名探偵ポワロとマープル
『ABC殺人事件〜その3.犯人あらわる』
原作:アガサ・クリスティー 台本化:里沙
(3:2:1)
エルキュール・ポワロ | ♂ | アガサ・クリスティーが生んだ名探偵。 ベルギー警察を退職後、ロンドンで私立探偵事務所を開いた。トレード・マークは、ポマードで固めた八の字型の口ひげ。 恰幅(かっぷく)のよい体型に似合わず、身のこなしは軽い。ユーモアがあり話もうまい、古きよき時代の紳士。 |
51 |
ヘイスティングス | ♂ | ポワロ探偵事務所の探偵助手。 原作ではポワロの古くからの友人だが、アニメでは20代の若者に設定。 体術が得意で、本人はポワロ以上に有名になるチャンスを狙っている。メイベルとコンビを組み、ポワロの手助けをしながら難事件を解決していく。 |
15 |
メイベル | ♀ | マープルの甥レイモンド・ウエストの娘。 好奇心にあふれ行動力もあわせ持ち、時には失敗もするが、いつも元気な16歳。当代一の女探偵をめざし、ポワロ探偵事務所のドアをたたいた。 オリバーと一緒に、あるときはポワロの新米助手として、またあるときは尊敬する大伯母を手助けしながら、探偵としての腕を磨いていく。 |
10 |
フランクリン | ♂ | Cの街の被害者、カーマイケル・クラーク卿の弟。兄の右腕として世界中を飛び回って骨董品を買い集めている。 | 25 |
シャープ警部 | ♂ | スコットランド・ヤードの警部。ポワロの昔からの知人。 | 21 |
刑事 | ♂ | チャーストンの事件担当者。(ヘイスティングスと被り推奨) | 4 |
ミス・グレイ | ♀ | カーマイケル卿の秘書。 | 19 |
ミーガン | ♀ | Bの街の被害者、ベティ・バーナードの姉。(メイベルと被り推奨) | 4 |
メアリー | ♀ | Aの街の被害者、アリス・アッシャー夫人の姪。(ミス・グレイと被り推奨) | 3 |
シャーロット | ♀ | カーマイケル・クラーク卿の妻。病身。(メイベルと被り推奨) | 7 |
N | 不問 | ナレーター | 16 |
001 | メイベル | ポワロさんに届いた不可解な手紙は、ABCと名乗る者からの挑戦状でした。 Aから始まるAndover(アンドーバー)で、Alice Ascher(アリス・アッシャー)夫人が殺され、Bから始まるBexhill(ベクスヒル)で、Betty Barnard(ベティ・バーナード)さんが殺されました。 死体の側にはABC時刻表。 そして、第3の手紙が! |
ポワロ | 報告があったんですね。 | |
シャープ警部 | きわめて悪いニュースです。 今夜Churston(チャーストン)で、Carmichael Clarke(カーマイケル・クラーク)卿が死体で発見されました。 |
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N | チャーストン駅に着いたポワロ達一行は、チャーストンの警察官に出迎えを受けた。 彼の案内で、一室へと集まる。 |
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刑事 | カーマイケル・クラーク卿はご存じですか? | |
ポワロ | ええ。噂を聞いたことがあります。有名な医者ですな。 第一線を退(しりぞ)いてからは別荘地に住み、長年の夢、中国の美術品をコレクションしていると。 子供は確か居なかったはず。 |
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シャープ警部 | 犯行当日の状況は? | |
刑事 | クラーク卿は毎晩夕食後、散歩に出る習慣があったようです。 我々が、Cから始まる名前の人に緊急に警告の電話をしたところ、クラーク卿は散歩から帰っていないことが判明しました。 慌てて使用人達が探したところ、散歩コースの途中で倒れているクラーク卿が発見されたのです。 そして、遺体の下にはチャーストンのページが開かれたABC時刻表が。 |
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ポワロ | 判りました。 | |
010 | N | 車は郊外にあるクラーク邸へと着いた。 屋敷の中から出迎えたのは、ハンサムな青年である。 |
フランクリン | お待ちしておりました。初めまして。私がカーマイケル・クラークの弟、フランクリンです。 全くもって、ひどい話です。警察の話によると、これは同一犯人による3度目の犯行らしいと。 |
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シャープ警部 | ええ、まあ。 | |
ポワロ | フランクリンさん。 | |
フランクリン | はい。 | |
ポワロ | 差し支えなければ、お訊ねしたいことがあるんですが。 | |
フランクリン | どうぞ。 | |
