おしゃれ大好き

クロワッサン1983年4月25日(131)号−1986年2月25日(199)号

「おしゃれ大好き」は、立川ユリさんとクロワッサンのスタイリスト春原(すのはら)久子さんが交代で連載した。毎月10日号(作品番号が偶数)が春原久子さんの担当で25日号(作品番号が奇数)がユリさんの担当。(ただし、例外として1985年3月25日(177)号と最終回の1986年2月25日(199)号は春原久子さんの担当。)
ユリさんはこの作品でスタイリスト、モデル、ライターの一人三役をこなした。(作品No.49から、ゲストをモデルに迎えたので、スタイリスト、ライターに専念。しかし、ユリさんも小さい写真で出てきます。)
この作品は、ユリさんの唯一の雑誌連載物としてかなり貴重である。ワンダフルハウスは、ユリさんの作品のみ全部持っています。
なお、春原久子さんの作品は、モデルはユリさんではなく、服もPH・IBは使用していなかったので保存していませんでした。

「おしゃれ大好き」
立川ユリ全作品リスト
全撮影・柴田博司
作品
番号
発行
月日
号数 タイトル 主役のアイテム(店名) モデル ユリさんのミニ・コメント
(準備中)
1983年
04・25 131 春風と仲良くなってみる。
アーミー・トレンチで思い切り女らしく。
ゴム引きの薄手のアーミー・トレンチ・コート(サンタモニカ) 立川ユリ この時期、わたしが愛用しているのは、アーミー・トレンチのレインコート。男っぽくてシンプルな服装だからこそ、女らしく着こなせるのが、なによりうれしいのです。お気に入りのスカーフやブレスレットなんか合わせれば、もう自分だけのファッションが出来上がり。
05・25 133 場所も人も選ばないチェックの綿シャツ。
時には、エレガントにも着てみたい。
黒と白のギンガムチェックの綿シャツ(タイム・イズ・オン) わたしのお気に入りは、白地に黒いギンガムチェックのシャツ。素材はコットン100%。着方はもうまったくの自由。スポーティーに着たい時は、ジーンズとかコットン・パンツに合わせればいいし、ジャケットなんかを上に羽織ってもいいですね。でも、たまには欲張って、エレガントにも着てみたいと思うのです。そんな時には、黒のタイトスカートをはいて、ブレスレットなどのアクセサリーも、好きなだけふんだんにつけて……。
06・25 135 アンチックのワンピースで粋を味わう。 ワンピース(PAR AVION) アンチックの良さをひと言でいえば、その”不思議さ”でしょうか。生地や丈はいうまでもなく、ポケットの形や縫い方、ギャザーの入れ方、切り替え線といった細部のひとつひとつに至るまでが、今流行の服の常識とはちょっと違った感覚や技術にあふれていて、それがなんとも不思議なムードを感じさせてくれるし、新鮮でもあるのです。
07・25 137 流行にとらわれず、どんな時でも似合うシャネルの黒いバッグ、大いに愛して、長ーく愛して…… バッグ(シャネル) シャネル・スーツ、これはわたしのあこがれ。バッグだけは、10年ほど前に大奮発して手に入れたものを、今に至るまで愛用しています。まったく飽きがこないし、流行にとらわれない良さがあると言えばいいのか、時代遅れなんて感じは少しもないですからね。そういう意味では、決して高くはないかも。
08・25 139 黒い帽子の誘惑―――どうしても、アンチックなドレスが着たくなって。 フェルトの帽子(SOUL TRIP)、ワンピース(PAR AVION) よく行くアンチックのお店で、このフェルトの帽子と出会ったとき、懐かしい気分に包まれてしまったのです。黒くて、小さくて、リボンがかわいくって、なかなか雰囲気があると思いませんか。この黒い帽子は、どうしても同じ黒のアンチックなドレスを着て、かぶってみたかったのです。
11 09・25 141 クラシックでプレーンな縄編みのセーター。
やさしい感触は、秋そのもの。
キャメルのセーターとスカートのアンサンブル(インゲボルグ) このキャメルのアンサンブルは、ずうっと昔からあるクラシックな形、クラシックな色。よけいなものは何もついていません。プレーンであることは、セーターの第1条件、それをシックに落ち着いて、それでいて軽やかさを失わないように着こなせた時は、もう最高の気分。
13 10・25 143 青いセーターのコーディネート。
優雅な時代のテニスレディを気取って。
