わんだふるはうす、パティシエ・シマに行く

パリ・ニース
パリ・ブレスト
パリ・ヴェニス

「パリ・ニース」(Paris-Nice)とは、フランスで毎年春に行われている、パリから地中海沿岸のリゾート都市ニースをめざす自転車ロードレースで、別名「太陽のレース」 (The race to the sun) とも呼ばれています。一方、1950年にフランスで発行された古典製菓本「TRAITE DE PATISSERIE MODERNE」(トレテ・ドゥ・パティスリー・モデルヌ)を見ると、同名の菓子「Paris-Nice」が掲載されています。自転車ロードレースの方は1933年から毎年開催されいて、2009年3月中旬に第67回目のレースが開催されました。片やお菓子の「パリ・ニース」の方はというと…本国フランスでは、とっくの昔に絶滅し、日本では作られた記録がありません。2009年9月、フランス伝統菓子の本来の魅力や文化を伝えていくのを目標にした「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」会長 島田進さんのお店「パティシエ・シマ」をワンダフルハウスが訪ね、パリ・ニースを日本で初めて作っていただきました。

「おおっ!? これは!?」
「リングシューのアントルメが3個もありますよ?(゚O゚)\」
真ん中は見慣れたパリ・ブレストですね。
クレーム・ピスターシュとグリオットを挟んであるのはパリ・ベニス。 PNのロゴ入りのがパリ・ニースです!
Paris-Brest
パリ・ブレスト
3150円
リング状のシューの形は自転車の車輪がモチーフになっています。パリ=ブレスト間の有名な自転車レース「PARIS BREST PARIS Randonneur パリ・ブレスト・パリ・ランドヌール」(パリ〜ブレスト〜パリ 長距離サイクリング)にちなんで名付けられました。現在も4年に1度開催されているPBPは、ツール・ド・フランスよりも古い歴史のあるイベントです。フランス人は自転車レースがとても好きです。毎年7月に行われるフランス最大の自転車レース「Tour de France (ツール・ド・フランス)」は、20数日間にも及び、全行程を区間に分けて、タイムを競います。その存在は単なる自転車競技の枠にとどまらず、オリンピック、サッカーのワールドカップと共に世界3大スポーツイベントの1つに数えられています。 ツール・ド・フランスの第1回開催は1903年。その12年前の1891年、第1回パリ=ブレスト間の自転車レース「PARIS BREST PARIS Randonneur」が行われ、これを記念して作られたのが「パリ・ブレスト」なのです。1910年にパリ近郊のメゾン・ラフィットという町にあるパティスリー「Durand デュラン」(9, Avenue de Longueil, 78600 Maisons-Laffitte)の菓子職人ルイ・デュラン氏がPBPにちなんで、シュー生地を車輪型に焼いてアーモンドクリームをはさんだのが最初といわれています。メゾン・ラフィットはPBPの発案者が住んでいた町で、昔はコース途上のチェックポイントの一つでした。
Paris-Venise
パリ・ヴニーズ
プティガトー
420円
木曜日限定商品
アントルメ
特注品
「正式名称は『Paris-Venice パリ・ヴェニス』でもいいのですが、フランス語で『Paris-Venise パリ・ヴニーズ』と呼んだ方がカッコいいので、私はそう呼んでいます(^-^)\」
Paris-Venise
パリ・ヴニーズ
特注品
花の都パリから水の都ベニスへ…。「パリ・ベニス」という島田シェフの創作菓子は、19世紀にヨーロッパの王侯貴族を魅了したオリエントエクスプレスの車輪を模して作られました。1982年に運行を再開した「ベニス・シンプロン・オリエント急行」は、パリからアルプスの峠シンプロントンネルを通りイタリアのベニスに行くルート。“走る社交界”と呼ばれる豪華列車で、パリからベニスの1泊2日間の滞在を楽しむことができます。
Paris-Nice
パリ・ニース
特注品
