フライトジャケット

フライトジャケットの歴史は飛行機の誕生・進化と共にあります。1917年、アメリカ陸軍に航空衣料委員会が設立され、本格的にフライトジャケットの研究・開発が始まりました。この当時の素材は革です。1920年代にB−1、B−2が登場し、1930年代になると、今でも定番と言えるA−2、B−3が登場し、この時期にジッパーも実用化されました。1941年、アメリカが第二次世界大戦に参戦すると、陸軍航空隊の規模も一気に拡大し、それに伴ってフライトジャケットの需要は増大しました。しかし、急激な需要の拡大のために革不足が深刻化し、供給が追いつかなくなってしまったのです。そこで、新素材によるフライトジャケットの開発が始まり、素材として採用されたのは、コットン・ギャバジンで、1943年にB−10が、1945年に夏季用のL−2が登場しました。第二次世界大戦終了後、1947年には陸軍航空隊が独立してアメリカ空軍が誕生、飛行機はジェット機時代を迎えます。それに伴ってフライトジャケットの表地もコットンからより軽くて丈夫なナイロンへと移行します。1945年、B−15Bがナイロン製となり、極寒地用のジャケットも羊革と決別してナイロン製のN−2、N−3となります。B−15Bはその後改良を加えられ、1950年代にMA−1へと進化したのです。 1970年代になると耐熱アラミド繊維(ポリアミド)の開発に成功します。 1973年にアメリカ海軍がアラミド繊維を使用した初の冬期用フライトジャケットとしてCWU−45/Pを採用、1976年には空軍にも採用され現在に至っています。また、夏期用としては1978年に空軍がCWU−36/Pを採用、現在では海軍、陸軍でも使用されています。

わんだふるはうす私物
P0383 LAL04 価格不明
(カールヘルム1988年秋物)
上質で柔らかいレザー(山羊革)を使用した、MA1タイプの革ジャンで、’88年秋の大小組合せ型エンブレムが付いています。おそらく生産数が少なかったのでしょう。カタログにも雑誌にも「金子功のファッション絵本」にも載らなかった非常にレアな一着です。

フライトジャケットについては、1979年から1981年までananに連載された「金子功のいいものみつけた」の49回目(アンアン1980年10月11日号)「飛行士の革ジャンパー」で、金子さんが触れているので、それを紹介いたします。

ファイター・ジャケット、と呼ばれているところをみると、戦闘機に乗る操縦士(パイロット)が着るものなのだろう。革のしなやかさ、その艶と色、まさに革ジャンパーの王者という風格がある。もしもこれを見つけたら、よほど無理をしてでも買うべきだ。

ジャンパー¥88000(バックドロップ)
パンツ¥13500
ベスト¥11000
靴¥36000
(ピンクハウス1980年秋冬物)
ホースハイドのTYPE A−2フライトジャケットです。
適度に柔らかくなっていて、着心地が良さそうですね。

夏物だそうである。天空はそんなに寒いのだろうか。もちろん、リンドバーグの時代ではないのだから、操縦室は一定の温度に調整(コントロール)されているはずだが、あるいは冷静さを保つために、ややクールな気温なのか。
空軍兵士はこれをTシャツの上にじかに着ると聞いた。ピチッとフィットする仕立てになっている。従って小さめで、女が着るにも具合がいい。
いつも言っている通り、軍用制服デザインは、オーソドックスなスタイルの中での極め付だが――その中でもこのジャンパーは最高決定版と言いたい。

とにかく惚れぼれする革だ。上質の馬革である。光沢もいいし、馬はその運動が激しいことから、革が非常に丈夫なのだという。
馬たちのあのしなやかな姿態を思い描けば、それは充分に納得できる話だ。なにしろ生きているときから「なめし皮のような」肌をしている動物だから。
デザインでは、無駄と不足のないことにまたも脱帽なのだが――とくに素敵だと思うのは衿の形である。台衿が極端に細く、男ものにはあり得ないようなぺタリと寝る形の衿。なぜこうなっているのかはわからないが、女物や子供用のスモックなどにある形の衿だ。
この小さな衿の、前にかぎホックが付いていて、ぴしっと上までジッパーを止めて着る場合が多いのだろうと思われる。男の中の男が着るようなジャンパーに、こんなに優しい形の衿が付いている。そのアンバランスさが面白いし、しかし男っぽい男にはこれも粋に見えるのかもしれない。

そして栗毛の馬のような色もまた、なんとも言えずいい。東京の古着屋などで7〜8万円、ニューヨークやパリでもかなり高くで売っているらしい。が、決して高くはないと思う。もしめぐりあったら「どんなに無理をしてでも買ってしまえ」というのが欧米おしゃれ人間たちの”合言葉”らしい。しかし、めったに発見することはできないのである。
それだからこそなおさら、女が革ジャンに憧れ手に入れたいと思う場合は――ぜひともこの”ファイター・ジャケット”を探してほしい。
ずいぶん長くかかって探すとしても、見つけてしまえば一生愛用できるはずである。
案外に着こなしは難しそうだが、着る人の年齢に合った、またはその時の流行に合わせたような着方を無限に工夫できると思う。今ならシンプルなパンツと組合せてボーイッシュに着るのがいい。いつの時代でも、やや男っぽく飛行機を操縦したいと思っている女のような感じが魅力的だ。


わんだふるはうす私物
5 KF−3 価格不明
(カールヘルム1986年秋物)
CWU45Pをモデルにしたピッグスウェード(豚革)を使用した1986年秋冬ワッペンシリーズの隠れた名品。こちらも、カタログにも雑誌にも「金子功のジャンパー絵本」にも載らなかった非常にレアな一着。袖のデザインが凝っています。この当時、金子さんが好んでデザインしていた二重袖になっているのです。

わんだふるはうす私物
9 KF−4 ¥170000
(カールヘルム1987年秋物)
フライトジャケットの最高峰、ムートン(羊革)のB3タイプ。シープスキンの裏に毛が付いていて、文句の付けようがない暖かさ(^‐^)真冬でも下はTシャツ1枚でOKです。1930年代の爆撃手が着用していた防寒服ということで通称”ボマージャケット(ボンバージャケット)”とも呼ばれています。防寒機能を最優先させたこのモデルは最強のレザーウェアです。
フライトジャケットの種別解説

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