フランス菓子 Maison Wenikoの四季

2011年2月
Chandeleur シャンドルール
クレープ祭り

フランスでは1月のガレット・デ・ロワが終わると同時に、街中のパティスリーやブーランジュリーではクレープを焼いて積み上げたものがショーケースに並びます。また、スーパーではクレープ粉やクレープパン(クレープ専用フライパン)、クレープを伸ばす木のトンボ棒などがセットで売り出されます。2月2日はクリスマスの12月25日から数えてちょうど40日目。つまりイエス・キリストの誕生から40日目にあたるこの日を「シャンドルール Chandeleur」と言い、「聖母御潔めの祝日」というキリスト教徒の祝日にあたる日なのです。この日は家族や友人が集まってクレープ祭りのパーティーをして楽しみます。銀貨を握ってフライパンを持ち、クレープをポーンとひっくり返す時、うまくいったらお金持ちになる、という言い慣わしがあるのです。ところが、なかなかひっくり返せないもので、クレープが床に落ちたり、壁や天井にぶつかったり…とお互いの失敗を大笑いしながら焼いて、後からクレープで前菜からデザートまで作って食べ合う賑やかなお祭りです。そんなクレープに想いを馳せていた2011年2月4日、茨城県水戸市フランス菓子 Maison Weniko」の紅子(Weniko)シェフにクレープを焼いていただきました。

「こんばんは!(^O^)/ 「私がワンダフルハウスです」
セーヌ川の川岸に並ぶパリ名物の古本屋さん達も2月は本箱を閉ざし、公園ではマロニエやプラタナスの裸木が黒々と立ち並び、勢いよく出ていた噴水もひっそりと静まりかえっています。冬のこぼれ陽の中で、それらがいかにも侘しく、冬の長さが身に沁みてきます」
「さて、2月となると寒さのため、みんな家の中に閉じこもってしまうのでしょうか。街行く人も少なく、スーパーの店頭も静かです。このような日は、2年前の2009年2月2日にメゾン・ポール・ボキューズ(代官山)→パティシエ・シマ(麹町)→キュイジーヌ・フランセーズ・JJ(六本木)とクレープの食べ歩きをした日のことを思い出します」

2009年2月2日

わんだふるはうす、メゾン・ポール・ボキューズに行く

Crepe suzette
クレープ・シュゼット
2800円+サービス料10% (2人分)
メゾン・ポール・ボキューズ
「2月2日はカトリック教会では『La fete de la purification de la vierge ラ・フェット・ドゥ・ラ・ヒュリフィカシオン・ドゥ・ラ・ヴィエルジュ』(聖母マリアのお清めの日)です。『Chandeleur シャンドゥルール』(聖燭祭)ともいい、一般家庭ではクレープを焼き、友人を招いて楽しい団欒のひと時を過ごします」
「日本では2月の節分の翌日が立春であるように、フランスでも『Mardi gras  マルディグラ』(肥沃な火曜日、謝肉祭の最終日、灰の水曜日の前日)という日があり、2011年は3月8日になっています。その翌日は「Mercredi des Cendres メルクルディ・デ・サンドル」(灰の水曜日。キリスト教で四旬節の始まる日)です。昔はこの日から「Paque パック」(復活祭)までは肉を食べないで精進したと言われています。この頃になるとフランスの人達はもう春もそう遠くないと考えるようになります。地方ではマルディグラの頃に『Carnaval カルナヴァル』が行なわれ、いろんな話題を耳にします。そしてマルディグラにもシャンドルールと同じようにクレープを家庭で焼く習慣があるようで、1970年代のパリのパティスリーではシャンドルール(2月2日)とマルディグラ(今年は3月8日)は沢山のクレープを一日中焼いていたものです」

わんだふるはうす、パティシエ・シマに行く

ラトリエ・ド・シマ
日本では1月にガレット・デ・ロワを焼いていたパティスリーでも、2月になると『La fete de la St.Valentin ラ・フェット・ドゥ・ラ・サン・ヴァランタン」(バレンタイン祭)という感じでショコラ作りに専念してしまうようです。しかし、2年前の2月2日にクラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワの島田進会長が特別にクレープを焼いてくださいました。フランスでもバレンタインデーは存在するのですが、全く盛り上がりません。日本とは逆に、男性が女性に赤いバラの花を贈って愛を表現するからです。ちなみに1970年代から日本で女性が男性にチョコレートを贈る習慣を流行らせたのは、他ならぬ日本のチョコレート会社たちで、マーケティングの一種だったそうですが、現在ではすっかり定着してしまいましたね」
「ブルーの炎が上から下へ伝っていきます!(゚O゚)
Crepe suzette
クレープ・シュゼット
製作 島田進
パティシエ・シマ
特注品
「マキシム・ド・パリ出身の島田進会長が作ったクレープは、グラン・キュイジーヌ的なクレープ・シュゼットでした」