「これが埋もれていたフランス古典菓子パリ・ニースですか…パリ・ブレストとどこが違うのでしょうか?(゚O゚)\」
Paris-Brest
パリ・ブレスト
プティガトー
420円
アントルメ
3150円
1950年にフランスで発行された古典製菓本「TRAITE DE PATISSERIE MODERNE」(トレテ・ドゥ・パティスリー・モデルヌ)を見ると、「Paris-Nice」は掲載されているのに、もっと古い菓子である「Paris-Brest」が掲載されていないのは不思議です。
Paris-Brest
パリ・ブレスト
3150円
パリ・ブレストはアーモンドを味わうお菓子。パティシエ・シマではアントルメに生のアーモンドを加工した4種類のアーモンドを使っているので探してみましょう。
「表面にローストしたアーモンドをスライスしたものを発見しました!(^O^)\」
「内側の下の見えない部分に粗く刻んだアーモンドを貼り付けてあります!(゚O゚)\」
「側面にカラメリゼしたホールのアーモンドを発見しました!(^O^)\」
「クレーム・パリ・ブレストの中に茶色い粒々が…これもアーモンドです!(゚O゚)\」
茶色い粒々は、自家製アーモンドペーストが含まれているから。これで全部で4種類のアーモンドを発見したわけです。
島田シェフ「パリ・ブレストはナッツを使ったものでフランスの代表的なお菓子です。表面にもクリームにもアーモンドを使います。フランスで一番多く使われるナッツはアーモンド。フランスはプロヴァンス地方で少量収穫されるようですが、イタリア・アボラのアーモンドが最高だと言われてます。他にスペイン・マジョラ、チュニジア・スパッツなどがあります。ですからフランスは、ほとんど輸入アーモンドといえます」
プラリネは、アーモンドとノワゼット(ヘーゼルナッツ)半々で使っているそうです。
右側の断面に「勾玉(まがたま)」と呼ばれるプティシューが姿を現わしました。繭形でクレーム・シャンティが詰まっています。1台のアントルメに6個入っていて支柱の役目を果たしているのです。
島田シェフ「ナッツを使うポイントは、使う分だけ購入すること。プードル(パウダー)はすぐ酸化してまずくなるので自分で粒を挽いて作る。新鮮なものを購入する。冷蔵庫で保存する、ということ。製作以前の問題にも気を使っています。ナッツの専門店が築地にありますので、うちではそこから取り寄せて、出来るだけ問屋に寝かせる時間を短くしています」
島田シェフ「クレーム・パリ・ブレストですが、昔のパリのオーソドックスなスタイルは、バタークリーム、プラリネペースト、メレンゲを合わせたもので、たぶん昔は冷蔵庫がなかったからでしょう。現在はメレンゲの代わりにクレーム・パティシエールと生クリームを加えて、口当たりを軽くしています。冷蔵・冷凍機器の普及も一因だと思います」「そういえば、’80年代のルコントのパリ・ブレストのクリームにはイタリアンメレンゲが入っていて、あれは美味でした(^Q^)\」
島田シェフ「クレーム・パリ・ブレストには、タカナシ『特選北海道バター』を使用しています。早い時期からフランスのエシレバターのイメージを伝えて、そういうタイプのバターを日本でも作っていただきたいとお願いしてきて形になったもの。それ以来、クレーム・オ・ブール(バタークリーム)を使ったお菓子には、ずっとこれを使い続けています」「メーカーにバターを特注して商品化させるとは凄い!(゚O゚)\」
「これがクレーム・パリ・ブレストです。指で突っついてみましょう…ツンツン(^-^)つ( …現在のパティスリーで使っているクリームの中では最高レベルの固さです!(゚O゚)つ( …これは当日作られたものですが、まるで3日位経ってるような固さなのです」
プティガトー アントルメ
「プティガトーのクレーム・パリ・ブレストは、生クリームの配合を増やして、時代に合わせた軽い味わいにしてありますね(^-^)\」 「アントルメのクレーム・パリ・ブレストは、プラリネの苦みが効いた固めのクリーム。昔からの客はこちらの方を好むはずです(^-^)\」
プティガトー アントルメ
