フランス菓子 Maison Wenikoの四季

Gateau Basque aux Marrons
ガトー・バスク・オー・マロン

2011年10月第4週

わんだふるはうす、メゾン・ベニコへ行く

「旅行者がバスク地方に入るには、ボルドーからランド県を経由して行きますが、ガトー・バスクを買うためなら茨城県に行けばいいのです」
「ハロウィン用のポティロン(かぼちゃ)がディスプレイされています」 「これが有名な笠間の栗です!」
「こんにちは!(^O^)/」「これはこれはワンダフルハウス様…」
「たった今、ガトー・バスク・オ・マロンが焼き上がったところでございます」「さすがにガトー・バスクがこれだけ並ぶと壮観ですね!(^O^)\」
Gâteau Basque aux Marrons
ガトー・バスク・オー・マロン
3675円
「1個いただきましょう!(^Q^)/」
「ワンダフルハウスさんがガトー・バスク・オ・マロンを買ったぞ」 「俺達もお相伴に与ろうじゃないか」
「おーっ! 見事な焼き色です!(゚O゚)\」
「外側のバスク生地は、サブレ生地のような見るからにボロボロになりやすいパートで作られています。ところで、ガトー・バスクのバスクとは?(゚-゚)\」
「ブーン…バスク地方とは、フランスの旧区分の地方名ではなく、バスク人と呼ばれる少数民族の住む一帯を指し、フランスとスペイン両国にまたがる7つの地区から成り立っています 7つの地区とは、フランス側がバス・ピレネ県のラポール、バス・ナヴァール、スールの3地区。スペイン側がナバラ、アラバ、ギプスコア、ビスカヤの4地区で、ピレネー山脈の西部とカンタブリア山脈の東部に当たる山岳地帯です片側は断崖絶壁の海岸になっており、このような地形から今では観光に大変力を入れており、保養地としてもよく親しまれています
『ワンダフルハウス様、バスク人の話すバスク語は、言語学的にはその系統が不明で、未だに謎とされています。スペイン語やフランス語などの属する印欧語とは全く違った文法を持っているのでございます。しかし、現在のバスク人たちはたいていスペイン語かフランス語のどちらかを身につけています」
「こ…これは凄い! アマンド・プードル入りのしっとりしたクレーム・ド・バスクの中に自家製の笠間栗の渋皮煮が丸ごと入っています!(゚O゚)\「バスク地方菓子としてフランス中に親しまれている名物がガトー・バスクでございます。現地の1970年代当時のルセットを紹介しますと、粉250g、卵黄1個、全卵1個、バター150g、砂糖150g、塩少々、以上の配量でパートを作っておきます。クレームは牛乳250cc、卵黄2個、砂糖60g、粉25g、ラム酒少々でクレーム・パティシエールを作ります。パートの3分の2を1cm厚さの円形に延ばし、この上にクレーム・パティシエールを入れ、残り3分の1のパートを延ばし広げ、焼き上げます」「…ということは、これは現地のガトー・バスクよりも分厚いのか!?(゚O゚)\

わんだふるはうす、パティシエ・シマ&ラトリエ・ド・シマへ行く

「メゾン・ベニコのガトー・バスク・オー・マロンを見て、私はパティシエ・シマのバスク・オ・マロンとバスク・オ・ショコラを思い出しました
Basque aux Marrons
バスク・オ・マロン
2058円
パティシエ・シマ
「Wenikoシェフの修業店であるパティシエ・シマのバスク・オ・マロンにメゾン・ベニコのバスク・オー・マロンの原点があったのです!(゚O゚)\
Basque au chocolat
バスク・オ・ショコラ
2058円
ラトリエ・ド・シマ
「お隣のラトリエ・ド・シマにはガトー・バスク・オ・ショコラがあります。チョコレートと栗とカシスを使った『バスク・オ・ショコラ』です」
Marron glacé
マロン・グラッセ
ラトリエ・ド・シマ
「ワンダフルハウスさん、バスク・オ・マロンに使っている和栗の渋皮煮には、マロングラッセに使っているヨーロッパ産の栗にはない滋味と素朴な味わいがあります。和栗をフランスの味に生かした菓子がバスク・オ・マロンであり、バスク・オ・ショコラなのです」「マロングラッセもください!(^O^)/」
Marron glacé
マロン・グラッセ
ラトリエ・ド・シマ
パリの秋はマロニエ並木とマロングラッセから始まるといいます。シロップの中で寝かせた栗に香り高いコニャックの風味を付け、乾燥させた手の込んだお菓子です」「栗に氷のような艶があります!(゚O゚)\グラッセ(glacé)には、『凍らせる』『糖衣をかける』という意味があります。マロングラッセは渋皮をむいてやわらかく煮た栗を、数日かけて砂糖液で煮ます。毎日少しずつ糖度を上げていくことで、ツヤツヤでやわらかいマロングラッセに仕上がるのです」
糖度を上げるですって?」栗を下茹でした後、バニラとコニャックで風味付けしたシロップ(砂糖液)で煮て糖分をしみこませ、翌日糖度を少し上げてまた煮る…これを数日間繰り返し、最後に汁気を切って表面を乾燥させ艶をつけるのです」マロングラッセの作り方はコンフィチュールやコンポートやパート・ド・フリュイの製法に似ていますね」
Marron glacé
マロン・グラッセ
ラトリエ・ド・シマ
指先で触ってみましょう…表面がベトベトせずに乾燥している…これは糖衣をかけたのではない!(゚O゚)つ「砂糖が結晶化することで、砂糖の膜に覆われて乾燥するのです」
「島田進シェフのマロングラッセは凄い! 中まで蜜がしみていて美味です!(゚Q゚)\

