犬の放射線療法について

以下の文は、一般飼い主の私が、自分の犬、くっくの為に調べたものです。
一切の責任をおうこともできませんし、専門的な質問にもお答えできません。ご了承下さい。



放射線療法は、獣医療においても、20世紀初頭にX線が発見された直後から行われていますが、広い分野で利用できるようになったのは、ごく最近のことです。
超高圧放射線療法ユニットやコンピューターによる治療計画を含む放射線療法および装置の進歩など、放射線療法中により多くの正常組織を温存しながら、より深部の腫瘍に対して有効な線量を送達できるようになりました。このことで、腫瘍のコントロールできる可能性が向上し、治療中の患者もより快適に過ごせるようになりました。
CTおよびMRIの利用は、疾患の範囲により良いデータが得られるようになり、放射線腫瘍学に影響を与えました。特に脳腫瘍の治療は治療可能なマスを確定したり位置を確認したりできるようになり、根本的な変化をしました。
麻酔薬の発展に伴って、毎日の放射線照射が比較的安全に行え、麻酔からの覚醒も極めて早くなりました。
正常組織や腫瘍組織における放射線生物学が理解されるようになり、より放射線療法プルトコルが開発されるようになりました。
放射線療法は人の治療と同様に動物の癌患者にも有効な治療方法です。

放射線療法は局所療法です。
放射線療法は、単独で行われることもありますし、外科手術・化学療法・温熱療法などの他のがん治療と併用することもあります。

腫瘍の放射線感受性は、複雑な生物学的現象です。組織学的に類似した腫瘍群内でも細胞の放射線感受性は、様々です。


治療方法

★遠距離療法・・・もっともよく利用されている放射線療法。常用電圧または超高圧の機械による外部照射療法
★短距離療法・・・悪性細胞集団内または周辺に埋め込んだ照射線源から照射。
短距離療法は、極めて高線量を限局部位に照射するのに非常に有効で、正常組織の損傷は一般に腫瘍の周辺組織に限られます。
全身療法・・・体内の特定組織内に選択的に位置する放射線物質を投与。
ネコや一部のイヌの甲状腺機能亢進症およびイヌの特定の骨腫瘍に非常に役立つ治療法法です。


★超高圧放射線(メガボルテージ)

平均エネルギー100万エレクトロンボルトを超える光量子を利用します。これまで殆どヒトのセンターでしか利用されてきませんでしたが、2004.9現時点で、麻布大学・南動物病院の2箇所で治療が行われています。
リニアアクセレーター(線形加速器)もしくは多くの場合コバルト装置から発生する超高圧放射線を利用します。

超高圧放射線(メガボルテージ)は、通過性に優れ、常用電圧療法が選択できない深部に存在する腫瘍に対しても放射線療法を施すことができます。
メガボルテージ放射線は常用電圧よりエネルギーが高く、光量子が組織と相互作用し、最大線量に到達する前に組織に線量が集まるので、皮膚が受ける線量は、下層の腫瘍よりも著しく低くなります。
メガボルテージ放射線の皮膚温存効果によって、皮膚に重度の反応を起こすことなく、より深部の腫瘍に照射することが可能になります。
常用電圧放射線は骨に選択的に吸収されるため、遅発性障害が発生する可能性がありますが、メガボルテージ放射線の吸収は、常用電圧療法と違い、組織の密度にはごくわずかしか影響されないため、照射野内の組織全体に線量が均一に分布します。

表在性腫瘍に対しては、組織と同じ材質の「ボーラス」というシートを腫瘍のうえに置き、エネルギーを抑え、皮膚に到達する前に放射線が集積し、皮膚とその部分の腫瘍に最大線量を照射できるようにします。
別の方法としては、電子は深部組織にまで浸透しないので、リニアアクセレーターで発生させた電子ビームを表在性腫瘍の治療に用いることができます。

メガボルテージ放射線と組織の相互作用は、予測しやすいので、コンピューター治療計画システムが開発されています。
放射線腫瘍医が指定した領域に目標とする最低の腫瘍線量を確実に照射し、可能な限り正常組織構造を温存することを目的にしています。
このシステムによって、補正器を組み込み、複数のビームを異なる角度から照射して腫瘍を治療することも可能です。補正器のくさびは、三角形の鉛片で、くさびの厚い側は放射線の通過量が少ないために、線量分布を補正することができます。

★常用(慣用)電圧放射線(オルソボルテージ)

