ネコの栄養について


ネコについて

・真の肉食動物は、ネコとネコ科の種族のみなんですね。腸の長さも短く、腸菅/体長比は、犬が6:1に対し、ネコは4:1です。(豚は25:1)
・ネコには代謝上のいくつかの特徴をもっています。
・ネコは睡眠覚醒サイクル、活動、摂食や飲水などに、一般的な哺乳動物のような規則性はありません。
犬は群捕食者として自分より大きな獲物を狩るため、1回の狩りから次回まではかなりの時間が空く、間欠採食者ですが、ネコは単独捕食者で自分より小さな獲物しか捕まえられないため、1日に何回も狩りをする少量頻回採食者です。
イエネコは一日の中で、昼も夜も食餌をし、10〜15回も食べ、小さなハツカネズミだと1日で10匹程度、約30kcalを少量ずつ捕食します。

ネコの好み

・犬は獲物が余ると地面に埋めて後から食べることもある腐肉食者で、冷たいものでも食べますが、ネコは新鮮肉食者で、体温程度に暖かいものを好みます。
・ネコはフードの形状や味や匂いにとても敏感で、食に対して頑固で、空腹であっても嫌いなものは頑として食べない一面があります。それに矛盾するように、気まぐれで、それまで喜んで食べていたものをある日突然食べなくなったりもします。
最初の6週間に子猫に与えるフードの種類によって、生涯の嗜好に影響を与えるといわれています。
新しいフードに変えるときには、いきなり変えるのではなく、初日は1割から2割混ぜる程度から初めて長期間をかけて置き換えていく必要があります。

ネコは砂糖を甘いと思わない

・ネコの唾液中にはアミラーゼが含まれず、膵アミラーゼの産生率は犬の約5%です。ショ糖の利用能もほとんどありません。
・犬は甘味を好みますが、猫は炭水化物(糖)の味である甘味を感受しません。
・しかし、全く炭水化物を利用できないわけではなく、いくつかの例外を除いては、一般的に良好であると考えられています。
炭水化物が35%またはそれ以上のドライフードでも適正に維持できると考えられています。これに対し疑問を提示している論文もあります。(別項を参照ください)

蛋白代謝

・ネコの蛋白代謝は独特で、肝臓でアミノ酸からグルコースを利用しているため、維持期要求量は犬に比較し非常に高く、子猫の蛋白必要量は子犬の50%増、成ネコになると成犬の2倍の維持量が必要になります。
ネコの肝の糖新生酵素は、ほかの種族と異なり、恒久的に活性化しています。
ネコに特に大切なアミノ酸は、アルギニン、タウリン、メチオニン、シスチンです。

★アルギニン
アルギニンの必要量は犬より高く、アルギニンを全く含まれないフードを給餌すると、1時間以内に高アンモニア血症を生じ、アンモニア毒素によって2〜5時間以内に死に至ります。しかし、アルギニン欠乏は稀です。

★タウリン
・タウリンはネコに必須のアミノ酸です。
・タウリンは、網膜、心臓、神経、生殖、免疫および血小板の諸機能に重要な役割をもちます。
ほとんどの動物組織にタウリンが含有しますが、植物には含有されていません。
・ネコの肝臓は、他のアミノ酸をタウリンに変換し合成する能力に限界があります。
・ネコは胆汁酸の腸-肝循環でタウリンのロスが大きく欠乏を生じます。
・AAFCOでは推奨値として、ドライフードでは1,000mg/kg、ウェットフードでは2,000mg/kgを推奨しています。実際はウェットフードでは2,500ppmが推奨されている場合が多いです。

タウリン欠乏症
・ネコ中性心網膜萎縮(FCRD)
・繁殖生涯と胎子発育遅延
・拡張型心筋症(DCM)
・聴力障害、血小板機能亢進や免疫不全も考えられる。

★メチオニンとシスチン
・ネコは特に成長期においてメチオニンとシスチンの必要量が高くなります。
ネコは必要なメチオニンの半分量までをシスチンと置き換えることができるので、このふたつは同一のものと考えられています。
・メチオニンは、多くの食材において含量の少ないアミノ酸なので、自家製のフードや野菜ベースの食餌を与えられているネコは、欠乏する恐れがあります。
・メチオニン欠乏症は、発育不全や、口、鼻の部分などの皮膚炎などがあります。

蛋白質要求

・AAFCOでは子猫の推奨値が最低粗蛋白質が30%DMまたは蛋白質カロリーが26%で、成ネコの場合最低蛋白質必要量は26%DMです。健康な成ネコに推奨される実際の蛋白質は、乾物で30〜45%とされています。
・過剰な蛋白質は滞在性腎臓疾患を促進させたり蛋白尿を増加させる危険性があります。
・明らかに健康な老齢ネコに食餌中の蛋白の制限はしてはいけません。高齢ネコでは腎疾患発生率が高いので、蛋白質を適正レベルまで制限することで有益性があると考えられていますが、まだ多くの議論があり、解明されていませんので、中程度(30〜45%)の蛋白質を給餌することが良いと思われます。