わんだふるはうす、cuisine francaise JJに行く

同じ日に、ポール・ボキューズ氏の弟子で、フランス料理アカデミー日本支部 ジョエル・ブリュアン会長のレストラン「キュイジーヌ・フランセーズJJ」に行ったら、島田進さんの弟子 紅子シェフが作ったデセールは、やはりクレープ・シュゼットでした
フランス菓子 Maison Weniko紅子(Weniko)シェフが
キュイジーヌ・フランセーズJJのシェフ・パティシエール時代に作った
クレープ・シュゼット
「島田シェフのと同じです!(゚O゚)
「クレープといえば、私はクロゼイユのコンフィチュールのクレープをジャスミンティーと一緒にいただくのが好きですが、あなたがたはどんなクレープがお好きですか?
「オイラはショコラ・ノワールのガナッシュに砕いたマカロン・オ・ショコラを混ぜたクレープ。ショコラショーも一緒にね~♪」「オイラはクローバーのミエル(ハチミツ)のクレープ~♪」「オイラは砕いたマロン・グラッセとフロマージュ・ブランを合わせたクレープかな~♪」
「何という舌の肥えた小人たちなのでしょう! ところで水戸のメゾン・ベニコの近況はどうなっているのでしょうか?」
「作るそばから売れていくので相変わらずショーケースは埋まっていない様子です。しかし、いくつかの新作が見えますよ」
「『かりん アルザス風』と『バレンタイン・スペシャル』?…これは買いに行かなくては…」
「『かりん アルザス風』の瓶の底にはスパイスがたっぷり! これはチーズに合いそうですね」
「水戸に行く前に愛宕山にある日本初のチーズ専門店『フロマージュリー フェルミエ』でアルザスのチーズを買って行きましょう」
「アルザス地方のチーズといえばマンステールに尽きます。古くから修道院(Monastere モナステール) で作られていたのでこの名前になったそうです。皮を塩水で洗いながら2~3カ月かけて熟成される牛乳チーズで、その皮がオレンジ色がかってくると、納屋を思わせる独特の匂いを放ち、クリーム色の身がとろけるようになります。蓋の上に乗っている黒っぽいものはクミンで、匂いとバランスをとるためにクミンを添えるのです。皮付きのまま茹でたジャガイモと一緒に食べるのもお勧めです」
「ジュゼッペ・コニーリオさんのクローバーのハチミツも買って行きましょう。イタリア南端にあるシチリア島で採れたハチミツです。シチリア島は1年中、温暖な気候に恵まれているため、一年を通じていろいろな花が咲きます。たくさんの養蜂業者がいますが、ジュゼッペ・コリーニオさんはまったくの個人で、自然農法の農家と提携し、それぞれの花の最盛期にシチリア中をミツバチと一緒に移動してハチミツを集めています。昔ながらの手法で採った後の瓶詰め作業は家族総出で。オレンジ、タイム、栗、サボテン、レモン、ミックス…丁寧で個性的な味が揃っています。数多いシチリアのハチミツの中でも、最も早く自然環境保護認定証協会の認定を受けたものです」

