでしょうかっ?! 僕は,あまりにも嬉しかったので,思いきって新一さんをデートに誘ってみました。 「あっ,あのっ,新一さんっ!!」 「…なんだよ?」 「あのっ,良かったら,今度の土曜日,一緒に映画でも見に行きませんかっ?!」 「え?今度の土曜日…?…わりぃ,先約あるんだ。」 「え…?あ…そうなん,ですか…。」 告白に使って,さらに残っていた勇気を振り絞って誘ってみましたけど,さすがに、そううまくはいかなかったようです。 でも,しかたありません。 僕は,少なからず落ち込みましたけれど,でも,今回は諦めようと思いました。 今回は,お互いの気持ちが確認できただけでも,上出来です。 そんなふうにして,自分をなぐさめている僕に,新一さんは微笑んでいってくれました。 「先約もさ,映画なんだよな…。…一緒に行くか?」 「…え……?」 「どんな映画かは,しらねーけどさ…。」 「あ、あのでも…2人で、じゃなくて,…3人でって…コトですか…?」 「ん…?……そうだけど,…嫌か?やっぱり…。」 そうだよなー,と,一人で納得している新一さんに,僕は慌てて言いました。 「いえあのっ!……新一さんがいるなら,ぜひ,一緒に行きたいなーなんて…。」 「…そっか?それなら,一緒にいこーぜ?」 微笑んで話してくれる新一さんがすごくかっこ良くて,僕は顔を赤らめながら返事をしました。 「はいっ!!」 正直に言えば,せっかく両思いなのですから,新一さんと二人きりで行きたいところだったんですけれど。 でもまあ,しかたありません。 これ以上を望んだら,罰が当たります。 結局その日は,土曜日の待ち合わせ時間と場所を決めて,お別れしました。 そして。 待ちに待った土曜日になりましたっ!! 2人きりではなく,新一さんの友達も一緒なんですけれど。 それでも僕は,ものすごくドキドキしながら,20分も早く待ち合わせ場所に来ていました。 新一さんは,僕の為に,どんなカッコできてくれるんでしょうか…? それを考えるだけで,顔が赤くなってしまいそうです。 「待たせてゴメンな,光彦。」 などと言われてしまったら…僕は,どうしたらいいんでしょうかっ!! そんな事を考えながら,一人でニコニコと新一さんが来るのを待っていると,いきなり, 「よお,ボウズ。」 と、背中越しに声をかけられました。 「……ハイ?」 間違ってもボウズと言われる歳ではないと思ったのですが,どう考えてもその声は僕に向かっているようだったので,つい返事をしながら振り返りました。 「……あれ?服部さん……。」 僕に声をかけてきたのは,新一さんの親友の,服部平次さんでした。 服部平次さん。 高校生の頃は,新一さんと一緒に,‘西の服部 東の工藤’と言われていた探偵さんでした。 ですが,今では警視庁で,敏腕として名の知れている刑事さんです。 高校生の頃とは違い,今は,新一さんとの‘名コンビ’が有名で,新聞などのメディアを,新一さんと一緒に騒がせています。 新一さんとは,高校生の頃からの親友だと,聞いています。 だから,新一さんの言う先約とは,この服部さんの事なのでしょう…。 そう思って,とりあえず,僕は服部さんに,挨拶をしておきました。 「あ、おはようございます。今日は,いきなり一緒に行かせてもらって,すみません。」 僕の方としては,はっきり言えば,服部さんの方が邪魔なのですが。 でも,先約は服部さんの方だったわけですし,これから先,長くお付き合いをする事になると思ったので,機嫌を損ねないように丁寧に挨拶しました。 ところが,その服部さんは,いかにも不機嫌という顔をしながら,一言つぶやきました。 「まったくや。」 僕は,一瞬,何を言われたかわからずに,「は?」と聞き返してしまいました。 ですが服部さんは,その不機嫌な顔をまったく崩さずに,きっぱりと言い放ちました。 「人のデートの邪魔して,何が楽しいねん。」 「……はあ?」 「せやから,俺と工藤の邪魔して,何が楽しいんかってきーとるんや。」 「………はぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っ?!!」 で,で,デート,ですかあっ?! 新一さんと,服部さんが?!! だって,だって,2人は親友のはずじゃあ……。 新一さんがスキなのは,この僕だって,この間,新一さんが……。 服部さんは,何を言っているのでしょうかっ??! 僕が何も答えずに、ただただパニックしていると,服部さんはにやりと笑って言いました。 