常用(慣用)電圧は、150〜400kVpのX線を発生させ、エネルギーが低く、数センチ以上は有効に通過しないため、放射線量の大部分が皮膚表面に分布します。

常用電圧放射線療法は、表在性腫瘍や鼻の腫瘍などの空気で満たされた膣にある腫瘍の治療に役立ちます。

皮膚の急性反応が非常に重度で、患者に不快感を与え、皮膚及び皮下組織に対する遅発作用のために線量が制限されます。

常用電圧放射線は、骨に選択的に吸収されます。骨に隣接・骨を覆った腫瘍に適切な線量を照射すると、骨に遅発障害が発生する可能性が極めて高くなります。

基本原理と4つのファクター

電離放射線はDNA自体またはその付近にエネルギーを徐々に付与し、やがて細胞死につながるプロセスを通じて細胞を殺傷します。
増殖中の細胞は、放射線感受性で、上皮細胞などの亢進し続けている細胞集団とともに腫瘍細胞が含まれます。

急速に増殖しつつある正常な組織系に対する放射線照射の影響は、放射線療法のクール中または直後にあらわれ、急性反応型または早発反応型正常組織と呼ばれます。
骨および神経系細胞のようにより分裂の遅い、または分裂していない細胞も放射線治療によって影響されますが、その変化が明らかになるまで長時間がかかり、遅発反応型正常組織と呼ばれます。

急性反応型正常組織の障害は、かなりの量がすべての患者に発生しますが、総線量は、遅発反応型組織に対する障害によって決定されます。
放射線療法の目標は、正常な周辺組織に対して過剰な障害を与える事なく、腫瘍の増殖能を破壊することで、明白な毒性を発現する患者が5%以下であることを目標にします。
この目標を達するために、「分割照射」総線量を多くの小さなフラクションに分割し、一定期間をかけて照射することが行われます。

これらのパラメータは、4つのR。修復repair、再分布redistribution、再増殖repopulation、再酸素化reoxygenationによって影響されます。

★修復repair
正常細胞も腫瘍細胞も共に照射後2〜3時間以内に自己修復し、放射線照射による損傷の修復は正常細胞でも腫瘍細胞でもほぼ同じと思われます。
この修復機能を阻害することで、腫瘍に対する放射線療法の有効性を増強することができます。

★再分布redistribution
放射線療法を実施すると、細胞周期の全期(例 M,S,G1,G2,G0)の細胞の再分布が起ります。
放射線療法は、G1,G2期に最も効果があるため、細胞の大多数が細胞周期のこの時期にあたるように治療を行うと、有効性が高められます。分割照射は、この減少を利用します。

★再増殖repopulation
再増殖は、放射線療法で頃された細胞を生き残った細胞が増殖することでその子孫に置き変えることです。
正常組織も悪性組織も、同じ方法で回復することができますが、再増殖は、その細胞が由来する組織によって異なり、放射線による感受性が異なります。

★再酸素化reoxygenation
再酸素化によって腫瘍細胞も正常細胞も酸素供給源を再確保します。低酸素状態の腫瘍細胞は、放射線療法に抵抗を示します。薬物などによって、腫瘍細胞の酸素科を促進したり増強することによって、放射線療法の効果を高めることができます。

■□ 分割 □■

総線量をいくつかのフラクションに分割して照射することは、重要です。

★ 腫瘍細胞と正常細胞の修復能力の差を利用する。
放射線によって生じた障害の一部を修復させますが、この修復は大部分の組織で急速に進行し、1フラクションを照射して24時間以内に完了します。早発反応型組織と遅発反応型組織では、放射線照射による反応が異なります。低線量の放射線に対する感受性は、ゆっくりと分裂している細胞のほうが早く分裂している細胞より低いのですが、1フラクション当たりの線量を大きくすると、感受性が高くなってしまいます。
1フセクション当たりの線量を低くすることで腫瘍や急性反応型組織に比較して遅発反応型組織を温存することができます。

★フラクションの合間に再分布が起ります。
腫瘍や増殖中の正常組織は、有糸分裂で増殖し、ある時間で細胞は分裂を繰り返します。有糸分裂から有糸分裂までの間隔は細胞周期時間と呼びます。
有糸分裂を行うためにね分裂の合間にDNAを複製します。この複製している時期をS期といいます。S期の前後にDNAの明らかな活動がない時期があり、G1、G2期と呼ばれます。
放射線に対する感受性は、細胞の周期の時期によって異なり、S期の周期にあたる細胞が最も抵抗性で、有糸分裂をしている細胞が最も感受性です。
放射線が照射されたとき、感受性の周期にある細胞の多くは死滅します。
次のフラクションまでの合間に、生存していたS期にあった細胞が、感受性の高い細胞があった部分に再分布します。

