ホームスパン

ホームスパンとは”家庭で紡がれた”という意味で、ざっくりとしたハンドメイド風の感覚がウリモノのツイードの一種だ。
秋冬に絶対欠かせないもの。一般にコート、ジャケット、パンツなどに用いられ、なんとなく温かみが感じられる肌ざわりと飽きのこない地味な色使いはなかなか定評がある。
男女、年齢を問わず、いろんなアイテムでお洒落を楽しめる有能ツイードのホームスパン。ヘリンボーンのものとともに必ず持っていなければならないアイテムだ。金子系各ブランドにも秋冬になると登場するから、本物志向の人はどうぞ。

ホームスパン 生地見本
茶とグレーが基本色である。

金子先生の着こなし講座

初級

ツイードのスーツの上着だけをはおる。中のシャツとセーターは色目を合わせて。

ツイードのスーツというと、若い男性にとっては、ちょっと手強いという感じ。
「若い人が上下そろって着ると多少いやみがあるけれど、ツイード自体はカジュアルに十分着こなせるものですよ」
とカールヘルムの金子さん。そこで、初級者は上着だけを手軽にはおって……。
「インナーは、プリントシャツで思いっきりおしゃれする。シャツとセーター、ジャケットとパンツの色目を合わせるようにするときれいですね」
プリントのスカーフやチロリアンシューズなど、小物もさりげなくきめれば完璧です。

ホームスパンジャケット 初級者の着こなし
ジャケットはスーツで¥73,000、パンツ¥16,000、シャツ¥24,000、セーター¥23,000、スカーフ¥4,200、ペッカリー手袋¥29,000(以上カールヘルム1986年秋冬物)
中級

スーツにスニーカーで着なれた感じに。思わぬところにさりげないおしゃれ感覚を。

こなれたセンスの持ち主である中級者がツイードのスーツをさりげなく着るのは、まったく違和感がないはず。
「でも、ビシッときめて着るのではなくて、もっとラフな感じがいい。足元は素足にスニーカーといったように……」
あくまでも、着慣れた雰囲気というのが大切です。
「普通っぽいんだけれど、どこか凝っているというのが、初級者との違いですね。この場合なら、コートの裏地とシャツがそろいになっているとか。そんなところが、いやみなくごく自然に見えるのが、中級者のセンスならではの着こなしです」

ホームスパンスーツ 中級者の着こなし
スーツ¥73,000、シャツ¥14,000、ベルト¥9,800、チョウネクタイ¥5,800、手に持ったコート¥45,000、帽子¥8,500、眼鏡¥11,000、スニーカー 参考商品(以上カールヘルム1986年秋冬物)
実際には、初級は中級、中級は上級といってもいいほどレベルの高いコーディネートだ。
服の細部のディテールを見てほしい。ジャケットのゴージラインは低く、ラペルは細い。大きな肩パッドで誇張された肩幅、身幅にゆとりがある極端なボックスシルエット。低い位置の2つボタン。長い着丈にノーベント。パンツはツータックでワタリは広く、裾に向かって細くテーパードされている。これがデザイナーズブランド全盛期の服の特徴である。
金子さんは、シャツの柄&ジャケットの裏地&コートの裏地を赤×白のギンガムチェックで揃え、赤いタータンチェックのチョウタイ、茶のツイードハット、茶のフレームの眼鏡、バックルが茶の革巻きのベルト(ジャケットのボタンが茶の革のくるみボタンなので合わせている)、花束と足し算に足し算を重ね、最後に白いスニーカーという引き算で、大どんでん返しを見せてくれた。歴史に残るスタイリングである。
しかし、茶のホームスパンのスーツに白いスニーカーを合わせるのは、よほどの洒落者以外はよしたほうがいい。滑稽な感じになってしまうからだ。茶のスエードのUチップか茶のチロリアンシューズあたりが無難である。
なお、このコーディネートと同じものがインゲボルグでも作られていた。「金子功のジャンパー絵本」P50の四条河原町阪急インゲボルグのウィンドーの写真中央のものであるが、こちらはタイが白地に茶のペイズリ―になっている。(このタイはKHでも作られていた。KH’86秋冬カタログP24はIBのウインドーのコーディネートと同じ)

アンアン1986年8月8/15日合併号(No.539)「デザイナーの着こなし初級中級コース いろんな服に袖を通してはじめて、着こなしは上手になる」より

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