フランス菓子 Maison Wenikoの四季

Torche aux marrons alsacien
トルシュ・オー・マロン・アルザシアン
(アルザス風 栗のタルト)

2011年9月第5週

わんだふるはうす、珊瑚礁モアナマカイ店へ行く

「秋分の日が過ぎ、ますます日が沈むのが早くなっていきます。ここは鎌倉七里ガ浜にある珊瑚礁モアナマカイ店。ワンダフルハウスは行列に並ぶことなく、16時半に一番乗りで入店することができました」
「おっ、水戸のフランス菓子店メゾン・ベニコの羊の執事アニョー・パスカル氏からメールが来ました。なになに…『ワンダフルハウス様 新作ガトーの御案内でございます。9月27日からTorche aux marronsを発売いたします。御来店をお待ちしております』『トルシュって何ですか?』って返信してみましょう」
「17時10分、マンゴージュースとガーリックポテトが運ばれて来ると同時に、アニョー・パスカル執事から返事が届きました。『ワンダフルハウス様 トルシュ・オ・マロンは“栗のたいまつ”という意味のアルザスの伝統的な栗のタルトでございます』…ほぅ、松明(たいまつ)なら、ここ珊瑚礁のテラスにもありますね(^-^)\」
「17時17分、日替わりカレーが運ばれて来ました。“本日のカレー”は鱸(スズキ)、鯖(サバ)、黒鯛のフライがのったカレーです」
「そういえば、3年前の9月、当時シェフ・パティシエールを務めていたCuisine Francaise JJでWenikoシェフのモンブランを食べたことがありました」

わんだふるはうす、Cuisine Francaise JJへ行く

Mont blanc avec glace aux poires
モンブラン 洋梨のアイスクリーム添え
Cuisine Francaise JJ
製作 Weniko
2008年9月
「栗のケーキとしてお馴染みのモンブラン。直訳すると『白い山』の意味。アルプスの秀峰モンブランに由来しての命名です」
「珊瑚礁の松明と同じ形です!『あれはトルシュ・オー・マロンだったのか?』とアニョー・パスカル執事に写メールしてみました
『ワンダフルハウス様、写真のガトーはトルシュ・オ・マロンではございません』
『モンブランでございます』

再び珊瑚礁モアナマカイ店

「18時24分、デザートのチョコレートケーキとエスプレッソが運ばれて来ました」
「18時38分、松明に火が灯されると同時に、R134名物の珊瑚礁前渋滞が始まりました」
「どうやら、トルシュ・オー・マロンとモンブランは別物のようですね
「18時57分、ワンダフルハウスは珊瑚礁モアナマカイ店を出ました。舞台は七里ガ浜から水戸へ…」

わんだふるはうす、メゾン・ベニコへ行く

「こんにちは!(^O^)/」
「ショーケースはスッカラカンに近い状態ですが、何か二品ある!」
「2011年9月、エグランティーヌのコンフィチュールを使った、フェルベール・スタイルのトルシュ・オー・マロン(栗のタルト)が、ついに日本に上陸しました!\(^○^)/」
「もう一品は杏仁ブランマンジェです!
「ん?あれは何でしょう?
『ワンダフルハウス様、Pâte sablée au pralin et aux noisettes(パート・サブレ・オ・プララン・エ・オ・ノワゼット)をタルト・セルクルに敷きこみ、クレーム・ダマンドを絞り入れたところでございます」「わかった!これからトルシュ・オー・マロンのアントルメを作るのですね!
Torche aux marrons
トルシュ・オー・マロン
栗のタルト
420円
「クレーム・マロンをこんもりと絞った上に、クレーム・シャンテイがちょん、と絞られているその形がタイマツに似ているからトルシュ・オ・マロンと名付けられたのでございます」「しかし、珊瑚礁のタイマツとは形が違いますよ?「ワンダフルハウス様、Torch(トーチ)は古フランス語をルーツにした英語で『ねじった麦わらの束』を意味しました」「確かに『ねじった麦わらの束』に見える!「語源のラテン語Torcaは『ねじ曲げる』。同源の語には『竜巻』『(風が渦巻く)嵐』『(逆巻く)奔流』などがございます。『巡業』『塔』『迂回』も『ぐるぐる回る』のイメージを持つ同族語でございます」「竜巻、嵐、塔にも見える!
Confiture d'eglantines
コンフィチュール・デグランティーヌ
野ばらの実のコンフィチュール
「エグランティーヌは日本では全く無名ですが、アルザスでは昔から親しまれているそうです
「野バラの実のコンフィチュールはネットリとした舌触りと共に、言葉では言い表せないほどの美味しさがあります」
「私は1ヶ月前に初めて食べて以来、エグランティーヌのコンフィチュールの虜になってしまいました