★腫瘍は急速な成長と血管系の異常により、部分的な低酸素状態になっています。酸素が欠乏すると放射線照射によるDNAの障害が軽減されます。
フラクションの合間には多くの低酸素状態にある細胞が、有酸素性となり、感受性が高まります。

■□ 時間 □■

放射線照射によって、破壊されなかった腫瘍細胞は、治療のクール中にも複製を続けます。
治療から約4週間たつと、腫瘍は正常な条件下よりも急速に再増殖するようになり、「加速再増殖」という現象が起き、増悪します。

急性反応型正常組織も時間に影響を受け、同じ放射線線量を短時間に照射すると、長時間での照射より、重度の急性影響が起ります。急性影響によって、不快感を感じますが、一般に自己限定性で支持的ケアによって管理できます。

遅発反応型正常組織は、治療期間からはそれほど大きな影響は受けず、1フラクションのサイズが重要となりますので、フラクション間の時間が大切になります。
短期間で再増殖を防止しながら、小さなフラクションとして遅発反応型組織に対して障害を抑えて総線量を照射することが望ましいことになります。
正常組織を修復させるため、フラクション毎の間は6時間以上あける必要があります。脳や脊髄が完全に修復するのは、さらに長時間が必要と考えられ、1日に複数回のフラクションの照射による、遅発反応型組織に与える影響は明確になっていません。

■□ 総線量 □■

放射線の線量の単位は、Gyでグレイと読みます。
総線量は、治療領域に著しい遅発反応型正常組織の障害が起きないようにしなければならない。
これらの組織は、フラクションのサイズによって影響を受けるので、同じ総線量であっても、4Gyずつの分割では、3Gyずつの分割照射より、遅発型作用を起こす確立がはるかに高くなります。

腫瘍や急性反応型組織はフラクションのサイズには感受性でないため、サイズが異なっても、ほぼ同様と考えられます。

1フラクションの線量を低くすることで、正常な遅発反応型組織を障害する確立を低くし、照射線量を高くできます。
しかし、腫瘍の再増殖が腫瘍のコントロールに有害な影響を与える程度にまで放射線プルトコルが長期化すれば、利点は失われます。

許容される総線量は、放射線療法野にある遅発反応型正常組織のタイプによって異なり、脳や脊髄は筋肉や骨よりも放射線照射の影響による忍容性が低くなります。

また、照射野に正常組織の体積が大きいと、小さい場合より障害に対する感受性が高まります。

完璧な放射線療法プルトコルは存在せず、すべてに長所と短所があり、多くのファクタを考慮しなければなりません。
治療を始めるにあたって、腫瘍コントロールの確立、予測できる遅発型作用についてとその確立、予測される急性影響についてを理解していることが大切になります。

治療の決定要素

充実性腫瘍の治療においては、常に、局所の腫瘍コントロールと、転移性疾患のコントロールの2つの問題を処理しなければなりません。
局所の腫瘍コントロール・・・外科手術と放射線療法の一方または両方
転移拡散を排除・・・化学療法

外科手術と放射線療法の単独または併用の決定要因
・局所の腫瘍コントロールの可能性
・機能的転帰の予測
・外観的転帰の予測
・サルベージ(救済)の可能性
・経費
・その他併発疾患などの患者のファクター
・オーナーの希望

サルベージ(救済)の可能性とは、最初の治療法方が失敗した場合に使用できる選択肢の有無のことです。一般的に外科手術で失敗した場合より放射線療法で失敗した場合のほうがその後、外科手術という手段をとることができるので、可能性は良好です。
積極的切除をした後の局所再発の場合、放射線療法野は最初とは全く異なり、広いものになります。

経費は、一般的に外科手術より高額になります。

麻酔に関しては、手術などのほうが、比較すると、大手術での長時間麻酔、また失血などの他の事情が加わるなどがあり、短時間の軽い麻酔を複数回繰り返すことよりリスクが高いと思われます。

米国では、放射線治療の3分の1は私設の動物病院で実施され、照射スケジュールも、都市圏等で通院ができる場所では、週3〜5回の照射を行い、遠隔地の場合、短い間隔で毎日の分割照射を行うなど、考慮されています。

放射線療法で治療される腫瘍

口腔腫瘍

放射線療法は多くの口腔腫瘍の治療に有益です。
積極的手術はしばしば機能的・外観的な障害が残ります。
多くの口腔腫瘍は放射線に反応します。刺細胞型エプリスは、放射線療法によって90%近い腫瘍コントロール率が得られます。

