セーラー服

セーラー服の歴史は、1628年にイギリス海軍(ロイヤルネイビー)で初めてセーラー服と呼ばれるものが登場した頃にまでさかのぼります。現代にも通じるセーラー服は、1857年にイギリス海軍が水兵服として制定したデザインであるとされています。
水兵服以外でセーラー服が本格的に取り入れられたのは、18世紀末のイギリス海軍幼年学校であるとされています。しかし、海軍好きのイギリス人は、その頃までにはセーラー服を好んで子供にも着せるようになったので、子供の普段着としても広く着用されるようになりました。夏は白の、冬はネイビーブルーのセーラー服を着たイギリスの子供たちは、都会・田舎・本国・海外を問わず、世界中で見ることが出来ました。この流れは、19世紀から20世紀にかけてヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国へも広まっていくことになります。なお、各国とも、男子は下が半ズボン、女子にはスカートが組み合わされていました。
第二次世界大戦が終わり、各地の植民地が独立を果たしてイギリスの海軍力および支配力も低下すると、それとともにセーラー服の人気も低下していきました。しかし、日本においては、むしろ戦後に女子生徒の制服として大衆的な普及をみることになりました。

金子さんのセーラー服で最も有名な、ピンクハウス1991年春夏コレクションのセーラーカラージャケットです。素材はウールギャバジン。金子さんは制服の緊張感を残しながら、誰からも愛されるオーソドックスなデザインに仕上げました。ボトムスは、同素材のプリーツスカート、ショートパンツ、ワンピースの3種類から選べるようになっています。Tシャツとマーガレット・コサージュの白が効いています。

1979年から1981年までananに連載された「金子功のいいものみつけた」の67回目「セーラー服」(1981年4月21日号)で、金子さんがセーラー服について語っているので紹介いたします。

昔からあるデザインの、好きな服のベスト20に入る。ベスト10かもしれない。少女っぽく、少年ぽく、男っぽく……いろいろな着方があると思う。が、大人の女らしく着てほしい服である。セーラー服を本当に着こなせれば、第一級のおしゃれ女だ。

セーラーの上着¥7800(サンタモニカ)スカート¥19800(ピンクハウス1981年春夏物)双眼鏡¥120000(SOUL TRIP)
紺の本物の水兵の制服と紺のポリエステルのリボンプリントスカートの組合せ。セーラー服にはどのようなルーツがあるのか、はっきりとわかっていないのが現状ですが、諸説が論じられています。セーラー服の一番大きな特徴である大きな衿についてですが、海上では波や風の音で号令などが聞き取りにくいために衿を立てて、良く聞こえるようにするためという説があります。また、海上では水は貴重品であり、洗濯などができずに不衛生な状態となります。昔の水兵は、髪を伸ばして後ろに束ねる習慣があり、衿から背中にかけてが非常に汚れやすい状態になります。それを防ぐために首回りにスカーフを巻いていたのが、取り外し式の衿になっていったという説です。海に落ちた時にすぐ脱ぎやすい様に、丈が短く、胸元が開いているという説もあります。

考えてみるまでもなく、セーラー服は海軍の制服だ。が、過去に男たちが着続けてきた、そしていまもてはやされている、数々の制服の中でも、これは特にユニークなデザインだと思う。男もの、軍服、といった範疇を超えるユニークさがある。
後ろに四角くたれた衿は、海で何か用途があるのだろうか。デザインとしては、普通では考えられないほど突飛でもある。そして非常に可愛らしい、いいデザインだ。
初めてセーラー服を見た記憶は、子どもの頃、写真館で(七五三などの)記念撮影をする感じの着方である。リボンのついた紺のフェルトの帽子と長い靴下がつきものだった。男の子も女の子も可愛らしい。

もちろん、その後、女学生の制服としてのセーラー服を沢山見たわけだけれども――文化服装学院のころに、ディオールか誰かオートクチュールのデザインにセーラー服があった。マリンブルーという言葉を初めて知ったころ、セーラーなのにひどく大人っぽい、素敵な服で着方だった。女学生の服との違いに目を見張った記憶がある。
外国映画に出てくる水兵も魅力的だ。「シンデレラ・リバティー」やそのほか、セーラー服の男は数多く登場している。
が、日本人にとってのセーラー服のイメージはまず女学生である。この印象が強いので、大人の女が着た場合に、問題はおおいにあると思う。芝居や仮装に見えない、おしゃれな服として着こなせるかどうか。下手をすれば喜劇にもなりかねない。
写真のセーラー服は本物の水兵の制服。かっちりと四角い衿とその大きさも気持がいい。クラシックな感じの絹っぽいスカーフで。
が、女らしいスカートで着るほうが粋な気がした。

NEW!

セーラー服を着たことのない女のほうが少ないのではないか、と思うくらい、これは女が馴れ親しんでいる服。だけれども、おしゃれとしての着方は、かえって難しいのかもしれない。
しゃれて見えるかどうかの境は、結局は着る本人の気持なのだろう。セーラーのデザインが大好きで、しゃれた着方ができると信じて、実際楽しんで着るのだったら――他人の目にもそれは魅力的に映るはずだ。
好きな服を、”似合う”と信じて着る勇気とか心意気。それが、”着こなす”ということなのではないか。この着方、素敵でしょう?という説得力のある着こなし。それができれば何を着ても似合ってしまう。
セーラー服は、着こなしの腕を試される服でもあるようだ。


ピンクハウス1988年秋冬コレクションのウールギャバジンのセーラーカラージャケットです。ライン入りとライン無しの2種類がありました。プリントやリボンやフリル……毎シーズンお花畑のような世界を展開していたピンクハウスですが、このシーズンに大異変を起こし、紺無地のジャケット、スカート、ワンピースなどの意外なアイテムをデビューさせました。このシリーズ、金子さんはヨーロッパのリセの制服をイメージしてデザインしたようです。

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