怪談レストラン
『白い家の少女』
原作:松谷みよ子・「怪談レストラン」原作チーム 台本化:里沙
(2:3:0)
大空アコ | ♀ | 山桜小学校6年生。あだ名は「アンコ」 地味で控えめな性格をしており、どちらかといえばクラスでも目立たない存在。 怖い話は苦手だが、好奇心旺盛で真実を確かめずにはいられない性格。 |
58 | 小和田マリ(ミチコと被り推奨) | ♀ | 1 | |
甲本ショウ | ♂ | アコのクラスに転入して来た、帰国子女の美少年。 金髪でサスペンダーの服装が多い。 怖い話が好きで、世界各地の怪談を収集している。 |
60 | 白い家の少女(ミチコと被り推奨) | ♀ | 10 | |
佐久間レイコ | ♀ | アコのクラスメイトで学級委員。 頭脳明晰で成績優秀、科学的根拠のないことは信じない現実派。 |
39 | 純子(ミチコと被り推奨) | ♀ | 10 | |
お化けギャルソン | ♂ | 「怪談レストラン」のオーナーであり支配人。(ショウと被り推奨) 本人曰く支配人なのにギャルソンなのは少々納得がいかないらしい。 |
5 | 母親(レイコと被り推奨) | ♀ | 4 | |
夢食いバク | ♂ | 「怪談レストラン」の従業員。語尾に「バク」をつけて話し、一輪車が得意。 | 4 | ||||
ミチコ先生 | ♀ | アコが通う学校の担任。大学時代の不思議な出来事を生徒達に語ることが多い。 | 5 | ||||
水窪ユウマ | ♂ | アコのクラスメイトのガキ大将。 いたずら好きであり、転校して来たショウにもちょっかいをかけていた。 しかし、本当は怖がりで小心者。(夢食いバクと被り推奨) |
28 | ||||
N | ♂ | ナレーター(夢食いバクと被り推奨) | 11 |
※主要キャラの紹介は、「怪談レストラン」Wikiから頂きました。
※一部台詞、キャスト変更、描写を入れています。(TVアニメとは違うことをご了承下さい)
001 | お化けギャルソン | 「怪談レストラン」へようこそ。わたくし、支配人のお化けギャルソンです。 では早速、夢食いバクお勧めの、身の毛もよだつ特別メニューをご覧下さい。 |
夢食いバク | バクバクー。 まずは血の滴るコウモリステーキにルーマニア製のソースをかけた「青い炎の館」だバクー。 次に不老不死に効くという宇宙食「白い家の少女」だバクー。 そしてデザートは山小屋からのふるさとの味「あの世からの着メロ」だバクー。 バークバクバクー。 |
|
お化けギャルソン | (笑)ほほほ。 さて、最初のお料理は美しくもはかない、愛の物語。 もし、あなたを愛してくれた人が…ヴァンパイヤだったら! これはそんなお話です。 では、後ほど…。 |
|
夢食いバク | 特別メニュー最初のお料理、『青い炎の館』だバクー。じっくりゆっくり召しあがるだバクー…。 | |
アコ(M) | あたし達は学芸会で、ヴァンパイアのお芝居をすることになりました。 今日は休日を返上して、練習です。 |
|
アコ | えー!集まったの、たったのこれだけ!? | |
ユウマ | 日曜なんかに練習するからだよ。最近の小学生は忙しいんだからな。 | |
レイコ | 良いじゃない。重要なヒロイン役である、この私さえいれば。 | |
ユウマ | お前がヒロインやってっから、みんな来ないんじゃねーの?w | |
010 | レイコ | 何ですって! |
マリ | あたしもヒロインやりたかったなぁ…。照明係なんてつまんない…。 | |
アコ | あたしなんてナレーターだよ。おまけに台本まで書かされたんだよ!? | |
ミチコ先生 | はいはい。とりあえず、来た人たちだけでリハーサルを始めましょう。 | |
レイコ | その前に、言っておきたいことがあるんだけど。 怪談ものの映画を撮影する時って、ちゃんとお払いをしないと祟られるって言うわよね。 私たちは良いのかしら。 |
|
