自立支援給付費等の不正請求事件に関する
調査特別委員会 報告書
平成21年6月
平成21年6月24日
久喜市議会議長 内 田 正 様
自立支援給付費等の不正請求事件に関する調査特別委員会
委員長 岡 崎 健 夫
副委員長 石 川 忠 義
委 員 木 村 奉 憲
委 員 鈴 木 精 一
委 員 井 上 忠 昭
委 員 園 部 茂 雄
委 員 荒 井 良 和
委 員 川 辺 美 信
委 員 戸ヶ崎 博
特定非営利活動法人エイム福祉サポート(代表理事A氏(原文では本名))及び有限会社エイム(取締役 A氏(原文では本名))が、久喜市を含む12市町に対し、自立支援給付費等の不正請求及び3事業所全てにおいて虚偽の内容による指定の申請を行うなどの不正行為を行っていたことが判明した。
不正請求は平成18年4月の制度開始当初から2年6ヵ月にわたり、久喜市だけで5,912万2,626円、総額1億1,702万7,875円にも上る「過去に例がない高額」の不正請求事件として新聞報道されたことは記憶に新しい。
市はその責任において、平成21年6月24日現在、再発の防止策や、被害に対する刑事告訴も視野に入れて対応を検討している状況にある。
しかしながら、このような重大事件に鑑み、久喜市議会では議会として今回の不正請求事件における被害者である市の対応が適切であったかを調査し、また今後同様の被害に遭わないよう再発防止策を講じるべきとの認識から、「自立支援給付費等の不正請求事件に関する調査特別委員会」を設置し、別紙のとおり審査し調査・研究を重ねてきた。
そこで、今回の不正請求事件について、本委員会として久喜市に対し次の点を指摘すると共に、さらに改善策等の提言を行い報告とする。
記
問題点・課題
1 制度上、事業者は埼玉県国民健康保険団体連合会(以下「国保連」という。)に対して自立支援給付費を請求し、国保連での審査を経た後、市に請求がなされる。市と事業者との間に国保連が介在しているため、通常はサービス利用計画書が市に届かず、サービス利用計画書と請求書の突き合わせ確認ができない状況である。そのため、市では形式的な書類の審査に留まっていたと言える。
2 利用者が、自立支援法の制度をよく理解していない面があったと言える。
また、自立支援法施行後におけるサービスの利用範囲と、自立支援法施行以前に利用者が実際に利用していたサービスとの間に乖離がある場合があり、今回の不正請求事件はそうした状況につけ込んだものと思われる。
3 現行制度上、市には利用者個別のデータがなく、個別でのデータの突き合わせ確認ができない状況にあり、不正請求の発見ができなかった。
4 地域生活支援事業・生活サポート事業については、計画書が市に提出されているが、計画書と実際のサービス提供状況との比較ができていなかった。
また、当該補助金は久喜市補助金等の交付に関する規則に基づいて支給しているが、規則に規定する立入検査や実地検査の実施が欠けていた。事業者が当該事業の登録や変更を行う際にも、書類審査のみで現地の確認が欠けていた。
5 恒常的な担当部署の人員不足が生じているため、立ち入り検査などが困難だったと言える。
提言・改善策
1 利用者に対する制度の説明及び周知
(1) 市は、利用者に対しサービスの内容、時間、負担額などについて、制度を丁寧に説明すべきである。
(2) 市は、不正を防止するという観点から、利用者に対し機会あるごとに、かつ定期的に制度の周知を図るべきである。
2 利用者に対するサービス利用状況の確認
(1) 実際にどのようなサービスがどの程度提供されたかは、利用者が一番よく分かっている。サービス提供実績票の写しを利用者が持つことによって、利用者が利用時間やサービスの内容を確認できるようにすべきである。
(2) 事実確認を容易にするため、事業者からの請求書に基づいたサービス利用状況の通知を市が作成し、利用実態を利用者に対して通知すべきである。
(3) 市が上記のように利用者に対し利用状況の確認を行うことを、利用者及び事業者に周知し、不正請求の抑止を図るべきである。
3 市の検査及びチェック体制の確立
(1) 実地検査については、事業者に対し事前に通知せずに実施する方法を検討すべきである。
(2) 書類上での抽出検査として、サービス利用計画書の写しを事業者から市に提出させ、請求書と突き合わせて確認をすべきである。
(3) 同規模事業者間の収支報告書の比較を行い、抽出検査の対象とすることを検討すべきである。
(4) 市が上記の実地検査を行うことを、利用者及び事業者に周知し、不正請求の抑止を図るべきである。
4 人員体制について
特に実地検査を行うにあたっては、事務に従事する人員の配置が必要不可欠である。
しかしながら現在の人員配置では、通常業務に加えて本報告書で提言する実地検査等の不正防止策を実施するにあたり、担当職員に過大な負担を強いるであろうと推察される。
