フランス菓子 Maison Wenikoの四季

2011年4月
アニョー・パスカル(Lammele)とコンフィチュールのデギュスタシオン

L'agneau pascal(アニョー・パスカル)。アルザス語でLammeleは、アルザス地方でパック(復活祭)に食べられる伝統菓子で、ユダヤ教の“過ぎ越しの祭”の際に子羊を食べていた習慣に由来すると言われています。フランス語でアニョーは「羊」、パスカルは「復活祭」という意味です。復活祭は日本ではあまり馴染みのない行事ですが、カトリックではクリスマスと同じくらい大切な行事なのです。 この時期のフランスは、卵を使ったディスプレーやニワトリやうさぎのショコラもたくさん登場します。そしてアルザス地方では、この羊の形をしたお菓子がお店を飾ります。今年のパックは4月24日(日曜日)。ワンダフルハウスはパック直前にMaison Wenikoを訪れ、アルザスで修業したフランス菓子職人 紅子(Weniko)さんにアニョー・パスカルを焼いていただきました。

2011年4月第4週

わんだふるはうす メゾン・ベニコに行く

「こんにちは!(^o^)//(()トントン!!」
「いらっしゃいませ」「おおっ!?羊です!あなたは誰ですか?(゚O゚)\
「私はパックの時期だけWenikoシェフの執事を務めておりますL'agneau pascalと申します」「アニョー・パスカルというと…あの有名なパックの子羊!(゚O゚)\
「さようでございます。ところで、お客様はどのようなお菓子をお求めでしょうか?」
Biscuit de Savoie
ビスキュイ・ド・サヴォワ
オーボンヴュータン
「今日はオーボンヴュータンで売ってるビスキュイ・ド・サヴォワのようなシンプルなビスキュイにコンフィチュールをつけて食べたい気分です(^Q^)//(()トントン!!」
恐れ入ることでございます。お客様は昔の菓子をごひいきのようでいらっしゃいますね。残念ながら当MaisonにはBiscuit de Savoieの型がございませんので焼けませんが、私のようなL'agneau pascalという菓子は、形が違うだけで、中身はBiscuit de Savoieとほとんど同じなのでございます」
ビスキュイ・ド・サヴォワ
オーボンヴュータン
「そうでしたか…アニョー・パスカルはビスキュイ・ド・サヴォワと同じタイプの生地のお菓子でしたか( ..)φメモメモ」「歴史的にはサヴォアはニースと共に一番遅れて1860年にフランスに帰属した所です。それまでの長い間、イタリアの名家サヴォイ家の領地でした。サヴォアはフォンデュ料理の本場として知られ、同時にまた、誰でも知っている名高いデセールGateau de Savoieを持っています」「ガトー・ド・サヴォワ?(゚O゚)φ
アニョー・パスカル
メゾン・ベニコ
特注品
ビスキュイ・ド・サヴォワ
オーボンヴュータン
「ビスキュイ・ド・サヴォワとガトー・ド・サヴォアは違う菓子なのですか?」Biscuit de Savoie、Gateau de Savoieと呼び方は違っても、これらは同じアントルメであることは確実です。Gateau de Savoieと通称され、Biscuit de Savoieという菓名を持ったこの菓子が、昔のサヴォイ公国の国境をもし越えていたなら、果たして同じ調理法で伝承され、現在のようなフランス料理の伝統を守った地方民族菓子としての位置を保っていたでしょうか?
アニョー・パスカル
メゾン・ベニコ
ビスキュイ・ド・サヴォワ
オーボンヴュータン
「サヴォアという土地柄であったからこそ、代々の料理頭や菓子頭たちは、次代の人々に注意深くこれを伝授し、この作り方が今も一貫して変わらなかったのだ、と言えるのではないかと思います」
アニョー・パスカル
メゾン・ベニコ
ビスキュイ・ド・サヴォワ
オーボンヴュータン
