西山を歩く

  えん堤

4月11日、凡そ2ヶ月ぶりの山歩きとなった。未だ本調子でないが、そろそろ桧洞丸のツツジ情報を掲載しないと、ひょっとして待ち望んでる方もいらっしゃるのではと、”こころ”が急いでいた。

桜流れる沢

車を経ヶ岳登山口に止めて歩き始めると、100mも歩かないうちに背中や腹部に差し込む痛みがあった。やはりまだ無理かと思った。すると目の前に白いえん堤が現れた。

 
 

ベンチから見る桜

えん堤の間は何とか通れそうだった。右に迂回するルートを通らず沢を歩いた。1年ぶりのこのルートだが様変わりにビックリ、古いえん堤はその上流に残っていた。

林道から見る桜

古いえん堤の周辺には桜が何本かあり、ハラハラと花びらが舞っていた。そんなのを見ているうちに痛みは全く感じなくなっていた。げんきんなものである。

 

ベンチ周辺

もう何度も登っている山だが、これと言った目印が無いので、林道までの中間にあるベンチがあとどのくらい歩くのか距離の目安が立たない。歩く速度が遅く、時間の尺度を今日は使えない。

そのベンチには花びらが敷きつめられて、この周辺の桜もピークは過ぎていた。向かいの山に1本だけ満開の桜があった。今日は経ヶ岳の桜と、華厳山のアブラチャンを眺めたかった。遅いのは分かっていたが黄色いアブラチャンの林は特に見てみたかった。

乾燥トマト

林道に出ると右に進み、道から今登って来たベンチ辺りの桜、新緑を眺め、休憩をとる。伊東で買った乾燥トマトがおいしかった。

暫く休んでからまた歩き始めると、経ヶ岳に進む階段にタチツボスミレが沢山咲いていた。 そして、タラの芽取りの人が3組も居た。

華厳頂上付近

経ヶ岳の頂上直下で左に曲がり、アブラチャンの林がある華厳岳に向った。 華厳に向う尾根の鞍部で禁猟区の赤い看板が折られていた。いよいよ最後の登りである。

登りきった頂上には芽吹き始めたアブラチャンの葉が青々として、花は既に終っていた。黄色い花の帯の中を漂うように歩きたかったが1週間程遅かった。

アブラチャン

足下にはアブラチャンの花が落ちていた。ここからは発句石を探し、峰歩きを続けた。

経ヶ岳と山桜

*発句石には『この山やこの鶯に人も居ず』の句が彫られていて、この山を愛した七右衛門がこの石で休んだ時に作ったという事である。

前仏果山の山容

華厳から高取山まではなだらかな下りになる。この稜線は下から見ると涸沢カールでみる北穂〜穂高岳の稜線に似ている。

そう言えば、黄色いチラシの荻田さんが荻野高取〜仏果山〜半原高取を『相州アルプス』と提言されているが、そうなると仏果山は槍ヶ岳に相当するのかな?

『相州』は馴染みがないのでしっくりこないが、荻野高取山から半原高取山までは8時間以上かかる立派な縦走路であることは間違いが無い。

発句石

山歩きの最初の頃は、登る事だけが目的だった。そして木々に興味を持ち、この山歩きでは石にも興味を持つようになった。

高取山頂上からほんの少し下ったところに発句石があった。4年前に縦走をした時、ここを通ったが全く気付かず通り過ぎていた。

  採石場

発句石の右側は道のように平になっていた、後で分かったが、それは採石された跡だった。前の方を団体の方が歩いていた。少し難儀をされているご婦人がいた。

最後尾にいた"北の国から”の純に似た若者と目が合った。私に何か言いたげな表情を一瞬した。

採石跡

少し間があった。別の男性が、団体で道を塞いで居る事を謝罪された。『全く急いでいませんので』と応えると、若い純が切り出した。『この山が削られてしまうんです。ご存知ですか?』訴えかけるようだった。

 

『あ、そうですか』とだけ応えた。今日は第4回西山登山会だった事を思い出した。忘れていた自分が恥ずかしくなった。そそくさと荻田さん達を抜いて、敬和荘の下り口に向った。荻田さんが道標を付けて下さったお陰で迷うことなく下山できた。

途中、振り返ってみた採石場跡。山が階段状に削られ木々も植わってはいるようだが、やはり痛々しい景色ではある。

下山し、車に向う途中には芝桜が綺麗に咲いていた。

*発句石→江戸時代の終り頃、麓の下荻野村に七右衛門という研屋が住んでいて、仕事のかたわら俳諧をたしなみ、号を芹江といった。芹江は西山の自然を愛したびたび足を運んだ。ある時いつものように華厳山に登った芹江は、この石のところでひと息入れ、眼下に広がる相模平野を眺めながめていると、誰もいない山の木立で鳴く鶯の声がきこえてきました。芹江は、この山や------の一句をものにすると持ち合わせた筆に墨をふくませ傍の石に書き付けて山を下りました。やがて、この事が知れ渡ると、いつしかこの石を『発句石』と呼ぶようになったと言います。尚、芹江の句は荻野側で裏は後年彫られた飯山の寿年の句だそうです。(黄色いチラシより抜粋)

市道廃止概要