ポロシャツ

ポロシャツは、フランスで考案されたテニス用シャツが始まりであり、それが英国のポロ競技者にいち早く用いられたため、その名になったようです。英国での初期のポロ競技には決まった服装はなく、クリケット用のシャツやタートルネックセーターを着ていました。ポロ競技の時、衿のあるシャツは衿が風にあおられて、顔や首にパタパタ当たることから、衿先にボタンのついたボタンダウンカラーシャツが、ポロ競技用の代表的な服装のひとつになっていました。しかし、20世紀になってテニス用シャツとして、新感覚のニットシャツが登場すると、早速ポロ競技者が着用し始め、それがポロ競技者のシャツとして「ポロシャツ」の名前で定着したのが、始まりのようです。現在のポロシャツの原型を固めたのは、1927〜1932年のデビスカップに優勝、1925、1928年のウィンブルドンを制覇するなど活躍したフランスの伝説的テニスプレイヤー、ルネ・ラコステです。ルネ・ラコステが引退後の1933年に創業したブランドが「LACOSTE」。トレードマークのワニは、彼の粘り強いプレースタイルと、ワニ革をとても好きだったことでつけられた、彼のニックネーム”クロコダイル”からきています。

ワンダフルハウス私物
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(カールヘルム1990年夏物 価格不明)
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(カールヘルム1994年夏物 価格不明)
上から星条旗、タキシードおじさん、野球、アロハ、ラケット、旗の刺繍ワッペンが付いたポロシャツ。 セーラーぐまのワンポイントポロシャツ。

1979年から1981年までananに連載された「金子功のいいものみつけた」の40回目「古めかしいポロシャツ」(1980年7月1日号)で、金子さんがポロシャツについて語っているので紹介いたします。

胸にマークもついてない、どこの製品(もの)ともわからない平凡なシャツ。しかし、この色といい形といい、デザイナーの”作品”にはない別のよさがある。深く考えて作ったり、凝って着たりすることが、ときにはばかばかしく思える。すべて無造作がいい。とくに夏は、そういう季節だ。

ポロシャツ¥6200、パンツ¥4800(サンタモニカ)

ポロシャツと言うのだから当然、スポーツのポロをするときのシャツ……が元祖なのであろう。ポロは英国で盛んなスポーツで、英国人は植民地インドからこれを輸入したのだそうで、さらにその源流は、2000年も昔のチベットとかにおこった球技だという。
いずれにしても「馬に乗りながらするホッケー」のような遊びらしく、ヨーロッパ各国やアメリカでも行なわれているそうだ。が、我々はポロなんぞというものにはまったく興味もなく、ポロシャツのポロの意味を考えてみることもなく――しかしポロシャツは着る。

むしろTシャツより長いつきあいかもしれない。おしゃれな若者がTシャツを愛用し始めたのは「エデンの東(1955年)」以降だと思うが、ポロシャツは多分戦前から日本に入ってきていた。スポーティーな”気楽着”として、あるいは単なる”普段着”として、学生から爺さんまでポロシャツ愛用者は幅広い。
この頃は、ラコステを筆頭とするテニス関係ブランドのポロシャツが人気で、なかなかセンスのよいのも多いけれど。
写真のポロシャツは、そうした有名品ではないし、特別上等なやつでもない。長いあいだ気に入っている英国の兵隊パンツに合わせてみたところ、じつにピタリと”いい感じ”ではあるのだが――この組合せ方といい、ポロシャツ自体といい、目新しいものでもなんでもないのだ。
そこでまたもや考えさせられるのは、”新しくないものの新鮮さ”についてだ。このポロシャツは野暮ったいと言っていいほどのしろものである。濃い青に、衿と袖口の黄色――古めかしい色彩感覚。同じシャツの色違いもあったけれど、赤に黄色だの黄色に赤だの、どれもみなちょっとセンスの古い配色なのだ。
とくにこのブルーの、なんとツマラナイ色であることか! 古めかしくて野暮でツマラナイ色や形が、なぜかドキドキするほど楽しいのである。

NEW!