2011年2月4日

わんだふるはうす、メゾン・ベニコに行く

「皆さん、こちらがメゾン・ベニコです。今年のシャンドルール当日である2月2日(水曜)と翌日3日(木曜)はメゾン・ベニコの定休日。したがって、本日4日の来店になってしまいました。おおっ!?グランドオープンを記念して、先着50名にマカロンをプレゼントですって!?(^O^)\」「ウオッホン!どきたまえ、ワンダフルハウス君。私が先に店に入る!(`■´)/~\(゚O゚)「次は私だ!(*^O^*)/~\(゚O゚)
2011年2月4日
グランドオープンを記念して先着50名様に配られた
ダブルチョコレートマカロン
非売品
そちらのお客様が49番目、そちらのお客様が50番目、申し訳ございません…ワンダフルハウス様は本日51番目のお客様でマカロンは無くなってしまいました」「ええっ!?私だけもらえないのですか?(ToT)/~~~」「ウオッホーン!\(^■^)/「やった!もらえたー!\(*^O^*)/
マカロン・オー・ショコラ
630円
グランドオープン特別価格
「おおっ!?(^O^)\ こんな所にマカロン・オー・ショコラが…しかも最後の1個…これをください!(^O^)/」
マカロン・オー・ショコラ
「外はサックリ、中はモッチリ!ガナッシュがたっぷりサンドされている極めて正統的なマカロン・ショコラです(^Q^)」
ダブルチョコレートマカロン
先着50名様に配られたダブルチョコレートマカロンは、マカロンオーショコラをブラックチョコレートでコーティングしたものです。
トントン トントン トントン♪(^o^)//(()
「こんにちは、私がワンダフルハウスです(^o^)//(()トントン!!」
クレープ
特注品
「今日はこれからWenikoシェフにシャンドルールのクレープを焼いていただきます」
「本日はフランスからクレープに詳しいお二方をお招きしております」
フェーヴ
Le Promeneur
散策者
フェーヴ
Le Garde Champetre
田園監視人
(田舎の駐在さん)
「私達は今はなき幻の菓子を求めて、フランス各地の山中の村まで出向いて行って、訊ね歩き廻ってきました。私達がフランス一周菓子旅行を思い立ったのは、次々に商品化される新しい菓子に疑問を持ったからです。菓子原材料が世に出て、既に数世紀が経ちますが、新商品にばかり目が向けられ、菓子の本質をややもすると忘れがちな昨今です。このような時代にこそ、菓子の原点に戻ってみる必要があるのではないかという想いが、徒歩でのフランス一周菓子旅行に駆り立てたのです。クレープ(Crepe)とは、フランスの二大宗教祭日シャンドルール(Chandeleur 聖燭節、聖母お清めの祝日)とカルナヴァル(Carnaval 謝肉祭)には欠かせない食べ物であると同時に、ブルターニュ地方の名物菓子でもあることも忘れてはなりません(*^_^*)」 「ウオッホン!私の本職は農村保安官…つまり警察官なのです。私達がフランス一周旅行を終えて感じたことは、消滅してしまった菓子があまりにも多いということです。もちろん存続出来えなかった諸条件があったのでしょうが…。その反面、予期せぬ場所に、こんな菓子が…と一驚させられることもありました。ブルターニュ地方は、フランスの他の諸地方と異なるケルト人とガリア人の合体という史実や裕福な貴族が多かったこと、西部の海岸地方に外国船が頻繁に出入りしたこと…例えば、ナント港にはフランスへ最初に砂糖が持ち込まれている…などの文化遺産を継いだものがクレープだと言っても過言ではありません」
「クレープがブルターニュ地方の文化遺産だなんて…なんて大げさな話でしょう!」「ウオッホン!ブルターニュ地方を知らずにフランスを語ることはできないと言われているほど、この地方は特色に溢れているのです。ブルターニュ(Bretagne)という地名が付けられる以前は、東側をオート・ブルターニュ(Haute Bretagne)、西側をバス・ブルターニュ(Basse Bretagne)と呼んでいました。オートブルターニュは最初のフランス人であるガリア人(Gaulois)の国、バスブルターニュは二番目のフランス人であるブルトン人(Breton)の国です。ブルトン人の間ではケルト系の方言ブルトン語が使われています」
「おおっ!? 黄色いクレープと茶色いクレープ、2種類ありますよ?(゚O゚)
Crepes de froment クレープ・ドゥ・フロマン
小麦粉のクレープ
特注品
Crepes de ble noir クレープ・ドゥ・ブレ・ノアール
Galettes de ble noir ガレット・ドゥ・ブレ・ノアール
Galettes de sarrasin ガレット・ドゥ・サラザン
そば粉のガレット
特注品
「左の黄色っぽい小麦粉のクレープは、クレープ・ドゥ・フロマン(Crepe de froment)と言い、右の茶色っぽい、そば粉で作られるクレープは、クレープ・ドゥ・ブレ・ノアール(Crepe de ble noir)またはガレット・ドゥ・ブレ・ノアール(Galette de ble noir)またはガレット・ドゥ・サラザン(Galette de sarrasin)と呼びます(*^_^*)」
「クレープとガレットの違いって何でしょう?」「一般的には小麦粉で作られる甘いデザートクレープをクレープ、そば粉で作られる塩味のおかずクレープをガレットと呼んでいるようですが、実はこの二つは同じで、両方ガレットなのです」
「クレープもガレット?(゚O゚)「クレープ(Crepe)はフライパンの上で焼いたガレット(Galette)のことです。ラテン語でCripusと言い、波模様のとか、縮れたという意味です」
「ガレットというと、普通我々が感じるイメージは、1月6日のエピファニー(Epiphanie)の日に食べるガレット・デ・ロワのことしか思い浮かびませんが…「ウオッホン!ガレットという文化は人類の祖先達が2個の石で穀粒を挽き、その粉を太陽熱の石の上で焼く知恵を持った時から発生したものです。ガレットの名称は、薄く、円く延ばして焼いたものに付けられます。ですから、その生地はガレット・デ・ロワのようにフィユタージュでも、またブリオッシュやパンやサブレやブリゼでも良い訳です」
Galettes de sarrasin ガレット・ドゥ・サラザン
そば粉のガレット
特注品
「これが茨城県産のそば粉を使用したガレット・ドゥ・サラザン(そば粉のガレット)ですか?(゚-゚)
「おおーっ!? ここにもそば粉のガレットが!?(゚O゚)
Galettes de sarrasin
ガレット・ドゥ・サラザン
そば粉のガレット
特注品 157円
「名前が同じなのに片や茶色いクレープ、片や地味なクッキー…これはどういうことなのでしょう!?(゚O゚)
Galettes de sarrasin
ガレット・ドゥ・サラザン
そば粉のガレット
157円
ウオッホン!先ほども申しました通り、ガレットの名称は、薄く、円く延ばして焼いたものに付けられます。これはサブレ生地のガレットです。アカデミー・デ・ガストロノーム辞典によりますと、サブレとは小物菓子と同じであると定義されています」
ウオッホン!サブレ(Sablé)は、確かに砂(Sable サーブル)を連想するようなボロボロになりやすいパートで作られています。このパートにはバター、卵黄、粉(ガレット・サラザンの場合はそば粉も)、砂糖が使われますが、良質のバターさえあれば、作り方は簡単な部類に入る菓子でしょう」

