わんだふるはうす、パティシエ・シマに行く

ナポレオン・パイ PART2

銀座「マキシム・ド・パリ」の初代製菓長オーロン氏が創作し、フランス皇帝の名前で呼んだ苺のミルフィーユ「ナポレオン・パイ」。バタークリーム全盛の時代に生クリームとクレーム・パティシエールの味わいが新鮮で、日本人の嗜好にぴったりマッチし、類似品が全国的に広まりました。2007年夏のある日、1970年代半ばに銀座マキシム・ド・パリの製菓長をつとめた島田進さんのお店「パティシエ・シマ」をワンダフルハウスが訪ね、マキシム風ミルフィーユ・オ・フレーズ「ナポレオン・パイ」を創っていただきました。

「こんにちは!(^O^)/ 予約していたナポレオン・パイを受け取りに来ました
「今日はもう1個アントルメを買っていきましょう(^‐^)\」
この辺にある日持ちするケーキから1つ… ショコラFをください!
買ったケーキの箱を開けてみましょう □o(^O^)o□
おおーっ!素晴らしい!□\(^○^)/□ 
「ショコラF Chocolat F」(3675円) Fはフランボワーズの頭文字。島田シェフが、チョコレートとフランボワーズの相性を極めるべく創案したケーキです。
現在のフランス菓子の主流は、フワフワ軽くて、薄味で甘さ控えめなものですが、これは反主流的な、どっしりと重く濃く、思いっきり甘く、チョコレートの存在感を前面に押し出したケーキです。
白い蜘蛛の巣のような模様は、ホワイトチョコレートの上がけをたらして、パレットで伸ばして描くそうです。
端っこを切り落として、断面を見てみましょう。 ビスキュイ・ショコラにフランボワーズのリキュール入りのシロップをたっぷり染み込ませて、苦みと香りの強いガナッシュを挟み、チョコレートのバタークリームを塗っています。それを3層重ねて、トップをチョコレートの上がけで覆った構造になっております。
おおっ!アルコールが効いていて凄くリッチなお味です!(^Q^) フランボワーズのオー・ド・ヴィー、クレーム・ド・フランボワーズ、フランボワーズのエクストラクト(濃縮エキス)、フランボワーズ・ジャムと、4種類ものフランボワーズを使用しているのです。
ショコラFは、日持ちがして、4〜5日は冷蔵庫で保存可能。あまりにも濃いので、1回に1cm〜2cmほどスライスして、少しずつ何日間かかけて食べ切ること。バタークリームを使っているので、30分くらい室温に置いて、柔らかく戻してから食べるのがポイント。島田シェフご本人も一番大好きなお菓子だそうです。
ルコント青山本店
(2007年9月)
たしか、ショコラFと同じようなケーキがルコントにもあったはず…「こんにちは!(^O^)/ ケーキのサンプルを見せてください!」
「チョコレートとフランボワーズのケーキは…」
ありました! 長方形のケーキ、左から2番目です。
「フェスティバル Festival」(578円) ビスキュイ・ショコラ+フランボワーズのリキュール入りのシロップ+ガナッシュ+チョコレートのバタークリーム=ショコラFと同じ構造です。
それでは、ルコントの客歴27年目のワンダフルハウスが、フェスティバルの正しい食べ方を伝授しましょう。まず、アンドレ・ルコントさんを偲びながら、ネーム入りのチョコレートを食べます。 枯葉のような極薄チョコレートを皿の上に撒き散らします。
食べやすいように倒します。
島田シェフもルコント在籍時はフェスティバルを作っていて、1988年9月にシェ・シーマをオープンさせる際に、フェスティバルに手を加えてショコラFを発売したのです。
ブラッスリー・ルコント
(2006年9月)
お向かいのブラッスリー・ルコントにもショコラFやフェスティバルと仲間のケーキがございます。
サッシャーでございます。
「サッシャー Sacher」(カット630円 アントルメ6300円) サッシャーはザッハー(Sacher)のフランス語読み。つまり、ザッハトルテのルコント版です。
おっ!綺麗です!\(^○^)/ 夜空に煌く星のようです☆ ケーキ全体に金箔スプレーを吹きつけてあるのです。
いや〜、これは美しい(^‐^)\
アーモンドのみじん切りで側面を飾り付けてあります。丸型のケーキなのに、上から見下ろすと八角形に見えますね(^‐^)\
ルコントのアントルメ(ホールケーキ)は5号サイズを8カットにするのが基本ですが、このサッシャーだけは一回り大きい6号サイズで値段も高め。大きくて、どっしりと重い味なので、10カットにしてお店に出しています。