ポワロ | クラーク卿は、おかしな手紙を受け取ってはいませんでしたか? | |
フランクリン | いえ、聞いてませんね。 | |
ポワロ | 昨日は特にイライラしたりしていたとか? | |
020 | フランクリン | イライラしたり、気を揉んだりしたりするのは、兄の場合いつものことなんです。 |
ヘイスティングス | そりゃまた、何故? | |
フランクリン | ここだけの話ですが、兄嫁、つまりレディ・クラークは重い病気を患っておりまして…もう、長くはないのです。 兄はそのことで大変心を痛めていまして…。 |
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ポワロ | それは…。 | |
N | ポワロが視線を移したとき、棚に飾られている美術品が目に入った。どれもすばらしいものだ。中でも竜の置物は、目を引いた。 | |
ポワロ | これは中国のものですね。 | |
フランクリン | ええ。私は兄の中国美術品のコレクションを手伝ってましてね。実は、中国から帰ってきたばかりなんですよ。 | |
ポワロ | そうですか。 フランクリンさん、状況を考えますと、犯人はクラーク卿が毎晩散歩に出ることを知っていた人間だと思われます。 |
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メイベル ヘイスティングス |
っ!? | |
フランクリン | 兄の散歩のことはこの家にいる者はみんな知っていますが…。 | |
030 | ポワロ | 余所の人間で、知っている者は? |
フランクリン | どうでしょう。 | |
ポワロ | 昨日、クラーク卿を訪ねてきた人などは? | |
フランクリン | 特に、聞いていませんが。 | |
N | 少し考えていたようなフランクリンが、呼び鈴で執事を呼び、ミス・グレイを呼んで欲しいと告げる。 少ししてから、質素なドレスを着た金髪のショートカットの、美しい女性が部屋に入ってきた。 |
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グレイ | 失礼します。 | |
フランクリン | こちらはミス・グレイ。兄の秘書です。 | |
ポワロ | 初めまして、ミス・グレイ。 早速ですがいくつか質問をさせてください。 |
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グレイ | はい。 | |
ポワロ | まず、クラーク卿に変な手紙が来ていませんでしたか? | |
040 | グレイ | 変な手紙? |
ヘイスティングス | ABCの署名が入っているんですがね。 | |
グレイ | いえ、そのような手紙は来ていません。 | |
ポワロ | では、最近クラーク卿に面会を求めてきた人は? | |
グレイ | いいえ。 | |
ポワロ | この辺りを彷徨いている見慣れない人間を見た覚えは? | |
グレイ | 警察の人に聞かれてメイド達とも話したのですけれど、そう言う人は…。 | |
ポワロ | ふぅん。どうも、ありがとう。 | |
シャープ警部 | フランクリンさん。クラーク卿の散歩コースを案内して頂けないでしょうか。 | |
フランクリン | 判りました。 | |
050 | N | クラーク卿の散歩コースとは、海沿いにある小道である。太陽の光を受けて、海がきらきらと輝き、空は真っ青に澄んでいる。 穏やかな日差しが、事件があったことなど嘘のように思わせていた。 |
刑事 | ここです。クラーク今日はここにうつぶせで倒れていました。発見されたのは午後11時過ぎです。 | |
シャープ警部 | ふむ。犯人はきっとこの茂みに隠れて…。 | |
ポワロ | そうでしょうな。 | |
グレイ | 昨日の晩までは、元気にしていらっしゃったのに。こんな事になって…。 | |
フランクリン | ミス・グレイ…。 | |
シャープ警部 | 本当に、痛ましいことです。 | |
グレイ | …そして犯人は生きている。まだ、チャーストンにいるんでしょうか。犯人は今、何をしているのでしょう! | |
N | 警察は事件を公表した。 それにより、連続殺人事件は、ロンドン中を一気に賑わせた。新聞はこぞって事件を取り上げ、号外売りが街角で声を張り上げる。 「ABC連続殺人事件」と題されたそれは、人々の関心と恐怖を煽り立てるだけであった。 |
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メイベル(M) | こうして一連の事件は警察から発表され、イギリス中に知れ渡りました。 | |
060 | 刑事 | はぁ…。まるで干し草の中から一本の針を見つけるようなものだな…。 |
ポワロ | しかし、干し草の中には確実に貼りが隠されているのです。確実に。 | |
N | ホワイト・ヘイブンマンションに戻ってきたポワロ達。 | |
