アーガイル

新鮮な色、好きな色。ほかに何も手を加えずに、ただ色だけを着る。白のTシャツと自分とが主役で…。

どういうわけか今年のパリでは、飽きるほど沢山のアーガイルを見た。セーター、靴下、ネクタイ、ベスト。あらゆる色の、あらゆる等級のアーガイルものがあった。均一(プリジュニック)ストアの安ものから、金持専門店のカシミア100%まで。
”エミスフェール”はパリでも高級に属するショップだが、まるで中毒のように行かずにはいられない店。オーソドックスなものばかり売っているのだけれど、ほとんど過激とさえ言える色使いのものが中に混じっている。エミスフェール的着こなしは、一見オーソドックスで実は内心アナーキーで脳天気、といったパリのお洒落の1タイプかもしれない。
オレンジと黄と赤、などという信じられない色合わせのアーガイルセーターをさりげなく売っていたりする、この店のしゃれッ気は心にくい。
白、ピンク、黄、という組合せもまた、アーガイルとしては非正統的だ。男のそんなイタズラ心的秘蔵品を、女の子が容赦なく奪って着てしまう。もともとアタシのものよ、という顔で。こういうおしゃれが人生を楽しくする。

エミスフェ―ルのアーガイルセーター
made in スコットランド、100%カシミアの白地アーガイルVネックセーター 2,550F(1984年当時、1フランは28円でした)
ラムウール100%の肩にかけたピンクのカーディガン 850F (共にHEMISPHERES)
ネクタイ 120F (ISLAND)
カシミア100%のピンクのマフラー 595F (UPLA)
シャツ¥15,000、ジャケット28,000、パンツ¥6,300、ブーツ¥21,000、バッグ¥5,500(以上ピンクハウス)
アンアン1984年12月28日/1985年1月4日合併号(No.460)「金子功のパリでいいもの見つけた!」より

わんだふるはうす私物
1 KK−4 69000円
(カールヘルム1985年秋物)
ワンダフルハウスのお宝を初公開いたします。上記↑の「金子功のパリでいいもの見つけた!」から1年後、カールヘルムブランドが立ち上がった時に発売された1企画のカシミアカーディガンでございます。金子さんは、これと同じブルーのVネック(65000円)を買って「金子功のブラウス絵本」で着ていました。素材と色合いに、明らかにエミスフェールの影響を感じさせますね。ブルーにピンク、赤、黄などという組合せは男物のアーガイルセーターとしては、かなり非正統的。他の色は、このカーディガンに使われているブルー、キナリ、赤、ピンク、黄色の他にグレーもありました。初期のカールヘルムは、上質な素材を使っていたので、派手な色でも安っぽい色にはならなかったのです。
わんだふるはうす私物
6 KK−7 40000円
(カールヘルム1986年冬物)
派手な色使いのカーディガンです。アーガイル部分に一体何色使っているのか数えてみましょう。最上段と最下段は同じ色使いなので4段×6列=24色。ベースの赤も含めると25色! たぶんカールヘルム史上最多色使いのニットです。素材はただのウールなのに4万円という価格設定にも納得できます。カシミアだったら10万円を超えていたでしょう。このアーガイルカーディガンについて、金子さんがメンズクラブ1986年12月号誌上でこのように語っています。「男の服というのは英国の伝統的なものがいい。タータンチェックとかエンブレム、ツイードなど。特に上げるならアーガイル・カーディガンがいい、男が安心して着れるセーターだと思います。着こなしによっては大人っぽくもカジュアルにも装うことができる。また、どんな色と組合わせになっても、このアーガイルの柄で全体がしまってきます。着こなしのポイントとしてはアメリカや英国の田舎町の男という感じで着こなして欲しい。気取って装うのではなく、ファーマーやワーカーという感じでクラシックに着こなすのがカールヘルム風です。」

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