ビスキュイ・ショコラが3層になっていて、その間からフランボワーズのリキュールが染み出しています。表面全体を覆っている3mm位のチョコレートのコーティングに御注目ください。これは、チョコレート、砂糖、水を112℃まで煮詰めてから大理石の上で少しずつテンパリングして作る「ショコラーデングラズール」。固まる寸前に艶良く、滑らかにケーキにかけなければならない高度なテクニックなのです。
ビスキュイ・ショコラの生地と生地の間にアプリコットジャムをはさむのがホテル・ザッハのオリジナルですが、ルコント版では、フランボワーズジャムとフランボワーズのリキュールをたっぷり染み込ませてあります。
ショコラF、フェスティバルと同じ味です!(^Q^)
お待たせしました。マキシム・ド・パリのワゴン・デセールに必ず登場するケーキ「ナポレオン・パイ」を紹介いたします。
こちらは、銀座ソニービル地下2階にありますマキシム・ド・パリのケーキ売り場でございます。地下鉄の連絡通路に面しているので、ご存知の方も多いと思います。ほぅ(^O^)\…「ナポレオン・パイ」は旧商品名で、現在は「ミルフィーユ」と呼ぶようです。 左の小さい方が「ミルフィーユSS」(2415円)。右の大きい方がレストランに出る「ミルフィーユS」(3990円)。両方とも苺が5列並んでいて、切る時には苺1列づつ5等分に切るのがマキシム風です。
「ナポレオン・パイ Napoleon Pie」(特注品) 島田シェフがかつて働いた銀座のフレンチ・レストラン「マキシム・ド・パリ」の初代製菓長だったオーロン氏が創作し、「フランス皇帝が好むほど美味しい(^Q^)」との意味合いから、ナポレオン・パイの名前で呼んだのが、この「ミルフィユ・オ・フレーズ Millefeuille aux Fraises」です。バタークリーム全盛の1960〜1970年代に、生クリームとクレーム・パティシエール(カスタード・クリーム)の味わいが新鮮で、日本人の嗜好にぴったりマッチし、類似品が全国的に広まりました。マキシムの代表的なケーキ「ミルフィーユ」(ナポレオン・パイは旧商品名)を、1970年代半ばに2年半に渡ってマキシム・ド・パリの製菓長をつとめられた島田シェフに特別に作っていただきました。
オレンジリキュール「コアントロー」の香り高いクレーム・パティシエールと、たっぷりの苺をサクサク感のある厚めのフィユタージュ(パイ生地)でサンド。表面には大粒の苺と生クリームでデコレーション。 ナポレオン皇帝が被っていた帽子に形が似ていますね(^O^)\ 苺の表面にはフランボワーズ・ジャムを塗ってあります。赤色を引き立たせると同時に、酸味が強いフランボワーズを使うことで、よりアクセントのはっきりした味を作り出すことができるのです。飾りの生クリームには砂糖を加えずに泡立ててあります。
苺の赤、ホイップ・クリームの白、パイとスライスアーモンドの茶色、ピスターシュの緑…色が映えて美しいケーキですね!(^‐^)\ 苺が7.5列あってマキシムの1.5倍の長さがあります。
側面には、オーブンで乾煎りしたスライスアーモンドをタップリと貼り付けてあります。
ミルフィユは、素人が切るにはとても難しいケーキです。おっ!(^O^)\ よく見ると島田シェフが切れ目を入れておいてくれました\(^O^)/ 苺が7.5並んでいて、5等分にしてあるので、1カットあたり苺1.5列がパティシエ・シマ風です。
オーソドックスなフランス菓子には、このように生クリームを絞ったタイプのものは少なく、アルザスからドイツ、スイスの影響が強く感じられるケーキだそうです。
島田シェフがマキシム・ド・パリで働いていた時に料理顧問をつとめていたジャン・ドラベーヌ氏(フランスの2つ星レストラン「ル・カメリア」のオーナーシェフで、フランス料理界のカリスマ的存在であった)に「マキシム・ド・パリには、味もさることながら、世界に2つと無い歴史的高級店らしい存在感を表現することが必要だ」と口を酸っぱくして言われたそうです。パティシエが、その気概を持って作るのと、ただの苺のミルフィユとして作るのとでは大違い。
ジョエル・ロブションやアラン・サンドランスといったヌーヴェル・キュイジーヌの担い手たちが師として仰いだムッシュ・ドラベーヌの言葉を思い出しながら、島田シェフが作ってくださったのでした。ありがとうございました。
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