わんだふるはうす、パティシエ・シマに行く

サロンボー
グラン

シュー生地にキルシュワッサーで風味をつけたカスタードクリームを詰めて、146℃まで煮詰めた飴を上面にかけたお菓子「SALAMBOS サロンボー(サランボ)」。洋梨形のシュー生地にラム(またはキルシュ)で風味をつけたカスタードクリームを詰めて、緑色のフォンダンをかけ、チョコレートスプレーをつけて、ドングリの形に見立てたお菓子「GLANDS グラン」。アンドレ・ルコント氏が1960年代に日本で初めて紹介しました。現在ではシュー生地のお菓子のバリエーションが少なくなり、これら2つのお菓子はルコントでも本国フランスでも、とっくの昔に作られなくなってしまいました。2009年8月、アンドレ・ルコント氏の一番弟子である島田進さんのお店「パティシエ・シマ」をワンダフルハウスが訪ね、サロンボーとグランを復刻していただきました。

いよいよ今日はルコントさんの伝説のお菓子が蘇えるのです。
「こんにちは!(^O^)/ 予約していたケーキを受け取りに来ました」
「マロンアルデーシュ?」「こちらは徹シェフの新作でございます」「これをください!」 「先月食べたサファリがありました。タルト・リュバーブは旬が終わると共に7月下旬で姿を消していました」
「夏のグラスデザートが全種類揃っています」
「この辺は新しいのが多いですね」「ソレイユ、モナコ、サントロペ、バカンス・デテは徹シェフの新作でございます」「バカンス・デテをください!」
パティシエ・シマで選んだケーキは、お隣のラトリエ・ドゥ・シマで食べることができます。
Marrons ardeche
マロン・アルデーシュ
262円
フランスにおける栗の大産地、南仏ラングドック地方アルデーシュ県の名を冠した栗のパウンドケーキの登場です。
アルデーシュ県産のマロンペーストを練り込んであります。
「これはマロングラッセのパウンドケーキ版です!(^Q^) 和菓子にも近いような味で日本茶との相性も良いです」
Vacances d'ete
ヴァカンス・デテ
420円
ヴァカンス・デテ(夏休み)という名のグラスデザートの登場です。

7月14日「Quatorze juillet キャトルズ・ジュイエ」のパリ祭の日から、フランスではバカンスシーズンがスタートを切っています。フランスでは、7〜8月に3〜4週間の夏休みを取るのが普通なのです。

グラスデザートを得意とするローラン・デュシェーヌ氏と、日本におけるグラスデザートブームの立役者ピエール・エルメ氏の薫陶を受けた島田徹シェフのグラスデザートを見せていただきましょう。
上の段にはココマカロンと自家製のパイナップル・コンポートが乗っています。
ココナッツのマカロン「ココマカロン」。マカロンは卵白と砂糖を泡立てて作るメレンゲにアーモンドの粉末を入れて焼くお菓子ですが、ココマカロンはココナッツの粉末も加えています。サクサク軽い歯触りと、ココナッツの濃厚な風味が特徴です。
パイナップル・コンポートの下には、ラム酒風味のクリーム…さらに食べ進むと、そぼろ状のクッキー「シュトロイゼル」を細かく砕いた層が顔を出しました。
「一番下にはココナッツのムース」

日本人は、このように上から一匙ずつ食べますが、フランス人はグラスの中全体をグチャグチャに混ぜ合わせて食べるそうです。

パティシエは、このように全部の層をいっぺんに食べた時の味を計算して、1つ1つの層の構成を考えているわけです。
1972年
1972年のノンノのケーキ特集「ケーキのお見合い写真デス」を御覧ください。
1972年
お見合い写真なのにケーキの名前が間違っています。これはサロンボーじゃなくてグランです。
グラン
ルコント
1972年
グラン
パティシエ・シマ
2009年
当時ルコントで修業していた島田進シェフが37年ぶりに作った本物の登場です。
シュー・パリジェンヌ、スウリー、スワン、エクレール・ショコラ、エクレール・モカ、パリ・ブレスト、サントノーレ、ルリジューズ、サロンボー…強豪がひしめくルコントのシュー菓子の中で一番先に姿を消したのがグランでした。ルコントの古くからのお客さんでも、このお菓子を覚えている人はほとんどいないでしょう。

「これはドングリの形のシュークリーム!?(゚O゚)\」

「フォンダンがかかっているからエクレールに似ています!」
左 グラン
右 エクレール・オ・ショコラ・ノワール
共に特注品
「どうやらこれはエクレールの仲間のようです」
Glands
グラン
特注品