ユウマ | 俺たちがやるのはヴァンパイアだろ?関係ねーじゃん。 | |
レイコ | そうかしら?ヴァンパイアの呪いというのもあるんじゃない? | |
ショウ | 珍しいね。君は普段その手の話は信じないのに。 | |
レイコ | もちろん、私は信じてないわ。ただし、臆病なみなさんは大丈夫かなって思ってね。 | |
ユウマ | むっ。余計なお世話だ!ヴァンパイアなんか怖かねーよ! | |
020 | レイコ | あらそう。じゃあ、始めましょうか。 |
アコ(M) | あたしはその時、嫌な予感がしたんだ…。 | |
ミチコ先生 | じゃあ本番と同じ感じで、ラストまでの通しのリハーサルを始めまーす。 (※ 次から子供達のお芝居ではありますが、芝居風でなくてもOKです) |
|
アコ | (ここからお芝居)ある嵐の中の出来事です。 ミーナという美しい女性が、不気味な屋敷を見付けたのですが、激しい雷にあって、気を失ってしまいました。 そして目が覚めると、そこは立派な部屋の中だったのです。 |
|
ミーナ(レイコ) | ここはどこかしら。 夕べ嵐の中私は雷に打たれて……ああ、思い出せない。 (ピアノの音がして)…ピアノ?一体誰が…。 |
|
ルメン(ショウ) | あれは父上の演奏です。 | |
ミーナ(レイコ) | あ、あなたは? | |
ルメン(ショウ) | 私の名前はルメン。お体の具合はいかがですか? | |
ミーナ(レイコ) | はい、何とか大丈夫です。 あ、自己紹介がまだでしたね。私はミーナ。もしかして、あなたが助けてくださったの? |
|
ルメン(ショウ) | はい。落雷に驚いた馬が暴れ、あなたは馬車ごと谷底に落ちたのです。 | |
030 | ミーナ(レイコ) | まあ! |
ルメン(ショウ) | でも、奇跡的に助かり、私がここに運びました。 | |
ミーナ(レイコ) | ありがとうございます。 | |
ルメン(ショウ) | お礼なんていりません。あなたのような美しい方に出会えて、光栄です。 | |
ミーナ(レイコ) | ええ…。 | |
父(ユウマ) | やあ、気が付いたようだね。 | |
ルメン(ショウ) | 父上。 | |
ミーナ(レイコ) | 初めまして。このたびはなんとお礼を申し上げればよいか。 | |
父(ユウマ) | 良いんだよ。今夜はなんとすてきな夜なんだろう。 この城に、あなたのような美しい娘さんが来てくれるとは。 |
|
ミーナ(レイコ) | そんな、美しいだなんて…。 | |
040 | 父(ユウマ) | ぜひ、息子のお嫁さんになって下さい。 |
ミーナ(レイコ) | ええっ!? | |
アコ | ミーナは驚きました。 でも、実はミーナ自身もルメンを好きになっていたのです。そしてルメンの方も。 |
|
ルメン(ショウ) | ミーナ。僕は一目であなたに恋をしてしまった。僕と結婚しよう。だから、僕の仲間になっておくれ。 | |
アコ | 振り向いたルメンの口元には、鋭い牙がありました!ルメンはヴァンパイアだったのです! | |
ミーナ(レイコ) | ああっ! | |
アコ | しかし、ミーナの血を吸おうとした時、ミーナの胸の十字架が光ったのです! | |
ルメン(ショウ) | うっ!ああ!……ッあっ…ああーっ!! | |
アコ | 次の朝、目を覚ましたミーナは、そこが荒れ果てた廃墟と知って恐ろしくなり、逃げだそうとしました。 でも、どこにも出口がなかったのです! 一つの部屋で、ミーナは恐ろしいものを見付けました。 |
|
ミーナ(レイコ) | この棺(ひつぎ)は一体…。 | |
050 | アコ | 部屋に立てかけてあった棺を、ミーナは開けてみました。そこにはルメンの父だという人が、眠っていたのです! |
ミーナ(レイコ) | ああッ!このコウモリのような鋭い牙! ここはヴァンパイアのお城だったのね!? |
|
ルメン(ショウ) | ミーナ! | |
ミーナ(レイコ) | あっ、ルメン! | |
ルメン(ショウ) | 君は見てしまったんだね。 | |
