アンアン１９８６・９・１２（Ｎｏ．５４３）
恋をしにドイツへ。（ドイツロケ）

’８６秋冬のコレクションテーマは「都会で着るドイツの秋」。金子さんの長いデザイン歴の中でも最高のコレクションだったといえる。この作品は本場ドイツに乗り込んで撮影しただけに、服とドイツの田園風景が完全にマッチして広告の最高傑作に仕上がった。

恋をしにドイツへ。　―――古城ホテルも、ラインの流れも、古いビアホールも、恋の舞台としては最高だった。（ドイツロケ）・１０ページスタイリスト・金子功　撮影・小松勇二　ヘア＆メーク・山崎彰（サッシュ）　モデル・ティナ、エリック、エマ、ジミー
アウトバーンをベンツ、アウディ、ＢＭＷがハイスピードで、私達の乗ったバスを追い抜いてゆく。優れた先進工業国としてのドイツのイメージ。でもそれとは裏腹に、一たび目を遠くに転じるとそこには、のんびりとどこまでも続く田園地帯、お伽の国さながらの家々、お城、葡萄畑が広がる。ロマンチック・ドイツの旅、今日から２人で。
男…メルトンのワッペン付きマオカラー（茶）女…チェックのワッペン付きチロリアン・ジャケット（茶系）全ページに渡ってチロリアンハット、フェアアイル柄超ロングソックス、アザラシの毛皮付きチロリアンシューズ、アザラシの毛皮付きポシェット、ストールなどの小物が効果的に使われている。
重厚な建物が並ぶバイエルン州の州都、ミュンヘンを車で出て３０分も行くと、見渡すかぎりののどかな風景に出合う。高く澄みきった青い空、遠くに見える村の教会の屋根。すぐそばでは牛がのんびりと草を食べている。昨日までの都会の喧騒などすっかり忘れて、お花畑で戯れる２人。近くにひかえるアルプスの山々から、清らかな空気が流れてくるような気がして。
男…ワッペン付きニットジャケット（霜降りグレー）女…編みこみセーター（ツリー柄）
フランクフルトから足をのばして、今日は郊外のホテルに泊まることにした。深い緑に囲まれて、ひっそりと佇んでいた古城ホテル。歴史の重みが感じられる調度品に圧倒されて、２人ともちょっとお澄ましして、紳士、淑女を気取ってみたりもしたけれど…。ドイツに来たら一度は泊まりたかった古城ホテルに泊まれて、ウキウキで、思わず公園のような庭に駆け出してしまった。
男…スエードのセットアップ（こげ茶）女…チロル風３点セット－ブラウス、スカート、（白地に赤のクロスステッチ、チロリアンテープ付き）ベスト（赤、刺しゅう入り））
ライン川沿いに走る鉄道。ワインの街、リューデスハイムの駅を過ぎて、突然このＫＡＵＢ（カウプ）という駅に降りてしまった私達。急行の止まらないこのホームには人っ子ひとりいない。私達だけ。思わず彼に甘えてしまった私。駅舎の中のおじさん、見ていたかしら？さびれた感じの駅で、もう少しだけ２人の時間を楽しんで。
男…Ｗのヘリンボーン柄ツイードジャケット（茶）女…ツリー柄カーディガン（オレンジ）
ビールの街、ミュンヘン。驚くほど大きなビアホールにテラス。いたるところで、陽気なババリアン達が毎晩、大きなジョッキを傾けている。私達が立ち寄ったこのマテーザのオープンタイムは朝の８時。朝食を食べながらのモーニングビールもなかなかのもの。
男…モッサのジャケット（こげ茶）女…ワッペン付きチロリアンジャケット（こげ茶）
深い緑に囲まれた湖にボートを浮かべて、暫し２人は夢の世界の旅人となる。遠くには、ルードウィヒⅡ世のお城、ノイシュバンシュタイン城が見えている。１７年もかけて建てた城に、３か月しか住めず、湖に身を投げて死んだ若き王。ずっと前から憧れていた”白鳥の城”に明日はやっと行けるけど、でも今は、湖に２人の体をまかせて、ずっとずっとこうしていたい。
男…黒いジャケット、白×黒のギンガムのＢＤシャツ、黒地に白の水玉のタイ女…黒いジャケット、ジャンパースカート、ワンピース
ラインの流れをさえぎるように、川の中洲に建てられているファルツ城。昔、行き交う船の関所だったこのお城も今では博物館になっている。遠くに広がる葡萄畑を眺めながら、昔の旅人達のことに思いを馳せて。さあ、もう少しで、ローレライの岩が見える頃。
男…ムートン衿ブルゾン（茶）２２万円、雪だるま柄スカーフ（キャメル）女…ワッペン付きスタジアムジャンパー（オレンジ）
バスと船と鉄道を使って、のんびりと気のむくままに旅したドイツ。彼の膝に抱かれて、思い出のシーンを振り返る。ビール、たくさん飲んだっけ…。ワインも飲んだ。ソーセージも食べた。でも、一番のお気に入りはやっぱり、教会の見える田舎の風景のワンショット。
男…背中にミニエンブレムが１７個付いたスエードのジャケット（黒）２７万円、金子さん柄スカーフ（黒）女…裏地がサンタ柄のジャンパー（表がオレンジ・裏が黄）、サンタ柄スカート（黄・ただし裾がチェックとプリントのパッチワークになっているため全色使い）３万８千円