女性論

働く女が働くことをやめた時の服
金子功(ピンクハウス)

――この頃の女性、どう思いますか?
「実をいうと、バリバリ働いてるカッコイイ女って、僕恐いんです。僕の服は、働く女が働くことをやめた時の服なの。やさしくて女らしい服だと思う」
――どういう女をイメージしてデザインしますか?
「髪の毛が長くてきれいで、背がすごく高くて、やせている女」
――金子さんのショーには、いつもウェディングドレスがでますねえ。
「好きなの。女の人のやさしさが一番でてくるのは、結婚式のときじゃないかしら。どんなに恐いひとでも、このときはやさしくなる。結婚式と赤ちゃんがおなかにいるとき、女のひとはとてもかわいくなります」
――髪が長くてやせた女のイメージはどこからでたのかな?
「修学旅行で初めて東京へきたとき銀座の”イエナ”でヴォーグを買ったの。とても恥しかったけれど。そのときのきれいなモデルさん。写真やイラストにすごく感動したのを覚えてます。そのイメージがずーっと。マージーパーカー。今は女優さんになってるけど、ああいう古いモデルのイメージが好きなんです」
――金子さんの服、かわいらしいですね。
「おとなの女の服を作ってるつもりなんだけど、初めに着てもらうモデルに、かわいい人選んじゃうから、どうしてもそういう感じになってしまう」
「最近の服って、みんなをびっくりさせるような服が多いでしょう。ああいう服は、僕には作れない。保守的なのかな。新しいものには、ドンドン入っていけないんです。だから、女性でも、あんまりバリバリしてる人はいやですね。いま流行なんでしょ。そういうタイプの人」
――シャネルスーツの似合う人?
「いいですね。大好き。趣味のいいツィードとビロードの上下でね。パリに行って仮縫して……。ひまとお金があればねえ」

クロワッサン1978年9月10日号(No.20)
「ファッションはデザイナーにとって女性論である。」より

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