フランス菓子 Maison Wenikoの四季

Chausson aux pommes
ショーソン・オー・ポム
(アップルパイ)

2011年10月第4週

わんだふるはうす、メゾン・ベニコへ行く

「おっ、いよいよアップルパイの時期が到来しました!(^O^)\」
「こんにちは!(^O^)/」「これはこれはワンダフルハウス様…」
「アップルパイをください!(^O^)/」
「こちらがアップルパイでございます」「んんっ?(゚-゚)\」
Chausson aux pommes
ショーソン・オー・ポム
(アップルパイ)
420円
「フランス菓子を標榜する店で、これをアップルパイと言って売ってはいけません。これはショーソン・オー・ポンムです」

1年前のメゾン・ベニコ

Chausson aux pommes 2010
昨シーズンのショーソン・オー・ポンム
315円
2010年12月
「開店直後のメゾン・ベニコでは、『Chaussons aux Pomme ショーソン・オー・ポンム』というフランス語の菓子名で売っていたはずですが…(゚-゚)\」
「お客様から『ショーソン・オー・ポンムって何ですか?』と訊ねられることが多くて、わかりやすいアップルパイに変えたのでございます」

わんだふるはうす、ルコント青山本店へ行く

パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
2010年7月
「そういえば、2010年9月に閉店したルコントのようなフランス菓子の名店でも『ミートパイ』や『ミックスフルーツパイ』といった英語表記が見られました(゚-゚)\」
ミックスフルーツパイ
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
「ミックスフルーツパイは細長すぎてショーソンとはいえないようです」
ショーソン・オ・ポム
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
「そもそも、『Chaussons aux Pomme ショーソン・オー・ポンム』とは何なのでしょうか?」「簡単に言えば、リンゴのコンポートを包んだ木の葉模様のパイでございます」
ショーソン・オ・ポム
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
「ショソンという語を手近な辞書で引いてみると、『上靴、運動靴、スリッパ』などと出ています。昔は短靴、長靴などの内側に履く革靴のことを指していたといいます」
ショーソン・オ・ポム
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
「菓子の分野では、円形の折りパイ生地(パート・フィユテ Pâte feuilletée)に詰物を置いて二つ折りにし、焼く以前には少々ぶくぶく太った半月形をしたものを指すために、この言葉が使われてきたのでございます」
ミックスフルーツパイ
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
「ルコントのミックスフルーツパイのベースになってるフルーツはパイナップルでした」
ショーソン・オ・ポム
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
「これがアンドレ・ルコント氏のショーソン・オー・ポムでした」
ショーソン・オ・ポム
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント青山本店
「リンゴのペーストの味は苦めでした」