脂肪代謝

・脂肪の消化利用は高く、ネコはリノール酸からアラキドン酸を合成できないため必須です。
アラキドン酸は動物組織、特に内臓および神経組織に豊富に含まれ、植物油脂はアラキドン酸を含有しません。

ビタミン代謝

・ネコは犬と異なるビタミンを必要とします。
・ネコはトリプトファンをナイアシンに変換できないので、ナイアシンを摂取する必要があります。ピリドキシン、ナイアシン共、犬の必要量の約4倍も必要になります。
・ネコはβ-カロチンをビタミンAに変換できません。
・ネコはビタミンD光合成の代謝に必要な7-デヒドロコレステロールが皮膚中に不十分なので、ビタミンD源を毎日、必要とします。ビタミンDは、動物性脂肪のいたるところに存在します。

その他の特性

★ヒスタミン
ヒスタミンはアミノ酸の一種であるヒスチジンが脱炭酸されてできる生体内アミン(アンモニアの誘導体)のひとつで、魚肉の不適切な調理によって生じることがあります。
★プロビレングリコール
プロビレングリコールは、半生フードに添加される水分保持剤です。ネコはプロビレングリコールを摂食すると、ハインツ小体の出現および赤血球減少症が発現するため、キャットフードでの使用は禁止されています。

水分

・飼育されているネコは砂漠に住むアフリカのリビアネコが祖先と言われ、飲水量が少なくても耐えるように腎機能が発達し、尿細菅から水を効率よく再吸収し、尿を濃縮して尿中への水分排泄を最小限に抑えることができます。。
・この尿の濃縮能は、「喉が渇いた」という感覚を弱めてしまうので、その結果、尿を高飽和状態にし、尿結晶、尿石症などが出現する尿路下部疾患(FLUDT)への危険性を高めます。
・成ネコには常に水が飲める状態にしておくことが必要です。
・ネコは飲水量が少なく、犬と異なり、水を飲むことで十分な水分摂取量を補うことができません。ドライフード給餌の場合、水分摂取量はウェットタイプフードの摂食の場合のわずか1/2になってしまいます。。
・高齢になると、喉の渇感がさらに減少します。高齢ネコの腎臓機能低下は一般的で、尿濃縮能障害における水分損失量が増加し、脱水症状が進行します。

カルシウムとリン

・リンの過剰は、市販フードの摂食の不安材料で、特に、下部尿路疾患および腎臓疾患に関与します。ストルバイトのミネラル成分は、マグネシウム、アンモニウムとリンです。ストルバイト尿石予防のために、尿中pHの適切な低下、マグネシウムの制限とともに、リンを制限することも効果があります。
食餌中のリンの過剰は、腎障害の原因ではないが、腎疾患の進行を加速させます。
・高齢ネコは、若年の成ネコと比べてアシドーシス傾向が強く、尿pH値が低くなり、シュウ酸カルシウム尿結石症を助長させます。骨密度を維持し、シュウ酸カルシウム尿結石症のリスクを減少させるために、カルシウムが適量であることが大切です。

マグネシウム

・マグネシウムは必須栄養ですが、ストルバイト尿石症の主成分なので、キャットフードはマグネシウムを制限し尿酸性化の工夫がなされています。過剰の制限はシュウ酸カルシウム尿石症の増加の原因となります。
・マグネシウム0.08%DMのマグネシウム濃度はネズミの身体全体から換算されたもので、0.10%DM以下にするべきと考えられます。

尿のpH

・成長期子猫の尿pHは成ネコより低く、高度に尿を酸性化すると成長が遅延する恐れもあるため、ストルバイト予防のためのpHを6.2以下にするフードは給餌するべきではありません。
・成ネコの場合、ストルバイト尿石のリスクはpHが6.5以下の場合、大きく減少し、pHが6.0以下になると、代謝性アシドーシスの進行、骨の無機質脱落、尿中カルシウムおよびカリウム損失を生じ、シュウ酸カルシウム尿石症のリスクが増加します。
・定時給餌は、一過性アルカリ尿が生じ、平均尿pHも高くなります。自由に摂食させることで、尿pHの変動が小さくなります。
ネズミを摂食している健康なネコの尿pHは6.2〜6.4でこれが野生ネコの形に近い食餌を与えられている正常な酸性尿pHです。
・高齢になると、ストルバイト尿石症のリスクは低下し、シュウ酸カルシウム尿石症および腎疾患のリスクが増加するので、尿酸性能の低いフードを選択するべきです。



参考文献

・小動物の臨床栄養学第4版 第11章 正常猫 Claudia A.kirk Jacques Debrackeleer P.Jane Armstrong
・ネコのライフステージと栄養 日本ヒルズ・コルゲート(株)坂根 弘 (ペット栄養管理者養成講習会テキスト)
・犬と猫の基礎栄養 麻布大学獣医学部教授 阿部又信 (ペット栄養管理者養成講習会テキスト)