蛭ヶ岳から檜洞丸

(北丹沢ルート)

ギンリョウソウ キノコ?
 

5月28、29日に今年最後のツツジ見物に出掛けた。見るポイントで檜洞丸はもちろん外せないし、 今年の冬の山行でツツジの木が多かった白馬尾根にも行って見たかった。そして、また、町の公園の雰囲気があった地蔵平の頂上の新緑の状況を確認したかった。

オーソドックスに最初の考えはツツジ新道から檜洞丸を登るコース、二番目は娘に車で送ってもらえそうな距離の焼山から登るルート、更には玄倉から弁当沢ノ頭を行く方法等とさんざん迷ったが 、略一ヶ月振りの山行きなので負担の少ない北丹沢の風巻の頭から蛭ヶ岳、そして檜洞丸から熊笹の峰を下る事にした。白馬尾根のツツジの状況は一日遅れて登るTさんに託した。

 
山ツツジ イチリンソウ?
 

いつもの山歩きよりゆっくり とした自宅スタートだった。昨年3月、雪に苦労した風巻の頭を登 り始めたのが8時40分位。 そして腕時計には1分毎に高度を表すグラフが表示される。そこには45度の傾きが現われていて、700mまでなだらかな場所はなかった。暫く進むと左に大岩、右に桧の植林があると ころで笹の間にギンリョウソウが沢山咲いている場所があった。そういえば檜洞丸では最近見かけなくなった花である。夢中でファインダーを覗いていると悩み等を忘れてしまうが、その興奮から覚めるとまた気の重い 考え事を始めてしまう。

 
地蔵平登り口 地蔵平頂上
 

9時50分、風巻の頭に到着。所要時間90分、1年前の冬は2時間半もかかった。雪も無いし、略3週間ぶりの山登りで疲れからの不整脈も今日は起こらない。袖平山に行く途中で写真上の大きなキノコを見つけた。

11時30分袖平山に到着。登り始めにあった道標の『姫次 2時間半』は一寸標準タイムではない様に思えた。11時50分に姫次到着。アップダウンの少ないコースだと思い選んだが 、袖平まで上り下りが何度かあり考えの甘さを反省した。

姫次でタップリ休み、地蔵平に向った。そこの登り口が分からず少し通りすぎたが、赤い道標に気付いた。余り人が選ばないルート、踏み跡を注意深く探し、頂上に到着した。残念ながらここは雪景色の方が素晴らしかった。

 
新緑 新緑
木道
 

地蔵平を下ると、直ぐ右手に倒木が積み重なった場所がり、その状態が段々と広がりそうな気配があった。そこを過ぎると1m程に伸びたバイケイソウが左右で出迎えてくれる。そこから先は、更に新緑の樹林が 広がっている。広々としたこの場所もこれで3度目になるが、地名が無いので 、紹介が難いところである。

木道を上り始めると霧が出てきて、時折雨粒も混ざった。途沿いにはシロヤシオやミツバツツジが所々に咲いていた。

 
  ミツバツツジ ミツバツツジ  
 

やはりツツジは昨年より少し多いものの、開花は1週間早いまま進んだようだ。1300m付近では殆どが落下、1400m付近で少し残っている程度 だった。今は、1600m 付近が一番の盛りのようだった。

 
  入り口 山荘2階  
 

道標に『蛭ヶ岳まで0.4km』と書いてあった。しかし、50mも歩かないうちに『頂上まで0.3km』の道標が直ぐにあった。そして大嫌いな”あと0.3km”である。この距離はどこの山でも経験する”精神的に一番長い距離”である。バイケイソウの咲いている 森の入り口のブナに共生したツツジが、太い木の真中で花を開かせそして紳士が招くように左の手(枝)を途(みち)側に伸ばして迎え入れてくれた。

15時半に山荘に到着した。鹿児島や、神戸から来た人たち、それにリタイヤしたグループも居た。管理人の方に聞くと今日は宿泊者が多く、1階はいっぱいになる との事だった。静かだと思われる2階の隅の布団を選んだ。ここは物置が脇にあり、リュックを置くのに好都合だった.

しかし、隅の寝床は下の個室からの声が筒抜けで、リタイヤした人たちの知識比べの会話に閉口し 、携帯ラジオをステレオモードにして音楽を聞き30分位眠った。18時に食事が始まった。定番のおでんがおかずだったので、日本酒のパックを購入した。

食事が終ると今日の管理人は面白い人だった。管理人をしていると”ドラマみたいな事がある”といいながらその日の事を話してくれた。それは雪の多い頃だった、塔ノ岳から軽アイゼンでやっと登って来た 一人の若い女性の話だった。遭難手前でやっと小屋に到着すると、その管理人に『泊めて下さい』と頼んだ。-----(時間があるとき続きを書きます)

 
  29日朝焼け  
 

翌朝、強い風が吹いていた。昨日の天気予報から、今日は曇りで朝焼けは望めないと思った。午前4時、富士山に向いた2階の窓から外を眺めると、雲は多いが景色が見えないほどではなかった。カメラを持って飛び起きた。風で手がかじかんできたが、30分以上朝焼けを楽しんだ。ここでもリタイヤグループの一人が知識をひけらかした。この空を関心している私と3人の若者にこの程度では大した景色ではないと冷や水を掛け、さらにプリズムによる光の波長の話まで始めた時に辟易して小屋に戻った。

