タンバルは「太鼓」という意味のペルシャ語から来た言葉。その名の通り、太鼓型に作ったお菓子がタンバルですが、これにエリゼがつくとパリの元三ツ星レストラン「ラセール」の名物デザートになります。「クロッキニョル」「パータ・チューリップ」とも呼ばれる、薄焼きクッキー生地のタンバルの中にバニラアイスクリームと桃を入れ、飴のネットをかぶせるのがラセールのオリジナルです。最近ではあまり見かけなくなってしまいましたが、1970年代半ば〜80年代初頭にかけては、日本のフランス料理店でも盛んに作られていました。2009年8月、マキシム・ド・パリの元製菓長であり、日本におけるフランス料理界の大御所 島田進さんのお店「パティシエ・シマ」をワンダフルハウスが訪ね、タンバル・エリゼを1970年代風に2種類作っていただきました。
いよいよ今日は1970年代のラセールやマキシム・ド・パリのデセールが蘇えるのです。 |
「こんにちは!(^O^)/」「これはこれはワンダフルハウス様…タンバル・エリーゼはアトリエの方で御用意しております」 |
「今日は夏のグラスデザートが全種類揃っています」 |
「この辺は新しいのが多いですね」「ソレイユ、モナコ、サントロペ、バカンス・デテは徹シェフの新作でございます」「ソレイユとサントロペをください!」 |
パティシエ・シマで選んだお菓子は、お隣のラトリエ・ド・シマで食べることができます。 |
Soleil ソレイユ 420円 |
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「太陽」という名のグラスデザートの登場です。 |
それぞれの素材が重なって、横から見るとオレンジと白のコントラストが美しいですね。 |
一番上にある透明なキューブは白ワインのジュレです。 | マンゴーのキューブが姿を現しました。 |
マンゴーの実がフレッシュな味わいを出しています。 | そしてヨーグルトゼリー… |
グラスの底にはマンゴーとパッションフルーツのジュレです。最後には再びマンゴーの風味が戻ってきて、口全体に心地よい余韻を残します(^Q^) |
St.Tropez サントロペ 420円 |
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世界中のVIPが豪華ヨットで集う避暑地 南仏コートダジュールのおしゃれな町「サン・トロペ」をイメージしたグラスデザートの登場です。 |
ヨットやクルーザーがひしめき、品の良いジャケットに身を包んだ紳士や淑女が行き交う小粋な街「サン・トロペ」。 南仏独特のやさしい光に包まれて、素敵な町並をよりいっそう引き立てています。ボナールなやモーパッサンらも愛した美しいこの港町には、開放的で小粋なカフェや南フランス独特のかわいらしい色でペイントされた家々が立ち並んでいます。 |
キューブ状の白ワインのジュレがてんこ盛りです。 |
ピンクグレープフルーツベースのカクテルをジュレ仕立てにしてあります。 |
LASSERRE ラセール 1979年 |
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天井がスルスルと音も無く開き、ルイ15世様式のサロンに陽射しが燦燦と降り注いできました…開閉天井のあるレストラン「LASSERRE」の登場です。 | |
ミシュラン元3つ星(2009年現在は2つ星)レストラン「ラセール」の主人 ルネ・ラセール氏(1913〜2006)は、1926年、バイヨンヌからパリに上り、レストランの一流どころを次々と歩き、この苛酷な仕事における洗練というものを残らず知りました。1945年、庭園があった現在地にこの魅力ある建物を建てました。ここはパリの中心部でも特権的な位置にあります。何しろパリの中心部、芸術とオートクチュール・グランメゾンの地区にあり、シャンゼリゼとは目と鼻の先、向かいは1900年パリ万博のメイン会場として建設されたグラン・パレなのですから。 |
ルネ・ラセール氏 1979年 |
Timbale Elysee タンバル・エリゼ 1979年 |
名の通ったレストランの経営者が全てそうであるように、ルネ・ラセール氏もいくつかのスペシャリテを持っていました。そしてそのうちデセールのタンバル・エリゼについては、もうこの上にはラ・ピラミッドのガトー・マルジョレーヌぐらいしかあるまいと言えるほど完成の域に達しており、20世紀最大のレストランデセールの1つです。現在でもラセールのスペシャリテとして君臨していますが、1979年当時のオリジナルルセットを見ると、タンバルの中に入れる果物は夏は桃。それ以外の季節は苺とフランボワーズでした。当時はすぐりのゼリーとバニラアイスも一緒に入れていました。 |