ミーナ(レイコ) | あなたもヴァンパイアだったの!? | |
ルメン(ショウ) | 秘密を知った者は殺す…。それが掟だ! | |
ミーナ(レイコ) | じゃあ、私を…。 こ…来ないで! |
|
アコ | じりじりとミーナを追い詰め、手を伸ばすルメン。 けれど、ルメンの手はミーナの背後にある見えない扉に手を掛けたのです。 |
|
ルメン(ショウ) | ここが秘密の出口だ。 | |
060 | ミーナ(レイコ) | え…。 |
ルメン(ショウ) | 逃げるんだよ! | |
ミーナ(レイコ) | …どうして…。 | |
ルメン(ショウ) | ………さあ、早く! | |
ミーナ(レイコ) | ……ありがとう、ルメン…。 | |
アコ | ミーナは、城から逃げることが出来ました。 でも、山を抜けられないうちに日が沈んでしまったのです。 |
|
ミーナ(レイコ) | ああっ、夜が来てしまった。このままでは、私は… | |
父(ユウマ) | ははは…。あはははは…!(笑) | |
ミーナ(レイコ) | この声は! | |
父(ユウマ) | 探したぞ! | |
070 | ミーナ(レイコ) | きゃああー! |
父(ユウマ) | お前の血を吸ってやろう!そしてお前もヴァンパイアになるのだ! | |
ルメン(ショウ) | 父上! | |
ミーナ(レイコ) | ルメン! | |
ルメン(ショウ) | 止めてください! | |
父(ユウマ) | どけ!その娘を生かして帰す訳にはいかないっ! | |
ルメン(ショウ) | ミーナ!十字架を貸して!父上を近付けないようにするから! | |
父(ユウマ) | そんなことをしたら、お前自身が死んでしまうぞ! | |
ルメン(ショウ) | 父上…僕はミーナを助けたいのです! | |
ミーナ(レイコ) | はっ…! | |
080 | 父(ユウマ) | 我々の存在が人間にばれたら、殺されるのは、我々だぞ! |
ルメン(ショウ) | ごめんなさい…僕はそれでもミーナを助けたいんです! | |
父(ユウマ) | やめろーっ! (十字架を突きつけられ)うわっ、うわああっ!うわーーっ! |
|
アコ | すると、ルメンの体を青白い炎が包みました。 | |
ルメン(ショウ) | (苦しそうに)うっ、うわあっ! | |
ミーナ(レイコ) | ああっ!ルメン!死なないで! | |
ルメン(ショウ) | ミーナ!これで僕の君への愛は永遠になる…。 | |
ミーナ(レイコ) | ルメン…私も愛しています…。 | |
ルメン(ショウ) | ありがとう、ミーナ…。 | |
ミーナ(レイコ) | ルメーーン! | |
090 | アコ | ミーナの涙に、ルメンの魂が答えるように炎は激しく燃え上がり、ルメンの姿は消え、やがて、不気味なお城は青白い炎に包まれるようになりました。 そして、ミーナの心にも炎が灯り続けたのです。 儚くも、美しい愛の炎が…。 |
ミチコ先生 | (拍手しながら)はい、よく出来ました。 みんな上手すぎて先生、感心しちゃったわよ。 |
|
ユウマ | ま、俺が本気出せばこんなもんよー! | |
ミチコ先生 | はいはい…。 | |
アコ | よく言うわよ。 | |
レイコ | うっ…うう…。 | |
ミチコ先生 | どうしたの?佐久間さん。 | |
アコ | レイコ? | |
レイコ | うあああーっ! | |
アコ | レイコ!?ど、どうしたの!? | |
100 | レイコ | ルメンは死んだ!だがヴァンパイアの魂はこの私が引き継ぐ! |
ユウマ | ヴ…ヴァンパイアの呪い!? | |
アコ | まさか、レイコとヴァンパイアの魂が入れ替わったとか!? | |
レイコ | これから私はヴァンパイアとして生きていく! まずはお前らの血を吸い尽くしてやる! |
|
ユウマ | ひいいーっ! | |
ショウ | (ゆっくりと拍手) | |
ユウマ | んあ? | |
