わんだふるはうす、ラトリエ・ド・シマに行く

ボンボン・オー・ショコラ

ショコラトリーのショーケースを覗くと、繊細で美しい一口サイズのショコラ「Bonbon au chocolat ボンボン・オ・ショコラ」がジュエリーのように鎮座しています。ショコラの艶やかな輝き、様々な色合いの妙、凝縮されたデザインの美…見ているだけで幸せな気分になります。チョコレートは、13世紀頃メキシコ原住民が既に口にしていました。といっても今のような固形の食べ物ではなく、ドロドロした飲み物だったそうです。16世紀の初めにスペイン人フェルナンド・コルテスがメキシコに遠征した時、カルロス1世のためにチョコレートを持ち帰りました。1606年スペイン宮廷に仕えていたイタリア人によってチョコレートはイタリアへ。1615年、ルイ13世に嫁いだアンヌ王女によってフランスへ、さらにイギリスへと伝わりました。固形チョコの出現は1842年頃のイギリスで。ミルクチョコレートができたのは1876年スイス人ダニエル・ペーターさんの手によるもの。日本人で初めてチョコレートを食べたのは昔の500円札に収まっていた岩倉具視さんです。つまり、ショコラは王侯貴族らごく限られた階級の人々を楽しませるために作られたものだったのです。現在、望めば誰でも美味しいショコラが食べられるようになったのは大きな喜びです\(^○^)/ ルコントに入社した1968年からショコラに注目していたパティシエ 島田進さんのお店「ラトリエ・ド・シマ」をワンダフルハウスが訪ね、ショコラの素晴らしさを教えていただきました。

テレビ局や大使館、豪邸が建ち並ぶ東京都千代田区麹町。舌の肥えた住民相手の、いい蕎麦屋や、いい菓子屋が点在する通りがあります。右手に「ラトリエ・ド・シマ」、その先に「パティシエ・シマ」が見えてきました。 「こんにちは!チョコレートをください!(^O^)/」「チョコレートはラトリエの方にございます」
ラトリエ・ド・シマは、「Chocolaterie ショコラトリー」(チョコレート専門店)です。パティシエ・シマの「Salon de The サロン・ド・テ」(喫茶店)も兼ねているので、店内でケーキやお茶をいただけます。
島田進さんは1946(昭和21)年11月、三重県尾鷲市生まれ。地元の高校を卒業後、画家を目指して神戸で働きながら絵の勉強に励んでいました。当時はフランスへ行くのが容易ではなかった時代。1968年に師事していた画家の勧めで上京。フランス語を勉強しながら働ける場所ということで、六本木にオープンしたばかりのルコントに入社。当時の日本のチョコレートはまだブラック、ミルク、ホワイトの3種類しかない時代でしたが、パリの「ラ・メゾン・ドゥ・ショコラ」などでの研修を通じで、ブラックだけでも多種多様な種類があることを知り、チョコレート自体の味わいの豊かな幅と、応用範囲の広さにすっかり魅せられたそうです。
「こんにちは!(^O^)/…おおっ!綺麗です!(^O^)\」
「この一粒チョコは何ですか?(゚O゚)\」「こちらは、ボンボン・ショコラです」「ボンボン・ショコラ?」
1粒の中に色々な味が凝縮された小さな高級チョコレート…これがボンボン・ショコラです。「ボンボン」は、フランス語の「bon」(美味しい)」をリズミカルに重ねたもの。英語で「チョコレート・ボンボン」、ドイツやスイス、ベルギーでは「プラリネ」と呼ばれています。
チョコレートのトリュフ キノコのトリュフ
「トリュフ?(゚O゚)\ キノコのトリュフなら知ってましたが、チョコレートにもトリュフがあったとは…」
ワンダフルハウスは、ショコラ・ショーとトリュフを注文しました。
Chocolat chaud
ショコラ・ショー
630円
「これはココアですか?(^-^)\」 「カカオの香りが強い!ココアより美味です!(^Q^)」
「Chocolat ショコラ」は「チョコレート」、「Chaud ショー」は「熱い」という意味ですので、ショコラショーは「ホットチョコレート」を意味します。「ホットココア」は、ココアバターを取り除いた粉末から作られるのに対し、「Chocolat chaud ショコラ・ショー」は、ココアバター31%を含む純度の高いショコラから作られます。甘みを抑えたカカオ含有量の多い上質なクーベルチュールをそのまま刻み、それをミルクで溶かして飲むので、味わいは全く違います。
Truffe
トリュフ
210円
