364 神の恵みを無駄にしない為に
 ●聖書箇所 [各段落]

 パウロはなんとパワフルな人でしょうか。いつでも元気、どんな場合にも前向き、苦しくても前進あるのみ。何か秘訣があるのでしょうか。もちろんあります。それを今回は学びましょう。三つのキーワードで進めて行きましょう。

みことば [コリント人への手紙第二6章1ー10節]

 まず、上記の箇所をお読み下さい。全体を知るために斜め読みをして見てください。2〜3分でいかがでしょうか。さあ、いいでしょうか。何が書いてあるのでしょう。全体のイメージを掴めればいいのです。きっとこのようでしょう。「私は苦しみの中でも元気です!」。そうです。これがパウロです。その根拠は?6節ですね。力がパウロに伴っているのはみことばが彼にはあるからです。最近(2000年冬)教会員たちが立続けに起工式を希望して来ました。自宅を建てるというのです。建築予定地のまん中に砂を盛って、スコップで「この家は神さまからのプレゼントです」とかけ声をかけながら、砂の山を動かしました。すべてみことばに基づくのです。特にヨシュア記1章1ー9節などはお勧めです。新しい土地に入る、そういう緊張の時に「あなたが行くところどこに行っても栄える」(1:9)と神さまはヨシュアに言われます。なんという慰め!私は結婚する時に「みことばを伝える」という契約を交わしました。もしみことばを伝えることを止めたらいつでも結婚は空中分解です。でもそれだけに結婚には大きな祝福をいただいています。感謝です。

 あるホテルで落成式が行われていました。ちょうどギデオン協会から聖書が贈呈され、社長はこう挨拶しました。「ホテルは立派に建築完了しました。そしてたった今、各部屋に聖書が置かれてはじめて当ホテルは完成致しました」。こう語った社長とはホテル王ヒルトンです。

 一人の実業家が事業に失敗。北上川にかかる橋の上から身投げしようとしていました。絶望のどん底にいました。すると牧師からもらった葉書に書かれてあったみことばを思い出したのです。「すべての訓練は当座は喜ばしいものとは思われず、むしろ悲しいものと思われる。しかし、あとのなればそれによって鍛えられる者に平安な義の実を結ばせるようになる」。彼は思いとどまりました。初代ライオン歯磨社長小林富次郎のことです。

 みことばには力があります。「光あれ!」とみことばがかかると光があったのです。みことばには無から有を産み出す力があります。あなたもこの力に触れてみませんか。パウロはこの道の達人でした。どのようにみことばを自分のものとしていただけるのでしょうか。パウロを参考にしましょう。使徒の働き9章1ー19節をお読み下さい。彼はイエスさまに打たれ倒れました。このとき彼は逃げないで「主よ。あなたはどなたですか」(5)としっかりと向き合っています。これが大切です。イエスさまはあなたにとってどのようなお方でしょうか。救い主でしょうか。もしそうであるならば、そう認めるならばあなたの心に救い主イエスさまからある種の思いが伝わって来るでしょう。その思いこそみことばです。正しいかどうかは聖書と照らし合わせれば判断できます。みことばを受取ったとき、勇気や愛など前向きな思いに満たされることは間違いがありません。

聖い良心 [コリント人への手紙第一8章1ー13節]

 上記の箇所をお読み下さい。先ほどと同じ要領でお読み下さい。一つ参考になることをお伝えしましょう。何度も同じことばや似た表現が出て来たら、それがテーマかそれに関係していると見なすとまず間違いはありません。ここでは偶像、良心、つまづきなどがそうでしょうか。結局こういうことをこの箇所では言っているのです。偶像を礼拝している人がいたとして、それを責めて、その人がつまづいたとしたら、それはキリストに対して罪を犯したことになる、と言ったところでしょうか。私たちは少し学べば何が正しく何が正しくないかは分かるはずです。良心があるからです。でもそれだからと言って正義を振り回せば人を傷つけるのです。これをどのように解決できるのでしょうか。
 