 
  蛭を下る 同角ノ頭  
  姫次、地蔵平 大室、コウゲ  
 

5時半に小屋を出発した。風は相変わらず強く帽子が飛ばされそうである。丹沢山方向のツツジを確認するが、やはりピークの時に比べると半分にも満たない。

 
  落花(臼ベンチ) 臼ヶ岳  
 

”楽だ”と思った臼ヶ岳までの道のりも、ミカゲ沢ノ頭から下って更に登るルートは、思っていたより険しかった。2度のアップダウンを越えて、6時50分ベンチに辿り着く。そして、朝のコーヒーを入れる。”時間があるということは楽しみ (喜び)が倍増する”とその時に思った。

暫くすると、初めてこの山を訪れたらしい夫婦の方が来て、ノートに”臼ヶ岳に登った”記録を書かれていた。折角ここまで来て、ここが頂上 で無いと下山後に分かったらかわいそうなので、 『もう少し奥に入ったところが頂上です』と教えた。

 
  臼ヶ岳 臼ヶ岳  
  蛭ヶ岳  
 

コーヒーを終えて出発、臼ヶ岳の樹林を楽しみながら、檜洞丸の最後の登りに備えた。しかし、20m位の高低差が3回も続き、やっと鉄製の橋に到着する。先週Tさんと予定していた金山谷 ノ頭は直ぐそばにあった。この周辺はツツジの木が多く、道にはシロと赤の花びらが散舞していた。

 
  同角ノ頭 檜洞丸  
 

8時20分、檜洞丸まではここから約300mの登りになる。重い足には負担が大きいが呼吸方法を変えて登る。ファインダーを覗いた時のように無心になり登る。愛する女性を殺めて僧になり、難行を重ね た高僧も修行によって全て忘れたかったのかもしれない。今の自分もそんな忘れたい事がある。

 
  檜洞丸 檜洞丸  
 

9時10分、バイケイソウが一面に広がった斜面に出た。ここまでくればもう山頂までは僅かである。セミの声か?『ギーズ、ギーズ』と賑やかに鳴いている。

今年もここに登れた。単純な事だがうれしかった。自分の体力や当日の天気、そして仕事や家庭状況等様々なことが阻害要因となりつつある、この自分の年代である。山荘でビールを購入して、自分と乾杯した。

 
  檜洞丸  
  檜洞丸 檜洞丸  
 

リュックをベンチに置いて木道まで下る。今日は棚に眠っていたSONYの広角レンズを使ってみる事にした。これは2回くらい使ったがうまく撮れず、ぼけた写真しか出来なかった。それでも表現力の巾を広げたいのでもう一度チャレンジしてみる事にした。

しかし、帰ってからパソコンで見ると残念ながら左右の上に黒い縁が出来てしまった。

 
  檜洞丸 檜洞丸  
 

苦言ついでにマナーの悪い写真家について一言、この種もあとを切らない。夫婦で来ていて、旦那がバイケイソウの中でポーズ、奥さんは注意もせずにシャッターを押す。 更に、木道の階段を歩かず平気で下を歩く人、この時期の花は楽しみだが、自然を楽しいでいる私達を、数人の無知な人が壊してしまう。

 
  檜洞丸 檜洞丸から富士  
 

そうも思いながらも、もう既にこの山は5年間通い続けている。昨年の寂しい開花数に比べれば今年のツツジの花は幾分多い。種類はミツバツツジが圧倒的に多い。頂上付近でもシロヤシオは余りなかった。 木道で写真を撮り終わって頂上に戻るとプリズムの先輩達がいた。下山ルートは犬越路で方向が一緒だった。頂上から少し下ったとこにある写真左上のツツジにカメラを構えていると、プリズムさんは少し上の木を見て”花が終った”と嘆いていた。しかし私の狙った花を見ると 『昨年よりは多いね』と仲間と話し同じアングルで撮って下った。

ツツジの花はここ数日で終り、次はバイケイソウの花を楽しみに檜洞丸に来てください。

 
  落花とマルバタケ  
  森の番人 熊笹付近  
 

更に檜洞丸から熊笹の峰に向う。途中の50mの急坂に閉口した。若い人も私を一気に抜こうとしたが途中で息が切れたらしく追い上げてこなかった。

 
  ブナ なだらかな場所  
 

3年振りに歩く熊笹の峰である。あの時はブナの木の多さに驚いたが、山の経験も少しは積んできたので、今回はそれ程の感動は無かった。しかし、風巻ノ頭より更に急な道には改めて驚いた。そしてここも殆ど平らなところが無く、膝ががくがくしてきた。13時に神ノ川に到着し、一泊二日の2004年ツツジ見物は終了した。

<Tさんの状況>

月曜日会社で確認すると、玄倉から搭ヶ岳へ、そして丹沢から蛭ヶ岳のルートを進んだ。ツツジはやは昨年より少し多い程度だったらしい。しかし、早戸川乗越で体力を消耗し期待した白馬尾根には行かなかったとの事でした。残念!!