「クリームがフワフワとコチコチ…同じ店の同じ名前の菓子でここまで違うのは珍しい!(゚O゚)\」
Paris-Venise
パリ・ヴニーズ
特注品
「クレームにピスターシュを使った、“変わりパリ・ブレスト”は最近流行っているから作りました」と語る島田シェフ。ピスターシュのホールのものはシシリー産を使用しているので、イタリアの地名を付けたようです。
「おおっ!? シュー生地の上にチェリーを飾ってあります! しかも葉っぱ付きです!(^O^)\」
「これは中にグリオットが入っているぞ、というサインなのです」
「ところで、シュー生地がグンニャリと曲がっていませんか?(゚-゚)\」
「先ほどのパリ・ブレストは修業中の若手が作ったもので、大変綺麗に出来ていました。パリ・ベニスとパリ・ニースは島田シェフが作ったのですが…」
「パリ・ベニスだけ歪んでいます! アート的な感覚をプラスして故意に歪めてきたのでしょうか!?(゚O゚)\」
パリ・ブレストとパリ・ニースは伝統菓子だから遊べないので、創作菓子であるパリ・ベニスで、島田シェフが新しい試みを見せてくれたのです。上のパータ・シューは真っ二つに切ってあり、つなぎ目に隙間を空けてチェリーを配置しています。
チェリーはチョコレートで接着してあります。
「これは不思議です! シュー生地がメロンパンみたいにデコボコになっています!(゚O゚)\」
Eclair aux fraises
エクレール・オー・フレーズ
472円
水曜日限定商品
この素材感は水曜限定の苺のエクレアと同じです。きっと、クレーム・ダマンドを塗って焼いたのに違いありません。
表面にアーモンドスライスはありません。粉糖がふられているだけです。
Paris Venise
パリ・ヴニーズ
420円
木曜日限定商品
木曜限定のプティガトーにはアーモンドスライスが飾ってあります。
「クレーム・ムスリーヌ・ア・ラ・ピスターシュの鮮やかな黄緑色とスリーズの赤、葉っぱのダークグリーンとグリオットのボルドーの色の対比が実に美しい!(^O^)\」
勾玉(まがたま)は入っていません。低いので支える必要がないのでしょう。
「Paris-Venice パリ・ヴェニス」とは、つまり「Paris-Brest a la pistache et aux griotte パリ・ブレスト・ア・ラ・ピスターシュ・エ・オー・グリオット」のことだったんですね。これは、伝統菓子であるパリ・ブレストのピスターシュバージョン。島田シェフのアレンジによる「パリ・ブレスト ア・マ・ファソン」というわけです。
パティスリーのショーケースやレストランのメニューで、たまに見かける「○○○ ア・マ・ファソン」。ア・マ・ファソンとは「自分流」。そして○○○ の部分には、パリ・ブレストのように古典的なお菓子や料理の名前が入ります。たとえば「パリ・ブレスト ア・マ・ファソン」といえば、「私流のパリ・ブレスト」ということ。普通「パリ・ブレスト」といえば、自転車の車輪状に焼いたシュー生地にプラリネクリームをサンドしてあります。しかし、この「パリ・ブレスト」に“ア・マ・ファソン”が付けば、名前を「パリ・ベニス」にしたっていいし、クリームをピスターシュ風味にしたっていいし、チェリーや葉っぱを載せてもいいし、パータ・シューを半分に切ったりグンニャリ曲げてもかまわない…ア・マ・ファソンとはそういうことです。ただの「パリ・ブレスト」といえば、あくまでもプラリネクリームをサンドしたもののみ。伝統を守るというのはそういうことで、アレンジとごちゃ混ぜにしてはいけません。シェフの完全なオリジナルとは違い、伝統菓子にシェフならではのアレンジの加わったものが“ア・マ・ファソン”なのです。
「ところで、ピスターシュを使ったケーキというのは、私が学生だった頃(’80年代前半)は見かけませんでした。1986年春に新宿丸井メンズ館が出来た時に、金子功さんのカールヘルムの麻のスーツを買って、その後で新宿伊勢丹のルコントに寄ったら、ショーケースの中に黄緑色のアントルメがあって、色彩の美しさに感動したのです(^-^)\」
Entremets a la pistaches
