1986年春夏のカールヘルム

1986年春、新宿丸井メンズ館オープンと共に、DCブランド全盛期に突入する。この時期、カールヘルムは、ラフォーレ原宿、新宿丸井メンズ館、渋谷パルコ パート2、プランタン銀座、横浜そごうにオープンし、青山店と合わせて、東京地区に6店となる。
1986年春夏のコレクションのテーマは、「ウエスタン」。テンガロンハット、ウエスタンベルト、ウエスタンブーツなどが登場したが、それ以上に歴史的に大きな意味を持つ商品が発売された。「プリントシャツ」と「ラベル付き商品」の登場である。
「プリントシャツ」は、ゼブラ、旗、タバコ、アロハ(ハワイのアロハシャツのラベル)、缶ビール、ペイズリーの6タイプ、「ラベル」は、ゼブラ、旗、アロハ、Kのエンブレムの4タイプが発売され、この中のいくつかは、「金子功のジャンパー絵本」で見ることができる。
しかし、私、ワンダフルハウスが紹介したいのは、これらの商品ではなく、初期のカールヘルムで作られ、その後、絶滅してしまった次の商品なのである。

チビ襟(ショートポイント)ボタンダウンシャツと極細レーヨンプリントタイ
金子さんのスタイリングです。
リネン・ダブルブレスト・ジャケット¥58000、プリント・シャツ¥24000、ジーンズ¥13800、プリント・ネクタイ¥6000(カールヘルム1986年春夏物)1986年のメンズDCブランドの特徴としてあげられるのは、ジャケットのラペルは細く、シャツの襟は小さく、タイは細身であったことである。これは、トラッドとの差別化を図る目的があったのと、女性服を得意とするメーカーが多かったので、メンズのパターンにも多少女性服的な特徴があったわけだ。当時のカールヘルムは、レーヨンプリントシャツとお揃いのプリントタイもあったが、’88年春夏の金魚を最後に絶滅してしまった。写真を見ればわかる通り、シャツの台襟は低く、襟は小さい。タイも超・細身で、全体的に見ると、おおげさにならずに、いい意味での軽さが漂っている。Papasでは、現在もこの当時のパターンを貫いている。
グレーの麻マオカラージャケットとモノトーンの麻フェアアイルニット
モデルは「ジャンパー絵本」にも出ているローレン。
リネン・マオカラー・ジャケット¥42000、チェック・ボタンダウン・シャツ¥14500、コットン・パンツ¥14500、リネン・フェアアイル・セーター¥30000、ボウタイ¥9200(カールヘルム1986年春夏物)グレー無地の麻ジャケットは、’92年春夏にインディアンの羽根が刺繍されたもの(カタログ32ページ)と’95年春のシングル4つボタン(カタログ43ページ)が確認されているだけで、極めて数が少ない。このマオジャケットには、セットアップのパンツ(¥21000)もあった。また、麻のフェアアイルニットも’87春夏以降絶滅している。上の写真を見て欲しい。モノトーンの美しさもさることながら、フェアアイルニットの袖を片方は上腕に巻きつけ、片方は胸ポケットに突っ込んでいる。金子さんのコーディネートセンスの凄さが窺い知れる。
レーヨンプリントジャケット
ジャケット¥33000、パンツ¥14500、ストライプシャツ¥13500(カールヘルム1986年春夏物)このタバコプリントは、ジャケット・シャツ・タイ・スカーフとワンポイントのTシャツが作られた。商標登録に引っかかるため、「CAMEL」は「CANEL」に、「Winston」は「Winstan」と1字替えているが、現在は権利関係がきびしくなってしまったため、復刻できなくなってしまった。まさに幻のプリントである。レーヨンプリントのジャケットは、’87年春夏の帽子柄シングルジャケット(¥37000)、国旗柄マオカラージャケット(¥24000)以来、作られていない。

写真は、上の2枚はメンズクラブ1986年5月号の広告「あたたかみのある服」(撮影・吉田大朋)を、下はメンズクラブ1986年6月号(創刊号)を使用。

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