鼻の腫瘍

犬の鼻の腫瘍は局所コントロールが困難で、外科手術単独では改善が得られないので、放射線療法単独または外科手術との併用が適応になります。
鼻鏡の腫瘍は、放射線療法によって治療できます。

脳腫瘍

脳腫瘍は、放射線療法によって、生存期間中央値が1年近くまたはそれ以上になりました。
髄膜腫および下垂体巨大腫瘍が放射線療法に対し最も良く反応します。
脳組織は、放射線の遅発障害作用に対して極めて感受性です。
早期遅発障害では、当初と同じような症状や昏迷を示しますがしばしば一過性で、コルチゾンに反応します。
後発性遅発障害は、脳の壊死が見られます。
遅発障害発生のリスクを5%未満に減らすためには、3Gyずつのフラクションで総線量を制限する必要があります。

体躯および四肢の腫瘍

体躯や四肢の腫瘍の多くは放射線療法に反応し、一般的に小さな腫瘍ほどよく反応します。
軟部組織肉腫は、局所侵襲性で、放射線療法と外科手術の併用でコントロールが可能です。
腫瘍細胞がマージンの外に伸びている場合、腫瘍が顕微鏡サイズであるうちに放射線を照射すると、成功の可能性が大きくなります。

皮膚肥満細胞腫も放射線療法・外科手術実施後の放射線療法が効果があります。

その他の腫瘍

結腸および尿路の様々な腫瘍に対し、放射線療法が実施されます。
外科手術の後の放射線療法は、顕微鏡的な腫瘍の拡散のコントロールに役立ちます。

緩和的放射線療法

進行した転移性疾患または重症の併発疾患などといった原発腫瘍以外のファクターのために死亡する可能性のある患者において、腫瘍に伴う疼痛の緩和または機能不全の改善を得るために行います。
転移性骨腫瘍、主として骨肉腫に対して、疼痛管理などを目的に最もしばしば行われています。
これによって得られる緩和は無期限のものではありませんが、転移性質感が進行するまで比較的正常に生活を送る事ができます。
疼痛はしばしば最初の照射直後から軽減されます。

フラクションの回数が最少に抑えられているため、オーナーにとっても煩雑ではなく、経費も抑えることができます。
フラクションのサイズが小さいので、再治療も可能です。

緩和放射線治療は、すでに他の骨や肺に転移のある進行した骨肉腫、あるいは従来型の治療(断脚、手術後の抗がん剤)に失敗した犬、局所再発や骨転移が認められている犬に主に利用されます。
口腔黒色腫のイヌにも緩和適療法が報告されています。

正常組織に対する放射線照射の影響

早期または遅発に分類され、遅発障害では、骨、肺、心臓、腎臓、骨髄などの比較的増殖の遅い組織が侵されます。
遅発障害が発生したときには極めて重度で、壊死や機能喪失の他、死亡することもあります。

照射線量は、照射野内の正常組織が耐えられるかどうかによって制限されます。
遅発反応は、治療が困難なうえに、コストもかかります。

早発障害は、放射線療法中、または直後に発生します。
口腔粘膜、腸上皮、皮膚などの急速に増殖する組織に現れます。
これらの作用は自己限定的で、一般に急速に回復します。
しかし不快なものであり、適切にケアしなければ、深刻な状態になることもあります。

★口腔・咽頭

鼻や口腔の腫瘍での治療では、口腔・咽頭・食道に粘膜炎が発生することがあり、口腔腫瘍の照射ではある程度必ず起ります。粘膜炎は、放射線治療の第2週目で発生し、最終週で最も重症になります。
慢性期には口内乾燥や虫歯が認められることもあります。
放射浅慮法を始める前に、歯の治療の処置を完了させます。

臨床症状は、唾液の分泌増加と、口の圧痛で、飲食をためらうようになり、治療しなければ脱水・衰弱を引き起こします。減塩食は、嗜好性が良く、口腔粘膜の刺激も少なくなります。手で食べ物を与えたり、生理食塩水やお茶で口をすすいだり、手厚く世話をし、カロリー摂取の維持に努めます。
リドカインの粘性溶液が役立つこともあります。(ネコでは禁忌)
皮下に輸液を行わなければならないことがあり、食物摂取を促進するために、胃造痩管の留置が必要になる場合もあります。
口腔内粘膜炎は、通常治療から2〜3週間で治ります。

