ピンクハウスにクマのプリントが初登場したのは、1984年秋。ワンピース絵本P27、P32、P33で、くればやし美子さんが着ている、「ギンガムチェック地に白と黒のクマ」が初代プリントである。P32〜33で、くればやしさんが持っているぬいぐるみは、金子さんの私物。
意外にも1985年以降は、1992年まで、クマプリントの商品は出ていない。この7年間は、クマにとって不遇の時代だった。(ただし、クマのぬいぐるみは、1989年秋に初登場し、プリントより先に定番化されていた。)
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1992年秋、久しぶりにクマの商品が発売される。”顔クマ”と呼ばれる蝶ネクタイと顔だけのプリントである。同時に、同じ顔のぬいぐるみも発売され、これらの商品は、驚異的な売り上げを記録して、くまプリントは定番商品になった。
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時代に関係なく女性が憧れるプリントやレース、フリル……といったものを常に提案。
「ファンの方も流行とあまり関係なく、本当に好きなものをシーズンごとに選ばれていると思います」(プレス・柳沢美絵さん)
好きなプリントなら6万〜7万円のワンピースでも迷わず買う人が多いという。そんななか特に目立ったのは、昨年10月発表の”くま”アイテム。発売初日に新宿伊勢丹店で、関連のものが800万円の売り上げを記録。
「久々のキャラクターものというので、支持されたのでは?」
アンアン1993年2月26日(No.861)「おしゃれブランドのヒット商品が、新しい流行をつくる。」より
女の人が好きなもの……だからテディベアです
ピンクハウスのプリントといえば、花の印象が強いと思います。実際に、ここ三,四年は花柄が中心でした。でも昔は、傘とかリボンとかの花以外のものをモチーフにすることも多々あったのです。そういうものをプリントにするヒントは、「いったい女の人は、どういうものが好きなのかな?」とアンテナを巡らすこと。周りに女の人がおおぜいいるので、これは意外に簡単に見つかりました。さて、今年は、また久々に花以外のモチーフにチャレンジしてみようと思っています。
プリント物語の一回めを飾るのはテディベア。なぜ”くま”かというと、女の人って、不思議とテディベアが好きだから。私の場合、よく人から「テディベア、好きでしょー」と言われるのですが、実際にはそうでもない。欲しいという気持ちにはなれないのです。だけど女の人がテディベアが好き、という気持ちはわかります。かわいいですからね……。
このくまプリントは、去年の秋冬物に顔のアップで登場したのですが、春夏シーズンの新作には、全身で再デビューさせました。ほんとうは、アンティークのテディベアそのものの雰囲気を出そうと思って試作柄を作ったのですが、でき上がったくまは、少しこわい顔になってしまったのです。アンティークのくまは、よく見るとこわい顔をしているんですね。コレクターにはそのほうがいいのだろうけれど、布地にプリントして服にしたときは、もっと優しい感じがいいな、と思って、丸顔の漫画風にかき直しました。そして、ピンクハウスのポロシャツを着せてやりました。今後は、フリルのいっぱいついたピンクハウスのいろいろな服を着せてしまおう、と思案中。ウェディングドレスを着てお嫁に行くまでずーっと続きますよ。以前、バービー人形の服のデザインを頼まれて、結局お断わりしたことがあったのですが、人形ではなく、プリントの着せ替えテディベアを作って楽しもうというわけ。うまく着こなしてくれるかな? ピンクハウスの服って、くまの体型にぴったり!なんて言うのは誰だ!
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装苑1993年1月号「ピンクハウスのプリント物語」より