祗園甲部歌舞練場
(1986年PH・IB・KH秋冬コレクション) 

京都で映える「洋服」には秘密がある

’86年に京都・祗園の歌舞練場で催されたピンクハウスのショーは、歴代のショーのうちでも最も成功したもののひとつだった。
それはそこに居合わせた人なら間違いなくわかることなのだが、京都という街の空気とピンクハウスの洋服が不思議な相乗効果を起こし、東京ではありえないような陶酔感が会場全体を包んだからである。つまり、ピンクハウスの洋服は東京よりも京都で映える、その意味できわめて「京都的」なファッションだったのである。(文・今泉秀央氏)

金子さん「歌舞練場でショーをやるというのは、私だけのアイディアではないんです。
私がとても幸せだったのは、京都のお店のスタッフや大阪の販売のスタッフが、私の洋服をすごく愛してくれていたことでした。東京だけじゃなく、こちらでもショーをしてください、とすごく熱心に誘ってくれた。それで私もうれしくなって、やることにしたんです。
スタッフの人たちが、一生懸命探してくれて、「京都だったら、ここがいいですよ」と歌舞練場をすすめてくれた。
私は歌舞伎が大好きですから、「ああ、そんなところでやってみたいなあ」と思ったんです。

フラウ1994年10月11日号(No.73)「金子功 さらば ピンクハウス!」より


京都の雰囲気が漂ってきそうなピンクハウスの日本調プリント

金子功さんのプリント好きは有名。いつもロマンチックで夢いっぱいのプリントを見せてワクワクさせてくれます。
でも、今回はじめて登場の日本調プリントはまた格別の可愛らしさ。縮緬(ちりめん)地に短冊や傘、独楽(こま)、まりなどが並んでいる姿は、日本人の女の子なら誰でもハッとしてなんともいえないノスタルジーを感じてしまうのではないかしら。
はじめて日本調プリントを出した訳を金子さんに聞いてみると、「僕はもともと着物の柄が大好きなんです。着物はそれこそ世界一美しいプリントですよね。前から日本のプリントをデザインしてみたいと思っていたけど、すごく好きなだけに簡単に出せなくて……。それが、今回5月に京都の歌舞練場でショーをやる機会があってその記念もあって出すことにしました。僕は日本人の女の子は着物が一番似合うと思っています。だからこんな柄もとっても似合うんじゃないかな」
スタイルはいつものピンクハウスならではのフリルやリボンつきのブラウスやスカート、ワンピースのパターン。でも柄が違うだけでどこか雅(みやび)やかな日本の優しさ、しっとりした雰囲気が漂ってきますね。
さて、日本調プリントと共に話題になっているのが秋冬物のカタログ。ショーの写真とイメージ写真で構成されていて金子さんの世界がいっぱいつまってます。コーディネートの参考になるカタログは店頭でもいただけるとか。

アンアン1986年9月5日号(No.542)「今週のなにかお洒落なことないか!」より


NEW!

1986年秋冬カタログの謎

なぜ、インゲボルグとカールヘルムのカタログには、スタジオ撮影の写真がないのか?

インゲボルグとカールヘルムのカタログは、ショーの写真だけで構成されているのに、ピンクハウスのは、ショーの写真に加えて、お馴染みのスタジオ撮影の写真もあるのである。当時は、DCブランドブームの全盛期で、金子さんは、「ジャンパー絵本」や雑誌広告の制作に多忙を極めていたため、IBとKHは、撮影している余裕がなかったのだろう。

ワンダフルハウス図書館

伝説の1986年秋冬コレクションを再現!

ワンダフルハウス図書館の「スライドショー」の機能を使えば、過去のコレクションをパソコンの画面上で再現することができる。これは、画像を連続して映し出しながら、特殊効果を加えることによって、非常に幻想的で動きのあるシーンが自動的に出来上るのである。

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