アントルメ・ア・ラ・ピスターシュ
1986年
ルコント
島田シェフ「それは私が作ったアントルメ・ア・ラ・ピスターシュです。あの頃のピスターシュは1kgで1万円位したでしょう。こんな高価では多量に使うわけにもいきませんでした。店では料理のテリーヌに色付けのために一番多く使い、ピスターシュと砂糖のペーストをグラス・バニーユに混ぜたり、菓子ではソースに使ったり、飾りに付けたりするぐらいでした。フランスでもピスターシュは高価なので、あまり多量には使いませんでした。アーモンドと割って使うこともありました。あの頃、ピスターシュだけで作った菓子は高価すぎてショーケースには並べられませんでした。ピスターシュを使うポイントは、色を重視して使うことにあります。ショーケース内にグリーンがあれば目をひきますからね」
島田シェフ「それは私が作ったアントルメ・ア・ラ・ピスターシュです。あの頃のピスターシュは1kgで1万円位したでしょう。こんな高価では多量に使うわけにもいきませんでした。店では料理のテリーヌに色付けのために一番多く使い、ピスターシュと砂糖のペーストをグラス・バニーユに混ぜたり、菓子ではソースに使ったり、飾りに付けたりするぐらいでした。フランスでもピスターシュは高価なので、あまり多量には使いませんでした。アーモンドと割って使うこともありました。あの頃、ピスターシュだけで作った菓子は高価すぎてショーケースには並べられませんでした。ピスターシュを使うポイントは、色を重視して使うことにあります。ショーケース内にグリーンがあれば目をひきますからね」
ピスターシュ・ペーストにバターを混ぜ合わせ、一度裏漉ししたクレーム・パティシエールを加えています。すごくやわやかくて、滑らかなクリームです。
プティガトー アントルメ
「ピスタチオの薫り高く、ねっとりと濃厚な風味が楽しめます!(^Q^)」
パリ・ブレストは日本では、島田シェフの師匠であるアンドレ・ルコント氏が1963年にホテルオークラで初めて作りました。その頃は一番左の30cmサイズで作っていて、吉田茂 元首相が度々注文していました。大磯の吉田茂邸でのパーティー用に注文が入った時、ルコントさんは配達用の車に入らないほど大きすぎるものを作ってしまい、オークラが大型車を用意したというエピソードが残っています。大きさは推定ですが、1メートル以上はあったようです。
左の写真の3個のパリ・ブレストは、島田シェフが再現した1970年当時のルコント製→ルコントのアントルメ→パティシエ・シマのプティガトー。ルコントのアントルメとパティシエ・シマのアントルメは直径15cm。パリ・ベニスとパリ・ニースは20cmあって結構大きいのです。
マキシム・ド・パリ
1975年
島田シェフは、マキシム・ド・パリ製菓長時代もパリ・ブレストを作っていました。この写真を見ると、パリ・ブレストはフランス料理の一部である、ということがわかりますね。
マキシム・ド・パリ
1975年
ルコント
1986年
マキシムのスペシャリテ「ナポレオンパイ」と並べるほど重要な位置付けだったようです。 ルコント総製菓長時代の作品。ルセットを見ると、この頃までイタリアンメレンゲが入っていて、1988年シェ・シーマ以降のルセットからはイタリアンメレンゲは消えています。
1946年生まれの島田進氏(パティシエ・シマ)をはじめに、1944年生まれの河田勝彦氏(オーボンヴュータン)、1947年生まれの藤生義治氏(パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ)、同じく1947年生まれの弓田亨氏(イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ)…オーバーシックスティー世代の大御所パティシエたちが、影響を受けた本として真っ先に名をあげるのが、1950年にフランスで発行された「TRAITE DE PATISSERIE MODERNE」(トレテ・ドゥ・パティスリー・モデルヌ)。古典製菓本であると同時に哲学書としての深い精神性も備えているのが、それ以降に出版された製菓本との大きな違いです。そして、この本に掲載されているのが、この「Paris-Nice」なのです。