セーター(バックドロップ) このブルーのプレーンなセーター、もともとテニス用でも何でもないけれど、白いプリーツスカートと合わせたら、素敵にクラシックなテニススタイルになりました。せめておしゃれの世界で、わたしもスポーツの楽しさを味わいたいと思うのです。
15 11・25 145 冬の白。好きな色ならどんな季節だっていい。 スーツ(メルローズ) 秋冬ものを白い色で。これ、ひょっとしたら大人のエレガンス、です。色の中で、白と黒ほど好きな色はありません。素材によって、これほど微妙にニュアンスが変化する色はないでしょう。それに、まったく正反対の色なのに、本当によくマッチするし。このふたつの色だけで、どんな感じでも出すことができる。エレガントにもなれるし、かわいらしくもなれるのです。
17 12・25 147 心も赤い、あったかコート。
大らかに着れる野暮ったさがうれしい。
シャツジャケット風のコート(サンタモニカ) ダサーイ大きさのコート。古着屋さんで見つけたアメリカ製です。大きめのシャツ襟なんぞ付いていて、これがまた、なんともやぼったい。デザイン過剰気味の、新しいものが街にあふれている折、こういう古くささがかえって新鮮。とても気に入っているのです。色もごらんの通りの朱っぽい赤。色合せも難しさ全然なし、どんな色でも似合ってしまいます。この冬、注目していい色ですね。
1984年
19 01・25 149 今日のわたし、本当に女らしい。かな? コート(インゲボルグ) 立川ユリ このダブル前のコートは、ボタンの位置や数こそ正真正銘、男物ですが、スリムなシルエットでかっちり仕立てられていて、着くずすには忍びないエレガントさです。クラシックな形を大切にして、ボタンをきちんととめて着たいのです。男のひとが着る雰囲気とはまったく違ったムードを出せる、こういう服を着る時の自分が、一番女らしいような気がします。
21 02・25 151 アンチックなブローチの眩い光は、
本物のガラスの輝き。
リボンの形のブローチ(萬家) ガラスの輝きにだって、捨てがたい美しさがあるのです。ダイヤモンドのような深い光とは、比べようもありませんが、キラキラだけだったら、負けません。ていうか、ダイヤモンドのイミテーションとしてではなく、本物のガラスとしての輝きがあるのですね。ちょっと負け惜しみっぽいのだけれど。形もアンチックでとても素敵。リボンをかたどったイルミネーションみたいにガラスが光っていて、店先で一目見ただけで、買いたくなってしまいました。本物のダイヤモンドは、まだまだわたしには高嶺の花、いつまであこがれ続けるのでしょうか。
23 03・25 153 寝間着で部屋着
長ーい時間を楽しむおしゃれ
目覚めのひと時、寝ぼけ眼で
なごみのティータイム
揃いのギンガムチェックのパジャマ&ガウン(ピンクハウス) このパジャマとガウンは、お揃いのギンガムチェック(赤)。昔から大好きで、今もとても気に入っている柄です。突然、お友達が来ても、平気、平気。今、起きてきましたっていう感じを、少しも与えないおしゃれっぽさなのです。
25 04・25 155 料理上手は、心楽しきエプロンから。 ダンガリーエプロン(STADIUM) このエプロンのかわいらしさ、まさに機能的な美しさ、でしょう。後ろから見てわかるとおり、スポッとかぶるだけでスタンバイOK、の簡単さがうれしいのです。使いにくさは、これっぽっちもありません。実はこのエプロン、大橋歩さんのデザインなのです。歩さんの手になるものって、いつもシンプルでとても素敵ですよ。
27 05・25 157 ペアルックは嫌い! だけど…… Tシャツ、デニムスカート(ピンクハウス) 渡辺典子
立川ユリ
ひとと同じものを着るのが嫌だ、っていうひと、たくさんいるみたいですね。わたしは……好きです。ただし条件つきで。恋人同士とか、夫婦とか、それから親子とかで、”わたしたち、とても仲がいいんです。”風のペアルックを見せられるのは、どうもいい気分じゃない。仲がいいのは結構だけど、ちょっと押しつけがましい感じ。でも、そうではなくて、気の合う友だちとお揃いを着るのは、大好きだしとても楽しいと思うのです。まったく同じスタイルだったり、色違いだったり……。そういう時にいちばん似合うのは、やっぱりセーターとか、Tシャツとかの気軽なスタイルですね。
29 06・25 159 普通感覚で、さっぱり履きたいね。
もうすぐ、夏。