ショウ | たいした演技力だよ。 | |
アコ | え?どういうこと? | |
ショウ | 牙は僕がしてたのと同じもの。瞳はカラーコンタクトだろ? | |
110 | レイコ | なーんだ。案外早くばれちゃったわね。 ま、これしきのことでだまされるのもどうかとおもうけど? |
アコ | じゃあ、ただのお芝居だったの? | |
レイコ | ふふっ、将来小説家になりたいのなら、これくらいの台本を書かなきゃだめってことよ。 特に、私のような大女優が演じる場合はね。 |
|
アコ | むぅぅ。 | |
ショウ | 性格の悪さも大女優並みだ。 | |
ユウマ | あ? | |
レイコ | 何ですってー! | |
全員 | ぷっ。あははは…。(ショウとレイコ以外爆笑) | |
アコ | そんなレイコの大熱演もあって、本番は大成功でした。 | |
夢食いバク | (少し間を開けて) お待たせしましたバクー。 |
|
120 | ショウ | 車の墓場か。面白い名前だな。 |
アコ | 昔から、車ばっかり捨てられるから、いつの間にかそう呼ばれるようになったの。 | |
ショウ | でも、幽霊や人魂を見たって噂もあるんだろ? | |
アコ | うん。 それにしても、ショウ君て、ほんと怖い話が好きだよねー。 |
|
ショウ | 僕は、世界中の怖い話を集めたいんだ。 | |
アコ | なんで? | |
ショウ | それはね…。 あっ、宵の明星だ! |
|
アコ | えっ? | |
ショウ | 宵の明星って、金星だって知ってた? | |
アコ | へー、あれが金星。 | |
130 | ショウ | 星は良いよね。 僕は、怖い話しと同じくらい好きなんだ。 |
アコ(M) | その夜、あたしは夢を見た。 夢の中では、靴に羽が生えていて、自由に星空を散歩出来た。 |
|
アコ | たのしー!そうだ、あの綺麗な金星に行ってみよう。 すごいなぁ。この靴があればどこにでも自由に行けるんだ。 あっ!もしかして、ショウ君の夢の中にも!? ん?あ? |
|
N | 突然失速し、不思議に思って靴を見ると、ちょうど靴の羽が取れてしまったところだった。 | |
アコ | わあーーーっ! | |
N | ブラックホールに向かって落ちていくアコ。夢はそこで終わった。 次の日の夕方。アコはショウと一緒に下校している。 |
|
ショウ | へー。金星に向かっていく夢かぁ。それは羨ましいな。 | |
アコ | でも、最後は落ちちゃったし。 | |
ショウ | 僕も、一度で良いから星空を歩いてみたい。 あ…そうだ。 |
|
N | 校庭の木の下で、ショウは鞄から何かを取り出す。 | |
140 | アコ | んー?星座板? |
ショウ | うん。ネットで買った骨董品なんだ。 こうして時計回りに回すと、春。夏。秋。冬と季節が移っていく。一回りで一年だ。 |
|
アコ | へえー。面白いね。 | |
ショウ | でも、この星座板を手に入れてから、ずっと同じ夢を見るようになってね。 | |
アコ | どんな夢なの? | |
ショウ | 夢は、いつも夜で満天の星なんだ。まるで星座板のようにね。 そして、丘を登っていくと白い家があって、窓辺には少女が一人、横顔を見せている。 もっと顔をちゃんと見たい。こっちを向いて。そう思って家に近付くんだけど、何故か、僕の心は行ってはいけないって言うんだ。 そこで目が覚める。 一週間、ずっと毎日。 |
|
アコ | ええっ!?そんなに!? | |
ショウ | あの少女は一体、何者なんだろう…。 | |
アコ | 声を掛ければいいのに。 | |
ショウ | それが、明星のように気高くて、何となく気が引けてね。 | |
150 | アコ | ショウ君でも、気が引けるなんて事があるんだ。 |
ショウ | え? | |
アコ | だって、ショウ君だって…あ…。 (照れたように)な、何でもない! |
|
ショウ | あの人と会って、話が出来れば夢の謎が解けると思うんだけど。 | |