Paris-Nice
パリ・ニース
特注品
「アンドレ・ルコント氏が日本にパリ・ブレストを伝えてから46年…遅ればせながら、パリ・ニースもやっと日本に伝わりました!\(^○^)/」
「1948年生まれの山本益博氏が1980年に出したパティスリー・ガイドブックの古典的傑作『パリのお菓子屋さん』に影響を受けたワンダフルハウスが、日本で初めて作られたパリ・ニースを解説いたします(^0_0^)」
「パリ・ニース」(Paris-Nice)とは、フランスで毎年春に行われている、パリから地中海沿岸のリゾート都市ニースをめざす自転車ロードレースで、別名「太陽のレース」 (The race to the sun) とも呼ばれています。1933年から毎年開催されいて、2009年3月中旬に第67回目のレースが開催されました。おそらく、パリ〜ニース間の沿道の菓子屋がパリ・ブレストを模倣してパリ・ニースなるお菓子を作り、1930〜40年代にはある程度流行して、1950年に発行された「TRAITE DE PATISSERIE MODERNE」に載ったのだと思います。その後、自転車ロードレースは継続し、菓子は廃れた、といったところではないでしょうか?
シュー生地はオーソドックスなタイプ。パリ・ブレストよりやわらかいクリームが入るので、皮もやわらかいのです。
アーモンドダイスは飾られていません。ここはパリ・ブレストとの大きな違いです。
PNのロゴはココアパウダー。
「プラリネの香ばしい香りがプーンと匂っております 〜(^Q^)」
パリ・ニース パリ・ブレスト
「パリ・ブレストと同じくプラリネが使われているようです」
「パリ・ニースのクリームは、クレーム・サントノーレにプラリネが混ざっているのです!(゚O゚)\」
Saint honore
サントノーレ
ルコント
アントルメ
5880円
カット
735円
「サントノーレといえばルコントにありましたね。おおっ、“ケーキの王様”と書いてあります!(^O^)\」
左の写真は2007年3月に撮影したものです。現在は値上がりしています。
Saint honore
サントノーレ
ルコント
アントルメ
5880円
カット
735円
サントノーレはパータ・フォンセの周囲に小さなシューを置き、中央にクレーム・サント・ノーレ(クレーム・シブースト)を絞ったお菓子。名前の由来は諸説あります。菓子職人・パン職人の守護聖人「聖オノレ Saint-Honore」に捧げたとの説、クリームを考案したシブースト氏がパリのサント・ノーレ通りに店を構えていたとの説が一般に知られています。
サン・トノレは、西暦660年頃アミアンの司教でした。この聖者の生活については、あまり文献がありませんが、伝説によると、ある日、ミサを行なっていた時に、“神の手(Main celeste)”からパンを授かった、とあります…サン・トノレがパン屋のパトロンとなったのは、この伝説に基づいているのです。
クレーム・サント・ノーレは、クレーム・パティシエール(カスタードクリーム)とメレンゲをあわせたクリームのことで、もともとはサントノーレの中央に絞るクリームとして作られました。ルコントのは、本来クレーム・サント・ノーレを絞るべき中央部分に苺をドーンと飾った豪華版です。
「これはクレーム・シャンティですね…実は最近ではシブーストクリームを使用したサントノーレは、ほとんど見かけなくなってしまったのです!(゚O゚)\」
「TRAITE DE PATISSERIE MODERNE」を見てみると…初めてサントノーレが作られた頃は、泡立てた生クリーム「Creme de lait fouettee クレーム・ド・レ・フーエッテ」(現在のクレーム・シャンティ)だけを使っていた、と記述されています。だが、今日(原書が発行された1950年当時)では、必要材料の入手難の結果、クレーム・キュイット(Creme cuite)を用いるようになった、と。簡単に言えば、このクレーム・キュイットこそ現在の古典的なクレーム・サントノーレなのです。研究の結果、何種類かの作り方が記載されていますが、パティスリーにおいては、まず一定量のクレーム・パティシエールをとって煮立たせ、これを泡立てた卵白に静かに注いで混合し、店売りの場合、菓子を長持ちさせるために、ゼラチンを入れることがある。その場合には、クレームに卵白を混ぜる前に、前もって冷水につけ、水を絞ったゼラチンを加える、とあります。