わんだふるはうす、パティシエ・シマへ行く

Chausson aux pommes
ショソン・オ・ポンム
パティシエ・シマ
2008年7月
Apple pie
アップルパイ
パティシエ・シマ
2009年9月
「次はパティシエ・シマのショソン・オ・ポンムとアップルパイを見比べてみましょう」
Chausson aux pommes
ショソン・オ・ポンム
パティシエ・シマ
「さすがに島田進シェフのショソン・オ・ポンム。完璧な造形美です(~o~)\」
ショソン・オ・ポンム
パティシエ・シマ
「木の葉模様のクープも見事です」
ショソン・オ・ポンム
パティシエ・シマ
「ショソン・オ・ポンムというより、一人用のガレット・デ・ロワ・オー・ポンムを折り畳んだ、という表現がピッタリですね」
ショソン・オ・ポンム
パティシエ・シマ
「パート・フィユテはアンリ4世(在位1589~1610)時代のヴィユヴィル男爵の料理長ソーピケの発明とした本がございます。さらに、この時代よりはるか以前にトスカナ公爵領の宮廷ではフィユタージュのフルロン、すなわちマカロニやほうれん草を詰めたフルロンが供されていたことが証明されております。しかし、省くことのできないバター成分は別として、生地を薄い層にして何枚も重ねて焼くという原則は、既にエジプトの新王国(紀元前1600~1200)において行われていたことは明らかにされているのでございます」
Apple pie
アップルパイ
パティシエ・シマ
「パティシエ・シマのアップルパイは型を使って焼かれていますね(^-^)\」「ローマ帝国の初期キリスト教時代にはバラエティー豊かなパイがあり、これらはパイ皿で焼かれたので『dish pies』と呼ばれ、製菓技術上ずば抜けて重要な2本の柱、パフペストリーとタルトのための基礎となって古代から今日まで生き長らえてきております」
Chausson aux pommes
ショソン・オ・ポンム
パティシエ・シマ
2008年7月
Apple pie
アップルパイ
パティシエ・シマ
2009年9月
「これに対して型を使わずに縁が立つように作られるショーソン・オー・ポンムのようなパイは、せいぜい600年程度の歴史しかございません。1350年頃のヴュルツブルグの文献の中で、著者はパイの作り方を5つ挙げていて、小麦粉とワインと卵で作った生地は腰が強く、薄く伸ばしたものでなくてはならないと、繰り返し強調しています。パフペストリー(puff pastry)という言葉も同じくらい古いのです。1525年ヴェニスの市議会が、当時の派手すぎる結婚の祝宴を抑えるために公布した法令の中には、いろんな料理やベーカリー製品の一つとして、はっきりパフペストリーという言葉を使っています」
Apple pie
アップルパイ
パティシエ・シマ
「島田進シェフのアップルパイは…コンヴェルサシオンを模したものです!(゚O゚)\」
Conversation
コンヴェルサシオン
パティシエ・シマ
2008年1月
「やはりそうでした。島田進シェフはアップルパイの上の部分だけコンヴェルサシオンの形を模してフランス風に仕上げていたのです」
コンヴェルサシオン
パティシエ・シマ
2008年1月
「コンヴェルサシオンという折りパイ生地の菓子の起源もはっきりしませんが、作り方から推察しますと、18世紀の終わり頃かと思われます」
ショソン・オ・ポンム
パティシエ・シマ
「パティシエ・シマのショソン・オ・ポンムはリンゴのペースト入り。アンドレ・ルコント氏と同じスタイルです」
アップルパイ
パティシエ・シマ
「なんと! パティシエ・シマのアップルパイのパイ生地は上と側面と土台にちょこっとだけ…ほんの少ししかありません!(゚O゚)\」「このアップルパイは、パイの土台と上部だけにパイ生地を使うダブル・クラスト(Double crust)と言われるタイプのパイでございます」
アップルパイ
パティシエ・シマ
「アメリカンパイはアメリカ大陸に移住した人達が家庭で作りやすいように工夫していったもので、特にアメリカ人とアップルパイは切り離せない関係にあります。ちなみに、アメリカにリンゴが初めて栽培されたのは、1635年ボストンに農場を持つウイリアム・ブラックストン牧師の手によってであると言われています」

わんだふるはうす、オーボンヴュータンへ行く

Chausson aux pommes
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
2010年2月
「次はオーボンヴュータンのショーソン・オー・ポムを見てみましょう」
Chausson aux pommes
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
2010年4月
「ショーソン・オー・ポム…それを簡単に言えば、リンゴのコンポートを包んだ木の葉模様のパイ」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「おお…生地の縁の焼き色が濃い!(゚O゚)\」
Chausson aux pommes
上 パティシエ・シマ
下 オーボンヴュータン
「島田進シェフと河田勝彦シェフの菓子のスタイルの違いが見えた!(゚O゚)\」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「ショソンという語を手近な辞書で引いてみると、『上靴、運動靴、スリッパ』などと出ている」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「昔は短靴、長靴などの内側に履く革靴のことを指していた」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「菓子の分野では、円形の折りパイ生地(パート・フィユテ Pâte feuilletée)に詰物を置いて二つ折りにし、焼く以前には少々ぶくぶく太った半月形をしたものを指すために、この言葉が使われてきた」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「おおっ!?…今までのリンゴのペーストとは色も質感も違う!(゚O゚)\」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「市販のリンゴのコンポートをフードプロセッサーにかけて滑らかなペースト状にしたものです!(゚O゚)\」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「オーボンヴュータンのCompote de pomme(コンポート・ド・ポンム=リンゴのコンポート)が姿を現しました」
ショソーン・オー・ポム
オーボンヴュータン
「市販のリンゴのコンポートをペースト状にしたものに砂糖、レモンの皮、裂いたバニラ棒を入れて銅鍋で煮て、仕上げにバターを加えて混ぜ溶かしたものです」

