バーバリー

ロンドンっ子よりパリ人がバーバリーの愛し方を知っている。ブカブカでよれよれが粋の極みだ。

買いものに心奪われ忘れがちなのだけれども、パリという都市それ自体こそが「いいもの」の極致ではないのか。たとえば、シャンゼリゼ大通りなど12本の美しい通りを放射状に放ちその中央に凱旋門が聳(そび)えるエトワールの広場。機能と芸術が交差する完璧な美に改めて脱帽、の気分。
バーバリーのレインコートも、機能と粋が一体となった世界的傑作である。稀に見る高い完成度のデザインを前に、すべてのレインコートはレインコートと呼ぶにも値しない、と思われる程。
永遠の二大傑作の、トレンチはもちろん極め付きだが、クラーク・ゲーブルに優(まさ)る着こなしは難しい。特に女は、ステンカラーのほうが着やすい。体に合わせてサイズを選ぶのではなく、大きすぎる長めのそれを、袖のまくり具合など工夫して。コートの中はレースや真珠の女らしさ。
ほんとうは、20年ほど着古したヨレヨレが最上。パリの店で売れるバーバリーの10年、20年後はほとんど芸術か宝石ほどに貴重なものとして愛されているだろう。歴史が、美しさを創る。

バーバリーのステンカラーコート
ステンカラーコート 2,500F(BURBERRYS)、白のコットンワンピース¥21,000、靴¥13,500(ピンクハウス)、くさりのベルト、コサージュ(インゲボルグ) 1フランは1984年当時28円でした。

アンアン1984年12月28日/1985年1月4日合併号(No.460)
「金子功のパリでいいもの見つけた!」より

百科事典に戻る