インディアン・サンダル(NAMSB) 立川ユリ さて、日本の夏=湿気の夏にさわやかに履けそうな靴、インドのメッシュです。昔々に生まれて、その国々で長い間愛されているおしゃれなものって、わたしは大好き。決して目新しいデザインではないけれど、昔から使われているものは、機能的にもすぐれているし、デザインだってシンプルで素敵なものばかりだと思いませんか。この革の靴、熱い国のものだけに、ムシムシした時期にも、とても心地良く履いていられそうです。
31 07・25 161 名つ゛けて、トロピカル・スカート
子供のように、跳びはねたい
Tシャツ(BACK DROP)
スカート(SANTA MONICA)
好きなのは断然、白と黒。それから赤。お気に入りの服というと、ほとんどこの”三原色”で占められてしまうのです。夏は同じ赤でも、もうひとつ派手にできる、という感じはありますよね。Tシャツとギャザー・スカート――心の中は、もはや南の国。このプリントのスカートは、ハワイにいるような気持ちではけるのです。色はやっぱり、白と赤。
33 08・25 163 秋がいちばん好き。 セーター(インゲボルグ) 夏、もちろん大好き。でも、これからやってくる秋のほうが、ずっとずっと好きです。ニットを着た時に、やっと秋が来たんだなあって感じがして、うれしくなります。ようこそ秋、の一着、今年はこのモノクロのニットを選びました。モノクロ独特の落ち着いた色合いには、北欧の寒い国の、ちょっと民族的なあたたかさがあると思いませんか?ウールの感触もやさしげです。
35 09・25 165 そろそろ、ネルの肌ざわり 赤いネルのパジャマ(STADIUM) ”包まれる”という言葉がピッタリのような気がします。ネルの暖かさは、やさしくて、とっても素朴な感じ。色は断然、赤。黒や茶だと、シックではあってもかわいらしさに欠けるし、かといってパステルカラーじゃ、これから着るには子どもっぽすぎるし。このワンピースパジャマも、いい赤です。深みがあって、ぬくもりを感じさせてくれて。これから来る夜の長ーい季節、やさしくて暖かい、オカアサンのような肌ざわりにすっぽり包まれながら、あの頃読んだ小説でもひっぱり出してみましょうか。
37 10・25 167 スコットランドのタータンチェックは完璧です。 プリーツスカート(ピンクハウス) はやりすたりから一歩引いたところに身を置いて、それでいていつも活き活きしている柄――タータンチェックは、そういう意味で格好のベイシック・アイテムではないでしょうか。わたしは子どもの頃から憧れ続けています。それは今も変わりません。気の遠くなるような回数着ているでしょうね。たとえば、タータンチェックのスカートに、黒とかグレーのVネックのセーターと合わせるなんていうのも、とてもシックでいいですね。今日は、ボンバージャケット(¥160,000 インゲボルグ)。ぐっと活動的な気分です。
39 11・25 169 こ こ ろ は 「晴」 水玉模様の傘(インゲボルグ) 雨って大嫌い。ならば、せめてもの傘の楽しみ。なによりもまず、大きいこと。体をすっぽり隠してくれる、男物のサイズがいちばんです。白黒のシンプルな水玉模様もやさしげで、重ーい気分も、ちょっぴりずつ軽くなってくる。心の中だけでも、雨のち晴にしていられそう。
41 12・25 171 今夜は、 ちょっと、 酔いたい ベルベットのアンチック・ドレス 12月はパーティーのシーズン、ふだんとは違うおしゃれの楽しさを味わえるんじゃないでしょうか。一年のほとんどを、動きやすいという基準をいちばんに、洋服を選んでいるわけですが、この時期だけは、きれいなドレスで存分に着飾りたい。クラシックなアンチック・ドレスが特に気になってしまいます。黒のベルベットのこのワンピースには、サイレント映画の中に自分が入り込んだような、懐かしさがあふれています。グラスの音、ざわめき、ダンス・ミュージック――今夜は、ちょっとはめをはずして酔いたい気分。胸の中まであったまるワインに、そして、ラブ・ストーリーのヒロインを演じているような自分自身に。
1985年
43 01・25 173 スリッパ、 バタバタは、 もう、 やーめた。 ルームシューズ(シャビージェンティ―ル) 立川ユリ なぜかスリッパだけは、コレ、と思うものが見つけられずにいました。あのバタバタいう音も気になるので、どうしても室内履き型を探すのですが、ボテッとしていたり、足入れが悪かったり、私の足とは仲良くなれずじまいだったのです。代官山を歩いていて、お気に入りの家庭雑貨の店で、このルームシューズを見つけたとき、思わず飛び上がったのは、こういう経緯があったからです。まず、デザインが気に入りました。シンプルで、余計な飾りが一切ついてません。厚手のタオルの肌ざわりも上々。もちろん手洗いもできます。パステルトーンを中心に6色の色揃え。グレー、ピンク、ハッカ、黒、モカ茶、きなり、とその日のファッションに合わせて履きこなせるのもますますおしゃれ心をそそります。とうとう出逢った、最愛のルームシューズを履いて、今年の冬はますます出無精になってしまいそうです。
