わんだふるはうす、パティシエ・シマに行く

タルト・オランジュ ELLE JAPON 1989

フランス菓子に詳しい人にとって、「今年のクリスマス・ケーキをどう選ぶか?」ということは、その人のスタイルを表現することになります。フランス人だったらブッシュ・ド・ノエル以外のものを選ぶのは勇気がいることです。幸い、私達日本人にはクリスマス・ケーキの選択に対する伝統の制約がありません。最高のクリスマス・ケーキとは…まず、人の眼を奪う華やかさがあること。ケーキが登場した時、「うわーっ!w(゚0゚)w」という歓声とか、声にならない溜め息(~o~)とかを期待したいから…。そしてもう1回、ケーキを口に入れた時に、賞賛のどよめきが起こらなければならないのはもちろんのことです。2007年10月のある日、ルコントやシェ・シーマ時代からの顧客をはじめ、遠方から訪れるフランス菓子ファンを惹き付けてやまない島田進さんのお店「パティシエ・シマ」をワンダフルハウスが訪ね、ELLE LAPON 1989年12月号クリスマス特集のオープニングを飾ったシェ・シーマのタルト・オランジュのスペシャル・アントルメを復刻していただきました。

今日は島田シェフに、ELLE JAPON 1989年12月号に掲載されたタルト・オランジュの創作アントルメを復刻してもらうのです。「こんにちは!(^O^)/ 予約していたケーキを受け取りに来ました
「小さなお菓子の1つ1つが、フランスの歴史を語りかけてくるようです…おおっ!(^O^)\」
今日はパリ・ブレストのアントルメがありました!\(^○^)/ 「これもください!」  こちらがパリ・ブレストのプチガトーになります。ほぅ…単なるミニサイズではなく、お洒落っぽくアレンジしていますね(^O^)\
こちらが、タルト・オランジュのプチガトーでございます。 「タルト・オランジュを3個ください!」
左の普通サイズがパリ・ブレスト。右の特大サイズがタルトオランジュのアントルメでございます。
それでは、左のパリ・ブレストから見てみましょう。
おおーっ! これは特大のドーナツ!?(゚O゚)\
「パリ・ブレスト Paris‐Brest」(3150円)シュー生地を使ったフランス菓子の傑作「パリブレスト」の登場です
パリ・ブレストは、しっかりとカリカリに焼き上げた固めのシュー生地を横2等分して、間にボリュームのあるプラリネクリームをはさんだお菓子です。島田シェフの師匠であるアンドレ・ルコント氏が、日本で最初に紹介しました。現在では、生クリーム+苺など、店によって様々なヴァリエーションが存在しますが、パティシエ・シマのようなプラリネクリームを挟んだタイプが本格的なものなのです。パリ・ブレストは、2007年にフランス料理アカデミー日本支部が主催した第2回アンドレ・ルコント杯コンクールの課題にもなりました。
ものすごい量のプラリネクリームがサンドされてます!(゚O゚)\
パータ・シューの上にはアーモンドスライスを飾り、粉糖をふってあります。 プラリネクリームの側面には、ローストしたアーモンドホール。
リング状のシューの形は自転車の車輪がモチーフ。パリ=ブレスト間の有名な自転車レースにちなんで名付けられました。フランス人は自転車レースがとても好きです。毎年7月に行われるフランス最大の自転車レース「Tour de France (ツール・ド・フランス)」は、20数日間にも及び、全行程を区間に分けて、タイムを競います。その存在は単なる自転車競技の枠にとどまらず、オリンピック、サッカーのワールドカップと共に世界3大スポーツイベントの1つに数えられています。 ツール・ド・フランスの第1回開催は1903年。その12年前の1891年、第1回パリ=ブレスト間の自転車レースが行われ、これを記念して作られたのが「パリ・ブレスト」なのです。沿道のメゾン「ラフィット」の職人、ルイ・デュランの作とされ、自転車の車輪を連想して、大きなリング型のシュー生地にプラリネクリーム、表面にはスライスアーモンドという形で出来上がりました。ところで、ツール・ド・フランスにはもう一つの意味があります。直訳すれば「フランス1周」で、昔の職人の全国武者修業の旅を指していました。職人達はある程度の基礎を習得すると、親方の元を離れ、各地で修行します。パティシエも例外ではないのです。
 
