弁当沢ノ頭から棚沢ノ頭へ

  芋ノ沢ノ頭、桜が満開  
ダム発電所滝

Tさんが僕の席にニコニコしながら来た。『日曜日、7時にゲートのところですね。』と待ち合せの最終確認だった。

彼に何度も山行きに誘われたが、体調不良で断り続けていた。そろそろ再開しないと、桧洞丸に登れなくなってしまう。”今週は何があっても出掛ける”と決意をしていた。

熊木ダム湖

Tさんとは2ヶ月半ぶりの山遊びである。熊木沢までは道が広いので並んで歩いた。(7:10)

雨山峠入り口辺りで、昨年、檜から同角へ更に雨山を経て寄に抜けた猛者女性の話をした。独身の彼が『女性は気力・体力とも(男と比べ)2割増しで、日々鍛えていますからね』と言った。その言葉で彼が結婚しない訳が少し分かった。

弁当沢ノ頭取付き

400m辺りからミツバツツジの花を見かけた。その花の帯は熊木沢出合まで広がっていた。

熊木沢出合に入り弁当沢ノ頭の入り口を探す。橋を渡った直ぐ先の右側に、赤いペンキが見えた。ここが登り口らしい。(9:20)

檜の林を進む

檜の林を抜けるが、細く小石が多い九十九折の急坂だった。ここは余り人の歩かない途である事が分かった。

ザレを過ぎ、一旦右の箒杉沢を巻くがここは道幅が細く沢側が崩れているので注意が必要である。

なだらかな尾根

急坂を登りきると一転、なだらかな尾根歩きになった。ここでもミツバツツジは見られた。左に桜が咲いたところで、穏やかな尾根歩きが終る。(9:35)

崩れた道

また急なザレ場の登りになる。目印テープの通り進むが、一箇所左が大きく崩れたところがあった。このコース一番の危険箇所である。(9:55)

臼の途中のブナ林

ここを避けるルートもあるが、その踏み跡は余程注意しないと分からない。そして景色は、左に臼ヶ岳の手前のブナ林の頂が見え始めた。

ザレ場

Tさんの休む間隔が段々と短くなってきた。以前に比べ少し太ったと言っていたが、私も山を歩かなかったこの2ヶ月間は増量中であり少し助かった。

  ホットし弁当を

途の先を見ると木々の間から、今までの茶色い地面の色から空の青が見えるようになった。弁当沢ノ頭はもう直ぐである。一旦、休憩する。(10:25)

崩れた林

眼下に見える熊木沢ダム、玄倉の流れを見ながらTさんが言った。ここはホットして、弁当を食べたくなる場所だから『弁当沢ノ頭』と言うのでしょうか?

 
  元気が無い

私は、その言葉に納得した。そこから少し登ると頂上らしい平坦なブナの林に着いた。そして、左に崩壊が進んでいる箇所があった。ブナが飲み込まれている。ブナ林に来た事を喜んだものの、ここのブナの樹皮は弱っていた。木の勢いがまるでない。 (10:25)

 
  熊木沢 を一望

少し落胆し、この現状に煩悶もした。細いブナに触りながら進んだ。ここからは臼ヶ岳も見えた。

檜の林

更に進むと右手に檜の林が出来ていた。ここの左のブナは先ほどと違い勢いがあった。(10:35)

 
  左が棚沢ノ頭、右不動ノ峰  
  ブナ林

その勢いの理由を私は檜の林にあると思った。(南西からの大気汚染ガスを防止)しかし、林を抜けると更に大きなブナの木の群集が存在した。 少し下りになり、また緩やかな登りになる。

急坂前の石の腰掛

僕は嬉しくなった。弱ったブナを見た後、この林の存在は、ここに来て良かったと思った。ふらふらとブナの下により、共存を喜んだ。 時間が止まったように30分があっと過ぎ、ブナ林を抜けた。

 
  ブナの林で  
  ブナ林

暫く進むと、木の切り株のような腰掛石のところから急斜面が待ち構えていた。その石に腰を下ろし、暫し休憩をして急坂に取付いた。(11:10)

石棚山と富士

休んでいると周辺の静けさにこころが和んだ。自己主張の多い最近の社会(会社)では味わう事の出来ない静寂な時間だった。

 
  倒木

大きなブナの倒木が目の前に現れる。それを右に巻く。馬酔木の木々も点在する。(11:15)

笹の間を抜け

ブナの木々が左右に点在し、踏み跡に沿って登ると、やがて笹が途の左右に茂っていた。

 
  不動の峰  
  ガレ場の登り

不動の峯が右に見えると、ガレ場があった。約30m位の標高差である。(11:30)

ガレからの玄倉

そして、ガレ場の終りから振り返ると玄倉川が更によく見えた。そして、不動ノ峰や臼ヶ岳も望めた。

 
  急坂

そこからまた急坂になる。臼ヶ岳も眼下になり、風が強くなってきた。(11:40)

頂上の枯れ木

写真上の立ち枯れの木が頂上の目印だった。Tさんの登る速度は速くなった。(11:50)

 
  頂上

頂上に到着した。Tさんがベンチを探すが、ここには無かった。草の上に腰掛けてビールで乾杯した。Tさんが竹の子のおにぎりと新芽の天ぷらを出した。まさにこの時期にピッタリだった。(11:55)

バイケイソウ芽吹き

私はそれをご相伴し、腹一杯になり持ってきたコンビニ弁当は、そのまま持ち帰る事になった。

頂上ではバイケイソウの芽が伸び始めていた。

 
  青々と

12時半、食事を終えて下山する。彼の草木の名前の質問に凡そ答える事ができ、自分の山遊びの広がりを満足しつつ、彼が単に”登るだけの山”から、少しづついろいろなものに興味を持ち始めてきた事がうれしかった。

蛭ヶ岳

そのTさんとヘビの話になった。山でヘビに遭った事は数える程しかなく、『丹沢ではヘビより、鹿の数が多い』と彼が笑わせた。そんな訳はないと思ったが、データーは全くない。

その時、左の途沿いで”ガサガサ”と音がした。私はその方向を見たが、彼は一向に気が付かない。私は思った。この感覚の違いが鹿とヘビの数の違いを惹き起こしていると。

 
  ブナの林

弁当沢ノ頭の頂上付近では痛んだブナが沢山あった。しかし登るにつれ大きなブナも点在し、楽しい森歩きとなった。同行してくれたTさんに感謝した。

<コースタイム>

登り 約5時間

ゲート(7:10)〜玄倉ダム(8:00)〜熊木沢ダム(9:15)〜弁当沢ノ頭登り口(9:20)〜なだらかな尾根(9:35)〜急坂(9:41)〜崩れた途(9:55)〜玄倉を望む(10:20)〜弁当沢ノ頭(10:25)〜ブナの林(10:35)〜急坂(11:10)〜ガレ場(11:30)〜頂上(11:55)

下り 約3時間半