「トリュフはコロンと丸くて、粉のカカオをまぶしてあります」
「その、粉をふいた天鵞絨(びろうど)のような感じが普通のショコラとは異質で、魅惑的な風貌であるともいえます」
「ラトリエ・ド・シマのトリュフはたったの210円ですが、30000円以上もするキノコのトリュフにまつわる威厳を、全てその味に秘めているのです!(゚O゚)\」
「おおっ!?(゚O゚)\ やわらかいチョコレートがパリッとした硬い皮のようなチョコレートで覆われていますよ」
「外側の皮のチョコレートは?」「ワンダフルハウス様、クーベルチュールでございます」「クーベルチュール?(゚O゚)\
中身はガナッシュでございます」「ガナッシュ?」「沸騰した生クリームに刻んだクーベルチュールを溶かして泡立てたものでございます」「またしてもクーベルチュール?」
ここで島田シェフが登場…「ワンダフルハウスさん、これがクーベルチュールです」「おおっ?これは?(゚O゚)\
DOMORI IL 100%? こ…これは…カカオ100%です!(゚O゚)\」
“究極のチョコレート”の登場です。世界に先駆けてドモーリ社から発表されたカカオ100%のチョコレートです。チョコレートのソムリエ ジャンルーカ・フランゾーニ氏はベネズエラで味、香り共に豊かで繊細なカカオ、クリオーロ種に出会い、チョコレート本来の美味しさに魅了されて1994年にドモーリ社を創業しました。栽培から製品に至るまでの全てを自社で手がけていて、世界中のチョコレート愛好家から高い評価を受けています。ワインと同じようにショコラは通になっていく程、真の味に迫って行くようです。
「これは強烈!(>Q<) シガーのような枯れた複雑な香りと深みがあります。甘いチョコレートを期待している方は決して口にしてはいけません
「トリュフを1粒舌に乗せてみました…甘味より先に上等なカカオ特有の苦味が口に広がります」
「ほろ苦くて良い香り(^Q^)…と思う間もなく、その香りは強烈な洋酒の風味に変わりました」
トリュフを味わうには、まず粉のカカオの苦味を楽しみ、次にパリッとした皮を味わい、最後に洋酒やクリームの効いた濃厚な中心部に到達します。生クリームを使うので、フレッシュなうちに味わう方が美味しいのです。
「ワンダフルハウスさん、トリュフのガナッシュにはグランマニエが入っているのです」「洋酒の風味は、オレンジのリキュール グランマニエでしたか
島田シェフは「うちのトリュフはチョコレートと生クリームとグランマルニエで作った柔らかいガナッシュを芯に、それをテンパリングしたチョコレートで包み、ココアの粉でくるんで作るのですが、何よりも最高の材料を使うことですよ」とフランス・ヴァローナ社のクーベルチュール・チョコレート「カライブ」を取り出しました。チョコレートを細かく刻み、生クリームを沸騰させた中に入れ、泡立て器でかき混ぜ、グランマルニエを入れ、バターを加えます。氷水で冷やしながら混ぜて、丸い口金を付けた絞り器に入れて、絞り出します。固まりかけたら掌で丸く形を整えます。
チョコレートをテンパリングします。ヴァローナのカライブを細かく砕き、ボールに入れ、湯煎で45℃まで温めて溶かします。湯煎をやめ、かきまわしながら28℃まで温度を下げ、再び湯煎で31〜32℃まで温度を上げます。ガナッシュをテンパリングしたチョコレート液の中に泳がせ、ガナッシュを覆います。それをココアの粉の中に入れ、フォークで転がして、全体に粉をまぶします。
テンパリングとは、チョコレートの温度調整。40℃以上まで溶かしたチョコレートを28℃まで冷やし、再び30℃位まで上げる作業のことです。これによって、含まれているカカオバターの結晶が均一になり、コーティングするのにふさわしい硬くツヤのある滑らかな仕上がりとなるのです。テンパリングを怠ると、チョコレートの風味が落ちたり、口当たりの滑らかさが失われ、表面に白い皮膜が張ったようになってしまうそうです。
Citronell
シトロネル
210円
「これは白いトリュフですか?(^-^)\」
ココアパウダーの代わりに粉砂糖をまぶしているのです
「おっ、ガナッシュを覆っているのはホワイトチョコレートです(^-^)\
「ヨーグルトのような味わい(^Q^) レモン風味のミルクガナッシュ入りだそうです」
Praline
プラリネ
210円
「おおっ!?トリュフに角(ツノ)が立っています!(゚O゚)\」
