アクセサリー

by ユリさん

アクセサリーの使い方のうまさではちょっとかなう人はいないのではないかしら、と思うほど、おしゃれ上手、選び上手、着こなし上手の立川ユリさんが、今度、クロワッサンの店のために、アクセサリーを作ることになったのです。
ユリさんのアクセサリー大好き人間は有名。そして、ユリさんほどアクセサリーが生活に密着している人も少ない。つけていることを感じさせない、独特の雰囲気を持ち合わせている。
ユリさんのアクセサリー好きは、もうだいぶ昔、モデルの仕事を始めた頃に起った。この頃から現在まで好みは一貫している。
「パールと、ガラスのダイヤモンドみたいなものと、金が大好きなの」と。
理由は自分でもよくわからないが、銀と黒いパールだけは好きになれない。イヤリング、ネックレス、ブローチ、そしてブレスレットが好き。そのものだけで主張があるような、大きめのものが好き。デザインが可愛ければ、本物の石を使おうと、イミテーションであろうと、そんなことは関係なく好きになってしまう。
つける時は、同じ素材の組合せにする。イヤリングがパールなら、ネックレス、ブローチもパールというように。ブレスレットは一度に沢山つける。その時も同素材を、季節は問わずに。
イヤリングは、少し前までは、長く垂れるデザインのものばかりをつけていた。どんな洋服にも、全部そればかり。でもちょっと飽きて、今はピチッと耳につくデザインが気に入っている。「イヤリングをつけると、顔が華やかになるのよね」イヤリングは、ちょっと出掛けるだけでもつける。子供がまだ小さい頃でも、引っ張っても取れないように、小さなピアスをつけていたほどである。
こまめに見て歩かなければ、良いものには出合わない。アクセサリーを見て歩くことも大好きで、買う目的もなく出掛けることが多い。そんな時、必ず一つは良いものに出合う。写真の黒いニットにつけた大きなリボンのブローチも、その一つ。これは、原宿の「ハナエ・モリビル」の地下にあるアンティック・ショップで見つけたものである。
気に入ったものに出合ったら、石が取れていないか、留め金などが壊れていないかをよく見る。あまり安いものだと飽きやすいし、壊れやすいので、ある程度値は張っても、良いものを買うようにしている。パリやロンドンのノミの市では、ドキドキしながら安くしてもらうこともする。選ぶ楽しみにくわえ、買う楽しみも充分知り尽している。
ロンドンで買ったアンティックの8ポンドのブローチ、クラップが気に入ったアンティックのパール・ネックレス、シャネルのイヤリング、そして、「ピンクハウス」のパールのネックレスなど、数えあげたらきりがない。その中でも、特に大切にしているものがある。「カルティエ」の3連のブレスレット。今や誰でもが知っている名品であるが、15年ぐらい前は、幻の存在であった。当時「エル」などの外国雑誌に、シルヴィー・バルタンがたびたびのっていた。両手にこのブレスレットをつけて。もう、ほしくてほしくて、ユリさんは大さわぎ。眼を皿のようにして、雑誌を読みあさった。そして一冊の雑誌から、「カルティエ」の文字を見つけた。当然日本にはないし、パリに旅に行く人も少ない時代。たまたま荒牧太郎さんがパリに行くことになり、買って来てもらうことができた。その当時、20万円。今や120万円にもなっている。こんなエピソードは、この時以来ないが、すごくほしいアクセサリーに出合ったら、他のものを買わずに、そのために、お金を貯めることもする。
これまでのことで、なぜかユリさんが、クロワッサンの店でアクセサリーを作るのかがわかっていただけたと思う。
「まだ考え中なの。でも、誰でもが一番よく使える、シンプルなパールのネックレス。最初は、そういうものから作っていこうかな、と思っているの」
丈はあまり長くなく、首にピタリとつくようなものでもなく、前のほうに少し大きめの玉を使い、後に向って自然と小さな玉になっていくような、一番オーソドックスで、例えば、セーターやTシャツにでも使えるようなもの。
「安っぽいイミテーションではなく、貝パールのような、ちょっときれいな素材を使って。できるなら、クラップはゴールドを使えれば、と思っているの」と熱っぽく話してくれた。
パールは、どんな服にも一番似合う素材。幅広い年齢層に一番親しまれている素材でもある。有名ブランドでも、本物のパールを使わなくっても、とても可愛く作られたものが沢山ある。
ユリさんは、水着の時でも、小さな玉のパールのネックレスをつけている。古くて良いもの、新しくて良いもの、沢山のものを見、身につけているユリさんの作り出すアクセサリーたちは、華やかで、可愛くて、そしてデリケートなユリさんの姿そのままが、形になって表われるはずである。

クロワッサン別冊「クロワッサンの店」(1984年12月9日発行)より

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