避妊手術の代替法(インプラント)について



最近、身近な周りの方から、インプラントについて聞かれたり、装着されている方からのお話をお聞きしたりする様になりました。

この黄体ホルモン製剤は、西山ゆう子さんが書かれた、「不妊去勢手術」という資料によると、「副作用が多く、特に子宮蓄膿症や乳腺腫瘍という病気を誘発する可能性もある」と書かれています。
そして、「幾つか市販されているものがあるが、そのどれもが、非常に気を付けてリスクを承知の上、使用されるべきで、普通の犬の避妊目的のみで長期間使用することは認められていない」と書かれていました。

日本獣医学フォーラム柴内晶子先生他による、「黄体ホルモンインプラント製剤の投与後にリンパ腫が見られた若齢犬の1例」としての症例検討会によると、インプラントの長期使用の副作用として、以下をあげています。

・妊娠期間中の投薬による催奇形性
・糖尿病
・肝障害
・子宮内膜の病理学変化の誘発
・子宮蓄膿症
・副腎皮質抑制
・乳腺肥大
・乳腺腫瘍
・沁乳
・多渇
・沈鬱

この症例検討会は、2歳のラブラドールが、発情抑制の為に黄体ホルモンインプラント製剤を過剰投与した後、子宮内膜の変化、乳腺腫瘤、卵巣腫瘤、リンパ腫の発症、死亡した例による、検討会で、大型犬の若齢でのリンパ腫は、決してないものではないので、投薬と腫瘍発生の因果関係は不明であるとしながらも、その予想される副作用の影響は大きいと、書かれています。

薬品会社が出しているカタログには、副作用に、

・乳首、乳腺の腫瘍
・外陰部の腫脹
・脱毛
・子宮蓄膿症

などをあげています。
メーカーのカタログの使用上の注意には、「本剤移植中に子宮疾患を発症することがある。」と書かれています。

ある獣医師に相談致しましたら、
・確かに、様々な副作用がある。
・自分は、インプラントを薦めない
とのコメントを頂きました。

又、色々調べたり、お聞かせ頂いた中で、知り得たのですが、日本はインプラントが盛んですが、アメリカでは正式にFDAやDEAから許可を受けている、インプラントはないそうなのです。
ですから、基本的にアメリカではインプラントはないに等しいとの事なのです。びっくりしました。

認可における、動物実験に対しても、頭数や期間について、疑問の声もありました。
「臨床統計」の必要性や、それが行われていないリスクを心配される意見もありました。

私も、避妊・去勢手術をせずに、その他の方法で、安全で副作用もなく、完全に効果があるのであれば、そういった方法が一番だなっと思います。
ただ、今現在の段階では、そういった手術にとって替わるべき、方法は確立されていない様ですし、何より、不妊手術は全世界で過去何百万頭という犬に行われて、実績とデータがあった上で、安全性も高いものです。
そして、不妊という大きなメリットの他に、子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、前立性肥大等の、多くの恐ろしい病気の根絶、予防になること、性本能による問題行動のリスクを減らせること等を考えましても、避妊・去勢手術に取って代わる方法は、今時点では、考えられない様に思うのです。

インプラントは、手術よりも麻酔のリスクが少なくてすみますよね。
そして、将来、繁殖を考えている場合の、一時的な措置として有効ですよね。
ただ、その装着にあたっては、副作用の恐れがあること、長期間の継続使用は心配なことや、病気の予防、根絶の効果はないこと等、そういったリスクも、きちんと獣医師からお話を伺った上で、ご判断されるのが良いのではないでしょうか。

最後に、ある訓練士さんが、牡犬に対してのインプラント装着を薦められていました。
牡犬の問題行動の矯正に、効果が見られるというものでした。

インプラントの装着は、牝犬の繁殖機能を抑える為の製剤として、認可されているものです。牡犬に対しては日本でも認可を受けていないそうです。
そして、副作用や効果に対しての資料や実績等、薬理学上の資料も、提供されるべきものがないのです。
ですから、投薬をされてから後の、トラブルに対しての保証は、どこにもないのです。
こういったことを、きちんとご理解・納得の上で、トレーニングや去勢等による効果等他の方法と比較され、決断されるべきではないでしょうか。

(参考資料)

・不妊去勢手術 西山ゆうこ著 アルファ発行
・帝国臓器製薬叶サ造発売元 武田薬品工業株フ売元 ジースインプラントカタログ
・第2回日本臨床獣医学フォーラム 症例検討会「黄体ホルモンインプラント製剤の投与後にリンパ腫が見られた若齢犬の1例」 柴内晶子 菅野晶子 松尾佳子 樋口崇 岡田真美 柴内裕子 石田卓夫 
・犬の攻撃行動の矯正法 藤井邦蔵 Japanese Journal of Human Animal Relation 1996.3

(ふじたみゆき)