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剣より女郎小屋ノ頭 |
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芋ノ沢ノ頭の先にあったブナの大木 |
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12月23日、今年最後の山歩きは、女郎小屋ノ頭を目指して西丹沢に向った。
地図に書かれた丹沢山塊の登山道は、この数年で凡そ登ってきた。地図にない山を、Tさんとポチボチ歩き始めた。その中でも、ここは”特に難しい”とホームページに載っていた。山への期待は十分だった。
情報源は二つのホームページのコピー、地図に書かれていない山はその情報と地形図、そして磁石が頼りになる。道標は好意で作られた吹き飛びそうな簡易なものが多い。それでもあればあり難いし、それを
設置する人の気持ちは尊いと思う。
それに一番重要なのは、”逐一確認する慎重さ”と最近気付いた。とか言いながらも、実はそのコピーを読んだのは、Tさんと待合わせをしていた玄倉のバス停が初めてだった。前夜に印刷し、そのままリュックに入れて
当日に至ってしまった。バス停で数ページを読んでいると彼が来たので、殆どぶっつけ本番になってしまった。でもその後の、慎重さは忘れていなかった。周りの風景とコピー、それに地図を何度も確かめ
、立間大橋を渡る。今年ミツマタを求めて登った大杉山の側面はがけ崩れが多く、早く抜けようとスピードを上げると大きな落石が車のアンダーガードを擦った。
大きな音と同時に、自分の身体にも一瞬痛みのような衝撃が走った。修理代が頭を過ぎった。 |
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道標と沢を上る |
左岸の登り口 |
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二つ目のヤヒチ沢を左に見て、直ぐに左に曲がるとガイドに書かれていた”放置された軽自動車”があった。その先の木に『至るワナバノ頭----』の案内があり、5m先に河原への道があった。10時、Tさんが先を急ぎ早速下った。 |
道標の『”左岸”にワナバノ頭に至るルート』は、山の知識で『川の上流から見て左側を左岸
という』ので、右側の登り口を捜した。15分も歩くと前方に木組みの階段が見えた。直ぐに金網があったが、ここは施錠もなく扉を開けて進んだ。 |
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鹿柵と人工林で休憩 |
白い尾根 |
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桧の人工林をクネクネと登り続ける。高度をどんどん稼いで、10時半、左に西丹沢県民の森を下に見るようになった。するとまた鹿柵に行き当たった。ここは少し右に穴がありそこを潜った。 |
一服後また登り始める。前方に尾根が見えたあれが”ワナバノ頭”かと思った。10時45分、白い雪のような砂利の尾根が見え、大杉山の頂が望めるようになった。雰囲気のいいところである。 |
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白い尾根が続く |
杉の人工林へ入る |
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小さな石に足を取られる、意外と急な登りが現われた。正面には同角ノ頭が見える。しかしまたも鹿柵である。今度は何処も逃れられない。左に行けるが大きく落ち込んでいる。乗り越えた。 |
白ザレの尾根は続く。左のプラダンで作った樹木保護が墓標のように見える。11時、白いザレは終わった。ここで大杉山の先に富士山が見えた。杉の人工林に入る。 |
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前方に鹿柵、小ピークで休憩 |
小ピークを過ぎるとブナの大木 |
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又も前方に鹿柵が見えた。ここは左に回りこんで進んだ。ワナバノ頭に着いたかと思ったが、標記したものが何もない。ワナバノ頭の左のピークか?11時15分、小休止にする。 |
桧と杉の混合林に緑色の柵がある。頂はこの真中辺りかと思ったが、標もテープも何もない。ルートの間違いはないが、ここが何処かは全く分からない。尾根伝いを進むと大きなブナが見えた。 |
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桧岳、伊勢沢ノ頭 |
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芋ノ沢ノ頭を下る |
ワナバノ頭 |
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11時25分、また柵が見えた。その中のピークが芋ノ沢ノ頭だった。トップハンターではないが、申し訳けないと思いつつも柵を越した。桧岳、伊勢沢ノ頭が正面に見えた。そこを下るとツツジの木が点在した。アセビの木
が多くなる。11時40分、ページ上のブナの大木があった。 |
ブナが点在し、そして桜の大木があった。その木立の間からテシロノ頭も見えてきた。11時50分前方に同じ高さの頂が見えた。あれがワナバノ頭か?11時55分、踏み跡は右に折れるが、赤いテープがあり、頂は直進方向にあるのは明らかだった。ヤブをかき分けて進むと倒木があった。 |
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深いヤブと道標 |
左右はスッパリ落ちた尾根と大タル丸 |
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その先を下る、目の前に目的の女郎小屋ノ頭が見えた。そしてまたヤブが深く背丈を越える。鞍部が見えると、その手前に小さな水色の案内があった。『←ワナバノ頭』、先ほどの
歩いてきた場所だった。道の左右は落ち込んでいる。 |
特に左に落ちたら大怪我の恐れがあった。Tさんに落ちるなら右と指示する。そして、なるべく右にルートを取った。前方に大きな黒松があった。12時半、ここが白ザレのピーク(仮称)と呼ばれる所のようだった。 |
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白ザレのピークとオオタギリへの下り? |
オオタギリへの下り?と帰路 |
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パラパラと読んだホームページの中に、”この先が一番危険な箇所”とあった。クライミング経験のないTさんはこの先危険と思い、ここで終了する事にした。しかし、次回のためにその危険箇所だけは確認したかった。 |