「おまえ,この間,工藤に告白まがいのコトしたそうやないか。」 僕は,その,‘まがい’と言うセリフにカチンと来て,思わず言い返しました。 「まがい,じゃありませんっ!!れっきとした,告白ですっ!!」 しかし,服部さんは,憤慨している僕に向かってこう言いました。 「残念やケドな,工藤はわかってへんぞ?」 「…は?…わかってない…って…。」 「せやから,告白された、なんて,これっぽっちも思ってへんちゅーこっちゃ。」 服部さんのその言葉に,僕はあっけに取られて聞き返しました。 「…告白されたって…思ってないって…どういう…。」 信じがたい事を言われて呆然としている僕に,服部さんは同情するように続けました。 「せやからな,…工藤は,告白されたと思っとらん。そういう事には,めっちゃ疎いやつやからな,あいつは。あいつにしてみれば,たぶん,‘可愛がってる弟が『お兄ちゃん,ダイスキ』って言ってきた’くらいの事やと思うで?」 「……だって,この間,僕の事,スキって……。」 「スキにも,いろいろあるわな。」 「…そんな………。」 にわかには,信じられません。 服部さんはひょっとして,僕と新一さんを別れさせたくて,そんな事を言っているのではないのでしょうか? ですが,次の服部さんのセリフは,決定的でした。 「第一,工藤には,この俺っちゅーコイビトがおんねん。悪いけどな,他人の入りこむ隙なんかないで?」 「…えええええええっ??!」 驚いて,口をぽかーんとあけている僕に向かって,服部さんは容赦なく言ってきました。 「信じられへんかったら,工藤に聞いてみい。」 「う…嘘ですぅ……。」 「嘘やないて。」 服部さんの自信たっぷりの言葉に,僕は,めまいを起こしそうでした。 服部さんが?僕の,大好きな新一さんの? コイビト、ですかあ?! あっけに取られて,考えのまとまらない僕に,服部さんはそっと聞いてきました。 「それで、ボウズ…工藤の,どこが,スキなんや?」 「…新一さんの,ですか…?」 僕は,その時新一さんを思い浮かべました。 いろいろ知っていて、冷静で。 すごく頼りになって,やさしくて。 そして,ものすごく,強くて…。 「…とっても,かっこいい,ところ…です。」 そんなふうに答えると,服部さんは,いきなり首を横に振って, 「あかんわ。…それじゃ,失格やな。工藤の事スキやなんて,100年早いわ。」 と,言いました。 「ど,どうしてですかっ!!どうして、失格なんですかぁぁっ?!!」 僕がそう言うと,服部さんは,しばらく考えた後,こう言いました。 「…今,工藤の事,かっこええ、て言うたろ?」 「え?…あ、ハイ…。」 だって,僕は,素直にそう思います。新一さんは,かっこいいです。 だけど,そんな僕に向かって,服部さんは続けて言いました。 「…そう思ううちは,工藤に告白なんぞ,させられへんわ。」 「だ,だからっ!どうして,ですかあっ?!だって,その人をスキな理由って,人それぞれじゃないですかっ!!」 その僕の言葉に,服部さんは,うなずきながらも言いました。 「それは,そのとおりや。ケドな…工藤の事を‘かっこええからスキや’て言うとるっちゅーことは,工藤の事,なんもわかってへんてことや。俺からすれば、な。」 その服部さんの言葉は,心外でした。 だって,僕だって,新一さんの事は,たくさん知っています。 ずっとずっとスキだったんですから。 そう思ったとき,ふと,服部さんには新一さんはどうみえるのか,聞いてみたくなりました。 ひょっとすると,その服部さんヴィジョンは,僕からすれば,失格かもしれないと思ったからです。 「あの,じゃあ,服部さんからは,新一さんはどう見えるんですか?」 その僕の質問に,服部さんは,少しも考えずに答えました。 「工藤はな,めっちゃかわええわ。」 そして,今まで僕が見たことのないような笑顔で,続けました。 「確かにな…かっこええ,と思う。せやけど,それだけやない。意地っ張りやし,強がりやし。でも,そんな工藤がまた…めっちゃ,かわええんや。」 その服部さんの言葉を聞いて,その笑顔を見て。 僕は,何も言えなくなりました。 僕からすれば,かわいい新一さんなんて,想像できません。 新一さんは,いつだってかっこいい,スマートな人です。 そんな新一さんを,かわいいだなんて…。 正直言って,思ってもみないことでした。 僕は,少しショックだった事を隠したくて,さらに服部さんに聞きました。 