また、そのような状況では結果的に十分な不正防止策が行えず、意図する効果が発揮できないことも予想される。
したがって、担当部局の人員増等、実効性を保障するための職場環境整備を実施すべきである。
5 地域生活支援事業・生活サポート事業について
(1) 自立支援給付等に準じたサービス提供実績記録票の様式を用いていることから、利用者がサービスの確認欄に押印をすることになっているが、市は独自に自署をしてもらう方法も検討すべきである。
(2) サービス利用計画書と実際のサービス提供状況との比較をして、著しく双方に差異がある場合には疑問の余地があるので、審査をすることを検討すべきである。
(3) サービス提供実績記録票について、訂正や差し替えを何回も行っている事業者もあった。市が訂正や差し替えの回数を把握した上で、事業者ごとに回数の比較をし、審査の必要性を検討すべきである。
(4) 久喜市補助金の交付に関する規則に基づき、立ち入り検査などを定期的に実施すべきである。
(5) 事業者が登録や変更をしたときは、書類審査だけでなく、現場確認をすべきである。
6 不正請求に関する返還金の請求について
市は平成21年3月23日付で、不正請求額5,912万2,626
円に障害者自立支援法第8条第2項に規定する加算金を加えた
7,642万188円の返還請求通知を発送しているが、返還金の納期限である平成21年4月6日を過ぎても入金がない。
そのため、市は平成21年4月24日付で当該返還金に関する督促状を持参し、その納期限を同年5月8日としてA氏(原文では本名)に直接渡したが、未だに返還の意向が確認できていない。また、不正請求事件に関して、荒井伸男氏が「市町もある程度黙認してくれているものと思っていた」という旨の発言をしたとの新聞報道もあり、調査特別委員会としてはA氏(原文では本名)の対応を断じて許せない。
そこで、現在、市は返還されない場合を想定し、法的措置について弁護士と相談を行っているが、不正請求を行った当事者であるA氏(原文では本名)から、法に基づいた加算金等を含めた返還金を全額回収できるよう、全力で努力すべきである。
以上、自立支援給付費等の不正請求事件に関する調査特別委員会の委員会報告とする。
自立支援給付費等の不正請求事件に関する調査特別委員会
委員名簿
委員長 |
岡 崎 健 夫 |
副委員長 |
石 川 忠 義 |
委 員 |
木 村 奉 憲 |
委 員 |
鈴 木 精 一 |
委 員 |
井 上 忠 昭 |
委 員 |
園 部 茂 雄 |
委 員 |
荒 井 良 和 |
委 員 |
川 辺 美 信 |
委 員 |
戸ヶ崎 博 |
自立支援給付費等の不正請求事件に関する調査特別委員会
会議開催一覧
会議 |
期 日 |
内 容 |
第1回 |
平成21年4月20日(月) 於:第2委員会室 |
○第11回臨時会(平成21年4月20日)において、自立支援給付費等の不正請求事件に関する調査特別委員会の設置が可決されたことを受け、同日委員会を開催し、正副委員長が選任される。 |
第2回 |
平成21年4月30日(木) 於:第2委員会室 |
○本特別委員会の今後の進め方について協議を行う。 ○第3回と第4回について、執行部局に出席要請し、現状等について説明を受けることで合意する。 |
第3回 |
平成21年5月14日(木) 於:第2委員会室 |
○自立支援給付費等の不正請求に関する現在の状況等について、執行部局から説明を受ける。 市からの出席者 保坂健康福祉部長 加藤社会福祉課長 橋本児童福祉課長 斉藤副主幹 戸ヶ崎副主幹 中村副主幹 原主査 植竹主査 清水主任 ○質疑応答 |
第4回 |
平成21年5月19日(火) 於:第2委員会室 |
○自立支援給付費支給にかかる行政内部の具体的な事務手続き等について、執行部局から説明を受ける。 市からの出席者 第3回と同じ ○質疑応答 ○次回も引き続き事務手続き等について説明を受けることで合意する。 |
第5回 |
平成21年5月26日(火) 於:第2委員会室 |
○前回に引き続き、自立支援給付費支給にかかる行政内部の具体的な事務手続き等について、執行部局から説明を受ける。 市からの出席者 第3回と同じ ○質疑応答 |
第6回 |
平成21年6月2日(火) 於:大会議室 |
○前回までの説明・質疑応答を踏まえた意見交換を行い、課題、問題点、改善策、提言等について協議する。 |
第7回 |
平成21年6月12日(金) 於:大会議室 |
○特別委員会報告書素案の協議を行う。 ○報告書の内容を盛り込んだ決議を議案として提出することで合意する。 |
第8回 |
平成21年6月18日(木) 於:大会議室 |
○特別委員会報告書(案)の協議及び最終確認を行う。 ○決議(案)の協議及び最終確認を行う。 |