わんだふるはうす、パティシエ・シマに行く

エクレール・オ・モカ
エクレール・オ・キャラメル・サレ

フランスでエクレアほど親しまれているお菓子は他にありません。パティスリーはもちろん、パン屋で菓子も売るブーランジェ・パティスリーでも売っています。そして、エクレアは日本でも知らない人はいないほど馴染みのあるお菓子です。スーパーやコンビニでも買うことができます。しかし、フランス風のエクレアを日本で探しても、意外に見つけることができないのが現状です。パティシエ・シマの島田進シェフの作るエクレアはフランスのオーソドックスなスタイルで、曜日限定で4種類出ています。このコーナーでは金曜日限定のモカエクレアとキャラメルサレエクレアを紹介いたします。

金曜日

「金曜日14:03…もう売り切れてしまったかもしれませんよ…(^-^:)\」
「こんにちは! 金曜限定のエクレアはまだ残ってますか?(^O^)/」
Eclair au moca
エクレール・オ・モカ
Eclair au caramel sale
エクレール・オ・キャラメル・サレ
各315円
金曜日限定商品
「両方ありました!\(^○^)/」
金曜日しか味わえない、とびきり美味しい2つのエクレアの登場です。
Eclair au moca
エクレール・オ・モカ
315円
金曜日限定商品
「エクレアはあくまでもおやつです。しかし、たかがエクレアと軽んじてはいけません。菓子店の技術を測るバロメーターにもなる恐い菓子がエクレアなのです」と語る島田シェフ。パティシエ・シマでは最初の1〜2年は販売を経験させるそうですが、普通のフランスの菓子店だとエクレアを作るのは入社1〜2年目の若手の仕事なので、エクレアを見ると店全体の指導力や品質管理の度合、ひいては技術の高さを察することができるそうです。
シュー生地やカスタードクリーム作り、フォンダンかけのような基本的な作業をまず覚えさせ、クリエーションを発揮するのはその後で…というわけです。
シルパットに長さ11.5cmにシュー生地を絞り、刷毛で表面に溶き卵を塗り、フォークの背で縦に筋をつけながら全体の形を整え、オーブンに入れると、このように焼き上がります。
バケットを思わせるパリッとした歯応え…そして塩気…これこそがフランス風のシュー生地の特徴なのです。
皮の水分をできるだけ飛ばして浮きを抑えたいので、シュー生地は薄力粉と強力粉を同割にし、牛乳と水も半々になっています。フランスで一般的に用いられている配合とは違いますが、これは日本とフランスでは粉や牛乳の成分、水の硬さに違いがあるためです。
シュー生地の後ろに3つの穴を開け、ここからモカクリームを詰めます。
「コーヒーの香りが漂っております。これはコーヒー通のためのエクレアです!〜(^Q^)」
フォンダンとは、砂糖を煮詰めてペースト状に練り合わせたものです。フォンダンにグラニュー糖と水を煮詰めたカラメルを加え、豊かなコーヒーの味と香りが手軽に加えられる天然のカフェエキス香料「トラブリ」を加え混ぜると、コーヒーの色と香りが付いたフォンダンの出来上がり。
シュー生地の上面をフォンダンに浸し、パレットできれいにならして完成です。
「エクレアは上がけされるフォンダンの甘さがしっかり効いてこそ旨い」と語る島田シェフ。
エクレア用のクレーム・パティシエール(カスタードクリーム)は小麦粉の一部をコーンスターチに替えることによってキレを出し、エクレア用のパータ・シューに合ったサックリとした食感にするのです。コーヒーは、コーヒー豆を直接牛乳で煮出して、バニラ棒を鞘ごと加えて蒸し、香り高く仕上げてあります。カスタードクリームとコーヒーを混ぜ合わせたモカクリームに3:1の割合で生クリームを混ぜ合わせたものが、このクリームです。
「シュー生地の塩気が、フォンダンとモカクリームの豊かな甘さを引き出しています(^Q^)」
Eclair au caramel sale
エクレール・オ・キャラメル・サレ
315円
金曜日限定商品
「日本でエクレアはシュークリームより人気がないのが少々残念です」と語る島田シェフは、1972年から1973年にかけてパリ・ブローニュ地区にあった名門パティスリー「ブッタ」で働いていた時、エクレア作り担当者として、ひたすらエクレアを作り続けたことがあるそうです。
当時のブッタは設備が非常に近代的な菓子店で、労働環境も抜群に良く、映画「ボルサリーノ2」に出てくるピンクのケーキを作ったり、いろいろな勉強ができたそうです。近所の教会や撮影所を得意先に持ち、トレトゥール(仕出し)に力を入れていた店で、エクレアの注文は特に多かったとか。
フランス人にエクレアが親しまれている秘密は、時や場所を選ばず、つまんで口に運び、バクッと頬張れる、この形と大きさにあるようです。