再びメゾン・ベニコへ

「ワンダフルハウス様、ショーソン・オー・ポンムが焼き上がりました」「おおっ!?(゚O゚)\」
「焼き色の濃さでオーボンヴュータンを上回った!(゚O゚)\」
「ここまで攻めたショーソンは初めて見ました!(゚O゚)\」
Chausson aux pommes 2010
ショーソン・オー・ポンム 2010年版
315円
2010年12月
Chausson aux pommes 2011
ショーソン・オー・ポンム 2011年版
420円
2011年10月
「二つを見比べると、同じパティシエールが焼いたショーソンとは信じられません。焼き色に関しては、1年で劇的な変化を遂げたと言えましょう」
「オーボンヴュータン開店の年、河田勝彦シェフの片腕を務めた永井春男シェフ(西麻布ル・スフレ)の姿が見え隠れしています!(゚O゚)\」
Chausson aux pommes
ショーソン・オー・ポム
(アップルパイ)
420円
「今年のショーソン・オー・ポンムは、どうしてこのような綺麗な焦げ色がついたのでしょうか?」
「裏側を見ると、焦げ茶色の液体が垂れた跡がありました。これはフィリップ・ビゴ氏がガレット・デ・ロワの表面に塗る手法を使ったのだと思います。そういえば、昨年のクリスマスイヴにお会いしたWenikoシェフの京都在住の伯母様は芦屋のビゴの店のパン教室の生徒さんでした。フィリップ・ビゴ氏の手法とは…鍋に水と砂糖を入れて煮て溶かし、真っ黒になるまで焦がした後、熱湯を加えてのばし、挽いたエスプレッソコーヒーを加えてドロリとさせて布で漉します。この自家製のコーヒーエッセンスを卵黄と混ぜてパイ生地の表面に塗ると、このような綺麗な焦げ色がつき、香りや風味も香ばしくなるのです」
「赤いジュレ状の液体が垂れています。これは長野県産の紅玉のコンポートが詰まっているという証なのです」
「昨年のショーソン・オー・ポンムは紅玉のコンポートだけでしたが…」
「おーっ! 今年のはクレーム・ダマンド入りです!(゚O゚)\」