1ヶ月前(8月)のメゾン・ベニコ

Confiture d'eglantines
コンフィチュール・デグランティーヌ
参考商品

こちらはイベントのために製作しました1点物で、エグランティーヌのコンフィチュールでございます

「エグランティーヌ?(゚-゚)\」「野バラの実のコンフィチュールでございます」

「おーっ!今まで食べたことのない味!何にも似ていない!しかし、これは美味です!(^Q^)」

ガレット・デ・ロワ 佐渡-アルザス エグランティーヌのコンフィチュール添え
ガレット・デ・ロワ 特注品
コンフィチュール 参考商品

「本来、エグランティーヌのコンフィチュールというのはクセがございますので、日本人の皆様のお口には合わないのでございますが、こちらはフランボワーズを加えて、日本人の皆様の味覚に合うように工夫してあるのでございます」

「コンフィチュール・デグランティーヌは秋には店頭に並びます」

「また、エグランティーヌのコンフィチュールを使ったTorche aux marrons(トルシュ・オー・マロン)も店頭に並びます」

1ヶ月後(9月)のメゾン・ベニコ

コンフィチュール
大 1050円
左からブルーベリーとフランボワーズとキルシュ、ブルーベリー、ブルーベリーといちご、ブルーベリーとブルーベリーのオー・ド・ヴィー、ブルーベリー すみれ風味
ルバーブ、ルバーブ バニラ風味、ルバーブ ローズマリー風味
ハスカップ
ビターキャラメル
南高梅、南高梅と水戸のはちみつ
キウイ
あんず、あんずとナッツ、あんずと梅とすもも、あんず リキュール風味、あんず バニラ風味
「新商品は『ブルーベリーとフランボワーズとキルシュ』『ブルーベリー すみれ風味』だけで、エグランティーヌのコンフィチュールは見当たらないですよ?「残念ながら、今年は発売を見送ったのでございます」
「しかし、このトルシュ・オー・マロンが店頭発売されたことだけでも意味があることだと思います。上段はアルザス・スタイル。中段は茨城県笠間市産の栗を渋皮煮にして、クレーム・マロンに加工した茨城スタイルなわけですから
パート・サブレ・オ・プララン・エ・オー・ノワゼットの表面には、ラム・シロップを塗ってあります
栗のタイマツがカットされました。ちなみに茨城県は栗の出荷量が全国第1位を誇る栗の生産地。その中でも笠間市は栗の栽培面積第1位を誇る地域で、笠間市内のいたる所で栗畑を見かけることができるそうです」
「食べた瞬間に『これは栗だ!』とわかるような、和栗のホクホクとした風味を感じます。クレーム・マロンは、栗本来の甘味を感じさせたいためか、甘さをかなり抑えてある印象を受けました

わんだふるはうす、キャンティ飯倉本店へ行く

銀寄せ栗のモンブラン
1680円+サービス料10%
レストラン・キャンティ飯倉本店
2007年11月
「メゾン・ベニコのトルシュ・オー・マロンは、キャンティ飯倉本店の地下のレストランで、1年のうち、短い旬のうちのほんの一瞬、数個だけ作られている『銀寄せ栗のモンブラン』に味が似ているな、と思いました
銀寄せ栗のモンブラン
「秋に欠かせない味覚である栗。国産で最高品種の栗が丹波栗です。丹波栗と一口に言っても『丹沢』『筑波』『銀寄せ』など、いくつかの品種があり、その中でも『銀寄せ』という品種は大粒で甘味があり最高の美味しさと言われています
Monte bianco
キャンティ特製モンブラン モンテビアンコ
1260円+サービス料10%
レストラン・キャンティ飯倉本店
「こちらは、“1200円のモンブラン”として有名な『キャンティ特製モンブラン モンテビアンコ』。香り豊かなフランス産と味わい深い国産和栗を一つのプティ・ガトーに約15粒使用しているそうです」
キャンティ特製モンブラン モンテビアンコ
「編み込んだように巻きついているクレーム・マロンをご覧ください。直径2mmの口金で一気に搾り出され、クレーム同士が重ならず、かといって余分な隙間を作ることなくガトー全体を包み込んだこのデコレーションはまさに職人芸といえます
キャンティ特製モンブラン モンテビアンコ
「イタリア語でモンテ(Monte) は『山』、ビアンコ(Bianco) は『白』。モンテ・ビアンコとは『白い山』を意味します」
キャンティ特製モンブラン モンテビアンコ
「クレーム・シャンティの中から渋皮付きマロンが出てきました」
キャンティ特製モンブラン モンテビアンコ
「高級感のあるカカオの香りがプーンと漂っているのは、メレンゲの上にガナッシュ・オ・ショコラが塗られているからです」
銀寄せ栗のモンブラン
「1600円の銀寄せ栗のモンブランは、メゾン・ベニコのトルシュ・オー・マロンと同じくタルト仕立。銀寄せの甘味を殺さないために、砂糖をほとんど加えていません。その味わいは、葉山のチャヤ・マクロビオティクスのガトーを食べているような感じがしました
銀寄せ栗のモンブラン
「おおーっ!さすがに大粒です!(゚O゚)\」
銀寄せ栗のモンブラン
「大粒で、きめ細かく、ホクホクした食感と強い甘味が特徴です」