遅発性損傷としてときには、下顎や上顎の骨壊死が認められます。

★結腸・直腸

消化管系のいずれかの部分に照射した場合にも粘膜炎が起ります。
膀胱または結腸・直腸の腫瘍の治療に対しては、出血、しぶり、痛みなど結腸炎がよく認められます。重度の大腸性下痢も起きます。放射線照射による肛門炎が下痢によって悪化しひどい不快感をもたらします。
局部を清潔に保つと共に、低残渣の食餌と便軟化剤で排便時の疼痛を和らげたり、無反応性大腸炎には高線維食を給与します。一部の患者にステロイド浣腸が有効です。

★皮膚

皮膚に対する早発障害は、照射野に限られます。
重症度は、用量と相関があります。脱毛は永久的になる例もあります。体毛の回復には数ヶ月を要し、再成長する被毛の量は線量と感受性によります。

急性反応には、紅斑、掻痒を伴う乾性剥離、湿性剥離があり、自家損傷のために悪化します。
このような場合には、温水で洗浄します。Water-Picか60ml注射器による水の噴射が役立つことがあります。傷の表面に石油系製剤は禁忌です。エリザベスカラー、サイドバー、足部へのパット付き包帯などが必要になります。
その他、非石油系基剤を用いたビタミンE軟膏や、過酸化水素水や生理食塩水による洗浄があげられています。
Cara-klenzなどの湿潤液による洗浄の後、アロエ・ベラのゲルエキススを塗布することも示唆されています。
組織を覆う必要がある時には、必ずテルファ・パッドを使用します。
周囲に広がる掻痒性皮疹を発症した場合、ジフェンヒドラミンなどの全身性抗ヒスタミン剤や外用コルチコステロイドが処方されます。
通常2〜4週間で解消します。

もっと高い線量で発現し得る副作用はメラノサイトに対する障害で、皮膚の色素沈着過少または過多が起きたり、体毛の再成長の際、体毛の色が変わったりします。抹消血管拡張、潰瘍形成、線維症などもあり、広範囲にわたるばあいは、ひどい痛みを伴うこともあります。
極めてまれですが、遅発性の皮膚弱質化が起った場合は、血管豊富な組織による再建術で治療します。
耳管についてはDMSOとステロイド含有点耳薬の両方または片方で治療します。

★眼

鼻に腫瘍がある場合、しばしば眼が照射やに入ります。
眼に対する影響は、用量依存で重症度は様々です。
眼球はできるだけ照射を避けますが、腫瘍の位置によっては、除外できないことがあります。
急性障害としては、眼瞼炎、眼瞼痙攣、結膜炎、乾性角膜炎(KCS)の発症があります。
KCSは角膜潰瘍を防止する人口涙液とステロイドによって治療します。
乾性角膜炎は一過性のときも恒久的であることもあります。
遅発障害として、血管の変性による視力が影響を受けます。
放射線誘発性白内障が発性することもありますが、数年を要し臨床的重要性は一般的にありません。

★血液、骨、その他

照射野にかなりの量の骨髄が含まれている場合、骨髄抑制が起る事があります。
また、照射野を通過したリンパ球は、すべて溶解してしまいます。
放射線照射野に骨が含まれている場合、骨の壊死・腐骨が生じることがあります。
食道、胃、小腸、肝臓なども損傷を受ける可能性があります。
頭部や頚部の照射では、下垂体や甲状腺などの内分泌系が損傷される恐れがあります。
肺への照射では放射線肺炎を起こすことがあります。
心臓が照射野に入った場合、心膜炎、心外滲出液が認められることがあります。
膀胱に高い照射を一度に行うと、ひどい線維症と弾力性の喪失が起きます。
頭蓋部の照射では、頭痛、悪心、嘔吐、乳頭水腫を起こすことがあります。
脳に与える最も深刻な障害として脳壊死があります。



*** 参考資料 ***

・動物の癌患者治療管理法 コロラド大学癌内科学教授 Gregory K.Ogilvie.DVM タフツ大学癌内科学助教授 Anyony S.Moore.MVS 訳/代表 岡公代 監/松原哲舟 LLLセミナー

・小動物の臨床腫瘍学 第2版 Stephen J.Withrow  E.Gregory MacEwen 著 訳/代表 岡公代 監/松原哲舟 LLLセミナー

・獣医臨床シリーズ 1992年版 Vol.20/No.4 癌の患畜に対する臨床管理に関するシンポジウム 学窓社

・獣医臨床シリーズ 1999年版 Vol.27/No.1 放射線腫瘍学 学窓社