Galettes de sarrasin
ガレット・ドゥ・サラザン
そば粉のガレット
特注品
ウオッホン!これはクレープ生地のガレットです。ガレットの起源については、これまでにも色々な説が出されてきました。アカデミー・デ・ガストロノーム辞典でも数々の定義が紹介されています。『人類が穀粒を二つの石の間で挽いて粉にする方法を発見した後、二千~三千年の間は、ほとんど水と粉だけで作った粥が、人類の食物の実体であった。これは想像上の話であるが、ある時、一人の男が、普通のものよりも濃厚な粥を熱くなった石の上に偶然並べてみた。この男が天才的料理人の名誉に輝くことになった。彼の粥は、水蒸気が立ち上ると共に消え失せたが、ガレットとなって戻ってきたからである』」
Crepes de froment
クレープ・ドゥ・フロマン
小麦粉のクレープ
特注品
「つまり、水と粉で作った粥が、何かの偶然で焼かれて、このような薄く円い形になった…このようなクレープ生地のガレットが人類最古のガレットというわけですね?(゚-゚)
小麦粉のガレット(クレープ) そば粉のガレット
「学者たちによると、元来のガレットには、穀物の脱穀や精白などが不充分なため、籾殻や藁の切れ端、砂などのかけらが混ざっていたということです(*^_^*)」
小麦粉のガレット(クレープ) そば粉のガレット
「しかし、そんな混入物があったからといって、保存が可能な栄養価の高い食品を人間の手で加工したことの価値を減じはしません。それは人間の優れた創意の一つとして数え上げることがことができるものです(*^_^*)」
小麦粉のガレット(クレープ) そば粉のガレット
「中世に入ると、ガレットを作るために全ての穀物を利用するようになっていました。創世記の中に、このように記された部分があります…アブラハムがハラに言った『急いで粉三人分を捏ねてガレットを作りなさい』…聖書研究によると、このガレットは酵母を使わない、無発酵の大麦粉生地で作られ、灰の中で焼くと言われてきたが、この点は疑問が残る、とのことです(*^_^*)」
続く

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