「水と油脂を煮立てて粉を練り、卵を混ぜたシュー生地はお菓子の原点ともいえる古い生地の一つで、最初は揚げていたと考えられます。次第にオーブンで焼いても膨らむことがわかり、ラードなどの獣脂からバターや植物油などへ変化しました」と語る島田シェフ。
シュー生地はもともと16世紀にイタリアからフランスのアンリ2世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスのお抱え菓子職人プープラン(ポプラン)が発案したといわれています。プープランの作った菓子の中にキャベツ(chou)に似た形のものがあり、「シュー・ア・ラ・クレーム(クリームのようなキャベツ)」と呼ばれるようになったのです。
ルー状の重い生地を熱を加えると膨れる「ベーニェ・スフレ」という揚げ菓子とか、料理人マルクス・ルンポルトの本の中に出てくる、穴を空けた壷の中に入れ、沸騰した油の中に落として揚げて作る「クラップフェン」という菓子がシュー・ア・ラ・クレームの原型ともいわれています。
キャラメルサレのフォンダンの上には、キャラメルのクランチと塩がふってあります。
「おおっ!?この塩はオーラが漂っています!普通の塩ではなさそうですよ?(゚O゚)\」
「ワンダフルハウスさん、その塩はセル・ドゥ・ゲランドです」「セル・ドゥ・ゲランド!?(゚O゚)\」
「この人はパリュディエです」「パリュディエ!?(゚O゚)\」「塩職人です」
「こ…これは“海の果実”といわれる有名なゲランドの塩です!(゚O゚)\」
フランス・ブルターニュ半島ゲランドの塩田で9世紀以来、熟練の塩職人が古くからの伝統製法で作り続ける本物の海の塩「ゲランドの塩」の登場です。粘土の地層を活かした構造を持つ塩田に海水を引き込み、太陽と風の力だけでゆっくりと結晶化させた塩は、甘みさえも感じられるような深い味わい。古くはブルボン王朝時代から今日に至るまで、フランス料理の名シェフたちから高い評価を受け続けています。写真のは微粒(セル・ファン・ナチュール・エ・プログレ)タイプです。
「塩は白くてサラサラしているのが今までのイメージでしたが、ゲランドの塩はグレーっぽくて、湿っています!(゚O゚)\」
ゲランドの塩は、海水のミネラル分をたっぷり閉じ込めているので灰色をしています。しっとりと水分を含み、サラサラに保つ化合物は一切添加されていません。
「こ…これは凄い! 塩なのに甘みを感じます!(゚Q゚)\」
「ゲランドの塩は、ピリッとした辛さではなく、丸い甘みを帯びた魔法のような味わい(~Q~) 一つまみの塩が、仕上がりの味わいを変えてくれるのです」
濃厚でほろ苦いキャラメルカスタードクリームと、甘いフォンダンの組み合わせに、時折感じるゲランドの塩の魔法のような味わい…(~Q~)
「トッピングされたゲランドの塩の粒がキャラメル味のアクセントになっています(^Q^)」
Choux a la creme “Parisienne”
シュー・ア・ラ・クレーム “パリジェンヌ”
262円
パティシエ・シマ
Choux a la creme “Parisienne”
シュー・ア・ラ・クレーム “パリジェンヌ”
315円
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント
「ルコントやパティシエ・シマでシュークリームのことを『パリジェンヌ』と呼んでいるのは何故ですか?(゚-゚)\」
Choux a la creme “Parisienne”
シュー・ア・ラ・クレーム “パリジェンヌ”
左 秩父宮家 特注品
右 315円
パティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコント
1968年にルコントが六本木にオープンして以来、41年間変わらない「パリジェンヌ」。開店当初は「シュー・プラリネ」と名札に書いてショーケースに置かれていたのですが、お客さんが読みにくかったらしく、いつの間にか「シュー・パリジェンヌ」と呼ばれるようになって、数ヵ月後に商品名を変更したそうです。
中のクリームは、カスタードと生クリームを半分ずつ、完全に混ぜてはおらず、手作業でフワッと抱き合わせただけという、フランスのクラシックな配合で作られています。だから口当たりが軽く、フワッと溶けるよう…(^Q^) さらにシュー皮にはナッツを砕いてまぶしてあり香ばしい歯ごたえ。上からふった粉砂糖と少しの塩がアクセントになって、全体のバランスがとにかくいいのです。
Choux a la creme “Parisienne”
シュー・ア・ラ・クレーム “パリジェンヌ”
262円
パティシエ・シマ