アコ | いつも助けてもらってるお礼に、今度はあたしがショウ君を助けてあげたいなぁ。 | |
ショウ | アンコが? | |
アコ | うん。もしまた夢で魔法の靴が履けたらだけど。 | |
ショウ | そう言うことならご招待するよ。僕の夢にね。 | |
アコ(M) | その夜。あたしはまた靴を履いて夜空を飛んでいたんです。 | |
ショウ | おおーい!アンコー! | |
160 | アコ | あたしは、呼びかけるショウ君の元に飛んでいきました。 |
ショウ | すごいね。ほんとに僕の夢に来るなんて。 | |
アコ | うん!自分でも信じられない! | |
N | 満天の星空の下、小高い丘の上。白い家がぽつんと一軒、建っていました。 | |
アコ | あれがいつも夢で見る家ね。どうする? | |
ショウ | 行こう。行って、この夢の謎を解き明かしたいんだ。 | |
アコ | じゃあ、魔法の靴で飛ぶよ! | |
ショウ | わっ。 | |
N | アコがそう言うと、ショウの手を取り、一気に白い家まで飛んだのだった。 | |
ショウ | なんか、いつものアンコとは違うね。 | |
170 | アコ | え?そう? (ショウと手を繋いだままだったのを照れたように離し)…っ、眼鏡をしてないからかな? |
ショウ | じゃあ、開けるよ。 | |
アコ | うん…。 | |
N | ドアを開け。家の中に入る二人。 そこは壁も天井も床も一面真っ白で、家具も少ない寂しい部屋だった。 窓の側に椅子が一つ置かれ、そこには白い服を着て金色の髪に赤いリボンをした美しい少女が、膝に星座板を置き、くるくると回している姿があった。 |
|
ショウ | 僕のと同じ星座板だ。 | |
アコ | え? | |
少女 | よくここまで来てくれたわね。ずっとあなたを待ってたのよ。 | |
ショウ | ずっと? | |
少女 | それなのに、あなたはいつも夢から去っていって。 | |
アコ | あなたは何者なの? | |
180 | 少女 | あなたこそ誰?私がここに招いたのはショウ君だけよ。 |
ショウ | 僕に、何か用があるのかい? | |
N | その瞬間、少女の瞳がきらりと光り、二人の背後のドアが音を立てて閉まった。 | |
少女 | あなたはもうこの家から出られない。 | |
ショウ アコ |
えっ!? | |
少女 | この家で、私と一緒に星座を眺めて暮らすのよ。春から冬へ、冬から秋へ、秋から夏へ、季節を遡り、ずっと、ずっと…。 | |
ショウ | あ、星座板を逆に回してる! | |
アコ | えっ!? | |
少女 | ふふふ。これであなたも歳を取る心配はない。永遠に子供のままよ。 | |
アコ | ショウ君! | |
190 | N | アコがショウの手を取り、開いていた窓から一気に外に逃げようと飛び出す。 だが、窓からでられると思ったその時、少女がショウの片足を掴んだ。 |
少女 | にがさないわっ! | |
ショウ | あうっ!は、離せっ!離せー! | |
N | 少女が手放した星座板が、落とした拍子か時計回りに回り始めた。 少女が苦しそうに震え、ショウの足を離す。 |
|
少女 | あ…あ…ああっ…! | |
N | くるくると星座板は勢いよく時計回りに回っていく。 それと同時に、少女の体が青白く発光し、体が成長し始めた。 どんどん歳を取り、醜い老婆の姿に変わっていく。 |
|
少女 | あああああっ! | |
ショウ | ずっと時を止めていたんだ! | |
少女 | おのれっ!よくもよくも!許さないよーっ!夢の中に、閉じこめてやるっ! | |
アコ | このままじゃ、捕まっちゃうわ! | |
200 | ショウ | あっ、そうだっ!金星に向かって! |
アコ | えっ!? | |
ショウ | いいから。早く! | |
アコ | 金星、金星っ、金星っ!あ、あった! | |
ショウ | 確か、君の夢では金星に向かうと…! | |