「それじゃあ,服部さんは,新一さんのどんなところが好きなんですか?」 服部さんは,また,考えもせずに答えました。 「そんなん,きまっとる。工藤の,全部や。」 こともなげに言う服部さんに,僕は思わず大声で答えました。 「…ずっ,ずるいですぅっ!!そんなのおっ!!!」 しかし,服部さんは,そんな事を一切気にせずに,言い放ちました。 「何がずるいんや?ホンマの事やろが。」 「だっ…だってっ…!」 僕が,さらに反抗しようとした時,服部さんはその僕の言葉をさえぎって言いました。 「あ、ほら。工藤、来たみたいやで。」 「え?」 そして,服部さんの言う方向から,確かに新一さんが走ってきているのがわかりました。 ものすごく,かっこいい笑顔で。 こちらに手を振っています。 僕も服部さんも,新一さんにわかるように手を振りました。 思いっきりの笑顔で。 その時,一瞬だけ服部さんは僕を見て,後は視線をあわせずに言いました。 「ボウズ,あんな,たとえおまえから見て、工藤がかわええて思えるようになってもやな…。」 僕が少しだけ服部さんを盗み見たのを知ってか知らずか、不敵な笑みを浮かべて,服部さんは言いました。 「工藤は,絶対に渡せん。覚えとけや。」 「……っ!!」 僕は,その服部さんの言葉に,とっさに何も言えず,ただ唇をかみ締めました。 「わりい,待たせちまったな。」 そんな僕達に,新一さんは笑顔で声をかけてきました。 服部さんがあれだけ言うという事は,新一さんに対して,ものすごく自信があるのだろうと思った僕は,映画館で映画を見る間中,ずっと二人を観察していました。 もちろん,映画なんてそっちのけで。 そして。 服部さんの自信の理由がわかりました。 新一さんは,服部さんの前で,すごくよく笑いました。 それが。 僕が,僕でさえもが,不覚にも‘かわいい’と思ってしまえるような笑顔だったのです。 ―――新一さんは,本当に服部さんが好きなんですね…。 悔しいけど,そう認めてしまえるような,笑顔でした。 それに,服部さんはほんとに新一さんがかわいいようで。 ほんとにさりげなく,いろいろなところに気を使っていました―――新一さんの為に。 映画が終わって,服部さんがトイレに行っていていない間に。 僕は,新一さんにこっそり聞いてみました。 「新一さん…。聞いても,いいでしょうか?」 「ん?どした?光彦。」 「あの…。…新一さんは,服部さんが,スキ,なんですか?」 それを聞いた瞬間,新一さんの顔は一瞬で真っ赤になり,ものすごく驚いたような表情になりました。 「ばっ…,何言ってんだよ,光彦っ!俺が,あんなやつ,スキなワケねーじゃねーかっ!!」 「…え?だって,服部さんは,コイビト,だって…。」 「……あんのやろ〜っ!…そういう事を,人前で言うなって,言ったのにっ…!!」 ちょうどそこに,服部さんが笑顔で帰ってきました。 「悪かったな,待たせ…。」 その服部さんが最後まで言い終わる前に,新一さんは,なにも言わずに服部さんに蹴りかかりました。 「ぉわっ,くどー?!いきなり,なにすんねん!!」 服部さんのその言葉に,新一さんは真っ赤になったままで言いました。 「何って,身に覚えがねーのかよっ!!おまえ,光彦に、なに吹きこみやがったっ!!」 「なにて…ホンマの事やないかっ!!俺ら付きおうてるて,それだけしか言うとらんでっ?!!」 「…ばっかやろーっ!!!言うなって言ってんじゃねーか,そーゆーはずかしー事をっ!!」 「照れる事ないやないかっ!!」 新一さんは,なおも服部さんを追い掛け回しています。 僕は,そんな2人を見て, 「かなわないかもしれないですね…。」 と,少しだけ溜息をつきました。 と、そのとき。 なおも追い掛け回されている服部さんが,僕の傍によってきて,そっと言いました。 「あんな,いっこだけ教えといてやるわ。」 僕は,そんな服部さんの言葉に,少しだけ不安になりながら,聞き返しました。 「…なんですか?」 服部さんは,にやっと笑って,言いました。 「工藤はなあ…あのままでも確かにかわえーんやけど…。脱いでもすごいんやで…?」 「……!!!………」 一瞬で真っ赤になった僕を横目で見て,服部さんは,また新一さんから逃げ回り始めました。 その服部さんを見て,僕は,やはり決心しました。 ―――僕は,僕は,服部さんになんて…。 「ぜっっったい,負けませぇぇぇぇぇんっ!!!」 ======fin |
written by もえ
こんな駄文で,お目汚しで,すいません