8等分にカットして、1個いただきましょう。
プラリネクリームの中に何か白っぽいものが入っていますね? プチ・シューです!
大きなアントルメ・サイズは、クリームの量が多いので、プチ・シューを支えにはさむそうです。プチ・シューの中には生クリームを絞ってあります。
大きいリングの中に生クリームを絞った小さいシューを6個はさんで立体的にしています。
内側 外側
茶色いプラリネクリームは、プラリネペーストとカスタードクリームと生クリームとバターで作った濃厚な味わい。プラリネとは、ローストしたアーモンドにカラメル状になるまで煮詰めた砂糖をからめたものです。アーモンドの香ばしさとカラメルの風味が楽しめます。
プラリネクリームの中からプチ・シューを発掘してみましょう。
細長い楕円形のプチ・シューを発掘しました。プラリネクリームは苦味が強く、甘いものが苦手な方にもお勧めします。
たいへんお待たせしました。それでは箱を開けてみましょう(^O^)o□ ん?(^‐^)\…うわーっ!w(゚O゚)w ハート型です!
♪雨は夜更け過ぎに〜 雪へと変わるだろう〜 Silent night〜 Holy night〜♪/(^O^) おっ!この曲は? 山下達郎の「クリスマス・イブ」です! 国鉄から分割民営化して1987年に発足したJR東海は、基幹路線である東海道新幹線をテーマとしたイメージCM「エクスプレス・シリーズ」を展開していました。1988年に放映されたクリスマス編では、当時15歳の深津絵里が主演を果たし、遠距離恋愛のカップルが新幹線でクリスマスに再会を果たすストーリーで、当時の話題を集めました。翌年の「X'mas EXPRESS '89 ジングルベルを鳴らすのは、帰ってくるあなたです」編では、当時17歳の牧瀬里穂が、クリスマスイブに故郷に帰ってくる彼を駅の改札口で待つシーンを好演。1992年まで続いた「クリスマス・エクスプレス」シリーズの中で最も人気の高い作品となりました。このCMが放映されている頃、1冊の雑誌が発売されました。ELLE JAPON 1989年12月号です。クリスマス特集の巻頭を飾ったのは、シェ・シーマのタルト・オランジュのクリスマス・アントルメ・ヴァージョン。今回、同じケーキを18年ぶりに島田シェフ自身に復刻していただきました。
「タルト・オランジュ Tarte a l'orange ELLE JAPON 1989」(特注品)う…美しい…(~o~) 太陽が燦々と輝いているようなオレンジ・タルト。しかもハート型です。
おっ! 土台はパート・シュクレ(ビスケット生地)ではなく、フィユタージュ(パイ生地)でできています。
これが「フィユタージュ feuilletage」です。折り込みパイ生地の特徴であるサクサクした感じを出すため、薄力粉と強力粉を半々で使っています。規格外の形のホールケーキなので、金台紙も手作りです。
一体、何個のオレンジが使われているのか想像がつきません。
赤いのは、オレンジの皮のシロップ煮で、グレナデン・シロップで色づけしたものです。
クリスマスの日の歓喜の気持を色と形で表現したオートクチュール的な祝い菓子です。日本の洋菓子界の草分け的存在である島田進さんが、ついにその神髄を見せてくれました
左がオートクチュール、右がプレタポルテ。 ELLE JAPON 1989年12月号の掲載ページと比較してみましょう。ハートの下の部分にご注目。’89年版はハートの下の部分がストレートですが、2007年版はカーブを描いています。他に日高良実シェフ(当時リストランテ・ヤマザキ、現アクアパッツァ)のチョコレート・ケーキとルコントのブッシュ・ド・ノエルの3点のクリスマス・アントルメが掲載されました。
ハートのタルト・オランジュがカットされました。
キラキラ光って綺麗です!☆ミ
まだ誰もが食べたことがないようなクリスマスケーキをワンダフルハウスがいただきます(^Q^)
オレンジの櫛切りはグランマニエで香りづけ、一晩マリネしたもの。クレーム・パティシエール(カスタード・クリーム)もグランマニエで香りづけしてあります。
フォークを入れると、サクサクという香ばしい音とともに、たっぷりと含まれた果汁が口の中に広がっていきます(^Q^)
特別な日のデザートは、お気に入りの店でオーダーしたいもの。派手なデコレーションより、味にこだわって選ぶのがお洒落なパーティーの約束事です。島田シェフ、ありがとうございました。
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