メイベル | ポワロさん、お手紙が。 | |
ポワロ | ん?ABCからかね。 | |
メイベル | いえ、メアリーさんからです。アッシャー夫人の姪御さんの。 | |
メアリー | 『親愛なるポアロ様。 可哀想な叔母の事件に似た殺人事件がさらに二度も起こり、私も色々考えました。思いますに、今回の事件に巻き込まれた私たちは、みんな同じ運命の船に乗り合わせている気がします。 私は、ベクスヒルで被害に遭われたお嬢さんのお姉さんに手紙を書いてみました。 |
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N | その手紙から数日後、ポワロの事務所に被害者の関係者が集まった。 アリス・アッシャーの姪、メアリー。 ベティ・バーナードの姉、ミーガンと、婚約者だったドナルド。 そしてカーマイケル・クラーク卿の秘書であるミス・グレイと、弟、フランクリンである。 |
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ポワロ | 紳士淑女のみなさん。こうしてお集まり頂いて大変嬉しく思います。 | |
フランクリン | これ以上手を拱(こまね)いている場合ではありませんからね。 | |
070 | ミーガン | 何かお手伝い出来ることがあると思うのです。 |
ポワロ | 良い考えだと思います。そこで、みなさんにお願いがあります。 私の考えでは犯人は必ず事前に犯行の下見をしていると思われます。 |
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フランクリン | そう言うことは、警察にすべて話したと思いますが。 | |
ポワロ | 記憶から抜けていることもあるかも知れません。 メアリーさん、おばさんのことで覚えていることはありませんか?些細なことでも。 |
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メアリー | そうですね…。あっ、事件の二日前に叔母から手紙が来ました。今度の休みに、一緒に映画を見に行こうと。 それが最後の手紙となってしまいました。 (泣)……ごめんなさい。泣いたって、何の解決にもなりませんのに。 |
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フランクリン | いや、メアリーさんの気持ちはよくわかりますよ。いつだって、些細なことなんだ。悲しみをそそるのは。 | |
ミーガン | その通りだわ。妹のベティが殺されて、母が、あの子への贈り物にストッキングを買っていたのも…(泣)せっかく買ったのに…って、泣いてたわ…。 | |
グレイ | 泣いてばかりいても、仕方ありませんわ。私たちに何か出来ることは | |
フランクリン | そうだね、そのためにこうして集まったんだから。 ポワロさん、我々でも役に立ちそうなことはありますか。 |
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ポワロ | こうしてはと思うことなら、2,3。 | |
080 | フランクリン | 書き留めておきましょう。 |
ポワロ | まずはミーガンさん。妹さんが勤めていたカフェの同僚に会って、話を聞いてもらえますか。妹さんが付き合っていた他の男のことを知っているかも知れません。 身内の人が聞けば、何か判るかも知れません。ドナルドさんも聞いてみてもらえると嬉しいのですが。 |
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ミーガン | 判りました。 | |
ポワロ | 次に、メアリーさん。 たばこ屋の側に住んでいる子供達に、あの日怪しい人を見かけなかったか聞いてみてください。 |
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メアリー | はい。 | |
フランクリン | どうでしょう、ポワロさん。僕が広告を出してみるのは。 | |
ポワロ | 広告? | |
フランクリン | たとえば、『ABCに急用あり。ポワロがすぐ背後まで迫っている。当方の口止め料100ポンド。XYZ』とか。 | |
グレイ | そんなことに犯人が乗ってきますか? | |
ミーガン | それに、危険ですよ。 | |
090 | フランクリン | ポワロさんはどう思いますか? |
ポワロ | まあ、やっても損はないでしょう。でも、あのずる賢い犯人が乗ってくるとは思いませんがね。 フランクリンさん、どうやらあなたは未だに少年のままと言ったところがあるようですな。 |
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N | それぞれに出来ることを伝えて、一同は解散した。 だが、フランクリンだけがまだポワロの事務所に残っていた。 |
