フランス菓子 Maison Wenikoの四季

2011年6月
フレッシュルバーブのパイ

リュバルブ(Rhubarbe)の季節がやって来ました。市場に出回る旬は夏の手前。リュバルブとはタデ科の多年草で、日本ではルバーブという名で知られています。酸味が強く、繊維の多い茎の部分を食用とします。リュバルブのコンフィチュールをヨーグルトやフロマージュ・ブランに混ぜて食べたり、タルトに敷き込んで焼くと、とても美味です。

2011年6月第1週

わんだふるはうす、メゾン・ベニコへ行く

「晴れ渡った初夏の午後は、水戸のMaison Wenikoでグーテ(おやつ)を…という趣向で6月は始まりました」
「ワンダフルハウス様、今シーズン初のフレッシュルバーブのパイが焼き上がりました」
フレッシュルバーブのパイ
472円
「正式にはタルト・アルザシエンヌ・ア・ラ・リュバルブと申します」
タルト・アルザシエンヌ・ア・ラ・リュバルブ
「ロッシェのような柔らかいムラングがたっぷり載って、卵と牛乳をたっぷり使ったフランっぽいアパレイユの中に茨城県産フレッシュルバーブとコンフィチュールが凄い密度でギッシリ詰まっている!…うおーっ!!…こ、これは強烈です!!(゚O゚:)\」
「このTarte Alsacienne a la RhubarbeはChristineと同じ作り方ですよ」
アルザスでは4〜6月がRhubarbeの季節。Christineにとって、Rhubarbeは春一番のConfituresなのです」
「この、もの凄い素材感の見事なまでの組合せ…Wenikoシェフは茨城県ひたちなか市産のフレッシュ・ルバーブを使って、デモーニッシュなまでのアルザスの精神性を見せてくれました。このようなアントルメをカットした、ショーケースの中できらめかない地味なお菓子にフランス地方菓子の神髄が隠されているのでしょう」

わんだふるはうす、パティシエ・シマへ行く

タルト・リュバーブ
420円
パティシエ・シマ
2009年
「Wenikoシェフのもう一人の師匠である島田進シェフのタルト・ア・ラ・リュバルブを見てみましょう。パート・ア・フォンセの上にムラング・イタリエンヌをたっぷり絞って、表面に焼き色をつけてあります。ムラング・イタリエンヌの上にはカシスのジュレ」
「アパレイユ・クラフティの中に赤いルバーブが入っていました! サクサクのパイ生地にカスタードのような、プリンのような甘いクリーム(アパレイユ)。ルバーブは甘酸っぱい不思議な味わいです」
シブスト・リュバーブ
525円
パティシエ・シマ
2010年
「シブーストとは、19世紀後半、パリのサントノーレ通りにあった菓子店のシェフ、シブースト氏が考案したカスタードにイタリアン・メレンゲを混ぜた軽いクリーム“クレーム・シブースト”を使ったタルトです。こちらは御子息の島田徹シェフの作品ですが、父親のスタイルを継承した作風となっております」
「リンゴ、洋梨、オレンジ、レモン、フランボワーズ、桃、そして今回はルバーブ…色々なフルーツで作れます。表面をしっかりキャラメリゼするのがポイント。上の白いクリームがクレーム・シブーストです。アパレイユ・クラフティの中から赤いルバーブが出てきました。ルバーブは酸味が強く繊維の多い茎の部分を食用とします。見た目は赤いフキといったところ」
「おおっ?フェルベールさんやWenikoシェフが使用している緑色のルバーブも出てきましたよ」
「おおーっ!これは太い!\(^○^)/ 写真で見る限りではフキやセロリに似た繊維質な印象を受けます。ルバーブは酸味が強いので砂糖と一緒に煮てコンフィチュールやコンポートにしたり、タルトに入れたりする事が多いです。野菜なのに果物扱い。料理より菓子に使われることが多いのです」
Galette des rois a la rhubarbe et pomme verte
ガレット・デ・ロワ・ア・ラ・リュバルブ・エ・ポンム・ヴェール
特注品
製作 島田進
2010年8月
「世にも珍しいガレット・デ・ロワを紹介しましょう。ルバーブはコンフィチュールやタルトやシブーストだけでなく、ガレット・デ・ロワにも入れられて、“夏のガレット・デ・ロワ”が作られました。ルバーブの下の層には青リンゴを使ったので、色彩を対比させるために、グリーンではなく、赤いルバーブを使ったようです」

再びメゾン・ベニコへ

「上に載ってるメレンゲはロッシェに似ていますね?(゚-゚)\」
「1月に発売されたロッシェは、Wenikoシェフのお母様であるヨーコさんが好きだった軽井沢にあった不二屋洋菓子店で売っていたメレンゲをフランス菓子にアレンジして再現したものだそうです
「ワンダフルハウス様、当店のRocheは閉店してしまった軽井沢の不二屋の幻のメレンゲ菓子の再現という意味の他に、もう一つの意味があるのでございます」「何ですか?それは?(゚-゚)\」
「1720年にザックス・コブール・ゴータ公国(Saxe-Cobourg-Gotha)にあった小さい町メリニゲン(Mehrinyghen)で、ガスパリーニ(Gasparini)という名前の菓子屋が、煮詰めた砂糖と卵白でロシェ(Rocher)という軽く小さい菓子を考案しました。これがムラングの嚆矢(こうし)と言われています」「これがメレンゲの始まりですって!?(゚O゚:)\」
「閉店した軽井沢の不二屋洋菓子店のメレンゲをフランス菓子にアレンジして再現したら、1720年のメリニゲンのガスパリーニ菓子店のロシェになった…不思議な話です!(゚O゚:)\」

「畑で採れたばかりのルバーブは渋い、まだ熟れる前の果実の味がするそうです。火を通すことで渋みが甘みに変わり、とても豊かな味になるというわけです」
「他の果実には何にも似ていないルバーブ独特の甘酸っぱい味わいは、この時期だけの大地からの贈り物なのでしょう」
「アルザス地方菓子のデモーニッシュな精神性の秘密が一つだけ見えた!(^O^)\」
「パリや東京といった余計なフィルターを通していない、アルザス→茨城直送のタルト・アルザシエンヌ・ア・ラ・リュバルブの正体がこれです」
Salade de truffe noire fraiches
サラッド・ドゥ・トリュッフ・ノワール・フレーシュ
フレッシュ黒トリュフのサラダ(トリュフ増量版)
12600円+サービス料10%
cuisine francaise JJ
2009年1月
「ひたちなか産フレッシュルバーブのパイは、ぺリゴール産フレッシュ黒トリュフのサラダに等しい価値があるなと思いました。共に旬の時期が極端に短いのです。最高の旬はルバーブ6月、黒トリュフ1月といったところでしょうか」
「タルト・アルザシエンヌ・ア・ラ・リュバルブに合わせてあるムラングにも秘密がありそうですよ?」
「このムラングは、ロッシェのように乾燥していない、極端な言い方をすれば、“生っぽい感じのムラング”なのです」
続く
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