「ワンダフルハウス様、タンバル・エリゼでございます」 |
「こ…これは凄い! しかも2つありますよ?(゚O゚)\」 |
Timbale elysee aux fruits rouges 赤い果実のタンバル・エリゼ 特注品 |
Timbale elysee de peche blanche 白桃のタンバル・エリゼ 特注品 |
「こちらは春・秋・冬用です」 | 「桃が旬の時期だけ作られる夏用です」 |
Timbale elysee aux fruits rouges 赤い果実のタンバル・エリゼ 特注品 |
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パリの超一流レストラン ラセールに行かれたら、是非オーダーしてほしいデザートの登場です。ラセールの苺のタンバルエリゼは、こちらまたはこちらで御覧ください。 |
今にも折れてしまいそうな細い飴の糸のドーム。そしてバターの香りが豊かに漂うタンバルの器の中には、赤い果実が盛り込まれています。 |
「赤い果実とはフランボワーズとフレーズ。ミルティーユも入っています」 |
「この技術の粋をかたむけた豪華さは、まさにラセールの名に恥じないものといえましょう」 |
タンバル・エリーゼはデザートのシャーベット(またはアイスクリーム)。季節によって洋梨、カシス、ぶどう、パパイヤなどの種類があり、タンバル型をしたクロッキニョル(クッキーの一種)の中に詰められ、さらに上から飴の帽子をかぶせた可愛らしいデザートです。日本のフランス料理店で流行してから30年以上の年月が流れています。 |
シュークル・フィレ(飴の糸)のドームは、「ルーシュ」と呼ばれる調理用の深めの玉杓子を使って作ります。 |
ルーシュ(玉杓子)の丸い背の方に薄くサラダオイルを塗ります。 |
グラニュー糖、水飴、水を「グラン・カッセ」(145℃)の状態になるまで煮立てます。 |
少し冷ました飴をスプーン(1970年代のラセールでは泡立器、島田シェフは鉄の串)ですくって細く網目状に流すのですが、飴が固過ぎると糸が太くなってしまい、やわらか過ぎるとくるくると渦巻状に垂れてしまって、きれいな糸にはなりません。 |
冷えて固まったらルーシュ(玉杓子)から外します。 |
今にも折れてしまいそうな細い飴の糸のドーム。これはテイクアウトには向きません。レストランのデザートなのです。 |
Timbale aux fruits rouges 赤い果実のタンバル 特注品 |
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飴の帽子を脱いでも立派にデザートとして通用します。 |
1979年7月にルコント青山本店で売っていたお菓子 (島田進シェフ作) |
Timbale aux fruits rouges 赤い果実のタンバル 特注品 パティシエ・シマ |
現在はルコントもパティシエ・シマもタンバルはありませんが、30年前、島田シェフはルコント総製菓長時代にタンバルを作っていました。ゼリーやアイスクリーム、苺…これらのタンバルはサロンで食べるための商品で、テイクアウトは不可でした。この頃は本当にタンバルが流行っていたのです。 |
これが「クロッキニョル」とか「パータ・チューリップ」と呼ばれるタンバルです。薄焼きのラングドシャクッキー生地なので水分に弱く、テイクアウトには不向きです。 |
「パータ・チューリップ?…なるほど!確かにチューリップの形をしています!(^O^)\」 |
パータ・チューリップは、バターに卵白、粉糖、粉類、バニラエッセンスを混ぜた生地です。これを直径12cmの円形に薄く焼いて、熱いうちにお碗か小さなボールの底で型取って成形します。 |
「餃子を作る要領ですね(^-^)\」 | |
生地はオーブンから出すと10秒ほどで硬くなり成形は不可能となりますので手早く成形することがポイントです。 |
「おおっ!? フランボワーズのソルべが溶けていますよ…これはヤバい!(゚O゚)\」 |
飴のネットをかぶせて速攻でいただきましょう…タンバルの下にフランボワーズソースを流してあります。 |
飴の帽子はスプーンで叩いてつぶし、シャーベットの中に落として一緒に食べるのが正式な食べ方。 |
「これは悲惨です!(゚O゚:)\ パータ・チューリップも水分を含み過ぎて崩壊してしまいました…しかし、ソースにフランボワーズのリキュールが効いていて、溶けても美味なのです(^Q^)」 |