再びメゾン・ベニコへ

「おっ? いつの間にかトルショー・マロンのアントルメがオーブンから出てきましたよ!

「Wenikoシェフが笠間栗のクレーム・ド・マロンを星口金を付けた絞り袋に入れて絞り出しているところです(^-^)\

「焼き上げた後、水とオーガニック・グラニュー糖とラム酒を混ぜ合わせて作ったラム・シロップを表面に塗っております。先ほどのプティ・ガトーよりも、お酒は強めに効かせてあります」

「ワンダフルハウス様、フランスの地方には、どの町にも必ず民族博物館があり、昔ながらの手法、器具を明確に伝えてくれているのでございます。一例を挙げると、我々はボルドーの菓子職人ロルサに感謝しなければならないということがわかります。博物館の記録によると、彼は様々な形のシューを作るのに絞り袋を創始し、感心にも自分の技術を隠すようなことをしなかったとのことです」

「このように、菓子職人が日常使っている調理器具にも、一つ一つに創意工夫の歴史があり、それぞれの開発によって、大変な効果がもたらされているわけです」

「なるほど…そのおかげで今日我々は菓子類の形態の著しい変化を見ることが可能になったのか」

「こうした諸先輩達の工夫や努力の積み重ねの上に、菓子職人は菓子作りに携わっているのです。だからこそ、ますますこれからは菓子界を総括的に見ていかなければならないのでしょう」

「先ほど笠間栗のクレーム・ド・マロンが絞り出された絞り袋ですが、1808年頃にボルドー地方の菓子職人であるロルサ(Lorsa)が紙を三角に丸めて細い線を絞り出すのを考え出したといわれています。そしてその後すぐ、天才菓子職人と呼ばれたマリー・アントナン・カレーム(Marie-Antoine Careme 1784~1833)によって、1820年頃から今のような布製の絞り袋に口金を付けたスタイルが考案され、素晴らしいデコレーションが次々と作られていったのです」

「こちらがクリスティーヌ・フェルベールの基本のタルト生地『Pâte sablée au pralin et aux noisettes(パート・サブレ・オ・プララン・エ・オ・ノワゼット)』でございます。小麦粉、粉砂糖、バター、パート・ノワゼット(ヘーゼルナッツ)をミキサーにかけ、フックで混ぜてそぼろ状にし、全卵を加えて混ぜ合わせ、プードル・ノワゼット(粉末ヘーゼルナッツ)、塩、バニラ・シュガーを加えて混ぜ合わせ、まとめた生地でございます」


「泡立てた生クリームを大きめの星口金で絞り、その上に野バラのコンフィチュールを流して飾ります」

2002年10月16日
アルザスの“ジャムの妖精”
クリスティーヌ・フェルベール最新技術講習会で作られた
Torche aux marrons
特注品

「このアントルメはニーデルモルシュヴィルのメゾン・フェルベールに行っても売っていません。今から9年前の2002年10月16日、『社団法人 東京都洋菓子協会』の主催によって開催された『アルザスの“ジャムの妖精” クリスティーヌ・フェルベール最新技術講習会』で作られたTORCHE AUX MARRONSの笠間栗による再現なのです」

「その講習会には、パティシエ・シマで修業中だった頃のWenikoシェフも参加していたというわけです(^-^)\」

「プティ・ガトーでは見えなかったタルト台の境界線がハッキリ見えた!(゚O゚)\」

「その講習会で“La fée des confiture(ラ・フィー・デ・コンフィチュール=コンフィチュールの妖精)”は、マロン・ピューレとパート・ド・マロンと生クリームを混ぜ合わせてクレーム・マロンを作っていました。メゾン・ベニコのクレーム・マロンは笠間産の生栗から自家製で作っているので、とても手がかかっています」

「タルト台の境界線より上側がCrème d'amandes(クレーム・ダマンド)。下側がPâte sablée au pralin et aux noisettes(パート・サブレ・オ・プララン・エ・オ・ノワゼット)

続く

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