45 02・25 175 冬、来たりなば… スカーフ(エルメス) ある日、ふと思いついて、エルメスのスカーフを頭にかぶってみました。実をいうと、その日は風がとても強くて、髪をまとめるものが欲しかったのです。明るく鮮かな色が、普段着のカーキ色のコートにぱっと映えて、久々の大正解、でした。鏡の前でスカーフを押えながらくるりとひと回りしてみたら、なんだか、自分がオードリー・ヘップバーンになったみたいで、気分はすっかり、春、です。コーディネートのこつ、というほどではありませんが、ドレスアップしたときに使うより、ほんとの普段着に、何気なく合わせたほうが、イマ風で、おしゃれっぽくなるようです。鉛色の空の下にパッと花のような自分の頭が映えているかと思うと、冬もまた楽し、の気分です。
47 03・25 177 春原久子さんの作品
49 04・25 179 陽ざしの中で
ふと、過ぎ去った恋を想う。
そんなひととき、
誰にでもあるもので。
綿素材のスーツ(インゲボルグ) 小沢瑞穂
(翻訳家)
ずっと前から思ってました。私の大好きな洋服を、私が着るんじゃなくて、もっとたくさんの人に、着せてみたい、って。ようやく念願がかなって今回からしばらくの間、私はスタイリストに専念することになりました。今号と次々号は、小沢瑞穂さんにモデルをお願いします。きっと、金子さんの洋服が似合うに違いないって確信、ありました。予想通り、雰囲気といい、サイズといい、ぴったり。まずはスタイリストとしての私の初仕事、順調なすべり出し、でしょ。
51 05・25 181 黒の、 誘惑。 半袖セーター、ニットのプリーツスカート(インゲボルグ) 今日の服、小沢さんにぴったりでしょ。レースとリボンをあしらったデザインは、とてもロマンチックでかわいいのだけれど、しなやかなニットの素材、それに何よりも黒という色のおかげで、すっかり大人の女の服に仕上がっています。この服のそんな二面性、小沢さんはみごとにひき出してくれました。「ふだんは、Y’sみたいなモノセックスのファッションが多いんですけれど、今日は、とっても女っぽくなれました。洋服ひとつで気分も変るんですね」喜んでくださって、ありがとう、小沢さん。これで、私もほんの少しですが、他人(ひと)に洋服を着せることの楽しさ、わかってきたみたい。スタイリスト、ユリ、頑張ります。
53 06・25 183 太陽は、となり町を通過中。 ワンピース(インゲボルグ) 福山小夜
(イラストレーター)
海は、大好き。海に出かけるときいちばん大事なのが、着やすくてファッショナブルなリゾートウェア。今、いちばんのお気に入りがこのワンピース(黒、ノースリーブ)です。綿100%なので素肌にストンと着ると、潮風がスーッと通り抜けてゆく感じがなんともいえません。今日はゴールドのアクセサリーをじゃらじゃらつけて、少しドレスアップ。着ていただいた福山さんに、あんまり似合いすぎて、私、負けちゃいそう。どうしようかしら。
55 07・25 185 パラソルじゃなくて、日傘と呼びたいのです。 日傘、ブラウス(近所のデパートで買ったユリさんの私物)、スカート(インゲボルグ) 私は、どちらかといえば帽子よりは日傘のほうが好き。よけいな荷物がひとつ増える、という非実用性にエレガンスを感じてしまうのです。 福山さんに持っていただいた日傘(近所のデパートで買ったユリさんの私物、色は白)は昨年、買ってひと夏中重宝したものです。まだまだ黄ばんでもいないし、今年も活躍しそう。 中国製の麻のブラウスはデパートの物産展で5,000円くらいだったもの。インゲボルグのスカートも含めて全身、白でまとめた福山さんが、街角にたたずむと、まるでそこだけ、時間(とき)の流れがとまったようで。
どうぞ、お願いです。こんな傘は、パラソルと呼ばずに、日傘と呼んであげてくださいね。
57 08・25 187 風立ちぬ、の気分の日に。 肩リボンニット(インゲボルグ) 山内美郷
(エッセイスト)