アコ | え?あ、そうだ…! | |
ショウ アコ |
わあああーっ! | |
N | 追ってくる老婆の目の前で、アコの靴から羽がなくなり、二人は真っ逆様にブラックホールに落ちていった。 そこでアコの目が覚める。 |
|
アコ | はっ!夢だったんだ…。あ…怖かったぁ…。 | |
アコ | 次の日聞いたら、ショウ君も同じ夢を見ていた。 あの星座板は消えてしまい、その後、白い家の夢を見ることもなくなったんだって。 |
|
210 | お化けギャルソン | みなさんも同じ夢を何度も見ることはありませんか? もしかすると、白い家の少女の呪いかも知れません。 でも、ご安心下さい。どー…おおっ!?(夢食いバクがぶつかってきて) |
夢食いバク | (ギヤルソンに被せて)どーんな恐ろしい悪夢も、あたくし夢食いバクが美味しく料理いたします、バクー。 | |
お化けギャルソン | …っで、では、デザートをどうぞ。 | |
ユウマ | これは四十九日の日に、あの世とこの世が結ばれた話だ。 純子ちゃんは、新しく買ってもらった携帯電話で毎日のようにおじいさんとメールのやりとりをしていた。 |
|
純子 | 「じっちゃん 朝ごはんたべたよ お〜は〜 O(^O^)O\(^▽^)/」(ほんとにこんな顔文字だった) | |
ユウマ | お互いの着メロは、「ふるさと」に決めていた。 | |
純子 | 「純 おはよ! けさはタヌキと一緒に朝ごはんを食べたぞ」 良いなぁ。純も山小屋に行きたーい。 |
|
母親 | 純子、学校遅れるわよ。 | |
純子 | はーい。 | |
ユウマ | おじいさんは山小屋の管理人をしていて、冬はスキー客、夏は登山客で大忙しだった。 でも、あるひどい嵐の晩…。 |
|
220 | 純子 | 「嵐が来た かみなりも鳴っている 一度山を下りるよ」 大変だ! 「じっちゃん 気を付けて下りてきてね」 |
ユウマ | 純子ちゃんは、家でずっとおじいさんを待ったけど、おじいさんは帰ってこなかった。 雪崩に巻き込まれて、おじいさんは亡くなってしまった。 |
|
純子 | これ、私が作った携帯だよ…。純のこと、忘れないでね…。 | |
ユウマ | 純子ちゃんは、工作で作った携帯電話をおじいさんの棺に入れてあげた。 それから四十九日を迎えた日。 |
|
母親 | ん?誰? | |
純子 | この曲はじっちゃんと私だけの着メロなんだけど…。 あ、じっちゃんからだ! |
|
母親 | ええ?そんなバカな。何かの間違いよ。 | |
ユウマ | 純子ちゃんの携帯に、もう一度着メロが鳴ったんだ。 | |
純子 | じっちゃんだ、じっちゃんだよ!どうして!? | |
母親 | 何か書いてあるの? | |
230 | 純子 | ううん、何も、真っ白…。 そうだ、返事を送ってみる。 「じっちゃんなの?」 |
ユウマ | メールが配信されたと同時に、おじいさんの祭壇から、「ふるさと」の着メロが鳴り出した。 | |
純子 | やっぱりじっちゃんだったんだ。 | |
母親 | おじいちゃんも、純子のことが大好きだったから、最後のお別れを伝えてきたんだよ…。 | |
純子 | うん…。 「私毎日お水とお花あげるからね じっちゃんのこと 絶対忘れないからね。」 |
|
ユウマ | そのメールの返事のように、祭壇から「ふるさと」の着メロが鳴り響いていた。 それからおじいさんのメールは、来なくなったそうだよ。 |
|
236 | お化けギャルソン | みーなさま! 当店に今まで何人のお客様がお越しになったか、興味ありませんか? 次回の「怪談レストラン」は、これまでにないメニューで皆様をお待ちしています。 そ、お客様でちょうど、100人目。 |
参考「怪談レストラン」アニメキャスト
大空アコ:白石涼子 甲本ショウ:優希比呂 佐久間レイコ:浅野真澄 お化けギャルソン:平田広明 白い家の少女:折笠愛 夢食いバク:山口勝平 水窪ユウマ:川原慶久