 作家のゴア・ヴィダールはこう言っています。「友が成功する時はいつでも自分の中のあるものが少しずつ死に絶えて行く」。作家らしい表現ですね。要はねたましい、と言っています。これは本当でしょう。逆に友が失敗したらどんな感情が出て来るのでしょうか。ほくそえむ、という表現がありますね。安心と言うか、喜ばしい気持ちが生まれて来るのではないでしょうか。でもカール・ロジャースの一人の弟子がこれを肯定的に捉えています。同情や共感がそこには生まれて来るのではないかと。これが聖い良心です。ここには良心の戦いがあります。パウロはこの戦いを真剣に戦った人です。ローマ人への手紙7章をお読み下さい。彼のすさまじいまでの葛藤が記録されています。
 さて聖い良心はあなたに対してどのような貢献をしてくれるのでしょうか。あなたの中で聖い良心は生きてあなたを良いサンプルとしてこの世に送りだします。そして良いサンプルはもっとも身近な人を変えてしまいます。お母さんたちは子育てにおいてお手伝いをさせたいと考えていますね。どのようにしたらそれが可能でしょうか。まずお母さんがそれを楽しそうにやってみせることです。ここがポイントです。まねをして行きますよ。八百屋さんのご主人が悩んでコンサルタントに相談しました。息子が後を継がないと言う悩みでした。コンサルタントはすぐに分かりました。そして質問しました。「ご主人、あなたは今の仕事、楽しいですか!?」サンプルは良くも悪くも迫力のあるものです。あなたが聖い良心と共に生きるならあなたの周囲の人々は変えられて行くでしょう。こういう表現があります。「人々は聖書を読まないで、クリスチャンを読む。キリストを見ないで、クリスチャンを見る」。心して生活したいものです。単なるテクニックではカバーできない世界ですね。十字架の世界です。イエスさまはあなたの罪を背負い十字架の上で死なれました。十字架、そこは正義と愛が交差するところ。正義だけではなく、愛が大事。イエスさまの自分の命を捨てるほどの愛を受取りましょう。あなたの中に愛が宿り、育つ時、あなたはサンプルとして成長しています。8章1節に愛が大切とあります。愛とともにあなたの正義は光を放ちます。

永遠への思い [コリント人への手紙第二5章1ー8節]

 さあ、ここも読んでください。そして何が書かれているか、そのイメージを掴んでください。肉体を離れて天国を待ち望みます、と言っているのでしょうね。永遠への思いです。それは物事を長い目で見る、神の目で見ることです。自転車を習いたての頃は、ペダルを見たりしますね、車を習いたての頃は目の前の車の赤いブレーキランプに目が行ってばかり。でもいつまでもそうであってはいけません。先を見なければ、流れを見て走らなければ。私たちは一度失敗すると、つい「あー、もうダメだ!」と叫ぶのではないでしょうか。私は友人の牧師に今までの所、20回続けて卓球で負けています。でも20回負けただけのことです。まだ試合は終わってはいないのです。最後に勝てばいいのです。勝手に現時点で勝敗を決めてはいけないのです。長いスパンで物事を見なければなりません。もっとゆったりと生活しましょう。
 本川達夫の『ゾウの時間・ネズミの時間』(中公新書)は面白いですよ。ゾウもネズミも、人間も、これら哺乳類ですが、一生の間に五億回呼吸して死ぬのだそうです。あなたはいま何回目ですか。スー、ハーで一回。ちょこまかちょこまか、落ち着きなくしていると早く五億回を消費します。あなたは長く生きたいですか。もっとゆったりと、行きましょう。永遠の世界を夢に描いて。永遠の世界を心に描いていると永遠の神さまと波長が会います。そして恵みがあります。
 
 一人の青年が失恋して、青白い顔をして牧師のもとにやって来ました。先生はこう助言しました。「君には三つの選択肢がある。
 一、もう一度彼女が君を好きになってくれる。
 二、君の記憶から彼女が完全に消える。
 三、彼女を見ても何にも感じなくなる。
 どれでもいいです、と神さまにお祈りしなさい」。彼は抵抗しました。「どれでも良く、はありません」。しかし彼は助言に従いました。まもなく笑顔で彼は先生に報告しました。「何にも彼女に感じなくなりました。すると彼女が交際の再開を求めて来たんです。でも僕にはその希望はないんです」。
 神さまはあなたの人生を最善に導くお方です。そう信じるのが信仰です。何があっても、起きても神さまはあなたを守ってくださいます。たとえ苦しむことが会っても決して失望することはありません。あなたは最善へと導かれているのです。パウロはいつもいつもそのことを信じていました。ノートルダム清心学園理事長のことばを紹介しましょう。

 いまたいせつなことは、苦しみをわざわざ求める必要はありませんが、私どもの前にやってくる苦しみをありがたいとプラスにして、必ず、自分の成長に役立たせてゆく心構えをたいせつにすることだと思います。フランクルという人のことばに「だれしもが、あとで振り返って、あの苦しみを通らないでよかったかと聞き直されたら、みんな、いや通ってよかったというであろう」とあります。私もいままで、幼いころ二・二六事件で父を目の前で殺されたときから、いろいろな苦しみとか、矛盾とか味わってきました。いまになって、その苦しみを通らなくてよかったか?と聞かれたら、あの苦しみを通ったおかげで、いまの私があると思います、と心から言うことができます。それを通って人は成長するのです。また、自分が受けるべき苦しみではないと思っても、現在自分が苦しむことによって、どこかで、もっともっと苦しんでいる人の苦しみがやわらげられますように、と祈れるのではないかと思います。(渡辺和子『人を育てる』中央出版)

 たとえ苦しむことがあっても決して失望することはありません。あなたは最善へと導かれているのです。パウロはいつもいつもそのことを信じていました。