わんだふるはうす、パティシエ・シマに行く

パッション・フレーズ

さわやかな香りと高貴な甘さのパッションフルーツ。パッションフルーツを「情熱の果物」と考える人が多いようですが、「passion」には「情熱」の他に「(キリスト)受難」の意味があり、「受難の実」というのが正解です。パッションフルーツの花とキリスト受難の関係は、16世紀に南米に渡ったイエズス会士がトケイソウの花を見て、かつてアッシジの聖フランチェスコが夢に見たと伝える「十字架上の花」と信じ「受難の花(Passiflora)」と呼んだことに由来します。彼らは、この花を原住民が改宗を待ち望んだ印と信じ、誠意をもって布教につとめ、多数の入信者を獲得したとされています。一方、キリスト教圏外である東洋(日本)では、花の形は「時計」に見立てられ「トケイソウ」となりました。そのうち果実がつくものは「クダモノトケイソウ」になったわけです。2007年8月17日(金曜日)、日本におけるフランス菓子の情報発信塔であり、日仏の菓子情報に常に敏感で、日夜研究を欠かすことがないパティシエ・島田進さんのお店「パティシエ・シマ」をワンダフルハウスが訪ね、パッションフルーツと苺の創作アントルメ「パッション・フレーズ」を創っていただきました。

今日は金曜日です。果たして金曜限定のエクレアはあるでしょうか?「こんにちは!(^O^)/ 予約していたケーキを受け取りに来ました
「おおっ!(^O^)\」
ありました!\(^○^)/  今日はタルト・オ・フレーズのアントルメもあります。「エクレアと…これもください!」
こちらは、アントルメをカットしたタイプで、1年中ございます。 こちらは、冬〜春にかけて売ってる楕円形のプチガトータイプ。ご覧のように使っている苺が小さめです。
「それから、ブランマンジェ・ピスタチオも!」 注文したエクレアとブラマンジェがラトリエ・ド・シマに運ばれてきました。
「アイスコーヒー Cafe Glace」(525円)アイスコーヒーをブラックで飲みながらお菓子をいただきます。苦味とコクが強いので、ケーキの甘味を和らげてくれます。 上「エクレール・オ・モカ Eclair au Moca」(金曜日限定販売 315円)
下「エクレール・オ・キャラメル・サレ Eclair au Caramel Sale」(金曜日限定販売 315円)
「カフェグラス Cafe Glace」ことアイスコーヒーは、フランスではなかなかお目にかかることがありません。2004年にパリのオペラ座近くにスタバが開店して以来、徐々にアイスコーヒーも市民権を獲得しつつありますが、町のカフェではほとんどのお店に置いていません。 フランス人は大好きなエクレア。日本ではシュークリームより人気がないのが少々残念ですと語る島田シェフ。島田シェフは、パリ・ブローニュ地区にあった名門パティストリー「ブッタ」で働いていた時、エクレア作り担当者として、ひたすらエクレアを作り続けたことがあるそうです。ブッタは、近所の教会や撮影所を得意先に持ち、トレトゥール(仕出し)に力を入れていた店で、エクレアの注文は特に多かったとか。
美しいエクレアです!(^O^)\ このような美しいエクレアを作るには、ポイントが2つあるそうです。1つは、シュー生地の焼き方。8cm長さに絞り出し、9cm以内に膨らむように焼くこと。
もう1つは、フォンダンと呼ばれる上がけを艶良く仕上げ、凹凸のあるシュー生地の表面に滑らかに伸ばすこと。
キャラメルサレのフォンダンの上には、キャラメルのクランチと塩がふってありますね。サレ(塩)というだけあって、 トッピングされた塩の粒がキャラメル味のアクセントになっています。
フランスのエクレアには必ず、シロップで伸ばしたコーヒー味やチョコレート味のフォンダンが塗られています。日本のスーパーやコンビニで売っているチョコレートエクレアの大半はフォンダンではなくて「グラサージュ・ショコラ」という固まるチョコレートを使っています。これはフォンダンとはまったくの別物。フォンダンは砂糖を再結晶化させた糖液で、エクレアやケーキの上掛けに使うのですが、温度と湿度にとても敏感なのです。このデリケートなフォンダンの艶を失わないように、ピカッと仕上げるのが大変なのです。
甘いフォンダンと、塩が効いているシュー皮と、中の苦味のあるキャラメルやモカのクリームの組み合わせ。シュー皮もしっかりと焼かれていて、サクサクしています)^Q^( 中に入っているクリームの風味と、上掛けフォンダンの主張がしっかりとしている分、それらに負けないシュー皮を焼く必要があるのです。キャラメル・サレは、1粒の塩がキャラメルの甘さを更に引き立てています。
「ブランマンジェ・オ・ピスタチオ Blanc-Manger aux Pistachio」(420円)「ブランマンジェ(ブラマンジェ) blanc manger」のblancとは、フランス語で「白」、mangerは「食べる」。つまり「白い食べ物」という意味の冷菓。最近は砂糖、洋酒、アーモンドエッセンスなどで風味をつけた牛乳と生クリームをゼラチンで固めた簡易タイプのレシピが多いですけど、本来は砂糖を加えたコーンスターチを牛乳で溶き延ばしながら煮詰めたものを冷やし固めて作ります。古代アラビアで砂糖とアーモンド粉を材料に作られたのが始まりという説があります。7世紀頃にヨーロッパに伝わり、18世紀にフランスの料理人アントナン・カレーム(Antonin Careme)がほぼ現在のレシピを完成させたと言われています。
ピスタチオ pistachio (nuts)」は、古代トルコ、ペルシャなどの地中海沿岸地方の砂漠に自生していたものを食用に栽培するようになったもので、オレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれているほか、食物繊維やビタミンB1、カリウム、鉄、銅なども多く、味覚、風昧共に“ナッツの女王”と言われ、高級品として親しまれています。
上に乗っているのは、胡麻がかかったパイ、ホイップクリーム、チョコレートコーティングしたパフ。それでは、一口…ピスタチオの香りがしっかりしたブランマンジェです(^Q^)
中に特製チョコレートソースが! いよいよアントルメの登場です。まずは、タルト・オ・フレーズから…
「タルト・オ・フレーズ Tarte aux fraises」(3675円 値段は時季により変動します)ダイエット・ブームにより、カロリーの高い生クリームを使ったケーキを避ける方が増えてきました。そんな方にお勧めしたいのが、このようなフレッシュフルーツを使ったタルトです。
おっ! よく見ると、ミルティーユ(ブルーベリー)とピスタチオ、フランボワーズも乗ってますね(^O^)\
47個の苺、2個のフランボワーズ、2粒のミルティーユが使われております。
苺の上に塗ってあるジャムはフランボワーズジャム。苺には苺ジャムと連想しがちですが、酸味の強いフランボワーズジャムを使うことにより、よりアクセントのはっきりした味を作り出せるのです。
タルト台の縁には粉糖をふり、タルト台の上には水・グラニュー糖・キルシュで作ったシロップを塗ってあります。 カットしていただきましょう。
「タルト・オ・フレーズ」は、タルト台にカスタードとアーモンドクリームを合わせた「クレーム・フランジパンヌ」を流して焼き、キルシュのシロップを吸わせて苺を並べたものです。
タルトには、小粒の苺を使うそうです。大粒で見栄えが良くても味が薄いイチゴより、小粒で甘酸っぱい苺を使って、味をキリッと引き締めるのがポイントとのこと。
一番下はパートシュクレ。その上にカスタードクリームとアーモンドクリームを合わせた「クレーム・フランジパンヌ」。 タルト台の縁に粉糖をふり、水・グラニュー糖・キルシュで作ったシロップを塗り、苺を並べます。ポイントは仕上げにかけたジャム。フランボワーズのリキュールを効かせたフランボワーズジャムの酸味が苺をより苺らしく感じさせるのです。
の美味しさをストレートに味わえます!)^Q^( パティシエ・シマでは、3種類の大きさ(S・M・L)の苺を使い分けていて、酸味と甘味が凝縮されたSサイズを「タルト・オ・フレーズ」に使用しているそうです。 ちなみに、Mサイズはミルフィユの上に置いてある飾りに、Lサイズはカットしてミルフィユの中に入れるそうです。

