※ アイドリング・ストップ=排ガスや、騒音の排出を少なくする為、自動車などのエンジンの空ぶかしを止めること。
 
 平成13年 6月26日 久喜市議会で、私の所属会派 大地が中心になって提案した「久喜市アイドリング・ストップ条例」が可決しました。
 この条例は、久喜市内の自動車運転者等に、停車中には、なるべくアイドリング・ストップをしてもらい、駐車中は、緊急時などを除いて、原則、アイドリングを禁止する条例です。(詳しくは、最下段の条文を御覧下さい。)
 条例では、罰則は設けていませんが、平成13年8月から施行され、概ね3年以内を目途に、条例施行後の効果を見て、条例の改廃や、罰則も含めた拡大を検討することになっています。

尚、環境保全条例や公害防止条例、大気関係の条例中にアイドリングの件を盛り込んだ条例は、全国に30自治体以上ありますが、観光地でもない自治体で、アイドリング・ストップに的を絞った条例は、全国で初めてと言われています。

発想の原点
 特に、真夏や真冬の昼休みや夜間に、市内の住宅地や公園脇で、トラックや営業車が自動車のエンジンをかけたままにして、何十分から何時間も休憩している人がいます。また、駅広場などでは、通勤の送り迎えや、勤務地への送迎用車両がエンジンをかけたまま、これも数十分から、1時間駐車している車両があり、商店の駐車場や路上でも同じようなことが起きています。
 車の中で休んでいる人は良いですが、外で、騒音や排ガスにさらされる住民や通勤者(駅広を通る人など)には、たまったものではありません。実際に、苦情も多く寄せられています。
 今までは、このエンジン空ぶかしを止めてもらうのに、法的根拠がないので、”お願い”というかたちで、協力を求めていましたが、あくまで”協力を求める”範囲でした。これを何とか条例化することで、例外を除いて、”禁止事項””やってはいけない事”にして、問題を解決を図るべく、啓発したかったのです。
 また、当然、二酸化炭素などの自動車からの排ガスなどによる地球温暖化を防止する視点からも、禁止事項としたかったのです。
 
 今、この時代を生きているボク達には、将来世代に、このままの形で、より良い環境で、この地球を引き継ぐ義務があると考えています。自分が生きている間が便利で快適であれば良いという考えは、地球市民として、無責任極まりない考えです。
 このような考えの基、”環境”という公は、個人の利便(便利さ)に優先するものとの考えから、条例化を発想しました。


条例化でこうなります。こういうことができます。

@ アイドリング・ストップを禁止事項にし、市に責務をつけたことで、市は、空ぶかしするものへ、”アイドリング・ストップのお願い”という法的根拠のないあくまで、協力要請から、条例化で法的根拠を明確にし、「むやみなアイドリングは、条例で禁止されています。」との説得力ある協力要請ができます。
A 条例化で市の責務を掲げたことから、今までもやっていましたが、更に本腰を入れて、アイドリング・ストップの為の取り組みをしなければならなくなり、結果、アイドリング・ストップが進みます。
B 条例化して、市に責務ができたことで、関係経費などの予算の要求を担当部署でしやすくなります。
C 他市に先駆けた事で、他市町村に条例化の輪が広がる可能性が高まります。
D 市の環境自治体としてのイメージ効果と相乗効果としての住民のこれへの積極的な協力が見込まれます。
E 他の法令で規制しきれなかったことができやすくなります。例えば、夜中に大型店などの駐車場でエンジンをかけっぱなしで騒いでいる人は、今までは、直接的に取り締まる法令はありませんでしたが、今回の条例では、条例違反となります。


提案者として、一言この件で言わせて下さいネ。
 今回の条例案提出は、正直しんどかった〜。
 もともと、議員には、執行者(市などの行政)をチェックする役割と、条例などの提案権がありますが、昔から言われていることですが、全国的に、地方議会で、条例案(決議や意見書は結構ある。)などの提案をするケースは少なく、議会のあり方について、批判の声がありました。
 

 久喜市においても例外でなく、今回、ボクが条例案を作成し、賛成者を募ったところ、同じ会派の議員+1名の提出要件としては、ぎりぎりの人数が集まっただけでした。
 本会議で条例を上程し、説明をしたところ、他の議員からの質問は一切なく、色々と議員さんに、考えを聞いたところ、

「条例の中味については良いけど、議員が条例をだすのは、良くない。」
「議員が条例出すと、市長がかっこ悪いじゃないか。」
「全員の議員の了解(賛成見込み)をとってから提案しろ。」
「石川君、条例ってものは、議員が出すものじゃないよ。」との意見。

 ほとんどの議員さんは、条例の提案理由や条文、時代の要請との考えから、条例自体の良否は良と認めながらも、議員が条例を作成しl提案すること自体が、ダメ。”生意気”だということでした。

 実際に、専門にこの条例を審議した市民経済委員会では、中味の議論は、ほとんどなく、”キャンペーンでもいいじゃない。””今、条例化でなくてもいいんじゃない?”との意見、質問が集中し、否決されました。
 

 議員は何のためにいるのか、議員の仕事とは何か。履き違えているように思います。
 ある議員は、「自分は市長与党。守るのが仕事だ。」と言い、提案どころか、質問もしません。こういう議員に限って、
”俺は質問なんてしなくても、直接、課長や部長に言えば何でもできる。”と言いますが、担当職員が聞いたら笑っちゃいます。もともと行政には、守らなくてはならない法令や条例、規則、計画があります。この議員の”顔が立つように”体よく答えたに過ぎないのに、”俺にはできる”とは。やはり、条例や規則がからむものや、計画、政策的な問題は議会で取り上げて、市としての”きちんとした形”で考えを正したり、軌道修正をしなければできないものなんです。

