イワタバコイトトンボ青龍

これだけ長く滝を見続けた事がなかった。滝のそばは涼しいが、いつまでも居るほど楽しい場所でもない。滝口を見て、ぐるりと植生等を見ると、もう楽しめるもの はなにも無かった。昔の言い伝えなどでもあれば、また少し時間は過せる。

イワタバコを撮影するためカメラを構えた。滝の飛沫を浴びてたくましく咲いている一輪を狙っていた。残念だが私のカメラの性能は、この小さい花を記録するのに 余り適していなかった。何枚とっても満足できない。結局、2時間強滝のそばで時間を過す事になった。

その時、霧散したしぶきに光があたり、手前にもう一つ滝が出来たように見えた。さらに雲としぶきが作用して、下から龍のように舞い上がってきた。滝の楽しみ方はこれかもしれない。そしてこ この渓谷は深いお椀の形状から、しぶきが舞い上がり易くなり青龍が何度もぐるぐると舞うようである。満足していると、いっときの光の演出が終わりに近づく、その時だった、黒いイトトンボが滝の白い流れに逆らって、その小さな体で光り輝くしぶきの中を滝の落ち口に向かって 飛んで行った。暑い夏のいっときを炎天の陽と滝が楽しませてくれる。