「これはショーソン・オー・ポンムの域を超えています! ショーソン・オー・ポンムというより、ガレット・デ・ロワ・オー・ポンム・アンディヴィデュアル(一人用リンゴのガレット・デ・ロワ)を食べている気分です!(^Q^)」
「そして、このショーソンはパティシエのものではありません。パティシエール(女性菓子職人)&コンフィズーズ(女性砂糖菓子職人)にしか作れないものという気がします」
Confiture de pomme de Nagano “Kogyoku”
コンフィチュール・ド・ポンム・ド・ナガノ “コーギョク”
長野県産紅玉りんごのコンフィチュール
大 1050円
紅玉 紅玉とくるみとレーズン 紅玉とカルヴァドス
「おっ、紅玉のコンフィチュールも同時に作ったようですね(^-^)\」
Confiture de pomme de Nagano “Kogyoku”
コンフィチュール・ド・ポンム・ド・ナガノ “コーギョク”
長野県産紅玉りんごのコンフィチュール
大 1050円
「2011年度のメゾン・ベニコの紅玉のコンフィチュールは、10月に長野県産のが発売されました」「コンフィチュールやコンポートを煮る時間は、リンゴの品種により違います。早く煮崩れるようなら短めに、水気が多いようなら長めにするのです」
長野県産紅玉のコンフィチュール
「メゾン・フェルベールでもリンゴのコンフィチュールには紅玉を使っているのですか?(^O^)/」「アルザス産のイダレッドという素晴らしい酸味があるリンゴを使っております」
長野県産紅玉のコンフィチュール
「欧米では生食やジュースなどの加工の他に、焼きリンゴ、ジャム、パイなど、家庭料理の中によくリンゴが取り入れられております。調理用リンゴは、生食用よりもやや酸味が要求されます。さらに、加熱した場合の質および糖酸比が重要なのでございます。紅玉が調理用として優れているのは、これらの条件に合っているからで、煮た場合にアルザス産のイダレッドに近い糖酸比を持っているも紅玉なのです」
「人間の果実に対する嗜好は、初めは外観から始まり、味→肉質へと進み、最後に香りに辿り着くと言われております。リンゴでも味が満たされると、次に求めるのは果肉の質と香りになるのでございます。現在の国産の主力品種ふじの欠点の一つは、香りが少ないことです。ふじの香気成分は紅玉の25%程度しかないのです」
「リンゴの味を構成する要素は糖と酸の含量、果肉の質、果汁の多少、香りなどでございます。味を構成する最も大きな要素である糖と酸の多少から紅玉の味を検討してみましょう。糖度から見ると、数あるリンゴの品種の中で紅玉が最も高く15.8%ございます。酸度も紅玉は0.9%とかなり高い方です。リンゴの味では、糖や酸それぞれの量よりも、この両者のバランス(=糖酸比)が重要なのでございます。先ほども申しました通り、アルザス産イダレッドに近い糖酸比を持っているのが紅玉なのです」
「おーっ!ショーソンの中の紅玉のコンポートは茶色い!これはキャラメリゼされているのです!(゚O゚)\」

1ヵ月後のメゾン・ベニコ

Confiture de pomme d'Ibaraki “Kogyoku”
コンフィチュール・ド・ポンム・ディバラキ “コーギョク”
茨城県産紅玉りんごのコンフィチュール
小 630円
紅玉とルバーブとパッション
リンゴキャラメリゼ 紅玉と水戸のはちみつ
「11月に入ってから、紅玉の産地が茨城県久慈郡大子町産に切り替わっていて、紅玉のコンフィチュールのバリエーションも増えていました」
Confiture de pomme d'Ibaraki “Kogyoku” au caramel
コンフィチュール・ド・ポンム・ディバラキ “コーギョク” オ・カラメル 
茨城県産紅玉りんご キャラメル風味のコンフィチュール
(リンゴキャラメリゼのコンフィチュール)
小 630円
「大子(だいご)の紅玉を使ったリンゴキャラメリゼに再び会えた!昨シーズンも買ったのですが、とても美味でした(^Q^)\」「茨城県では大子町の周辺がリンゴの産地でございます。紅玉は鮮やかな赤色で、9月中は酸味の強いパリッとした食感ですが、10月中旬以降に蜜が入って酸味の中に甘みを強く感じるようになります」
リンゴキャラメリゼのコンフィチュール
小 630円
「何という美しさでしょう! 瓶の中でリンゴが琥珀色に輝いています!(~o~)\」
「これはタルト・タタン風味のコンフィチュールです!(~o~)\」
「リンゴが細い! これはスライサーを使って細切りにしたようです」
Confiture de pomme
コンフィチュール・ド・ポンム
りんごのコンフィチュール
「コンポートとコンフィチュールは、それぞれ糖度の違いで分けられますが、国によって糖度が何%か定義も違います。フランスではコンポートは糖度50%未満、コンフィチュールが糖度60%以上となっています。フェルベール式コンフィチュールは糖度65%。ちなみに日本の定義では糖度40%以上でジャムになります」
Compote de pomme
コンポート・ド・ポンム
りんごのコンポート
「この2つは同じように見えますが、違うものなのです。コンポートとコンフィチュールの違いは糖度。コンフィチュールとは砂糖で果物を保存することで、コンポートとは砂糖やシロップやアルコールで煮た甘煮のこと」
「ようやく本物がわかった!紅玉をシロップで煮たコンポートを絞った本物のショーソン・オー・ポンムが!そしてそれはフランス菓子界において、パティシエール&コンフィズーズの時代が到来したことを意味するのです」

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