昼食をゆっくりと食べ、前回の御岳山に比べてぽかぽかの丹沢を喜び、『やはり丹沢が一番』とTさんが話した。
これならばチューハイでも良かったと思ったが、ワンカップを温めて半分に分けて乾杯する。コピーをTさんが読み始めた。 |
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大タル丸 |
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その間に辺りを見回す。木立の中に、春に備えて小枝の先を紅く染めている木があった。その枝の先に『大タル丸』がオニギリのような形で立っている。更に奥で同じ形をした『女郎小屋ノ頭』が続く。『大タル丸』は落葉した大木が点々と眺められる。その木々は力強い。北方向に目を向けると石棚山が見える。この白ザレのピークは景色が楽し
い。
13時、昼食を終えリュックを置き、『オオタギリ』に向って北方向を下り始める。滑り落ちて行くように急な斜面だ。注意深くササを掴んで進む。20m近く進んだ所で、Tさんの足が止まった。彼の”感”だったのだろう、”危険”と判断し『ここで待っています』と言った。興味の欲求が強い私は
、先に進んだ。手には一眼レフのデジカメ、首に5mのザイル、枯れたササはポキポキと折れて心もとない。目印は何もなく、更に傾斜は急になった。それから30mも下っただろうか。『大タル丸』のピークは既に右後方になり,谷を挟んで前方右40m先に
頂上からの尾根が続く。ルートは合っているのだろうか?垂直に落ち込んだ所にぶつかった。ここからだと20m以上はロープで下らないといけない。この『オオタギリ』やっぱり凄いところだと思い、その下りにある
と思われるトラロープを見て(ルートがあっていたか確認して)引き返そうと思った。
2〜3m下に30cmほどのテラス(ここから下降か?)があり、そこを覗いて見ようと思った。その時、何か予感がした。手元にあった木にザイルを結んだが、それは安全を
充分に考えたものではなかった。
従って、ザイルの中間から先は首に巻いたときの輪になったままだった。
そして、一歩踏み出した。瞬間、身体が宙に舞い、続いて滑りだし、左太ももをいやと言うほど打ってすった。そして体は略垂直な斜面を勝手に下った。止めようと思ったが軍手の為に滑
り続ける。『どうなるのか』が頭の中を過ぎった瞬間、いい加減にしていたザイルが絡まっていて、そこで止まった。『助かった』と思った。何一つ欠けていても私の身体は谷に落ちていた。今年最後の丹沢で人生にさようならだった。
まだ残る危険に注意しながらTさんの待つ場所まで戻った。Tさんと一緒でなくて本当に良かった。二人だったら自信過剰な自分はザイルを結んでいなかった。
衝撃でカメラのダイヤルは半回転していた。 |
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ワナバノ頭付近 |
836mのピーク(左) |
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助かった事の喜びがいっぱいで、『ここは危険だから、もう来たら駄目だね』とTさんに話して道を戻った。13時35分、もう来る事はないと思い記念の写真を撮った。ワナバノ頭を過ぎて踏み
跡のしっかりしたした所に戻った。 |
これだけしっかりしていれば迷う事は無いとコピーを片付けた。左方向に歩いているうちに道が無くなり、植林の中を往生して進む。不安になり右にルートを取り尾根にたどり着いた。コピーを確認、”正面に伊勢沢ノ頭が見える”と書いてある。ルートに戻った。 |
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大木が続く |
金網と伊勢沢ノ頭 |
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正面にケヤキか?これも大きな木で目立つので、ルートの確認には打ってつけである。大きな岩も点在する。そしてまた大きな木。 |
14時25分、また鹿柵の金網が現れた。しかし、木が倒れ柵は壊れていた。玄倉の林道が見えてきた。 |
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836mのピークと桧岳 |
ケヤキと女郎小屋沢 |
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左の836mのピークは大分上になり、桧岳の下には青崩隧道が見えた。植生防護柵が次々に現れるが、これは回り込めば通れる。 |
14時40分、途中で左にルートを取るとケヤキの大木が現れる。鹿柵を通って15時に沢が現れる。正面の岩を這うように木が平行に伸びている(写真一番下) |
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大タル丸 |
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犬に見えた石 |
振返って見る女郎小屋ノ頭 |
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女郎小屋沢を渡り、水の無い玄倉を渡る。ダックスフンドに見える巨石があった。その脇に道があり、登ると玄倉の林道にでた。 |
15時5分、振返ると女郎小屋ノ頭が見えた。無事であった事をここでも喜んでいた。しかし、何故だか降り口の写真を撮った。 |
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大杉山 |
女郎小屋ノ頭 |
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帰りは大杉山の写真も取ったが、何度も振返り女郎小屋ノ頭と大タル丸を確認した。 |
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水平に伸びた木 |
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家に帰ると助かった事より、何故『女郎小屋ノ頭』を諦める発言をしたのかを何度も考えた。剣岳のカニのタテバイ、ヨコバイも難なくこなしたのに、何故だろう。剣岳が簡単過ぎたのか?真直ぐ下りて道を間違えてしまった事が原因か?再度ホームページを検索したらワナバノ頭は7mの下降とあった。出来ない高さではない。磯釣りでもその程度の崖は下っている。あれ以来女郎小屋ノ頭に悩むばかり、06年も丹沢はさようならができない。 |
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<時間>
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合計 時間分
<標高>
(m)〜(m)〜(m)〜(m)〜(m)
合計標高差 約m 距離km |
<場所>
<費用> |
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