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ポワロ | それで、相談というのは? | |
フランクリン | ミス・グレイのことです。 実はミス・グレイは秘書を首になりまして、 |
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ポワロ | 大変優秀な人とお見受けしましたが。 | |
フランクリン | 兄嫁の命令なんです。実は、兄嫁は兄のクラーク卿とミス・グレイの仲を邪推しまして…。 | |
ポワロ | ほう、嫉妬ですか。ま、相手は病人ですから | |
フランクリン | しかし、兄のコレクションの整理のためにも、ミス・グレイは必要なんですよ。 兄もミス・グレイのことは大変信用していました。 ここに兄からの手紙があります。 |
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ポワロ | 『こちらは相変わらずだ。シャーロットは幾分苦痛が薄らいできている。ところでミス・グレイを覚えているだろ。すばらしい娘で、どれほど私の慰めになってくれているかとても口では言えないほどだ。』 | |
100 | フランクリン | どうです?ポワロさん、兄嫁と一度会ってもらえませんか。 兄嫁も、ポワロさんの名前を言ったら是非お会いしたいと言っていましたので。 |
ポワロ | 判りました。 | |
N | 数日後、ポワロはメイベルを伴ってレディ・クラークと面会していた。 日当たりの良い窓辺で椅子に座って、シャーロットは病でやつれた顔を見せてはいたが、気丈にポワロと対面した。 |
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シャーロット | 犯人はまだ見つかっていませんのね。 | |
ポワロ | はあ、今の所は。 | |
シャーロット | ポワロさん、犯人はあの日、この屋敷に来た男じゃないかしら。 | |
ヘイスティングス | 当日、見慣れない人物がこの屋敷に来た事実はありませんが。 | |
シャーロット | 誰がそう言いましたの? | |
ヘイスティングス | 使用人達はそう言ってましたね。それに、ミス・グレイも。 | |
シャーロット | ミス・グレイ!あの娘はとんでもない大うそつきですよ!泥棒ネコめ! | |
110 | ポワロ | ミス・グレイがうそつきとは、どういう事ですか。 |
シャーロット | 私は見たんですよ!この窓越しにね! あの娘が、玄関先の階段の上で見覚えのない男と話をしているのを。 |
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ポワロ | いつですか、それは。 | |
シャーロット | 主人の亡くなった日の朝です。11時頃だったかしら。 | |
ポワロ | どんな男でした? | |
シャーロット | みすぼらしい風体(ふうてい)でした。本当ですよ!ミス・グレイに聞いてみるがいいんです! | |
N | 強い口調でそう言い放つシャーロットの顔は、怒りからか頑なな表情で、青ざめた頬は少しばかり紅潮してもいるようであった。 聞くべき事は聞いた彼らが、屋敷を出る。 |
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ポワロ | 事件当日の朝、クラーク邸を訪ねてきた男…か。 | |
メイベル | どういう事ですか? | |
ヘイスティングス | やっぱり、ミス・グレイが嘘を? | |
120 | N | そしてまた、その夜。第4の手紙が届いたのである。 |
ヘイスティングス | 『まだまだ成功の兆しは見えないようだね。全く、困ったものだ。あなたも警察のお歴々も何をやっている事やら。 ところで今回はどこに出掛けるとしようかな。お気の毒なポワロ殿。心からご同情申し上げるよ。 次のささやかなる事件は、9月11日、Doncaster(ドンカスター)で。 ABC』 |
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メイベル | 9月11日。ドンカスターで!? | |
ヘイスティングス | Dから始まる街だ! | |
ポワロ | 今日は9月4日。今回は少し余裕があります。 | |
ヘイスティングス | ああっ!? | |
ポワロ | ん?どうしました、ヘイスティングス。 | |
ヘイスティングス | 9月11日は、ドンカスターで恒例の競馬の大レースが開催される日ですよ! | |
メイベル | じゃあ、その日のドンカスターは紳士淑女で一杯に!? | |
ヘイスティングス | すごい人手だろうね。警備の仕様も…。 | |
130 | ポワロ | うーむ。ABCも考えましたね。ミス・レモン、すぐにシャープ警部に連絡してください。 |