風が立つ。いいことばですけれど、都会暮しの私たちにとっては、実感の薄いものです。むしろ、今、いちばん早く秋の訪れを感じさせてくれるのは、街角のショーウィンドウ。外はジージーと油蝉が鳴く真夏なのに、ニットやスーツの並んだ店の中は、すっかり秋。あんなに待ち望んだ夏。真っ黒に焼けた膚。なのに、秋の色、秋の服を目にしたとたん、秋風と白い膚が欲しくなる。女って、ほんとうに移り気で貪欲な生きものです。秋いちばんに着たい服、ナンバーワンはやはりニット。写真のニットはラムウール100%。上質で、軽くて、薄くて……何ともいえない膚ざわり。ショーウィンドウでは、目で感じた秋を、こんどは感触で感じられる。
59 09・25 189 暮れゆく頃の、儚さが 好きです。 スーツ(インゲボルグ) 歌にしても、小説にしても、秋をテーマにしたものって、みんなものがなしい。いっそのこと、思いきりおセンチになってしまうのも、秋にはふさわしいような気がします。おセンチフルコースとしては、秋の夕暮れ、ひとり、枯葉、などが欠かせない条件です。そして、洋服は……サラサラとしたワンピースもいいけれど、ここは一つ、シックなスーツで決めたい。上質のウールの肌ざわりに包まれて、たったひとりで夕陽の中を歩いていると、折良く、枯葉が舞ってきたりして。ハイヒールをコツコツ響かせて歩いてゆくと、もう、これはセンチメンタルの極致。
61 10・25 191 まっ赤が似合う50代、目指して。 赤セーター(ソニアリキエル) 初井言榮
(女優)
「赤を着ると、赤の気分になっちゃうの」 ピン、と伸びた背中、シルバーグレーのヘアに、ソニアの深い赤が、それはそれは映えて。日本の女性って、まだまだ熟年になると地味な色を着る人が多いのですが、こういうきれいな色は、本来、ヘアの色が淡いほうが似合うのですよね。初井さんの立ち姿をみていると、私も、20年経ったら、こんなふうに赤を着こなしたいな、と憧れと期待の入り混じった気持ちにさせられるのです。
63 11・25 193 冬を迎えに、ギャロップで。 千鳥格子のコート(インゲボルグ) 冬が近つ゛いてくるたびに頭を悩ませる楽しいコトのひとつが、コート選びです。高価なものだから、ワンシーズン一枚買うのがせいいっぱい。ということは必然的にオーソドックスな、飽きのこないデザインのものばかり。このコート(白×黒の大柄の千鳥格子、カラーレス、黒のパイピング、飾りボタン――シャネルスーツの上着をロング丈にした感じ)を見たとき、ハハァ、こんなのもイイナ、と思わず手を打ってしまいました。何よりも、形がいい。冬にはちょっと早いな、と思われる鉛色の季節、気軽にはおって出かけます。ボタンをとめて、裾からのぞくスカートとの色のコーディネートを楽しむこともできるし。こんなコートは、重々しく着こまずに、コサージュなんかつけて、あくまでも女らしく装いたいのです。
65 12・25 195 いつかみた、映画(シネマ)のように。 ローシルクスーツ(インゲボルグ) 村崎芙蓉子
(医師)
NEW!素顔の村崎先生は、ピンクハウスやインゲボルグの服がとってもよく似合って、おニャン子クラブの歌なんか、踊りながら歌っちゃう、可愛くて、ミーハーなお姉さんなのです。普段は赤い服がとてもお気に入り、という村崎先生に、あえて黒を着ていただきました。なんということでしょう。コワイお医者様でも、ミーハーお姉さんでもない、知的でエレガントな大人の女性に大変身。アンチックな雰囲気の窓ガラス(佐賀町カフェ)を透してみると、ちょっと前に見たフランス映画のワンシーンのようで。ついつい、私もそのシーンに仲間入りしたくなっちゃった。
1986年
67 01・25 197 黒に負けない、気品(エレガンス)。 セーター、ジャケット、プリーツスカート(ヨシエイナバ) 岡村和子
(翻訳家)
NEW!モノトーンに身を包むと、心が落ち着きます。気がついてみると服装のどこかに黒がない日は、殆どありません。そんなふうに、黒とはすっかり仲良しになれたものと、思っていました。そんな私の思いこみが甘かったな、と反省させられたのは、岡村さんの”黒”を見た瞬間です。生まれつき備わった格、というか品が、上質のニットの黒に、ちっともひけをとらず、かといって争わず、ほんとに自然に溶けこんでいるのです。私なんかが着ると下手なフォーマルルックになってしまいそうな全身黒のコーディネートも、逆に、ある種の華やかさが漂います。こんな風に年をとりたいな、つくつ゛く思います。
69
最終回
02・25 199 春原久子さんの作品

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