チョコレート液が固まった後で、網の上に乗せて転がすと、ツノ模様が出来るそうです。
プラリネ(ナッツ類にカラメルをからませてペースト状にしたもの)をミルクチョコレートでコーティング。ほのかにブランデーの香りがします(^Q^)
Kirsch
キルシュ
210円
「これはツノトリュフのホワイトチョコレート・ヴァージョンですね(^-^)\」
ホワイトチョコレートは、フランスでショコラ・イボワール(象牙色のチョコレート)と呼びます。島田シェフが使っているのはスイス製で、フランス製に比べると色が白くて、より滑らかな口当たりだそうです。
中も白です! キルシュ(サクランボを発酵させて蒸留したフルーツ・ブランデー)が効いています(^Q^)
Feuillantine
フィヤンティーヌ
210円
このような角型のボンボン・ショコラは、大きな板状で作ったセンターを「ギターカッター」という道具で均一な大きさ(四角)にカットするそうです。
斜めの線は、コーティングしたチョコレートの表面が乾く前にトリュフ・フォークで模様付けしたものです。
「何かサクッときましたよ?(゚O゚)\」
「ノワゼット・プラリネ(ヘーゼルナッツのプラリネ)と…」
「サクサク心地よい食感の焼き菓子フィヤンティーヌです!(^Q^)
Kaori
カオリ
210円
角型でココアパウダーをまぶしたボンボンの登場です。
「外見は東京の石畳に似ていますね(^-^)\ この写真では見えにくいのですが、縦に3本線が入っています。これはトリュフ・フォークで押さえて付けたものです。」
ジャンドゥージャ(ミルクチョコレートにヘーゼルナッツのペーストを混ぜて練り込んだチョコレート)をビターチョコレートでコーティングしたものです。
Arabica
アラビカ
210円
角型で上面に変わった柄が入ったコーヒー味のボンボン・ショコラです。
この独特の柄は、「ストラクチュール」という型で表面を押したものだそうです。
下はトリュフ・フォークで押さえたものですね
「エスプレッソの深いコクとアロマを感じます(^Q^) 赤道直下の照りつける太陽に育まれたコーヒーとカカオが見事に調和しています」
Caramel Poire
キャラメル・ポワール
262円
「おおっ!?ハート型です!(゚O゚)\」
このような型を使って作ったボンボン・ショコラは、「モールド」(型)と呼ぶそうです。
「ほろ苦いキャラメルと洋梨の相性が抜群です!(^Q^)」
Framboise
フランボワーズ
210円
この形は「クーゲル」(樽)と呼びます。
クーゲルは、センターを包む被膜である樽チョコが先に出来ていて、後からその中にガナッシュを入れるわけです。
「おおっ!?センターが赤いような気が…?(゚O゚)\」
フランボワーズ トリュフ
「トリュフと見比べてみると、センターのガナッシュが赤いことがわかります。これは、フランボワーズのピュレとフランボワーズのリキュールをガナッシュに合わせているからです。甘酸っぱい香りが広がって、本当に美味しいんです(^Q^)」
ボンボン・ショコラで一番よく使用されるセンターはガナッシュです。プレーンな味の「ガナッシュ・ナチュール」、洋酒を入れた「ガナッシュ・アルコール」、フルーツ味の「ガナッシュ・オー・フリュイ」、苦めの味の「ガナッシュ・アメール」、スパイスやハーブを使った「ガナッシュ・アロマット」などに分類できます。
Caramel Chocolat
キャラメル・ショコラ
210円
「これもクーゲル(樽)ですね」
「先ほどのフランボワーズより色が黒いです!(゚O゚)\」
クーベルチュール・オ・レ クーベルチュール・ノワール
クーベルチュールは、ノワール(ブラック、ダーク)、オ・レ(ミルク)、ブランシュ(ホワイト)に分類されます。
なめらかでしっとりとした黒っぽいガナッシュ。キャラメルもショコラもビターで、キレがあって香り高くスッキリとした後味です(^Q^)
Muscadine
ミュスカディーヌ
262円
「小石のようなボンボン・ショコラです!(゚O゚)\」
ミュスカディーヌはボンボン・ショコラの定番で、形がナツメグの実に似てるからこの名が付いたそうです。
コアントロー風味のミルクガナッシュです。口に入れてそっと溶かすと、オレンジリキュールの芳醇な香りが広がります(^Q^)
続く
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