「Glands」とは「どんぐり」のこと。ドングリの形のエクレアです。日本では六本木のパティスリー・フランセーズ・アンドレ・ルコントで1968年〜1970年代に作っていましたが、わずか数年で廃番になってしまいました。つまり、日本には普及しなかった日本人の知らないフランス菓子なのです。

フランスでは、高級なパティスリーで見かけることはなく、庶民的なブーランジュリーに残っているようです。フォンダンの色は白、黄色のようなエクレアとは全く違う色合いのものを見かけます。
フォンダンの色は島田シェフはパステルグリーンで復刻してきましたが、フランスの古典的なルセットでは、ルコントさんが作ったようなもう少し濃いグリーンが正式のものであると覚えておいてください。
丸みのある方にチョコレートスプレーをつけてあります。
このチョコレートスプレーは、もちろんドングリのヘタをイメージしているのです。
「この角度から見たら、このお菓子の存在意義がわかりました」
Souris
スウリー
420円
ルコント
Glands
グラン
特注品
パティシエ・シマ
「子供のためのエクレア『スウリー』に対応する商品として、『グラン』は大人のための“洋酒が効いたスウリー”として存在していたのです」

中にはラム(またはキルシュ)風味のクレーム・パティシエール(カスタードクリーム)が詰まっているはずです…おおっ?クリームが茶色っぽいですよ?

グラン スウリー
この茶色いクリームはプラリネのクレーム・パティシエールにブランデーをプラスしてあるそうです。島田シェフは現在自分が作りたいようにアレンジしてきたのです。ルコントさんが作ったオリジナルには、スウリーのクレーム・パティシエールにラム(またはキルシュ)をプラスしたクリームが詰まっていました。
「日本に普及しなかったフランスの古典菓子『グラン』。ブランデーが効いていてエクレアより美味です!(^Q^)」
1972年
それでは、サロンボーとはどのようなお菓子だったのでしょうか?
1978年
これは1978年当時のルコントのパータシューを使ったお菓子です。作ったのは当時の総製菓長 島田進シェフ。白鳥のシュークリーム「スワン」とネズミのエクレア「スワン」の間にサロンボーがありました。
サロンボー
ルコント
1978年
サロンボー
パティシエ・シマ
2008年
当時ルコントの総製菓長だった島田進シェフが30年ぶりに作った本物の登場です。
Salambos
サロンボー
特注品
楕円形のキャラメリゼしたシュークリーム…それがサロンボーです。
「salambos(salammbos)」の発音は「サロンボ」「サロンボー」「サランボ」「サランボー」どれでもOK。島田シェフは「サロンボ」と発音していました。1862年に発表されたフローベールのカルタゴ(チュニジア)を舞台にした小説から名付けられたお菓子です。この小説は1890年にオペラ化(エルネスト・レイエ作曲)されて、その頃パリのお菓子職人が作ったと言われています。
「楕円形のシュークリームの上の部分を飴がけして、その上にクルミを乗せています」
「クルミを乗せるのはアンドレ・ルコント流です。パティシエによってはピスターシュを乗せる人もいるし、飴だけの人もいます」
「形は小さめの楕円形。2口で食べられる大きさです」
「下の方が飴でベトベトしています。端っこをカットしてみましょう」
キルシュ風味のクレーム・パティシエール(カスタードクリーム)が詰まっています。
これが正統派のスタイルです。本来はグランのクリームもこれと同じクリームなのです。
飴をフォークで叩き割って食べてみましょう…黄金色の飴がかけられたパリッとしたシューは、微かな苦味が感じられ、クレーム・パティシエールには、しっかりとキルシュが効いています。
現在の軽い菓子群の中には見られなくなってしまった重く濃い味わいです(^Q^) そしてこれがルコントさんの菓子でした。
Compote de peche
桃のコンポート
(サーヴィス)
「おや?これは注文してないんですけど…(^-^:)\」「ワンダフルハウス様、こちらはチーフ(島田シェフ)からのプレゼントでございます」
「水の中に桃のコンポートが浮かんでいます!」
これは今が旬の日本の白桃です。
見るからに果汁たっぷりで甘そうですね。
ナイフで半分にカットしましょう…おっ、氷が隠れていました…氷水は果汁が含まれていて、とっても美味です(^Q^)
グラスの中で桃をカットして食べて、果汁たっぷりの水を飲むだけのシンプルなグラスデザートです。
ジュレ仕立ての「桃ゼリー」(420円)よりもフレッシュな味わいです(^Q^)
1979年7月にルコント青山本店で売っていたお菓子
(島田進シェフ作)
桃ゼリー
Compote de peche en gelee
420円
パティシエ・シマ
自家製の白桃のコンポートがたっぷり入ったゼリー。昔も今も変わらず作られています。正式には「桃のコンポート ジュレ添え」と言った方が良いかもしれません。

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