続きましては、ハート型の可愛らしいケーキの登場です。島田進シェフの創作アントルメ「パッション・フレーズ」でございます。
「Passion Fraise(パッション・フレーズ)」(特注品)
側面には、紙のように薄いピンク色のストライプ柄のビスキュイが貼り付けてあって、とても綺麗です。
この見慣れないフルーツこそパッションフルーツです! 芳醇な香り、気品ある味わい、魅惑的な食感…一度口にしたら、とりこになってしまいます。半分に切ると、種を包んだゼリー状の果実と果汁が入っているので、それをスプーンですくって食べましょう。パッションフルーツの甘酸っぱい香りが広がります。なお種はそのまま飲み込んでも大丈夫です。
ルビー色に熟したパッションフルーツをカットすると、柑橘系のフレッシュな香りと共に、ゴールド色のさのう(半透明ゼリー状の果肉)から果汁がこぼれ落ちてきます。この果汁をスプーンですくって種ごと食べるとパッションフルーツの気品のある甘酸っぱさが味わえます。これが一番美味しい食べ方ですが、他にもジュースにしたり、お酒とあわせたり、ドレッシングにしたり、アイスクリームのソースにしたりとアイディア次第で様々な楽しみ方があります。
現在はどのお菓子屋さんでも使っているパッションフルーツ。日本で初めて本格的に使ったのは島田シェフらしいです。1980年代のある日、築地に入荷したニュージーランドのキウイの中に、パッションフルーツの箱が間違えて混じっていたことがあり、「なんだかわからない果物があるから見てくれないか」と連絡が入りました。島田シェフはフランスですでに見知っていたので、受け取ってすぐにピュレにして、シャーベットやケーキに使ったそうです。フランスでも比較的新しいフルーツで、最初に使ったのはフォションらしいです。
さて、ハート型のケーキは、どう切ればよいのでしょうか?…おおっ!(^O^)\…よく見ると切れ目がついていますね。 ハートブレイク!(T_T)/~~~
ハートの形のケーキは、ギザギザに切るのが王道のようです。
島田シェフが、あらかじめカットしておいてくださったのでした。
断面を見てみましょう。
まるで迷路です!
1人分だけカットしてみました。
やっと断面が見えました! 下からビスキュイ・ダマンド↑苺のムース↑ビスキュイ・ダマンド↑パッションフルーツのムース↑アプリコットジャムとパッションフルーツのピュレと黄色い食用色素を混ぜた上がけ。
それでは、いただきましょう。
パッションフルーツは、酸味と香りが強烈なので、フレーズ(苺)のように甘いフルーツとは相性が抜群なのです。
パッションフルーツは、まだ日本ではポピュラーな果物ではありません。しかし、柑橘系のフレッシュな香り、甘酸っぱいトロピカルな味わいは、数あるトロピカルフルーツの中で最も日本人の味覚に合うように感じました(^Q^)
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