駒形どぜう

引き戸を開けると、しょうゆとねぎの甘い香りが迎えてくれるこの店は、亨和元年(1801年)創業の老舗。下足札に始まって、見事な神棚、籐だたみに板を渡しただけの食事風景は、江戸時代そのもの。
「当時と変わったのは働く人と、明かりがついたことだけ。食べにくいなんて言わないで、江戸スタイルのカッコよさを楽しんでみてください」というのは6代目主人の越後屋助七さん。いまでは当たり前のように目にする”どぜう”の文字も実はこの店が発祥。”どぢやう”の4文字では縁起が悪いと、初代助七が考えた造語なのだそう。ところで『江戸名物酒飯手引書』という、いまでいうグルメガイドブックによると、江戸の食べ物屋のベスト5は、料理屋、茶漬け屋、鰻の蒲焼き屋、どぜう屋、すし屋の順。このように、どじょうは江戸っ子の大好物。写楽や北斎、歌麿たちも籐だたみの上でどぜう鍋をつついていたかもしれない。
どじょうというと泥くさいとか、骨っぽいというイメージがあるけれどご安心を。ここのどじょうはとろりとした舌触りで、臭みもまったく感じさせない絶品。どっさりと盛られてくる青ねぎをどじょうが見えなくなるほどのせて食べるのがおいしく食べる秘訣だとか。ここのところ値の上がった青ねぎだってお代わり自由。おいしいものを庶民的な値段でという江戸っ子のご主人の心意気だ。

どぜう鍋
写真のどぜう鍋は¥1,400。そのほか柳川¥1,200、どぜう汁¥300。備長炭、仙台のササニシキ、茨城・芹沢のごぼうなど素材にもこだわりが。 左が1970年当時の店内。モデルはユリさん。(アンアン1970年10月20日号
「ここは東京の浅草です。」
)右が1987年当時の店内。(金子功のプリント絵本「浅草模様」

アンアン1995年1月13日号(No.953)「ここが東京のお江戸ゾーン、行きたい店カ・タ・ロ・グ。」より

台東区駒形1−7−12 11:00〜21:00 無休 рO3(3842)4001
都営地下鉄浅草駅A1出口から徒歩2分

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