Chiboust
シブースト
ルコント
プティガトー
578円
アントルメ
特注品
そういえば、クレーム・サントノーレのことをクレーム・シブーストとも呼びますね。
1840年頃、パリの菓子職人シブースト氏が考案したアントルメが「クリーム・シブースト」と呼ばれ、当時の人々の評判になりました。
「上のクリーム色の部分を御覧ください…カスタードクリームにゼラチン、ムラング・イタリエンヌ(イタリアン・メレンゲ)を合わせたクリーム…これこそ『クレーム・シブースト』=『クレーム・サントノーレ』です!(゚O゚)\」
「パリ・ニースには勾玉が入っていました!(゚O゚)\」
PNのロゴと勾玉シューはTRAITE DE PATISSERIE MODERNEには載っていません。島田シェフのアレンジによって追加されたものです。
TRAITE DE PATISSERIE MODERNE
Paris-Nice
1 バターを塗ったテンパンに、パータシューをクーロンヌ状に絞る。
2 溶き卵を塗って焼く。
3 クーロンヌの中にプラリネ入りのサントノレのクレームを詰める。
4 上面にバニラで香りをつけた粉砂糖をふりかける。
プラリネはアーモンドとヘーゼルナッツ半々にキャラメル状になった香ばしい砂糖をからめたもので、それをローラーにかけた自家製ペーストが使われています。
「これがプラリネ入りのクレーム・サントノーレですか…初めて見るクリームです!(゚O゚)\」
「このクリームは、このお菓子だけのクリームなので、まだ名前がありません。『クレーム・パリ・ニース』と名付けましょう!(^O^)\」
よく見ると、勾玉の中にもクレーム・パリ・ニースが少量だけ詰まっています。
島田シェフのクレーム・サントノーレに使用するクレーム・パティシエールの作り方
1 牛乳、バニラを鍋に入れて沸かす。
2 卵黄に砂糖を入れてブランシール(白っぽくなるまでかき混ぜる)し、小麦粉、コーンスターチをさっくり混ぜる。
3 卵黄生地を撹拌しながら、熱い牛乳を注ぎ入れて混合し、再び火にかける。
4 木べらで混ぜながら、つやのあるなめらかな生地に煮上げる。
5 殺菌したバットに流し、ラップをして氷水ですぐに冷ます。
6 これを裏漉してクレーム・パティシエールの出来上がり。これを下の4で使います。
島田シェフのクレーム・キュイット・プール・サント・ノーレ(Creme cuite pour Saint-Honore)の作り方
1 卵白を泡立てながら、鍋に砂糖、水を入れて117℃(TRAITE DE PATISSERIE MODERNEではグロ・ブーレ=121℃)まで煮詰める。
2 ゼラチンをふやかす。
3 泡立てている卵白に熱いシロップを注ぎ、イタリアンメレンゲにする。
4 クレーム・パティシエールを少し温め、水気を切ったゼラチンを加える。
5 少しずつイタリアンメレンゲを混ぜ合わせる。
「クレーム・キュイット・プール・サント・ノーレに自家製プラリネペーストを混ぜ合わせたクリームがクレーム・パリ・ニースなのです!(゚O゚)\」
パリ・ニース パリ・ブレスト
プティガトー
「このクリーミーな素材感は凄い! 生クリームの多いプティガトー用のクレーム・パリ・ブレストよりなめらかなのです!(゚O゚)\」
パリ・ニース パリ・ブレスト
アントルメ
「プラリネのコクや苦味も勝っています。クレーム・パリ・ニースこそ最強のプラリネクリームです!(^Q^)」
フランスで絶滅したお菓子が日本で蘇えりました。皮もクリームもやわらかいパリ・ニースは日本人の味覚に合っているようです。

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