わんだふるはうす、ルコント青山本店&ブラッスリー・ルコントへ行く

ブラッスリー・ルコント パティスリー・ルコント青山本店
「ここが、2010年9月26日で閉店した国内最高峰のフランス菓子店『パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント』の本店でした」
「ルコントにガトー・バスクはありません。おっ、マロングラッセはありましたよ!(^O^)\」
「イタリア産の栗とフランス産の栗…2種類のマロングラッセがある!(゚O゚)\
「4個入のをください!(^O^)/」
Marron glacé
マロン・グラッセ
北イタリア・トリノ産 カリブール栗
578円
ルコント
Marron glacé
マロン・グラッセ
南フランス・バール県産 コロブリエール栗
473円
ルコント
「イタリアとフランスの栗は色も大きさも形も違いますね
Marron glacé
マロン・グラッセ
北イタリア・トリノ産 カリブール栗
578円
ルコント
Marron glacé
マロン・グラッセ
南フランス・バール県産 コロブリエール栗
473円
ルコント
「北イタリア・トリノ産のカリブールという高級栗を使ったマロン・グラッセです。大粒でかつ、きめが細かいという特徴があります」 「南フランス・バール県のコロブリエール産の栗を使ったマロン・グラッセです。カリブールに比べるとやや小ぶりです」
ルコントのマロン・グラッセ
北イタリア・トリノ産 カリブール栗
ルコントのマロン・グラッセ
南フランス・バール県産 コロブリエール栗
「カリブールならではの豊潤で滑らかな風味はありますが、シマのマロングラッセには及びません。蜜がしみてないからでしょうか?」 コロブリエール栗の特徴である力強い栗の風味は感じますが、これもシマのマロングラッセには及びません。やはり蜜がしみてないからでしょうか?」
ルコントのマロングラッセの内部に蜜がしみてないのは浸透圧が関係しているようです。液体には濃度が一定になろうとする性質があります。砂糖によって濃度が高くなると、濃度が低い栗は、内側の水分を出して外部の砂糖を溶かし、糖度濃度を一定にしようとします。これが浸透圧です。このため、大量の砂糖を一度に加えると、砂糖の甘味が栗の内部にしみ込むより先に、栗の中の水分が引き出されて、栗は縮んで小さく硬くなります。栗が引き締まってしまうと、砂糖の甘みはなかなか栗の内部にしみていくことができません。そこで、砂糖を分けて加えると砂糖の濃度が少しずつ上がるので、急速な脱水は起こらず、栗内部の糖度と砂糖液の糖度は一定になり、甘みが浸透していきます。シロップの糖度と栗の糖度が同じになった時が、固くならずやわらかいおいしいマロングラッセができるというわけです。
パティシエ・シマのマロン・グラッセ
「これは何ということでしょう!? 315円のシマのマロン・グラッセがルコントの578円と473円のマロン・グラッセを味で圧倒してしまったのです。理由として考えられることはルコントが輸入品であるのに対して、シマは自家製で少しずつ仕込むので鮮度が高いこと。そして、この内部に封じ込まれた蜜が味覚に影響していることは間違いないと思います」
Basque aux Marrons
バスク・オ・マロン
2058円
パティシエ・シマ
「バスク生地にクレーム・ド・バスクを詰めた焼菓子 ガトー・バスクをマロンでアレンジしたパティシエ・シマのバスク・オ・マロン。表面にはガレット・デ・ロワのような格子模様が彫られていますね」
「高さがかなりある厚手のタイプです。Wenikoシェフも島田進シェフのスタイルを踏襲したのです」
「島田進シェフは栗饅頭をイメージして作ったために和栗の渋皮煮を使ったそうです」
バスク・オ・マロン
パティシエ・シマ
バスク生地(パータ・バスク Pâte à basque)が姿を現しました。サブレ(Sablé)生地のような,、砂(サーブル Sable)を連想させるボロボロになりやすいパートで作られています。パータ・バスクにはバター、卵黄、粉、砂糖が使われますが、良質のバターさえあれば、作り方は簡単な部類に入る菓子といえましょう」
栗饅頭のポクポクした素朴な味わいを出すために使われた和栗の渋皮煮。これは自家製ではなく、市販のものです」 島田進流のクレーム・ド・バスク(Crème de Basque)は、クレーム・ダマンドを柔らかくほぐし、ダーク・ラム酒で香りを付けたものです」
和栗の渋皮煮とマロングラッセの違いは、渋皮を剥くか剥かないかが最も大きな違いなのです。渋皮煮は渋皮を剥けないヨーロッパ栗では作ることができません。そしてマロングラッセは砂糖漬けに近いくらいまで蜜を濃くしますが、渋皮煮はそこまでは煮詰めません。渋皮煮はコンポートに近く、マロングラッセはパート・ド・フリュイに近いと言えるでしょう」