N | ミス・レモンがシャープ警部に連絡し、警部が手紙を取りに来るという事をポワロに伝える。 そのとき、ドアがノックされ、出てみるとそこにはミス・グレイが立っていた。 ミス・グレイは今、ロンドンで職を探しているので連絡先が変わったので、それを知らせようとしてきたのだと言うことだった。 |
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ポワロ | わざわざありがとうございます。ミス・グレイ。実はお訊ねしようと思ったことがありまして…。 | |
グレイ | は? | |
ポワロ | 以前あなたはクラーク卿が殺された日に屋敷を訪れた人はいなかったと言っていましたね。 | |
グレイ | ええ。 | |
ポワロ | 本当にそうですか? クラーク夫人の話ではあなたがその日の朝、どこかの男と話をしているのを見かけたと。 |
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グレイ | え?…………ああっ!思い出しました。ストッキングのセールスマンです。 でも、それが? |
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ヘイスティングス | ストッキングのセールスマン? | |
メイベル | ストッキング…。 …あっ!ポワロさん!ストッキングって…! |
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140 | ポワロ | メイベル、よく気が付きました。 |
グレイ | 何か? | |
ポワロ | アンドーバーの事件ではアッシャー夫人の部屋に新品のストッキングがあったのです。隣の主婦も、ベクスヒルの事件でも、そしてチャーストンでもストッキングのセールスマンが。 | |
ヘイスティングス | …っ! | |
ポワロ | ミス・グレイ、そのセールスマンはどんな人でしたか。 | |
グレイ | ええっと…。 | |
ポワロ | よーく、思い出してください。 | |
グレイ | 確か…みすぼらしい背広を着て、何かに怯えているような。そう、眼鏡を掛けて、小柄で、猫背でした。 | |
N | あるアパートの一室。眼鏡を掛けた小柄な男が、鞄にストッキングを詰めて「行かなくては…」と呟いていた。 やがて男は部屋を出て、階段を下りていく。 その途中、大家の娘と言葉を交わすが、「ドンカスターに行く」とだけ告げて出ていった。 大家の娘は母親とその男、カストについて話していたのだが、彼が行く街がすべて連続殺人事件が追った街だと気が付いたのだ。 そして、今度行くと行っていた街が、Dから始まる街だと言うことも。 スコットランド・ヤードでは、シャープ警部が警官からストッキング製造会社のリストを受け取っていた。 |
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シャープ警部 | 現場に残されていたのと同じストッキングを作っている会社を突き止めるんだ。 そして、セールスマンのリストがあったら必ず手に入れるように! |
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150 | N | 9月11日。 ドンカスター競馬場では大きなレースが催されている。 周りはすごい人で一杯だ。紳士淑女がレースごとに熱狂し、騒いでいる。 少し歩けば人とぶつかるぐらいの混みようであった。 |
ヘイスティングス | この中から一人を見つけないといけないんですね。 | |
シャープ警部 | ポワロさん! | |
ポワロ | ああ、シャープ警部。警備の方は? | |
シャープ警部 | 制服の警官を150人、要所要所に配備してあります。それに、私服の刑事を50人。観客の中に紛れ込ませています。 他にも200人の警官が市内をパトロールしています。 犯人は本当にこの競馬場で事を起こすんですかね。 |
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ポワロ | 判りません。ただ、ドンカスターを選んだ意味を考えませんとね。 | |
グレイ | …はぁっ…。 | |
ヘイスティングス | ミス・グレイ、どうしたんですか? | |
グレイ | …っ、犯人を直接見たのは私だけですから。、 | |
ポワロ | 落ち着いてください。慌てると、見間違うことがありますからね。 | |
160 | グレイ | はい…。 |
N | ミス・グレイにそう答えると、ポワロはレースに熱狂する人々を鋭い瞳で見渡すのだった。 | |
次回予告 | ||
164 | メイベル | ついに、Dの街、ドンカスターでも事件が! 犯人が自首してきたけれど、ポワロさんは何故か納得していないみたい。 次回。 |
アニメ『名探偵ポワロとマープル』キャスト
エルキュール・ポワロ:里見浩太朗/メイベル:折笠富美子/ヘイスティングス:野島裕史/シャープ警部:屋良有作/フランクリン:松本保典