「シュー・ア・ラ・クレーム・パリジェンヌ」。略して「シュー・パリジェンヌ」…「パリジェンヌのキャベツ クリーム風」の登場です。
「ずいぶんノッポなシュークリームですよ!(゚O゚)\」
日本で見慣れている円盤形のシュークリームよりも2割増の高さがあります。これはフランスのシューフリゼ(ちりめんキャベツ)の形。ヨーロッパのキャベツは日本のキャベツに比べて背が高いのです。フランス菓子ではこの姿であってこそシューアラクレームなのです。
島田シェフ「皮はスルッと帽子のようなのがフランス菓子としてのシュー・ア・ラ・クレームなので、皮が割れていてはダメなのです。これは昔からの作り方からの伝承で、オーブンがない時代に遡ります。下からの熱だけで焼き上げると、どうしても皮が爆発しがちです。それは失敗作なので商品にはできません。爆発しないようにスルリと帽子のように焼き上げるのが職人の腕前だったので、その教えが今も生きているわけです」
「こんがりした焼き色…かなり固めです!(゚O゚)\」
日本の洋菓子とフランス菓子のシュークリームの大きな差は、この皮にあります。日本のシュークリームの皮は押すとヒューンと引っ込むようなソフトなタイプが多いのですが、これはフランス風のバリバリ皮は日本人に馴染まないだろうと、昔の洋菓子職人たちが和菓子の饅頭に似せて柔らかくしたからなのです。シュー生地は本来は小麦粉、卵、水、バター、塩を材料としますが、バターの代わりにオイルやラードを使うと、コシが抜けて柔らかくなるのです。
粉砂糖とアーモンドの砕いたのがふってあります。アーモンドは香りと歯ごたえのアクセントになるのです。
島田シェフの話では、シュー・パリジェンヌには正式な食べ方があるそうです。食べる時にナイフとフォークは使いません。まず上の皮をバリッとちぎってはずします。
「バニラビーンズを使ったバニラの香り出しは職人のセンス次第。さすがに島田シェフ、香りが格別です(^Q^)」
カスタードクリーム3に対して、泡立てた生クリーム1を混ぜ合わせる配合。ぽってりとなめらかです。
考えてみれば、カスタードクリームをフランス語ではクレーム・パティシエール(菓子職人のクリーム)といいます。ひょっとすると、どんな先鋭的なお菓子よりも、どんなに技術を競うお菓子よりも、カスタードクリームにパティシエの腕前が見えるのかもしれません。
それでは、アンドレ・ルコント氏から島田進氏に伝えられたシュー・パリジェンヌの正しい食べ方を伝授しましょう。まず上の皮をバリッとちぎってはずし、スプーン代わりにしてカスタードクリームをすくって食べるのです。
「おおっ! 噛むと皮からパリッと音が弾け、クリームがヌーッと舌にのります(^Q^) カスタードが実に濃厚でコクがあります。バリバリ皮とドッシリやわらかなクリームのコントラストが素晴らしいのです」
「上部を食べ終えたら、クリームの入った下部を手で持ち上げ、パクパク食べてしまいます(^Q^)」
持つとズッシリと重くて、カスタードがギッシリ詰まっている証拠です。ナイフとフォークは使ってはいけません。林檎をナイフとフォークで食べろというのと同じことで、所詮ムリな話なのです。
Pates de fruits a l'orange
パット・ドゥ・フリュイ・ア・ロランジュ
「おっ? これはフランスのゼリーですか? 表面にはザラメ糖がたっぷりまぶしてあって、見た目はかなり甘そうですね…(゚-゚)\」「ワンダフルハウス様、そちらはパート・ド・フリュイでございます」
Pates de fruits
パート・ド・フリュイ
1個 157円
(フルーツの種類は季節によって変わります)
「おーっ! これは凄い!(゚O゚)\」
フルーツのピューレをペクチンで固めたフランスの伝統的なゼリー菓子の登場です。
左からフランボワーズ(ラズベリー)、ポムヴェール(青リンゴ)、スリーズ(チェリー)、マング(マンゴー)…
フルーツの色・風味をそのまま生かした濃厚なピューレ(果肉をすりつぶして、繊維をきったもの)に、グラニュー糖とペクチンを混ぜ合わせ、沸騰させて作ったものです。
「こんなに種類があるとは…(゚O゚)\」
キャシス(カシス)、ポワール(洋梨)、オランジュ(オレンジ)、ペーシュ(ピーチ)、フリュイ・ドゥ・ラ・パッション(パッションフルーツ)、フレーズ(ストロベリー)。
これはオレンジですね。
「表面にまぶしてある砂糖がジャリジャリする食感が快感(~Q~)…おおっ!日本のフルーツゼリーとは味が全然違います…甘味はそれほど強くなく、上質のコンフィチュールを凝縮したものを食べてる感じがするのです」
ワンダフルハウスは詰め合わせを買って帰りました。

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