再びラトリエ・ド・シマへ

Compote de poires et sauce aux framboises
洋梨のコンポート フランボワーズ・ソース添え
特注品
製作 島田進
パティシエ・シマ
「コンポートとコンフィチュールとパート・ド・フリュイの違いは糖度です。ポワールはコンポートやコンフィチュールやパート・ド・フリュイにして、フランスでとても親しまれているのです。コンポートとは果実では砂糖やシロップやアルコールで煮た甘煮のこと。コンポートとコンフィチュールは、それぞれ糖度の違いで分けられますが、国によって糖度が何%か定義も違います」
フランスではコンポートは糖度50%未満、コンフィチュールが糖度60%以上となっています。ちなみにフェルベール式コンフィチュールは糖度65%。そして日本の定義では糖度40%以上でジャムになります
Pâte de fruits
パート・ド・フリュイ
ラトリエ・ド・シマ
「謎なのはパート・ド・フリュイの糖度なのです(゚-゚)\」
Pâte de fruits à la poire
パート・ド・フリュイ・ア・ラ・ポワール
洋梨のフルーツゼリー
ラトリエ・ド・シマ
「フルーツゼリーはあまりにも濃すぎるので、糖度計で計っても正確な数値が示されないのです!(゚O゚)\

再びメゾン・ベニコへ

ガトー・バスク・オー・マロン
メゾン・ベニコ
「まるでパティシエ・シマの自家製マロングラッセのような…強烈な質感を伴ったメゾン・ベニコ自家製笠間栗の渋皮煮を挟み込んだガトー・バスク・オー・マロンの登場です」

「これが笠間栗の渋皮煮ですか!? とてつもなく大きい!(゚O゚)\」「現在(10月中旬)最盛期を迎えている『石鎚(いしづち)』という種類でございます。大粒で艶のある外皮。ホクホクしていて甘味が強く、皮が柔かくてむきやすいために渋皮煮に向いているのでございます」
Torche aux marrons alsacien
トルシュ・オー・マロン・アルザシアン
栗のタルト アルザス風
420円
2011年9月
モンブラン アルザス風
525円
2011年10月
「この笠間栗の自家製の渋皮煮を、さらに自家製でペースト状にして、無塩バターと生クリームを混ぜ合わせて作ったマロンクリームを絞ったお菓子こそ、トルシュ・オー・マロン・アルザシアンなのです!」
「ガトー・バスクのようなフランス地方菓子とは、あくまでもバスク地方の中で菓子作りをしてきた菓子職人たちの作った手工芸(アール Art)菓子である、ということはできます。そのバスク地方の手工芸菓子に笠間栗の渋皮煮を組み込んでみる…それは緊張の中の余裕と言えばよいのでしょうか…フランス人が持っている仕事における“遊び心”を実に自然にWenikoシェフも持ち合わせているようです。そして、ワンダフルハウスのような菓子に従事する人間以外の人達が存分にフランス菓子を語り、描写し、表現することで、これからの日本におけるフランス菓子の進歩発展があるのではないでしょうか」
続く

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