 市長の市政を支持するという立場では、ボクもこの議員と同じ。けれども、だからと言って、本来的な議員の仕事である、市のチェック機関としての仕事や政策立案、議案の提案はするべきです。
 ”市長与党”であれば、質問や提案をしない、なんでも「ハイハイ」の賛成者集団でいいというのは、間違いです。市長を本当に支持しているのであれば、間違っている時は間違っている。直すべきは直すべき。提案すべきものはするで、常に住民の一員として、チェック、提案し、時にはけん制し、軌道修正するのが、”市長支持”の役目。
 本来的な議員の仕事を忘れ、Yesマンになることが、”市長与党”ではありません。

 結局、今回の条例は、委員会では否決されたものの、本会議においては、良識ある議員のおかげで、13:11で可決、成立しましたが、久喜市が昭和46年に市となって、市議会ができてから、議会の決議や意見書、既にある条例の改正案や、議員定数の削減など、議会に直接関係する条例以外で、市に係る、政策的な条例は、久喜市議会ができて初めてです。

 たまたま、今回は可決されましたが、この”壁”は今後も存在するものと思います。ちょとづつでも”壁”に穴を開けて、議会をボク達市民のものにして行きたいものです。




除外規定(駐車中のアイドリング(エンジンのかけっぱなし)が許される場合)

救急車や消防車、臓器、輸血輸送車、自衛隊車両、刑務所車両、その他、道路交通法施行令で定めた緊急自動車が緊急時の時
要人警護、皇族の警衛などに使用する自動車の場合
警察の自動車で、取締りや警備、摘発、捜査、治安維持などの責務遂行時にその自動車を使っている場合
裁判官や裁判所の令状の執行をする時に、自動車のエンジンをつけたままでないと、執行の意味をなさない理由がある場合
ミキサー車や、昇降機付自動車、冷凍、冷凍装置などをエンジンをかけたままにしないと、機能が果たせなく、それを使っている場合
冬季のエンジンの暖気の為のアイドリング(環境省では、「一般的に、Cの目盛りに針がくれば大丈夫」としています。)の範囲の時
エンジンをかけたままにしないと、人の生命や健康、財産が守れないという理由がある場合

※ 法律で、貨物の5分以内の積み下ろしの時の停止や、人の乗降の為の停止は、駐車ではありませんので、「エンジンを切らなければならない。」とはなりません。客待ちや貨物の積みおろしなどで、継続的に自動車を停止する場合を駐車としています。


罰則はありませんが・・・
 今回は、違反者への罰則は、条例を守って頂く為の最終手段と考えているので、罰則はつけませんでした。先ずは、駐車中の空ぶかし(アイドリング)を禁止。やってはいけない事と位置付けて、効果を見て、文頭で述べたとおり、3年以内に、状況を検討して、罰則も含めて条例の改正が必要か、条例の廃止か、広範に状況を見て考えていくべきとの考えから、罰則は設けませんでした。
 とは言っても、全国にある、「ポイ捨て条例」の様に、罰則があっても、効果を得るのが難しいものも少なくありません。罰則をつけても、取り締まる側の警察の力量にかかっていますので、仮に、久喜で罰則となれば、警察当局との綿密な打ち合わせが必要となります。


久喜市アイドリング・ストップ条例

 (目的)
第一条 この条例は、自動車等のアイドリング・ストップを行うことにより、自動車等の使 
 用に伴う環境への負荷を低減し、市民の生活環境の保全に資することを目的とする。
 (定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 自動車等 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定す 
 る自動車及び同条第三項に規定する原動機付自転車をいう。
 二 駐車 自動車等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に 
  停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降 
  のための停止を除く。)又は自動車等を停止し、かつ、当該自動車等を運転する者がその 
  自動車等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。
 三 アイドリング・ストップ 自動車等の原動機を停止することをいう。
 (自動車等の適正使用及びアイドリング・ストップ)
第三条 自動車等を運転、又は所有する者は、アイドリング・ストップを心がけ、更に必要
 な整備及び適正な運転を行うことにより、大気の汚染及び騒音の防止に努めなければなら  
 ない。
2 自動車等を運転する者は、駐車をする場合においては、当該自動車等のアイドリング・
 ストップを行わなければならない。ただし、次の各号に掲げる場合は、この限りではない。
一 道路交通法施行令(昭和三十五年政令第二百七十号)第十三条第一項各号に規定する 
 緊急自動車で、現に緊急用務に使用している場合
二 警衛列自動車又は警護列自動車である場合
三 交通の取り締まり、警備活動その他警察の責務の遂行のため、現に使用している場合
四 裁判官又は、裁判所の発する令状の執行のため、必要足る理由がある場合
五 自動車等の原動機を貨物の冷蔵装置その他の付属装置(自動車の運転者室及び客室 
 における冷房又は暖房のための装置を除く。)の動力として使用する場合
六 自動車等を発進させるに足る原動機の暖気のための範囲である場合
 七 人の生命、健康、財産の保全上必要足る理由がある場合 
 (市の責務)
第四条 市は、市民、自動車等を運転又は所有する者へアイドリング・ストップの
 推進に関する施策や必要な措置を講ずるものとする。
 
附 則
 (施行期日)
1 この条例は平成十三年八月一日より施行する。
 (検討)
2 市は、この条例の施行後三年以内を目途に、アイドリング・ストップの実施状況につい 
 て検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。




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視察や説明にもお応えしますので、下記か、上記のメールにご連絡ください。全国にアイドリング・ストップが広がれば、将来世代に、少しでも良い形で地球を残す事ができます!