いいデザインを創造しよう、などと思ったりしないで作ったシャツ。たとえば’50年代のアメリカで、ベースボール少年だの町のあんちゃんだのが喜んで着ていた安いシャツ。いまでは知る人も少ないかもしれないが、”ビーバーちゃん”(アメリカのTVドラマ。1957年1963年まで放映された。両親と兄弟2人のホーム・コメディ。当時7歳のジュリー・マシューズはヒッチコック映画「ハリーの災難(1955年)」で名子役として認められた)とか”アイ・ラブ・ルーシー”(アメリカのTVドラマ。1951年から1957年まで放映された。1950年代のニューヨークのアパートに住むバンド・リーダー夫妻の日常生活を描いたシチュエーション・コメディ。)なんていう、善良なる人びとのイメージ。
どうということもない、こんなシャツを、何も考えずに着て汗をかき、洗濯機に投げ込んでザブザブ洗う。かつては、それが富めるアメリカの文化生活のイメージで、我々日本の貧しき若者の憧れを誘ったものだ。いまでは日本人がアメリカ人の数倍もおしゃれで、贅沢な衣服生活をしているのだが――
それでもなお、どうということもないシャツを無造作に着る着方では、アメリカ人のほうが優れているかもしれない。


鹿の子編み

ポロシャツによく使われているこの編み。この編み名は、編み地が鹿の子まだらのように見えるので、こう名付けられたのです。
この編みの特徴は丈夫なこと。それは、ポロシャツ、スポーツシャツなど激しい動きにも適用できるアイテムに使われていることからも十分わかります。もうひとつ通気性に富んでいるのも特徴。これはきめの細かい編みではありますが、編み地の裏側はあぜ編みのようになっているためそうなるのです。これを専門用語ではモックリブといいます。
夏になると最大限に力を発揮するこの鹿の子編み。洗濯後の洗いざらしの感じがたまらなくよいのです。じめじめした梅雨時でもさわやかな気分で着られちゃうというのも特徴のひとつと言えます。


NEW!

カールヘルムのポロシャツ第1号?

シマウマワッペンの付いた’86年春夏物の黒いポロシャツを着る奥田瑛二さん。おそらく最も初期に作られたポロシャツだと思われます。ラ・セーヌ1986年7月号(創刊号)より。


NEW!

ワンダフルハウス私物
(ポールスミスのポロシャツ)

現在のようなデザインのポロシャツが作られてから70年ほどが経ちます。金子服だけでなく、世界中の服に造詣の深いワンダフルハウスが、古今東西、歴代のポロシャツの中で最高傑作と思っているポロシャツを紹介いたします。前立てに9個ものボタンが付いたPaul Smithのポロシャツ...このポロシャツを1988年に初めて店頭で見た時は衝撃的でした。6色展開ぐらいで、白と黒は店に並んだ途端に完売。1990年代前半まで定番品として毎シーズン販売されていました。

1990年春夏物(長袖)¥9500 カジュアルさは微塵も無い。ジャケットやスーツに合うシックなポロシャツ。これ1枚で着てもサマになります。 裾に付いてるラベルはシーズンごとに違うデザインで、ポール氏の遊び心が窺われます。 1989年春夏物(半袖)¥8500 普通のポロシャツだとボタンが2〜3個しかないので、ジャケットのインナーとして着た場合、Vゾーンの下部が間延びした印象になってしまいますが、これは御覧の通り、Vゾーン全体にボタンが等間隔に配置されていて、バランスが良く、優美な印象を与えています。
1990年春夏物(半袖)¥8500 ポールスミス・ジーンズのデビュー・シーズンの作品。珍しいマルチカラーボタンで、紺のスーツに合わせると映えます。 1990年秋冬物¥25000 5つボタンのウールのポロカラーセーターはこの年だけ作られた貴重品。茶のツイードのジャケットに合わせるとパリの芸術家になった気分。

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