ジーンズ

「ジーンズはね、少年に似合うっていうより、なんていうのかな、少年のはくものがジーンズ、なんじゃないかな。少年、そのもの。少年じゃなけりゃ、少年っぽさがなけりゃ、はいちゃいけないのがジーンズなんだって、そう思いますよ。」というのは、デザイナーの金子功さん。
だから「少年」あるいは「少年のような魅力」を語るとき、ファッションのテーマとしてのブルージーンズは、もう当り前すぎるくらいの基本、ということになる。
「でもね、ファッションとして、どう着こなしてほしいとか、そういうんじゃないんだな……逆に、少年だったら、どんなはきかたをしてもかまわない。どんなふうにしても、いい。それがジーンズ、なんじゃないかな。」
たとえば、どろんこになっても、平気で遊び続ける男の子。パンパンと、お尻についたドロを手で払って、また遊びに熱中していくような。なんたって、もともとがワーキングウエアなんだから、丈夫で、しかもどんどんいい雰囲気になっていく。少々すりきれたって……考えてみれば、ほかにそんな服なんて、ない。
「僕たちの少年時代、きっとみんなそうだったと思うけれど、ジーンズとの出合いって、とっても大きなものだった。
それこそ、ジェームス・ディーンとかケネディなんかのイメージの、アメリカそのものって感じが、うれしくもあったし、なによりも新鮮な驚きだった。」
少年の魅力を持ち続ける男たち。それは、みんなひたむきで、ものごとに我を忘れて熱中したり、とてつもない大きな夢を持っていたり、そのくせ、どこかはずかしがり屋で……そのイメージに、金子さんも、ピッタリあてはまる。
たとえば、金子さんの、カールヘルムの服への思いの込めかたは、どこか模型作りに熱中する少年のそれと似ているようにも思える。そしてもちろん、カールヘルムの服は、ジーンズと相性がいい。
「少年には、ブルージーンズがあればほかの服はいらないよ。」

アンアン1986年9月12日号(543号)「少年の要素がないと、ジーンズは着こなせない」より


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ジーンズに派手さをプラスで、都会の女だね

「ジーンズの魅力というのは、こだわりかな。もともとがアメリカの農作業やなにかのために作られた服だから。虫に刺されないような染料、破れにくい強い素材、座って作業するための膝下のポケット……という具合に、すごくこだわりがあるでしょ。男って、結構そういうこだわりが好きなんだよ」
「学生の頃、東京に出てきて、アメ横で古着のジーンズを見つけたんだけど、それがカッコ良くてね。その時いいなと思ってから、一度も飽きたことがない」
「一番カッコ良いジーンズを見せてくれたのは、やっぱりアメリカ映画。ジェームス・ディーンのいかにも洗い晒したブルージーンズには、みんな憧れていたね」
「洋服の中で一番ダサくならないのが、ジーンズだと思う」
「派手さをプラスすることかな。派手な色合い、派手な柄、派手なアクセサリー。何でもいいけれど、今ぼくが気に入っているのはプリント。プリントのシャツやスカーフをひとつ取り入れる。そして、上は思いきりシックなのに、下はさらりとジーンズ、みたいな。上と下が全く違うのが好きだな」
「何もってきてもジーンズに似合わないものはない。その無茶苦茶かげんがいいね。たとえば、シャネルやディオールっていうと、100人着たら何人かダサくなってしまうけど。ジーンズは違うと思う。100人着たって、ほとんどの人がダサくならずに着こなせるんじゃないかな。ジーンズをはくことで都会の女になる、という気がする。それも、パリじゃなくてニューヨークだね。だって、ジーンズはアメリカ生まれだから……」

アンアン1988年7月29日号(No.636)より

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