Biscuit de Savoieという菓子で一番問題になっているのは、これを最初に作り上げた町は、シャンベリーなのか、イエーヌなのかという一番争いの問題です。イエーヌというのは、サヴォア地方の西の入口に当たるローヌ左岸、モン・シャ山の麓に位置する小さな町です。一方、シャンベリーでは、この地の公爵の城の地下にあった酒蔵に出入りする業者がBiscuit de Savoieを伝授したのだという伝説があり、今も問題を投げかけています。創製の地がどちらであるにせよ、伝説によると、1348年より以前にサヴォイ公のアムデ6世(在位1343〜1383)の料理長であったピエール・ディエンヌなる人物が、一時衰退していたBiscuit de Savoieを再び創製時に帰したのだといわれています。その後、1782年に新しく店を開設した菓子職人のドゥボージュ(ボルゲ家を相続した人)に発見されたわけです
ビスキュイ・ド・サヴォワ
オーボンヴュータン
「Biscuit de Savoieは、柔らかな味を保持するために、パートを型いっぱいにして敷き、昔のように薪火の窯で焼くのが本来の作り方です。サヴォア地方でも、そのような焼き方まで守っているのは珍しいことですが、薪を使うのが本当のBiscuit de Savoieなのです。それというのも、電気や燃料油などの近代的な窯では、どうしても不充分な面があって、この菓子にそぐわないからです。Biscuit de Savoieは膨張が急速すぎると、縮みも早く、風味も悪くなってしまうのです。サヴォイ家は1860年にサヴォアをフランスに譲りましたが、Biscuit de Savoie(Gateau de Savoie)も、こうした歴史と共に古いのはもちろんのことで、伝統的に、敬虔に、忠実に保存されてきたものです」
「それにしても深いお話ですね。お菓子の表面的な形だけで伝統を理解してはいけないということがよくわかりました。もしかして、あなたは羊の皮をかぶった河田勝彦シェフではありませんか?」「いいえ、私はアルザス在住のただの菓子好きの羊の執事です」「そうでしたか…私は今までアニョー・パスカルというアルザス菓子を食べたことがないので、できればアレンジ無しの本物を見せていただきたいのです」「なるほど…お客様がワンダフルハウス様でございましたか」
「こちらがL'agneau pascalの型でございます」
「この白い粉は?(^-^)\「薄力粉とコーンスターチです。ご参考のために、アカデミー・フランスによるBiscuit de Savoieの配量は次の通りです。粉315g、コーンスターチ150g、卵黄14個、卵白14個、レモン皮1個、砂糖500g
「見てたら、レモンピールは入れなかったような気がします。これがクリスティーヌ・フェルベール流なのか?(^-^)\
「焼き上がるまでのしばらくの間、こちらの作品をご鑑賞ください」
「これは刺繍入りハンカチですか?(^-^)\「ランチョンマットでございます」
「おーっ!このランチョンマットはアルザス在住の画家WeRoさんの作品です!(゚O゚)\
WeRoさん
2010年12月24日
「WeRoさんといえば、昨年のクリスマスに来日して壁に絵を描いていた…あの時はマカロンブローチなどがありましたね
「今回のランチョンマットは、母の日のプレゼント用でしたか!」
「全て顔が違う! なるほど…この中からお母さんの顔に似たハンカチを選んで、母の日に贈るというわけですね(^O^)\
「Wenikoシェフは、フランス菓子やコンフィチュールだけでなく、WeRoさんとコラボレーションして、このような作品も紹介していきたいと考えているようです」
「WenikoシェフとWeRoさんのコラボレーションとは素敵です!今までの日本のパティスリーには無かった新しい文化やスタイルが生まれそうな予感がします(^O^)//(()トコトコトーン♪♪」

「ワンダフルハウス様、L'agneau pascalが焼き上がりました」
「おーっ!ここまで攻めた焼き方をするパティシエールがいるとは…これは凄い!(゚O゚)\」
ブリオッシュ・ア・テット
オーボンヴュータン
「普通の人は、この写真を見て、“ちょっと黒いんじゃないか”とか、“これ焦げてる”と感じるはずですが…(゚-゚)\」
ブリオッシュ・ムスリーヌ
オーボンヴュータン
アニョー・パスカル
メゾン・ベニコ
特注品
「これがオーボンヴュータン級の“美味しそうな焼き色”というものなのです!(゚O゚:)\」
続く

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